inti-solのブログ

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2022.01.21
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テーマ: ニュース(96521)
もし生活保護を利用できていたら。大阪の放火事件についての新事実
2021年12月、大阪の雑居ビル内のクリニックで放火事件が起き、25人が死亡。あまりにも痛ましい事件に日本中が衝撃を受けた。そんな大阪の放火事件について、1月13日、重要な事実が報道された。~
昨年12月17日、大阪の雑居ビル内のクリニックで放火事件が起き、25人が死亡。あまりにも痛ましい事件に日本中が衝撃を受けた。年末には61歳の容疑者も死亡し動機の解明は困難となったが、この事件に対して「拡大自殺」と指摘する声は多い。
そんな大阪の放火事件について、1月13日、重要な事実が報道された。
それは、容疑者が昨年と数年前の2回、生活保護の申請について大阪市此花区役所に相談に行っていたものの、受給には至っていなかったということだ。
男性は土地、建物を所有していたが20年から家賃収入は途絶え、生活に困窮していたものとみられている。ちなみに生活保護は、住んでいない不動産を所有していると処分するよう言われるが、すぐに売れるわけではないので、売れる前に生活保護を利用し、売れたら保護費を返還すればいい。売れるのを待っていたら、その間に餓死してしまう可能性だってあるからだ。また、自らが住んでいる持ち家であれば、資産価値が二千数百万円ほどであれば住み続けながら生活保護を利用できる。容疑者は、このような説明を受けていたのだろうか。ただ漠然と、「不動産あると受けられないんですよねー」というような対応をされてはいなかっただろうか。(以下略)

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雨宮処凛氏には賛同できる意見も多々ありますが、この記事に関しては「そのとおりだ!」とは言いかねるのが正直なところです。
引用記事にあるとおり、この犯人は困窮しており、生活保護の相談をしていたけれど、申請はしていなかったので、事件時点では生活保護を受給していなかったようです。
では、もし受給していたらこのような事件を起こしていなかったのでしょうか?

本人も死んでしまい、「たられば」をいっても実際には分かりませんが、確かに生活保護を受けていれば事件を起こさなかった可能性は、ゼロではないでしょう。しかし総合的に考えて、その可能性が高いとも言えません。
まず、彼が前例としてもっとも参考にしたのは京都アニメーションへの放火事件でしょう。その犯は、犯行当時生活保護を受給していたことが報じられています。生活保護で最低限度の生活を保障されても、このような凶行に走った容疑者がいる以上は、今回の犯人も「生活保護を受けていれば凶行に走らなかっただろう」とは言えません。

知人の福祉事務所関係者に言わせれば、生活保護受給者が警察の厄介になる割合は、正確な統計などないからまったく感覚的なものではあるけれど、どう考えても世間一般よりは高い、とのことです。もちろん、だからと言って受給者の大多数が犯罪に手を染めているわけではありませんが。
貧困とは通常はお金のない状態を指します。でも、お金がないことは、貧困の結果であって原因ではありません。では原因は何か、というと千差万別様々ですから一概には言えません。ただ、人間関係、人柄、社会的能力など(まとめて総称すれば「社会性」)に欠陥を抱えているるために疎外されて貧困に陥る人がかなり多いのは確かです。
生活保護制度は金銭的貧困という「結果」を最低限度は解決しますが、社会性の不足という、貧困の「原因」を解決するわけではありません。
社会性に、少なくとも致命的な問題は抱えていない人であれば、お金がないという結果を解決すれば全体の問題も解決できます。しかし社会性に大きな問題を抱えている人は、お金がないという結果を解決しても、それは対症療法にしかなりません。そして中には、京アニ事件の犯人のように、生活保護によって最低限度の生活が保障されていても犯罪を犯す人も現れます。人間というのは社会的生物であり、社会の中に居場所がなければ「まとも」でいるのは難しいからです。

