inti-solのブログ

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2019.08.28
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富士山落石、死亡したのはロシア国籍の女性 夫婦で登山
26日午前5時ごろ、富士山の山頂付近の登山道で、女性が落石でけがをしたと、地元の消防に通報があった。女性は間もなく死亡が確認された。
山梨県警富士吉田署によると、女性はロシア国籍で東京の主婦(29)。日本人の夫と一緒に25日午後9時ごろ、同県富士吉田市の吉田口登山道から登り始め、山頂を目指していた。石は胸などに当たり、死因は外傷性心肺損傷という。事故を受け、吉田口登山道は9合目の手前から山頂にかけて26日午後6時まで通行止めとなった。

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痛ましい事故が起きてしまいました。ただ、富士山で落石による事故が起こるのは、そう稀なことではありません。遠いむかしですが、1980年に12人もが亡くなる大規模な落石事故がありました。

富士山大規模落石事故

それ以降も、数年おきに富士山での落石事故は報じられています。死者が出ないと報じられないであろうことを考えると、怪我に留まる落石事故は、もっと多いのかもしれません。
他の山でも落石事故はあります。ただ、正確な統計を取ったわけではない単なる印象に過ぎませんが、富士山が落石事故が一番多いように思います。
その原因は4つ考えられます。
ひとつは、登る人が多いからです。落石が起きても、その下に人がいなければ事故にはなりません。しかし、富士山は夏場のシーズン中は登山者が非常に多く、登山者が数珠繋ぎ状態となることは稀ではありません。そうなると、もし落石が登山道に飛んできた場合、その中の誰かに衝突する可能性が非常に高くなります。
もうひとつは、富士山は夜登って朝山頂で御来光を眺めようとする人が多いからでしょう。今回亡くなった方も前夜に登りはじめているので、同様のパターンだったようです。当然のことながら夜中に歩けば、日中よりも落石に気づくのは遅れます。事故は午前5時頃だそうです。8月26日の静岡県の夜明け時間は5時14分(独立峰である富士山頂の直下では、それより少し早かったかもしれませんが)まだ夜が明けきらない薄暗い中で、落石に気づくのが遅れた可能性は大いに考えられます。
第3の原因は、富士山が単純な形状の成層火山であることです。つまり、山頂付近から五合目付近まで標高差約1500m以上にわたって、落石を阻む樹木や登り返しがなく、ずっと単純な下り斜面なので、落石が途中で止まらないのです(唯一の障壁は山小屋ですが、そこへ石が突っ込めば、やはり人的被害が生じる可能性は高い)。前述の1980年の落石事故では、山頂直下で起こった落石が、8合目(標高3100m)で人にぶつかり、更に6合目と7合目の間(おそらく標高2600-2700m)でももう一度人にぶつかっています。
これは、冬季における富士山での滑落事故の多さとも同根です。冬の富士山は、マイナス15度以下の低温で雪が青氷状態となること、偏西風の直撃によって「体が宙に浮く」とも表現される強烈な風(八ヶ岳でも北アルプスでもおおむね同様ではありますが)による滑落が多いのですが、どこで滑っても6合目付近まではまず止まらないといわれます。
ただし、今回の事故に関しては、頂上直下だったらしいので、だとすれば、今回の事故ではこの点はあまり関係がなかったかもしれません。
そして、最後に富士山は元々(地質学的な時間のものさしでは)誕生して間もない不安定な形状と地質の山であり、元々ちょっとしたことで落石は起こりやすいと考えられる、という点です。

というわけで、富士山が日本の主要な山の中では一番落石の危険が高そうなのですが、もちろん、それ以外の山は大丈夫、ということではありません。例えば、北アルプスの白馬岳への主要な登山道である白馬大雪渓でも、わたしが山登りを初めて以降、多分3回は落石による死亡事故が報じられています(うち1回は、落石というより土砂崩れ)
ここは、前述の1番目、つまり登る人が多いために誰かにぶつかる可能性が高い、ということが当てはまります。そして雪渓つまり滑りやすい雪面上なので落石が止まりにくい、ということもあります。更に、雪の上は落石の音が比較的小さいため、音で気が付くのが遅れがちになる、ということもあります。また、雪上歩行、アイゼン歩行に慣れない登山者だと、雪渓の上で機敏に逃げられない、ということもあるでしょう。
実際のところ、白馬の大雪渓、あるいは北岳の大樺沢の大雪渓もそうですが、雪の上に点々と石が転がっているのを見かけることは稀ではありません。さすがに1メートルもあるようなものは見たことがありませんが、10cm程度の意思でも、人間が投げるより速いスピードでぶつかってくれば相当の殺傷力があります。

というわけで、対策としては、 こちらに記事による

不安定な岩が散乱する急斜面に付けられた登山道上で長い休憩をしない!上方に背中を向けて休憩をしない!(常に上方を見ておく)のが鉄則
「フォールライン(物が落下する時に通るであろう線)に入るな!」と同時に自分自身が起こす落石が下方にいる別の登山者に当たる可能性を考えて、石を蹴らないなどの丁寧な足さばき
夜間、視界が遮られる雲の中、悪天候でフードを被って視界が狭まっている時などは、視界が悪く音も聞こえにくい状況です。~落石が自然停止できないくらい傾斜が増している8合目から9合目付近を、ヘッドランプを点けて暗い中を登るのは避ける方が良い
登山中は周囲の音(落石!という人の声、ガラガラという落石の音)がしたら、自分の目で周囲を確認して、落石と落石が落ちてくるルートから決して目をそらさず、安全に確保したうえで移動する
不安定な岩石が散乱する登山ルートではヘルメットを着用する


といったものになるようです。
ヘルメットね、一昔前は、バリエーションルートの岩登りにしか使わないものでしたが、近年は北アルプスや八ヶ岳の岩場の多いコースでも推奨されるようになっています。私は、2014年に前穂高岳に登ったとき、周囲の登山者の多くがヘルメットを着用しているのに驚き、翌年西穂高岳に登る前に購入しました。最近では、ゴールデンウィークの涸沢でも、山岳警備隊に「次からはヘルメットを持ってきてくださいね」と言われるほどでした。(ヘルメットがなければ登るのはやめなさい、とまでは言われませんでしたが)
無雪期の富士山に登るのにヘルメットは考えもしませんでしたが、今後は必要になるかもしれません。
ただし、今回の事故では落石は「胸に当たった」とのこと。それはヘルメットでは防げないし、直径が50cmも1メートルもあるような石だったら、ヘルメットをしていても、「気休め」以上のものではなさそうです。それでも、着用しないよりはマシでしょうけど。

なお参考までに、引用文中に「落石!という人の声」という記述がありますが、現在の登山用語で、落石は「ラク」と言われることが多いです。もちろん、自分が叫ぶ側に回るときは、「落石」と叫んでなんら問題ありませんけど、「ラク!」という叫びを聞いたら、それは落石のことだということは覚えておくべきと思います。





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最終更新日  2019.09.07 23:13:40
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