inti-solのブログ

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2008.10.02
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http://mainichi.jp/select/today/news/20081002k0000e040010000c.html

橋下知事:「光母子弁護団懲戒」TV発言で賠償命令 

 山口県光市の母子殺害事件(99年)を巡り、橋下徹弁護士(現・大阪府知事)のテレビ番組での発言で懲戒請求が殺到し業務に支障が出たなどとして、被告の元少年の弁護士4人(広島弁護士会)が計1200万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が2日、広島地裁であった。橋本良成裁判長は「発言と懲戒請求との間に因果関係があることは明らか」として橋下氏に原告1人当たり200万円、計800万円の支払いを命じた。橋下氏は控訴する方針。

 視聴者の行為を促した発言が違法と認定されたことで、今後の番組制作や出演者のコメントに影響を与える可能性もある。

 判決によると、橋下氏は昨年5月放送の情報バラエティー番組「たかじんのそこまで言って委員会」(読売テレビ)で光市事件の弁護団を批判。事件の動機が「失った母への恋しさからくる母胎回帰によるもの」などとした弁護活動に対して、「許せないって思うんだったら一斉に弁護士会に懲戒請求をかけてもらいたい」などと発言し、4人に計2500件以上の懲戒請求が届いた。

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当然の判決です。
光市の母子殺害事件の犯人の犯行は許し難いと私は思います。しかし、凶悪事件の犯人が許せないというのと、その犯人の弁護士が許せないというのはイコールではありません。
たとえ被告人が100%クロだと確信していても、本人が「無実だ」と主張する限り、弁護人が勝手に「罪を認めます」などと言うことは許されません。
被告の言い分がいかに辻褄が合わなくてデタラメだったとしても、その言い分を法廷で主張する権利は妨げられないのです。
ただし、その結果は本人自身に返ってきます。つまり、明らかに辻褄が合わなくてデタラメな言い分を主張をすれば、「反省の色なし」とみなされて、より重い刑罰という結果を招きます。弁護士が、そのリスクを被告人に説明してもなお主張を変えないならそれまでです。
つまり、弁護士にとって被告人の代弁をする(いかに荒唐無稽な内容であろうとも)ことは、立場上課せられた責務といってもいい。それを許せないというのは、たとえて言えば、ドラマに出てくる悪役を演じる俳優が許せない、というのと同じようなものでしょう。

刑事事件の弁護人というのは、ものすごく割に合わないものだそうです。国選弁護人の報酬なんて、話にならないほど安い。
だからみんな刑事弁護なんてやりたがらない。しかも、こういった重大犯罪の場合、弁護人を引き受けたというだけで非難が殺到するのが昨今の風潮です。弁護人を引き受けるだけで顧問弁護士を切られたりするそうです。尚更、弁護の引き受け手はいません。
しかし、刑事事件の裁判は弁護士抜きには始めることはできません。被告に弁護士が付かなかったら、裁判は始められないのです。
それとも、憲法も刑事訴訟法も変えて、凶悪犯罪の被告には弁護人など不要、ということにでもしましょうか。そう言い出しかねないようなネット世論が、2ちゃんねるやヤフーニュースのコメント欄には見受けられます。「ネット世論」のノリと感情と勢いで凶悪犯罪の刑を決めるようなものです。それは、法治国家・近代国家であることをやめる、というのと同じです。
自分が無実の罪で捕まったときに、弁護士が誰も助けてくれない、あるいは弁護士が自分のいうことを聞いてくれず、「無実だ」と言っているのに勝手に「罪を認めます」と「弁護」してしまう事態を想像してみると良いでしょう。しかも、これはすでに全くの絵空事ではないのです。弁護士が誠実な弁護を行わずに有罪になり、後で冤罪が発覚した刑事事件は現に存在します。

今回の事件では、2審までの弁護士は国選弁護人だったようですが、最高裁が弁論を開くと決めた時点で、悪い言い方をすれば「逃げ出して」しまったのです。
(最高裁は、2審の判決をそのまま変更しない場合は弁論を開きません。弁論を開くというのは、2審の判決を変更することを意味します。この場合で言えば、弁論を開く=2審の無期懲役を見直す=死刑ということです)
あとを受けた今回の弁護団は、従って国選弁護人ではありません。この犯人に財産なんかあるはずがありませんから、報酬なんて全くないことは明らかです。そういう中で新たに弁護人を引き受けるというのは、それ自体並大抵のことではありません。
弁護団の作戦がベストだったかと言えば、かならずしもそうとは言えなかったかも知れません。批判の余地はあるでしょう。だから、弁護団の活動に対して批判がしたいというのであれば、批判すること自体は自由です。ただし、批判と制裁は違います。懲戒処分というのは、弁護士に対して最悪資格剥奪、あるいは期限付きの刺客停止処分を課すものです。つまり、弁護士という職から永久に、あるいは一定期間追放するということです。
弁護団の主張が気に入らないから批判するのは言論の自由ですが、弁護団の主張が気に入らないからという理由で資格剥奪させる権利など、誰にもありません。

橋下は仮にも弁護士でですから、その程度のことは当然知っていなくてはなりません。そして、弁護団の弁護活動が懲戒の対象にならないことも、当然知っていなければなりません。そのような「弁護士」を肩書きにした人物が、テレビ放送で、「懲戒請求しろ」などと煽ることは非常に悪質です。
しかも、懲戒の理由がないのに懲戒請求を行うことは損害賠償の対象になるのです。結果として光裁判の弁護団は懲戒請求を行った人たちに対しては損害賠償請求を行いませんでしたが、もし行っていれば、橋下の口車に乗って懲戒請求に走った人たちは、軒並み賠償金を取られる羽目に陥ったはずです。
そのリスクを説明せずに、何も知らない視聴者に懲戒請求を煽り、本人自身は懲戒請求をしていなかったというオチまで付いています。あまりに無責任です。

ところで、ヤフーニュースなど見ていると、「私は橋下氏に呼びかけられる前に懲戒請求した」などとコメントしている人物がいますが、明白にウソです。なぜなら、放送前には懲戒請求は1件もなかったからです。橋下氏に呼びかけられる前に懲戒請求した人物が1人もいないことは、確認されています。(番組を直接見ていないで懲戒請求した人はいたかも知れませんが、それだってまったく独自の発案という可能性は低いでしょう)

それにしても、今回の裁判でも、結局橋下本人は一度も出廷しなかったそうです。もちろん、民事裁判で被告が出廷する義務はないのですが、自分自身が弁護士であるにもかかわらず、裁判で訴えられても全て代理人(他の弁護士)に任せっぱなしというのは、みっとも良い話とは思えません。本人に弁護士としての能力が低いから、他人に任せるしかないのではと邪推したくなってしまいます。
それから、原告の弁護士のうちの1人は、提訴後になって弁護団の他のメンバーと対立して、弁護人を解任され、橋下に対する損害賠償請求も、いったんは取り下げようとした。ところが、民事裁判ではいったん提訴したものを取り下げるには被告の同意がいる。しかし、橋下は提訴取り下げに同意しなかったそうです。その結果、提訴を取り下げようとしていた弁護士も橋下に勝訴。同意しておけば、1人分の賠償金(200万)は取られなくて済んだだろうに。まあ、橋下府知事にとって、200万くらいははした金なのかもしれないけれど。

とはいえ、私も幼い子どもの親。この事件(本件の殺人事件の方)の犯人は許せないという思いは変わりません。判決は妥当とは言え、いろいろな意味で後味が良くない出来事であったことは間違いありません。





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最終更新日  2008.10.04 14:42:33
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