もちろん、生活保護受給者の中ても、そんな人は一部です(そんな人が大部分だったら、生活保護ケースワーカーなんて、やっていらんないでしょうし)。ただ、知人が経験則で語っていたことがあります。病気も障害もないのに、20代30代40代で生活保護に至る人は、人格や社会性の面で何らかの問題のある人の割合が、相当高い、と。 以前に記事を書いたことがあります が、人格や社会性の面で問題があるのは「本人が悪い」のか、というのは、これは非常に難しく奥が深い問題ですが。(実際の生活保護の受給者は高齢者が大多数なので、全体としてみればそういう「ヤバイ」人の割合はかなり少数派だといいます)

京アニの放火犯がまさしくそういう人間だったわけです。
今回の犯人がどんな人物だったかは知りませんが、犯した犯罪の中身、報じられている前科や様々な行動を総合して考えると、かなり「ヤバイ」人であることは確かです。そして、そのヤバさが原因となって社会との接点を失い、疎外、孤立状態にあったとすれば、生活保護を受けてもそれが解消されるわけではありません。従って、この犯人が生活保護を受けていたとしても、時期は違っても結局は同様の凶行に至った可能性は高い、と私は思います。もちろん、可能性が高いだけで「絶対に」と言うつもりはありません。たとえ5%凶行の発生確率が下がるだけでも有益だと言われればそうかもしれませんが、問題の本質がそこだとは私は思いません。

この犯人の生活保護の相談がどのような内容、雰囲気で行われたかは知る由もありませんが、そのような「ヤバさ」の片鱗が発露されていなら、面接相談員もそれなりにストレスを受けながら対応したのではないでしょうか。まあ、生活保護の面接相談員は、メンタル的にそんなにヤワでは務まらないでしょうが、どんなにタフな人間だろうと嫌なものは嫌だし、怖いものは怖いですからね。

引用記事に「生活保護は、住んでいない不動産を所有していると処分するよう言われるが、すぐに売れるわけではないので、売れる前に生活保護を利用し、売れたら保護費を返還すればいい。」とあります。「売れたら保護費を返還すればいい」(法63条返還)のは事実ですが、裏があります。生活保護で医療費がかかると、本人に大きな不利益になるのです。
これは以前にも説明したことがありますが、生活保護になると国民健康保険(75歳以上の場合は後期高齢医療)からは脱退となり、医療費は全額生活保護の医療扶助で支払われます。自己負担はありませんが、返還となると10割全てが生活保護費ですから、その全額が返還になります。受ける時はタダだけど、返すときは健康保険よりはるかに高くつくのです。
この犯人の場合は、精神科通院はこの対象とならない可能性が高いですが(精神科への通院は「精神自立支援医療」という生活保護とは別制度があり、保護費の返還対象とはならない)入院や精神科以外の通院もあれば、その返還金は高額になる可能性があります。
それを知らせずに保護を開始して、後で「医療費100万円返還です」などと言ったら大騒動になるでしょうから、その決まりは申請までに伝えているはずです。だから、それが嫌で保護申請をしなかった可能性は考えられます。

家屋が本人の居住用物件と認められれば、引用記事にあるように「保有容認」(つまりそのまま持ってて良い)ですが、65歳以上になると「リバースモゲージ」制度の利用が義務になります。その不動産を担保に「社会福祉協議会」から生活費を借りてください、という制度で、簡単に言えば、あなたが亡くなったらその不動産は社会福祉協議会≒役所が頂いて、支払った保護費の穴埋めに使います、ということです。この犯人は61歳だったそうですから、65歳はたった4年後です。このこともまた、本人が生活保護利用をためらった理由の一つかもしれません。

これらのことは国の生活保護制度の決まりとしてそうなっているのですから、個別の福祉事務所の対応がどう、という問題ではありません。日本のどこかに、これとは異なる対応をする福祉事務所があるわけではありません。

というわけで、生活保護制度にいろいろと問題があること(例えば上記のような医療扶助10割返還という制度など)は確かだし、一般論として福祉事務所の対応に何の問題もない、というつもりはないのですが、かといって、この犯人が生活保護が受けていればこの凶行が防げた、責任の一端は福祉事務所(または生活保護制度の欠陥)にある、という言い分にも、どうも与することができないのです。





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最終更新日  2022.02.16 22:22:22
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