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川井は片目の視力が良くなかった。小さい頃目を怪我したという。瓶に爆竹をつめて遊んでいたら、それが暴発して砕け散ったガラスの破片で目が傷ついたらしい。だからなのか、彼のまなざしには奇妙な輝きがあった。それが理由なのか、彼はなぜか女子に人気があった。男子も女子も関係なく自然に接するのが気に入られたのかもしれない。そういえば、彼は誰にでも同じように話しかけていた。当時、僕が好きだった女の子にも、平気で話しかけているのがとてもうらやましかった。忘れられた日本人 (岩波文庫 青164-1) [ 宮本 常一 ]価格:990円(税込、送料無料) (2021/12/30時点)楽天で購入
2021/12/31
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中学一年のとき同級生だった川井は、運動神経がとても良かった。鉄棒で大車輪をする人間を始めてみたのも、川井だった。その後一度も、大車輪をしている人間を直接見たことはない。ある日、川井に呼ばれて彼の席に行くと、学生鞄の中から調味料入れのような瓶を取り出した。中には鉄砲の銃弾がいくつも入っていた。弾はすべてひしゃげていた。使用した後のものらしかった。ひとつやる。そういって川井は、中から比較的整った弾を一個くれた。拾ってきたものだという。今になって考える。あの弾はどこで拾ってきたのだろう。数十キロ離れた町に陸上自衛隊の演習場があって、今でこそ道路も整備されてアクセスもよくなっている。けれど、あの頃は峠道をいくつも越えなければ行けない遠い町だった。それに、演習場に行けたとしても、子供が入れるのだろうか。あの日、弾を入れた瓶を大切そうにしていた川井の様子を思い出すたびに、不思議な気持ちになる。
2021/12/28
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小学校時代、二度同じ子が転校してきた。井垣君はタクシー会社の隣の家に住んでいた。お父さんがタクシーの運転手をしていたらしい。記憶にあるのは、井垣君がお母さんと一緒に、小学校の校門を出てすぐの坂道を去っていく後姿だ。同級生たちと見送ったのだろう。井垣君はどこからか転校してきて、またどこかに転校していっただけなのだと思う。けれど、記憶の中では、井垣君が二度転校してきたように思える。あの後姿を、夢の中で何度も繰り返し見たからなのだろうか。明恵 夢を生きる (講談社+α文庫) [ 河合 隼雄 ]価格:1034円(税込、送料無料) (2021/12/17時点)楽天で購入
2021/12/19
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「神様の言い訳」村の中では自分たちの信頼を分け与えて生命の樹も生える前に掘り起こされ明日はすでに行われた儀式の後片付けで明日は昨日と地続きで今と繋がっている現在は現在と書き留めた瞬間に過去となるそれでも構わないと言っている不可思議な出来事が起こる可能性の連続言い訳はこれ切りでこの先の出来事はすべてが夢想直向きな人の真剣な眼差し生まれて良かったと思えるように生きる不安定ながらも生きている今
2021/12/17
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「神様のふりかけ」地上に降り立った神様が頭にふりかけてくれる魔法の言葉いくらかの知識で生きていくいくつかの知識で生きていくもう既に‘生き物ではなく意味のある何かもの覚えの悪い自分が忘れない記憶死んでしまう前の鹿がひと声鳴いて死んでいくとき去る前の人が無念の思いを残して去っていくとき経験が無い事でも思い出となる
2021/12/10
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神様のふりかけ夜中に何か思いついたとき暗闇の中でメモを取るときがあるつい最近取ったメモが「神様の」までしか判読出来ない後の四文字が分からない「ふりかけ」とも読めたが意味が分からない寝ぼけてなにか夢でも見たのかも知れない
2021/12/07
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「食べ物や水を十分に与えられてもスキンシップがないと赤ちゃんの成長は妨げられる触れられない状況が数週間続くと赤ちゃんは死亡しやすい」これはTV番組で見たある心理学者の考察別のTV番組での昔の心理学者の代理母実験ではアカゲザルの赤ん坊を使った実験柔らかい布で作られた代理母と針金で作られた代理母を比較する実験でミルクの出る針金の人形とミルクの出ない布の人形を並べたゲージにアカゲザルの赤ちゃんを入れるとそのサルの子はずっと布の人形につかまっていてミルクを飲む時だけ針金の代理母の方へ移って飲み終わると直ぐに柔らかい布の人形の所に戻ったという餌を与えられることより温もりを与えられる方を子猿は選んだこれらの実験は動物虐待だと非難されその後の動物愛護の法整備に大きな影響を与えたその功罪は色々ある今では許されない実験だけれども少なくとも霊長類などの生き物にはスキンシップが大切だと考えさせられる実験だったと思うそのTV番組ではこの実験を「愛と絶望の心理学実験」と名付けていた
2021/12/03
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