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先週末、ようやく待望のまとまった雨が降りました。金曜の午前中、曇り空に雷鳴がとどろいた後に降り始めた雨は、その後ふったり止んだりを繰り返していましたが、夕方には傾きかけた日差しがしっとりと濡れた景色を明るく照らし、乾ききって枯れかけた草木からも、ほっとしたような息吹が心なしか感じられました。日曜、一時的に里帰りする彼女をフランクフルトの空港まで見送りに行った帰り、ラインガウのはずれ、ロルヒ村にあるオッテス醸造所に立ち寄りました。この村を訪れるのは、ほぼ6年ぶりくらいでしょうか。以前、今はニュージーランドで活躍されている楠田さんが研修していた、トロイチ醸造所を訪れて以来です。オッテス醸造所は駅から歩いてすぐの坂道の途中にあり、年に数ヶ月、週末だけ開店する居酒屋は、午後3時の開店早々にお客さんで賑わいつつありました。『やきとり・イン・ロルヒ』-最新のドイツのワイン雑誌ヴィヌムには、そう題した記事が載っています。この醸造所の若旦那とガイゼンハイムで知り合い、6年前に結婚した徳岡フミコさんが提案する日本料理とドイツワインのマリアージュが、最近地元マスコミで注目をあつめているようです。結婚して醸造所に嫁入りした2000年、彼女が最初に居酒屋で出したのはおこのみ焼き-大阪出身の彼女なら、もんじゃ焼きとするべきだったかもしれません-だったそうです。あつあつのお好み焼きけずり節をかけて提供したのですが、ドイツ人はみな一様に、かつお節が踊るように動く様にいたく感銘をうけていたそうです。「おぉ、これは生きているよ!」と目をまるくして見つめ、年輩のご婦人などは、かつお節が動くのをやめるまで、じっと待ってからようやく箸-いや、ナイフとフォークだったかもしれません-をつけていたそうです。ワインもいくつか試飲させていただきましたが、リースリングは葡萄畑の個性がよく出たいいワインだったと思いますし、シュペートブルグンダーのシュペートレーゼ辛口は、ブラインドで試飲したらブルゴーニュと答えそうでした。本当はもうすこしゆっくりとワインを楽しみたかったのですが、その日のうちにトリアーに帰るため、8時前には早々に失礼しました。9月中旬には、彼女の醸造所といくつかの醸造所が日本でプレゼンテーションを行うそうです。ご成功をお祈りしています。オッテス醸造所:www.weingut-ottes.deフミコさんとご主人のゲラルドさん、中央は3歳のレナちゃん。居酒屋じゅうを走り回り、元気いっぱいでした。
2006/07/31
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今日は朝から薄曇りで、きのうまでの肌をじりじりと焼くような直射日光は収まっていましたが、待望の雨はほんの1,2滴落ちてきただけで、夕刻には再び晴れ間が広がってきました。この猛暑で、アパートの窓の前の植え込みの葉もすっかりしおれ、先日まで満開を誇っていたバラも、枝に咲いたままでドライフラワーと化しつつあります。そのしおれた様子があまりに気の毒に思えたもので、夕食後、バケツに水を汲んで窓から根本にむけて水を撒いてみました。ところが、地面が乾きすぎているせいか、せっかくの水は染みこまずに、水しぶきに埃をあげたあと、地表をむなしく伝って側溝に落ちていくのです。天気予報では連日のように雷雨を警告していますが、ここ一ヶ月はすべて空振り。そろそろいい加減、雨が降って欲しいものです。さて、先日busuka-sanに写真をほめていただいたとき、うれしかったのと照れくさかったのとで、写りがいいのは天気がよかったから、と簡単に答えてしまいましたが、素人なりに経験をふまえて、もうちょっと補足したいと思います。くだんの写真は、夕方7時ころにワインスタンドで撮ったものです。ちょうど運良く、どこかの建物に反射した夕日が、ワイングラスと醸造所の人が飾っていた花にあたっていました。おや、きれいだな、と思いましたので、一応写真をとってみることにしました。露出や画角、モチーフとの距離を変えたりしながら、何枚か撮ったうちの一枚が、これです。画面が暗めでそれほど綺麗ではありませんが、なんとなく気に入った一枚です。次ぎにフォトショップでレベル補正を開き、ヒストグラムの下にある3つの矢印を動かして様子を見ながら調整してやると、こうなります。暗い部分は暗く、明るい部分はやや白とびぎみになり、画面にメリハリが出てきました。けっこう変わりますよね。最後に、余計な部分をカットして出来上がり、です。画像ソフトの効果は、なかなか絶大なものがあります。僕自身、フォトショップを使いこなしているとは到底言えないのですが、それでも一応、ご参考になれば幸いです。
2006/07/27
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今日も夕刻、例によってワインスタンドへ行って来ました。相変わらず暑い一日で、醸造所のご主人も「さっぱりだよ」とぼやいていました。あまりに暑いので、多くの人がアルコールをとることをひかえるのだそうです。たしかに、暑さで心臓に負担がかかっているところに、アルコールでさらに負荷をかけることを控えようというのは、当然かもしれません。今日来ていたのは、エンシ村Enschのヘアマン・ヨゼフ トゥール醸造所。モーゼルに無数にある家族経営の小規模醸造所のひとつです。息子さん-小学5年生くらいかな-が、お父さんを手伝ってお客さんにワインを注いだり、代金を受け取ってお釣りを渡したりしていました。ワインやゼクトの栓をぬいたりもしていたのですが、それがまた、けっこう手慣れているのです。ゼクトの栓を飛ばないように、コルクを上から押さえつけるようにして、ゆっくりとひねって抜いていた様子は、そんじょそこらのソムリエさんとも対等に張り合えそうに見えました。さて、この醸造所のワインリストを見ていて思ったのですが、価格設定がすこし安すぎるくらい、良心的なのです。昨今、ワインスタンドでアウスレーゼ一杯たのむと2~2.5ユーロが普通なのですが、ここは一杯1.50ユーロ。シュペートレーゼと同じ値段でした。醸造所のワインリストを見ても、0.5リットル入りで4.90ユーロですから、700円くらい。当然飲んでみましたが、しごくまっとうな2005年産リースリング・アウスレーゼ甘口で、クリーンで繊細な甘みに熟したベリーのエッセンスのヒントが感じられます。けっして濃厚・複雑ではないのですが、軽やかにサラリと流れる上品な甘さが、モーゼルらしく好感が持てました。みていると、やはりというか、どこからか来た観光客でしょう、そのアウスレーゼを6本まとめて買っている人たちがいました。ワインスタンドのリストには、その場で飲む場合の価格として6.50ユーロをつけているのですが、醸造所のご主人は代金を受け取ってお釣りを渡そうとしていた息子さんに、「35ユーロでいいよ。」と言っていました。息子さんは「なんで?」と聞きかえしましたが、おやじさんはだまってうなずきかえして、「そうしなさい」と答えていました。「このアウスレーゼなら、もうすこし高くしてもいいと思うのですが。」と聞いてみました。すると、「これまで買ってくれていたお客さんに悪いからね。それに、少しくらい安くても、そのぶん何本も買ってもらったほうがいいから。」ということでした。近年、好調な売れ行きを反映してか、じりじりと値上がりする傾向があるなかで、彼のポリシーがうれしく、是非これからもがんばってほしい、と思った次第です。6本売れたアウスレーゼの代金を受け取る息子さん。
2006/07/25
