inti-solのブログ

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2018.07.03
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メキシコ大統領選 史上初、左派大統領 「対米改善を模索」
任期満了に伴うメキシコ大統領選の投開票が1日にあり、野党・左派「国家再生運動(MORENA)」の元メキシコ市長、ロペスオブラドール氏が当選した。メキシコ史上初の左派政権が誕生する。トランプ米政権に強硬姿勢をみせてきたロペスオブラドール氏だが、勝利演説では米国との関係改善を目指す考えを示した。
一方、ロペスオブラドール氏は従来、NAFTAの再交渉は自身の政権が担うと主張。「再交渉で協力を強める必要性があると認識できた場合のみ、加盟国であり続ける」と条件次第で離脱も示唆しており、交渉は長期化しそうだ。
「米国第一主義」を掲げるトランプ大統領に対抗し、「メキシコ第一主義」を主張してきたロペスオブラドール氏は、内政不干渉や民族自決の原則を強調した上で「米国との親密な関係を模索する」と発言。トランプ氏もツイートで祝意を示した。
日系企業には左派政権を不安視する声もあったが、ロペスオブラドール氏は演説で「企業の自由は保証される」と語るなど、不安の払拭に努めた。
メキシコで汚職と犯罪が深刻化する中、ロペスオブラドール氏は効果的な対策を取れない既成政党を批判し「新たな選択肢」として支持を広げた。演説では「汚職と犯罪の不処罰を根絶することが自分の政権の主要な課題」と述べ、政治家の資産公開の義務化など、公約を進める考えを示した。
選管当局が発表した暫定結果によると、ロペスオブラドール氏の得票率は53.61%。野党・中道右派「国民行動党(PAN)」のアナヤ前党首は22.63%、与党・中道右派「制度的革命党(PRI)」のミード前財務公債相は15.49%。

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ロペスオブラドール候補、フルネームはアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール、やたらと長い名前なので、メキシコでも頭文字を取ってAMLOと通称されます。ガンダムには乗らないけどアムロです(笑)
AMLOは、今回は新党であるMORENA(国家再生運動・この略称自体が「褐色」という意味で、おそらく先住民やメスティソの肌の色を意識して、この党名にしたのでしょう)からの立候補ですが、前回と前々回大統領選には、PRD(民主革命党)から出馬しており、MORENAもまた、PRDからの分派です。

という説明の前に、いろいろな政党名が出てくるのでメキシコの政治史を超簡単におさらいします。
制度的革命党PRIは、1910年のメキシコ革命によって成立した革命政権から誕生した政党です。1929年の結党(その時点ですでに与党)から2000年まで与党の座にありました。革命政権から始まったものの、長らくメキシコの体制として君臨したため、党内には左派から右派まであらゆる派閥が同居していました。一方、野党は、非合法化されるか、PRIの衛星政党として存続を許されるだけの存在。そんな衛星政党の一つだったのが右派の国民行動党PANです。

しかし、80年代以降、PRIは次第に支持率を落とし、それとともに急激に右旋回していきます。それに対して不満を募らせた党内左派は1988年、指導者格のクアウテモク・カルデナス(父ラサロ・カルデナスは1934年から40年まで大統領を務めた)に率いられてPRIを離党、左派の小政党も合流して、国民民主戦線FDN(後に民主革命党PRDに改称)を結成して、大統領選に挑みました。PRIは露骨な開票不正という手で辛勝したものの、PRIの強固な一党支配体制は崩壊し、以降右派のPAN、左派が抜けて右傾化したPRI、左派のPRDがメキシコの主要政党となります。
今回大統領に当選したAMLO氏も、元々はPRIの出身で、カルデナスとともに離党した人物です。

不正選挙でカルデナスを破ったサリナスは、汚職追放を公約に掲げたのですが、実際にはメキシコ史上でもっとも汚職まみれの大統領となり、最後には自身の後継者候補者が選挙中に暗殺される事件への関与が疑われる中、任期切れとともに国外に亡命してしまいます。
そのことも一つの要因になって、その次、2000年の大統領選で、とうとうPRIは負けて、史上初めて下野しました。ただし、勝ったのはPRDではなく、右派野党のPANでしたが。

同じ年にメキシコ市長に当選したのがAMLOです。
首都メキシコ市は左派勢力の牙城で、市長公選制導入以降、最初は前述のカルデナスが、続いて2000年の市長選ではAMLOが当選しています。AMLO市長と右派のPAN政権は何かにつけて衝突しました。中央政府に噛み付くAMLOは国民的人気を獲得し、次の2006年の大統領選に挑みましたが、史上稀に見る僅差(AMLO陣営は不正を主張していますが)で敗北しました。
その後、前回2012年の大統領選でもAMLOは再び敗北。ただし、2期続けて大統領選に勝ったPANも敗れ、政権は再びかつての支配政党PRIに戻ります、
この大統領選の過程で、AMLOは所属するPRDに不満を抱いたのでしょう。選挙の後に離党しました。
その経緯は、在墨日本大使館のホームページの説明が分かりやすい。

2015年メキシコ中間選挙(6月7日実施)-注目のポイントー

近年,一定の勢力を得たことを背景に,脱カリスマ指導者,そして責任政党としてのあり方を模索する「新左派」が主流化,同グループは与野党協力による構造改革に貢献した。しかし,2012年にロペス・オブラドール前大統領候補,2014年にカルデナス元大統領候補が離党,深刻な党内分裂に直面した。加えて,2014年ゲレロ州での教員養成学校学生襲撃事件(43人が殺害されたとされる)に自党の地方政府関係者が関与していたことから政治腐敗を追及された。


要するに、PRDの主流派は「現実化」という名で与党との妥協の道を選択し、カリスマ指導者、つまり個人的人気の高いAMLOは邪魔者扱いされるようになった上に、政治腐敗や犯罪行為への関わりでもPRDがPRIやPANと変わらなくなってきたので、袂を分かったわけです。そして、自身の政党MORENAを率いて、今回3度目の挑戦で、ついに大統領選に勝ったわけです。

では、AMLOと袂を分かったPRDは、今回選挙ではどこに行ったか?
何と、右派政党PANと連合を組んだのです。よりによって、PANとPRDの連合、日本で言えば維新の党が社民党と組んだのに近いかもしれません。あまりに野合が過ぎます。
あるいは、PANと組んででもAMLOを引き下ろしたいというくらい、かつての同志に対する対抗心が強かった、ということなのかもしれません。

さて、しかし問題は当選後です。
メキシコの抱える問題は深刻です。経済問題や米国との関係もそうですが、特に深刻なのは政治腐敗と暴力です。この2つの問題は、メキシコにおいては表裏一体です。この十数年間、多くの政治家が暗殺されてきました。罪組織が政治、行政、警察、軍にまで浸透し、自らに敵対的と思われる政治家を消すのです。こういう国で、公的立場にある人間が清廉潔白であり続けることは、命の危険が伴います。協力すれば賄賂を、協力しなければ死を、という究極の選択を強いられるからです。
政治家が自らの政敵を犯罪組織に依頼して消させる、という事例すらもあるようです。何しろ大統領が、同じ与党の自分の後継者を暗殺した、との疑いがかけられるくらいですから、推して知るべしです。
ジャーナリストやマスコミ関係者も同様です。麻薬組織を非難する記事を書けば、記者が殺されます。そうやって暗殺されたジャーナリストは何十人何百人もいます。

いや、公的立場にあるものやジャーナリストばかりではありません。何しろ、年間2万人以上が麻薬組織によって殺されているのです。毎日どこかで惨殺死体が転がっている、それも一人二人ではなく、時には一度に何十人もです。
首都メキシコ市などの南部はそんなことはありませんが、米国との国境に近い北部は、目も当てられない状況です。わたしはメキシコが大好きで、是非また行きたいですけど、チワワ州、ソノラ州、コアウィラ州、シナロア州辺りは遠慮します。あまりに危険すぎるので。

どう考えても異常な状況であり、大好きな国なのでこんなことは言いたくありませんが、「破綻国家」と言われても仕方がない状況です。その状況をPRI政権もPAN政権も、まったく解決できませんでした。AMLOはどうでしょうか。少なくともPRIやPANではもうどうにもならないと多くの国民が判断したから、AMLOに支持が集まったのでしょう。ただ、問題の根は深く、早々容易に解決できることではありません。彼が背負う責務は重大ですが、大いに期待して行きたいと思います。その期待が裏切られないことを祈ります。





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最終更新日  2018.07.03 23:14:13
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