小玉智子のお買い物ブログ

小玉智子のお買い物ブログ

2010年03月11日
XML
カテゴリ: カテゴリ未分類
 『ゴースト/ニューヨークの幻』(1990年)の脚本家が手掛けたSFラブロマンスが3/10にDVD発売。今回は、エリック・バナ&レイチェル・マクアダムス主演の『きみがぼくを見つけた日』(2009年)をご紹介します。

 クレア(レイチェル・マクアダムス)は6歳の時、初めてヘンリー(エリック・バナ)に出会う。彼は「未来から来た」と言う。それ以来、クレアはヘンリーを待ち続け、いつか結ばれると信じていた。しかし、ヘンリーは自分の意思に関係なく、現在、過去、未来を移動する“タイムトラベラー(時の旅人)”なのだ。そして、20歳になったクレアは、遂に、クレアの存在をまだ知らない若きヘンリーと運命の出会いをする…。

 原作は、オードリー・ニッフェネガーによるベストセラー小説。大まかなストーリーをTVスポットなどで見て、女性向きのロマンティックなラブ・ストーリーだと思っている方も多いのではないでしょうか?ところが本作は、“タイムトラベル”を病として捉える科学的な要素と人の生と死について考える哲学的な要素を併せ持った、かなり奇妙なSF作品としても観ることが出来るのです。

 原作では、ヘンリーの時空移動の原因が、遺伝子に異変をきたしているためだと判ると、物語は一風変わった恋愛ものから難病ものとなります。“タイムトラベル”が白血病や癌のように描かれていくのです。しかも“病”はヘンリーだけに留まらず、結婚した二人の間の子供にも遺伝してしまいます。そのため子宮の中の胎児が時空を移動してしまい何度も流産するという悲劇まで起きてきます。

 脚本家のブルース・ジョエル・ルービンは、映画の限られた上映時間の中でラブ・ストーリーを中心としながらも原作の要素を盛り込んだ巧みな脚色を行いました。ヘンリーが意思に反して時空移動してしまうことの苦悩を描きつつ、自身の死期を悟った時、人は残された家族に何が出来るのか、という命題にテーマを絞っていきます。

 ブルース・ジョエル・ルービンは、これまでにも、現実と悪夢の狭間で翻弄されるベトナム戦争帰りの男を描いた秀作ホラー『ジェイコブス・ラダー』(1990年)や、癌を宣告された男が遺言作りをするヒューマン・ドラマ『マイ・ライフ』(1993年)、そして恋人を守るため幽霊となって現れる男を主人公にした『ゴースト/ニューヨークの幻』など、“死”を覚悟した男のドラマを好んで描いています。本作も男性側のヘンリーの人物像を丁寧に描いているので、ロマンティックな映画が好きな女性だけでなく、男性の胸にもジーンと来る作品になっています。

 これまで“タイムトラベル映画”は数多く作られ、大概のアイディアは出尽くしています。そんな中でも、本作は先人のアイデアに捻りを加えてオリジナリティを出しています。先に記した“タイムトラベル”を病と捉える視点も抜群ですが、他にもあります。
 エリック・バナ演じるヘンリーは時間旅行を行うと、『ターミネーター』(1984年)のシュワルツェネッガー同様、素っ裸で移動してしまうのです。遺伝の病気なら洋服が移動する訳ありませんよね。ヘンリーは、いつの時代の、どこの場所に行くのか本人にもわからないのですが、『ターミネーター』と違ってただの人間なので、彼の日常生活は相当、大変です。真冬に素っ裸で街角に現れたりする訳ですから、まずは服や食べ物を捜して盗むことになります。警官に追いかけられるのは勿論、時には変態に間違えられたりします。その苦労は可哀そうやら、可笑しいやら。

 そんな時間旅行者の苦労を観て思い出すのは、同じような超常能力者、透明人間をリアルに描いた2編。ジョン・カーペンター監督のSFコメディ『透明人間』(1992年)の主人公は、食べたものは透明にならないため、細かく噛み砕かれて食道で消化されていく様子を見るはめに。なんだか一気に食欲が無くなりそうです。ポール・ヴァーホーヴェン監督のSFホラー『インビジブル』(2000年)の主人公は、透明な瞼のために常に目が開いた状態になって眠れなくなる(アイマスク付ければ解決じゃないの?)という苦労が描かれます。
 こうして見ると、タイムトラベラーも透明人間も、想像するより苦労が多そうですね。

 “タイムトラベル映画”で常に気になるのは、タイムパラドックスです。本作の場合、ヘンリーとクレアはどちらが先に出会ったのでしょうか?
 ヘンリーが6歳のクレアに会えたのは、20代のヘンリーが20歳のクレアと恋愛し、クレアの少女時代に行きたいと願ったから出会うことが出来た。そしてクレアは、6歳の時、30代のヘンリーに出会い、次第に運命の人と思うようになり、20歳の時、本当にリアルタイムのヘンリーと出会うことが出来た。卵が先か、鶏が先か、まさに哲学的な命題です。

 このように、本作が、ただのラブ・ストーリーではないという事は、おわかりいただけたましたよね。でも、そんな科学や哲学的要素をものともせず、王道のラブ・ストーリーを熱演しているのが、演技派の二人です。
 レイチェル・マクアダムスは『きみに読む物語』(2004年)で日本でも知られるようになり、最近では3/12から公開の『シャーロック・ホームズ』(2009年)など大作にも出演する注目の若手女優。対するエリック・バナは『トロイ』(2004年)、『ミュンヘン』(2005年)、『ブーリン家の姉妹』(2008年)などでシリアスな役を演じる演技派俳優。二人の演技力で、この一風変わったSFストーリーを見事にカバー。その説得力は、さすがだと思います。

 監督のロベルト・シュレンケは、ジョディ・フォスター主演のサスペンス・アクション『フライトプラン』(2005年)を演出した人で、本作を観る限り、およそ恋愛映画が得意な方のようには見えません。そのためもあってか、せっかくのブルース・ジョエル・ルービンの脚本が活かされず、涙のラブ・ストーリーという感じではなくなっているところがあります。ですが、この作品、私はなぜか、憎めないんですよね。映画は総合芸術と言われる通り、原作、脚本、俳優、そして演出などとの組み合わせによって、思いもよらない作品が出来上がったりします。その偶然性が映画の面白さのひとつであると思うのです。本作は、その偶然の産物が作りだした、数少ない珍品のひとつだと思えるのです。ぜひ、ご覧になってみてください。

 3/10に発売されたDVDには特典映像として、メイキング:時を越えた愛の物語(21分)が収録されています。

 最後に、“SFラブ・ロマンス”という言葉にぴったりの名作があるのでご紹介しておきます。それは、“スーパーマン”俳優として知られた故クリストファー・リーヴと、米TV『ドクター・クイーン/大西部の女医物語』や映画『007』のボンドガールとしても知られるジェーン・シーモア主演の『ある日どこかで』(1980年)。美男美女の時空を越えた恋愛を描く美しいラブ・ストーリーです。機会がありましたら、ぜひ、ご覧ください。

 次回は、3/19にDVDが発売されるローランド・エメリッヒ監督の大型SFパニック『2012』(2009年)をご紹介します。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2010年03月11日 23時09分17秒


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: