ふつうの生活 ふつうのパラダイス

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2006年05月14日
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カテゴリ: 映画★アニメ


それにしても、 宮崎駿 って、すごい才能だよね。自然と人間の対決。徹底的に突き詰めて、そして、さあ、あなたも考えてくださいというエンディング。だな。けちつけるところが全然なかった。そして、ちょっとでも、気を抜くと話がわからなくなる。すごいストーリー展開だよね。絵が上手いのは当たり前としても、絵とストーリーと、効果と展開とバランス。が、すごいんだよね。

時代的には、たぶん、戦国末期。鉄砲があるからね。でも、ヤックルがでてきたり、東北地方の雰囲気がもっと前っぽいのですよね。でも、鉄砲が出てくるんだから、当然、戦国末期。ただ、日本っぽいけど、日本に似た設定のファンタジーってこともありえるような…。

たたら ということで、この村は製鉄業をしてる。だから、多分山陰地方。鳥取か、あるいは島根。あたりかな。山からとった砂鉄による製鉄。そのための山や森の伐採。自然破壊。私は、公害や、自然破壊というのは、20世紀になってからだと、ずっと何気なしに思っていた。だから、この映画を見てこんな昔から、自然破壊があったんだというのは、なかなか 驚き だったんですね。

自然と人間の技術が共存できないものだという初めての摩擦の瞬間。

自然の中から生まれ、自然の中にあるものをそのままに受け止めていた生命達の中で、はじめて、自然のものを自分達の力で変容させていこうとする人間という存在の出現が、自然のあり方を危うくし、自然と人間のせめぎあいを生む。

人間が生み出そうとするものが自然を破壊していく。

それぞれがそれぞれの立場で自分の存在を維持するために戦う。あるいは、滅び、あるいは生きながらえ、それぞれがどうかかわっていけばいいのか苦悶する。

その戦いのまさに中間ポイントにいるのが「 もののけ姫 」だ。人間でもあり、動物にはじまる自然でもあり、また、人間でも、自然でもない、微妙な存在である「もののけ姫」という存在がまさにこの物語の中で重要な位置を占め、それがいっそう、物語を面白くもし、複雑にもする。

そして、その対極に「 えぼし様 」がいる。科学技術の進化の最先端をおのれの力で引っ張って行こうとしている。「えぼし様」の実業家としてのさらにリーダーとしての資質、技量はすごかった。「 たたらの里 」にいるのは、つまり、社会的にはあまりモノ、ハグレモノの存在ばかりを集めている。なにしろ、この物語の中にらい疾患の人々がでてくるのだ。
これは、ジブリではあるけれど、けっして子供向けに作られているわけではない。それはもちろん、サムライや、野武士の首や、手がばっさりきられるシーンが数回でてくることでもわかるのだけれど。らい疾患、あるいは、娼館に売られた女、男達もたぶん、外では与太者、暴れ者などの、存在であったものたちなのではないだろうか。他に行くところのない、あるいは社会からやっかいもの、じゃまもの扱いされてはみだしてしまったようなものたちが、集められているのだ。行くところがないのだから、こんな山奥の僻地のたたらばといえども、苦しくともしんどくとも、彼等にとってはよっぽど世間よりは居心地のいいところなのだろう。この地で初めて人間扱いされたのではないのだろうか。だから、たたらばのらい疾患の人たちも、たたらをふむ女達もとても元気で生き生きとして、自分達の里に自信を持って暮らしている。そういう人間達を集めてその信頼をえて、里をまとめているその技量はすごい。

物語の前半、自然を破壊し、 たたり神 までうみだした、「えぼし様」は悪者のようにうつる。そして、その「えぼし様」をさらに、だまし、うまく使い右手まで落とさせてしまったより上の存在もまた、人間社会という自然とはさらに対峙する存在である。
あまりの人間の変容に自然はあらがうけれども、しかし、進化しはじめた人間達の技術力にはとうてい勝てない。この先、ますます進化し続け、その技術力を増して、自然を破壊していく人間達にいったい、どう対抗していけるのか。その対決のシーンは、壮絶だ。
真正面から対決して、滅んでいくいのししたち。高見の見物をしていたはずが、結局参戦してしまう山犬とサン。そして、「 未来少年コナン 」そのものの アシタカ 。アシタカの体力、運動力、弓の腕も、剣の腕も、すごかったですね。山犬と同じスピードで、山の中走ってるんだもん。ふつう出来ないでしょう。

自然破壊をしつづけ、自然にとっては敵である「えぼし様」は、人間界では社会的弱者を集めてその生きる場を与えているという、良き存在であったりする。
人間の社会で生きて行こうとする「えぼし様」、そして、自然破壊につながるとわかっていても、なお、後戻りの出来ようはずもなく、科学の発達によって生きて行こうとする。
自然破壊に対して、なんら迷いをみせないえぼし様は、自然破壊につながることをしなければこの先人間が生きていけないことに覚悟を決めているのだろうか。
自然の中にうまれながら、その自然を破壊することで自らの生きる道を開かざるを得ない人間達と、自らの存在を危うくする人間とどう接していくのか結論のだしきれない自然との、せめぎあいの歴史の最初の部分を描いた物語だったのであろうか。

物語のラストで自然界の生命力を象徴する「コダマ」が一匹だけ現れる。こんなことぐらいで、自然は滅んだりしないんだよ。と、言っているようでもある。
自然と人間は対立していくものなのか。共存していくものなのか。



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最終更新日  2010年01月10日 08時10分53秒
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