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相変わらずの猛暑です。週末は一雨来るという予報だったのですが、結局空振りにおわりました。いつもは緑の芝も次第に白茶色に枯れはじめ、街路樹の葉も秋でもないのに散って、カサカサと乾いた音を立てて石畳の上を舞っています。フォン・ネル醸造所のホーフフェストのワインスタンド。週末、トリアー郊外にあるゲオルグ・フリッツ・フォン・ネル醸造所のお祭りへ行って来ました。醸造所が単独で開催するお祭りをホーフフェストと言うのですが、これもそのひとつ。醸造所の中庭にワインスタンドが立ち、テーブルと椅子が並べられ、いつもはまるで田んぼのかわりに葡萄畑に囲まれてひっそりと佇む庄屋屋敷の様な醸造所が、その日ばかりは音楽と人々の談笑で大いに賑わいます。音楽と言っても、キーボードを弾きながら歌う叔父さんが一人いただけですが、その回りでは軽快なステップで踊る中年から壮年カップルが何組もいて、それは楽しそうでした。ここは、昔VDPのメンバーだったそうです。何かの理由があって脱退した-あるいは脱退を余儀なくされた-のですが、ワインの味はけっこうよいです。リースリングはややほっそりとしてクリーンで、柑橘のアロマに繊細なミネラルがアクセントを添えています。シャルドネも果実味のはっきりした辛口で、品種の個性はそれほど明確ではありませんが、快適な飲み口です。「でもやっぱり、僕はエルプリングが好きなんです。」と、その日一緒になったT氏は、飲み放題のリースリング-7ユーロ?で醸造所の一角にある蛇口をひねって好きなだけ飲める-で少しほろ酔い気味に言っていました。「この前、ワインスタンドですごく美味しいエルプリングに出会ったんですよ。うまいなぁ!と思って一本買ったら、1リットル入りで3ユーロだったんです!リースリングはお金を出せば美味しいのはいくらでもありますけれど、3ユーロでこれだけ美味しいのは、エルプリングだけですよ。」日本ではイタリアの白をよく飲んでいたという彼は、エルプリングでドイツワインに開眼したようでした。ドイツワインは甘口という先入観と、そのため他の国のワインより一段下に見られていることをひとしきり嘆いたあと、8月11日にトリアーで開催される、エルプリング祭りを楽しみにしているそうでした。オーバーモーゼルの醸造所5つ位が、広場の一角にワインスタンドを出すこじんまりとした祭りですが、確かにT氏の様なエルプリングファンには、天国にいるようなひとときとなるかもしれません。それにしても、暑いです。そろそろ、一雨ほしいものです。蒸し暑い夜に、よく冷えたリースリングがこのうえなく美味しかった。
2006/07/23
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ワールドカップが始まって以来、大会そのものはとっくに終わったが、夏空が続いている。今日も最高気温は30度を超えて、ひまわりが満開だ。夕刻葡萄畑に行って散歩して帰ってきたら、肌がすっかり火照っていた。ワインスタンドの人の話でも、今年は2003年並に暑いそうだ。最近は一週間おきに農薬散布をしているが、果房の日焼けを用心して、葉は例年よりも多めに残しているという。近年はこのたぐいの話を時々耳にする。オゾン層の破壊も関係しているようだが、葉を多めに残しすぎると、今度は葡萄が熟しすぎて-葉の葉緑素が葡萄に糖分を供給する源泉だから-辛口に仕立てるにはアルコールが高くなるので、熟すのを遅らせるために葉を少な目にするとか。かつて葡萄がなかなか完熟しなかった時代とは、隔世の感がある。また、夏が暑いと葡萄が果汁を守るために果皮を厚くするので、それも香味に影響するらしい。たぶん、ミカンの皮の様な苦みが多くなるのだろうと思う。今日ワインスタンドに来ていたのは、ルーヴァーのエアハート・シェルフ醸造所。カーゼル村のこの醸造所は、とてもクリーンでピュアな果実味が特徴で、ルーヴァー通にはここのファンが多い。とりたてて複雑でも濃厚でもないのだが、スッキリとした飲み口がとても心地よい。今日みたいに暑いと、なおのこと美味しい。そういえば、今日、学食に行ったらワインをグラス売りしていた。モーゼル上流の醸造所5つが一緒に造ったワインだそうで、その名も『サンシャイン』。"Wine is sunshine - held together by water."がキャッチコピー。思わず、最近のビールのCMを思い出した。例えば、ビットブルガーの『Sun』。マイルドな飲み口で、濃厚な麦汁とホップの味が好きな僕にはちょっと物足りないくらいヤワな味なのだが、これが若年層に受けている。