inti-solのブログ

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2013.12.01
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テーマ: ニュース(96532)
カテゴリ: その他
中国の防空識別圏設定以来、騒動になっていますが、改めて防空識別圏とは何か、飛行計画の提出とはどういうことかについて、まとめてみました。

防空識別圏というのは、これは既に以前に説明したとおり、各国の空軍(日本では航空自衛隊)が領空の外側に設定する警戒空域のことです。各国の軍部が勝手に「このエリアより内側に入ってくる飛行機は気をつけるぞ」と言っているだけのものであって、国際法上の規定があるわけではありませんし、もちろんそこで特別な権限が発揮できるわけでもありません。
ただ、飛行計画がないまま防空識別圏を領空に向けて飛んでいくと、空軍(航空自衛隊)のスクランブル発進を受けて「このままでは領空に侵入するから引き返しなさい」という警告を受ける確率が高まる。もちろん、領空に侵入しない限りは、警告止まりです。
防空識別圏は、すべての国が設定しているわけではなく、中国もこれまでは設定していなかったようです。また、設定している国でも、その空域を対外的に公表していない国もあります。日本と米国の防空識別圏は公表されていますし、中国も今回設定と同時に公表したわけですが、それ以外の国、たとえばロシアやヨーロッパ諸国の防空識別圏は検索してもよく分からず、公開はされていないのかもしれません。

防空識別圏は「領空の外側に設定する警戒空域」と先ほど書きましたが、現実には日本の領空でも防空識別圏が設定されていない空域もあるし、それどころか他国の防空識別圏が設定されている例もあります。具体的には、沖縄の与那国島上空西半分(もちろん日本の領空)は、台湾の防空識別圏に組み込まれています。日本も、2010年に、この空域を防空識別圏に組み入れたので、日台の防空識別圏が重複している状態です。
また、小笠原諸島や沖ノ鳥島、南鳥島なども、日本の領空であっても防空識別圏からは外されています。日本が領有権を主張しながらも実効支配していない北方領土や竹島の上空も防空識別圏ではありません。逆に、ロシア沿海州では、ロシアの領海にまでは入っていませんが、それにかなり近いところまで防空識別圏が張り出しています。もちろん、ロシアの経済水域には食い込んでいる。前述のとおり、ロシアの防空識別圏がどうなっているかはよく分かりませんが、ロシアが防空識別圏を設定しているなら、この空域は日露の防空識別圏が重複していることはほぼ確実です。道東や道北もそうだろうとおもいます。

これらは、深い判断の結果そうなった、というわけではなく、元々戦後、GHQが設定した防空識別圏を、そのまま引き継いだ結果であるようです。

前述のとおり、防空識別圏とは、国際法上何か根拠のあるものではなく、各国の空軍が勝手に警戒ラインとして設定するものですから、設定するもしないも、どこに設定するもそれぞれの国の自由です。もちろん、中国がどこに防空識別圏を設定するのも中国の自由であり、本来文句を言うような筋合いのものではありません。

ただし、各国が勝手に設定するものである以上、他国あるいは他国の航空機に対して、何かを要求できる筋合いのものでもありません。したがって、中国が防空識別圏を設定するのは自由ですが、それについて他国の航空機に対して何かを要求することは誤りである、ということです。
防空識別圏は領空ではない、そのあたりの認識を中国の当局が誤っていたとしか思えません。

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さて、中国は防空識別圏を飛行する飛行機に対して、飛行計画の提出を要求しています。
確かに、 Wikipediaの「防空識別圏」の項目 には、

防空識別圏内を飛行する際は、飛行計画を航空管制機関に提出することが義務づけられており

という記述が以前はありました。(現在では編集されて削除されています)

原則的にすべての飛行機は、飛行に際して飛行計画の提出が義務付けられています。したがって、上記のWikipediaから削除された記述は誤りといえます。防空識別圏を飛行する飛行機だけが飛行計画の提出を義務付けられているわけではないので。

では、飛行計画はどこに提出するのかといえば、出発地を管轄する航空管制機関です。日本を出発する飛行機なら、日本の航空管制機関に提出するわけです。航空管制業務の各国分担空域を「飛行情報区」といい、日本周辺の飛行情報区はこのようになっています。

飛行情報区

各飛行情報区の間ではデータが共有されていますから、国際線では飛行機が隣の飛行情報区向かえば、飛行計画情報も引き継がれるようになっており、別の飛行情報区に入る度に飛行計画を提出するわけではありません。
当然の話ですが、中国の飛行情報区(上海FIR)を通過する飛行機についての飛行情報は、出発地の管制機関に出せばいいわけです。

では、防空識別圏との関係はどうなっているかと言うと、各国の空軍(航空自衛隊)は、航空管制機関から情報を取得する(もちろん、今はオンラインでつながっていて電子データとして自動的に共有される)ことによって、民間機の飛行計画を把握しています。
防空識別圏と飛行情報区は一致しているわけではありません。日本の飛行情報区の外側まで防空識別圏が広がっている空域も一部あります。そこを通過するだけの民間航空機が、わざわざ日本に飛行計画を提出などということは、おそらくやっていないはずです。
中国も同様に、自国に設定した防空識別圏の飛行計画を知りたければ、自国の航空管制機関を通じて自分で調べなさい、ということなのです。
ただ、中国空軍だって、その程度のシステムは構築しているだろうと思います。それなのに、あえて主権の誇示のため(実際には防空識別圏に主権などないのですが)に飛行計画提出を要求しているのではないか、という気がします。

とはいえ、民間航空会社としては、あらゆる危険は排除したいし、防空識別圏に入る度に迎撃戦闘機に至近距離に接近されるのではたまったものではありませんから、政府同士の対立は対立として、「飛行計画を出せ」と要求されれば、そりゃ出しますよ。そのことをどうこう言っても始まりません。

なお、現在では世界中の民間機飛行情報のかなりの部分を、ネットで知ることすら可能です。

Flightradar24

これは、公的に設置されているシステムではなく、有志が民間航空機が搭載する空中衝突防止装置の電波を拾ってネット上に公開するシステムなので、追跡する人がいない地域、空中衝突防止装置を搭載していない飛行機※は分からないですが、少なくとも国際線で空中衝突防止装置を搭載していない飛行機はないはずですし、日中韓いずれの国でも情報提供者は多いようです。もっとも、中国の場合、北京や上海など大都市圏のデータは豊富ですが、東北は情報提供者が少ないのか、飛行情報がほとんどありません。

※検索したところ、2011年9月のデータで、関西空港で発着するうち、1/4の飛行機が空中衝突防止装置未搭載だったというデータがありました

このサイトで飛行機の動きを見ると、たとえば米国と激しく敵対してきたキューバの上空は、日夜米国の航空会社の飛行機がガンガン通過していること、北朝鮮の上空ですら、ヨーロッパと日本などを結ぶ航空便が飛んでいること(キューバ上空の米国機よりはずっと少ない、あるいは情報提供が少ないだけかもしれないが)、アフガニスタンやイラクの上空も同様であることが分かります。





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最終更新日  2013.12.01 14:37:48
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