愛し愛されて生きるのさ。

愛し愛されて生きるのさ。

2004.01.12
XML
カテゴリ: カテゴリ未分類
韓国のホラー映画『ボイス』を観た。

この映画にまつわるエピソードとして、何かファミリー向けの映画の前にこの映画の予告編が流れ、子供たちが恐怖に怯え苦情が殺到したという話を聞いた。

これは明らかに考慮が足りなかったわけであるが、ホラー映画としてはある意味名誉なことかもしれない。
どれだけ怖いのかと、意気込んで観てみた。

この映画の題材は携帯電話。ありふれた携帯電話の着信音が恐怖のモチーフとなっている。「018-9998-6644」という番号にかかってきた電話が次々と人々を狂わせていく。

この映画の主人公は女性ジャーナリスト・ジウォン。彼女が手に入れた「018-9998-6644」という番号に不審な電話が相次いでかかってくる。それを偶然聞いてしまった親友ホジュンの幼い娘・ヨンジュは情緒不安定になり奇怪な言動や行動を繰り返すようになる。
その携帯番号にまつわる謎を究明しようとしたジウォンは、その番号が何人かの手に渡ってきたものであり、しかもその持ち主たちは不審な死を遂げていることを知る…。


最近日本でも流行している、身近なツールをモチーフに描いたホラー映画である。日本でも間もなく『着信アリ』という携帯電話をモチーフにしたホラー映画が公開されるが、この『ボイス』が少なからず影響を与えているのではないかと思われる。

最近のホラー映画における「呪い」は無差別的なものが多かった。『リング』の貞子にしろ『回路』のインターネットを介して人々の生活に侵食してくる幽霊にしろ、相手を選ばずに襲い掛かってくるわけである。
しかしこの『ボイス』の「呪い」はある携帯電話の番号所有者にのみ襲い掛かってくるという、どこかピンポイントなものである。

『リング』『回路』『呪怨』などで描かれた「呪い」は、物語が進むにつれて終末的な世界に向かうという、スケール感が伴うものであった。そしてまたその「呪い」の正体はどこかはっきりしないものであった。そんな理不尽かつ正体がはっきりしない「呪い」がこの不透明な現代社会に迎合し受け入れられてきたのだと思う。

しかし『ボイス』における「呪い」はあくまで予定調和的である。ラストで「呪い」の実体も詳しく明かされ、因果応報的なストーリーが浮き彫りになる。そこは古典的な怪談映画に系譜を連ねるものである。
まあその携帯電話の持ち主を誰彼構わず襲うという点においては無差別的とも言えるが、物語の核はあくまで因果応報を重視している。

私は『回路』という映画の感想で、ホラー映画のスケールは「小さければ小さいほどいい」ということを書いたが、この映画を見て必ずしもそうではないと考え直した。

この『ボイス』の恐怖は、冒頭で大きな脅威として描かれているが後半に向かうにつれて尻すぼみ的にスケールダウンしている。しかもそこに男女の愛憎や親子の絆が大きく絡んでくる。そのためまるでラストの結末は火曜サスペンス劇場のような様相を見せる。
巨大な恐怖の正体が、実は男女の痴話話の結果だったと気づくと肩透かしを食らったような気分になる。

男女の愛憎に基づくホラー映画ということで言えば『東海道四谷怪談』などに近いかもしれない。しかしそれならば携帯電話をモチーフとして用いていることが無駄に思えてしまう。
昨今のホラー映画が評価されたのは、そこで描かれている「呪い」が身近なツールを介して忍び寄ってくる無差別的なものであり、かつ一度呪われてしまったらどうあがいても元の生活に戻ることができないというものであるが故であった。『ボイス』はその点がかなり希薄である。「呪い」を描いているにしてはラストがすっきりし過ぎていて恐怖の余韻がほとんど無い。恐怖というものは得体が知れないから恐怖なのであって、この映画はあまりにも訳がわかりすぎてしまった。これはホラー映画としては致命的である。

映画のテイストとしては『リング』と『エクソシスト』をミックスしたような雰囲気である。主人公の女性が母性に近いものを盾に恐怖を解明していくという点は『リング』に似ているし、その呪いを体現するのが幼い子供であるという点はまるで『エクソシスト』である。

しかしそれが成功しているかと言えば、首を縦に振ることはできない。『リング』における母性の表現はあくまで物語のスパイス程度に留められていたが、『ボイス』は母性を強調しすぎた。
最近「ただ怖いだけじゃないホラー映画」という謳い文句があちこちで聞かれ、この映画にもそんな言葉が付与されている。しかしホラー映画に感動や共感はいらないと私は思う。感動できなくて共感もできない、それこそ本当の恐怖なのではないかと思う。

『エクソシスト』のリンダ・ブレアのような悪霊に憑かれた子供が本作の目玉にもなっている。白目を剥いて奇声を上げる子供は、確かに彼女そのものがCGで作られたものじゃないかと思えるくらいである。しかしそれが少々作為的すぎて、怖いというよりは笑える。
『エクソシスト』も怖いというよりは笑える映画であったが、描き方がかなり破天荒である種のスペクタクルを感じた。しかし『ボイス』の少女の描き方は『エクソシスト』のそれと比べるとパンチに欠ける。この映画は全てにおいて中途半端な印象で終わってしまっている。

ストーリー展開はスピーディーで退屈することはないが、やはりこれはホラー映画ではない。
「ホラー映画嫌いの人がリハビリで観る映画」としては丁度いいくらいかもしれない。

★★☆☆☆





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2004.01.29 17:28:46
コメント(4) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

キーワードサーチ

▼キーワード検索

コメント新着

ミリオン@ Re:『ブルーベルベット』(06/28) おはようございます。 アメリカは素敵です…
ミリオン@ Re:クリスティーナ・アギレラ『LADY MARMALADE』(06/27) こんばんは。 映画は面白いですね。見るの…
ミリオン@ Re:『彼女を見ればわかること』&『六月の蛇』(06/26) こんばんは。 映画は面白いですね。見るの…
松本 穣@ Re:追悼(09/14) こんにちは。僕は松本穣と言います。滋賀…
ミリオン@ Re:『ザ・リング』(06/24) おはようございます。 ホラー映画は面白い…

© Rakuten Group, Inc.
X
Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: