inti-solのブログ

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2023.10.04
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テーマ: ニュース(100209)
カテゴリ: 外国人の権利
国籍喪失規定「合憲」確定 最高裁、欧州在住8人敗訴
外国籍を取得すると日本国籍を失うとした国籍法の規定は違憲だとして、欧州在住の男女8人が日本国籍を持つことの確認などを国に求めた訴訟で、最高裁第1小法廷は原告側の上告をいずれも退ける決定をした。9月28日付。規定を合憲とした一、二審判断が確定した。
国籍法は「自分の希望で外国籍を取得したときは日本国籍を失う」と規定し、複数国籍を認めていない。8人はスイスやフランスなどに居住。現地での仕事や生活のために外国籍を必要とする一方、日本国籍を持ち続けることも望んでいた。

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国籍喪失規定が違憲かどうか、という話になると、憲法の規定に明示的に半している、とまでは言い切れないかもしれません。が、同時にもちろん憲法が二重国籍を禁じているものでもありません。
そして、二重国籍を排除する規定はやめるべきであると私は思います。

そもそも、この規定は無意味なものです。
一審判決は、二重国籍を容認すると納税義務や外交保護権などを巡って国家間や国と個人の権利義務に矛盾や衝突を生じさせる恐れがある、としたそうです。しかし、現実には大半の国で二重国籍は容認されています。二重国籍によって「納税義務や外交保護権などを巡って国家間や国と個人の権利義務に矛盾や衝突」が発生するのはどこの国でも同じはずですが、それでも大半の国が二重国籍を容認しているのは、その矛盾や衝突はそれほど重大な問題ではない、ということです。
それに、日本においても実質的には二重国籍は容認状態です。引用記事にあるとおり、国籍法は「自分の希望で外国籍を取得したときは日本国籍を失う」と規定していますが、逆に言えば自分の希望ではなく外国籍が生じた場合は日本国籍は失わないわけです。

国籍に生地主義を採用している国々(南北アメリカ大陸の大半の国やフランスなど)では、その国で生まれれば、両親が外国人でも自動的に国籍が付与されます。日本人の両親から米国滞在中に生まれた子どもは米国籍が生じますし、もちろん日本国籍もあるので二重国籍になります。私のいとこは、メキシコ在住中に次男が生まれたので、その子(というか、もう30過ぎですが)は日墨二重国籍でした。
当然自分の意思で外国籍を撮ったわけではないので、日本国籍は失いません。その代わり、一定の年齢までに国籍の選択を行わなければならないことになっています。しかし、この国籍選択手続きには、実質的に意味はありません。

まず、この法律の改正が施行された1985年時点ですでに二重国籍であった人は、国籍選択の手続きをしなくても自動的に日本国籍を選択したものとみなされます。(昭和59年附則第3条)

そして、国籍選択の手続きを行わなくても、ペナルティはありません。「書面により、国籍の選択をすべきことを催告することができる」という規定がありますが(第15条第1項)、実際にはこの催告が行われたことはなく、もちろん日本国籍が剥奪されたこともありません。

更に、国籍選択の手続きをしたとして、それは日本の役所又は日本大使館で手続きをするだけです。日本政府は日本国籍を与えたり剥奪する権限はありますが、外国の国籍を与えたり奪ったりする権限はありません。日本国籍を選択する手続きを行っても、外国籍が消滅するわけではありません。単に、日本の役所が「日本国籍しか持っていない人とみなす」というだけのことです。国籍法は、日本国籍を選択肢したら外国籍からの離脱に努めなければならないと規定しています(16条)が、ペナルティのない努力義務であり、実際に外国籍から離脱する人は少数です。

つまり、国籍選択手続きというのは実質的には形骸化しており、わざわざ「外国籍を選択」という手続きを行わない限りは、日本国籍を失うことはないのです。
現に日本には100万人近い重国籍者がいると推計されています。
それに比べれば、自らの志望で外国籍を取得する人は圧倒的に少数であり、そこの部分だけ二重国籍排除することになんの意味があるのでしょうか。

しかも、「自らの志望で外国籍を取得」したとしても、その事実は本人がわざわざ日本の役所、大使館に届け出ない限り、日本の役所が知るすべはありません。
つまり、元々少数の「自己の志望で外国籍を取得した人」のうち、律儀に、あるいは馬鹿正直にその事実を大使館に届け出た人だけが日本国籍を失うという、およそ意味の分からない状態になっています。

と、このように書くと、国籍国粋主義者たちが「政府の怠慢」を叫ぶのです。政府が何もやらないのが悪い、国籍選択の催告をして国籍を剥奪しろ、というのですが、そんなことができるわけがないのです。そもそも重国籍者がどこに住んでいるか把握するすること自体困難の極みです。
国籍法はその場合、官報に乗せることで催告したものとみなし、さらに催告から1か月以内に日本国籍の選択を行わなければ日本国籍を失う、と規定していますが(第15条第2項、第3項)、国籍という人権の根幹部分を、この規定を盾に奪い取るような所業は、さすがの日本政府てもできるわけがありません。

しかも、そのようなことをやって、何の意味があるのでしょうか。
いま日本は人口減少状態に陥っています。それにもかかわらず、こういう化石化した規定を錦の御旗に掲げて多くの人から日本国籍を奪い、つまり言い換えればさらに日本人の数を減らすことに、いったいどんな政策的合理性があるのでしょうか。
ノーベル賞受賞者にも、米国在住日本人が少なからずいるわけですが、南部陽一郎氏など、米国籍を取ったために日本国籍を失った人が何人かいるようです。日本の頭脳ともいえる人たちの日本国籍を奪うことに、どのような政策的合理性があるのでしょうか。

二重国籍排除という法体系は見直し、二重国籍容認に転換すべき時が来ていると私は考えます。





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最終更新日  2023.10.04 22:32:14
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