さて、くだんの『サンシャイン』ワインはといえば、まぁ普通の中辛口エルプリング-もしかすると少しリースリングも入っているかもしれない-である。ごくあたりまえにワインスタンドで出ているようなワインなのだが、「ワインは太陽-水に溶けた」と言われると、なんとなく太陽の味がする。「果実味シッカリ、サッパリ、すごくオイシイ!(Fruchtintensiv, erfrischend, super lecker!)」と、学食の臨時ワインスタンドで配られていたチラシを見ながらのんでいたら、正直なところ、わりとイケルじゃん、という気分になってきた。一本5ユーロのそのワインのエチケットには葡萄の品種はおろか、ビンテージ、肩書き、醸造所名、辛口とも中辛口とも書いていない。ごくシンプルに『サンシャイン おいしい白ワイン』としか、書いていない。勿論裏ラベルにはAPナンバーやらQbAやら書いてあるが、それは付け足しである。諸々の付加情報-知っていればそれなりに役に立つのだが-を思い切って省いたところに、コンセプトの明確さがあり、却って心地よい。実際、ワインスタンドに立ち寄る学生の数も少なくなかった。学食のトレイの脇にワイングラスがちょこんと立っている様子はあまり見慣れない光景だったが、ワインを好んで飲む学生が増えているのは確かな様だ。今日のワインスタンドで。太陽が融けている?
2006/07/20
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夏のこの時期、モーゼルでは毎週どこかでお祭りがある。ワイン祭りのこともあるし、音楽祭や民族舞踊祭りのこともあるが、ともあれお祭りにはこと欠かない。もっとも、祭りと言っても夕方に村の醸造所数軒が、庭先にテーブルをならべただけの質素なものもあるけれど。先週末はトリアーから電車で10分ほどのモーゼルとザールが合流する町、コンツのワイン祭りに行って来た。市役所の前にテントが立ち、その下と周囲に移動遊園地と様々な屋台が並ぶ。ビールやワイン、ソーセージやピザに射的、あひるすくいと、カラフルで賑やか。テントの中にワインスタンドがある。屋根があるので雨でも大丈夫。ワインは一杯100ccで1.5~2ユーロ。(EOS Kiss D, Tokina ATX124)ワインスタンドで出るワインは近隣の小規模醸造所のものだ。確か一昨年まではエドムンド・レバシション醸造所もスタンドを出して、その上アイスヴァインを格安で売っていた。「地元に貢献するため」と、醸造所のご主人は言っていたのだが、それも昔の話。今年はさらに、オーバーエンメルのミヒャエル・フートマッヒャー醸造所も出展を取りやめていた。彼のヴァイスブルグンダーは毎年楽しみにしていたので、ちょっと残念。ワイン祭りに出展することは醸造所の宣伝になるのだが、それももう必要ないということか。とあるスタンドで彼のシュペートブルグンダーのブラン・ド・ノアールを出していたので注文したが、やはりなかなかよく出来ていた。8時すぎには閑散としていた会場も、夜10時をすぎると次第に賑わいを増してきた。ワインスタンドのカウンターは肩と肩がふれそうなくらいに混み合い、ひっきりなしの注文におおわらわだ。人々の談笑のざわめきが、生バンドの歌う数年前のヒット曲と混じり合ってテントの下に満ち溢れる。僕はあちらのスタンド、こちらのスタンドとハシゴしながら、次第に廻る酔いとともに、幸せな賑やかさに身を浸していた。ワインを囲んでの談笑。グループで来ている人々は、ボトルで注文することが多いようだった。(EOS KissD, EF28-135 IS USM)
2006/07/16
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ここしばらく、日中の気温が30度を超える夏日が続いている。葡萄の房も順調にふくらみ、開花3週間でこの状態。粒も詰まっている。この暑さが続くと、2003年の再来になるかも?EOS Kiss D, Sigma 17-70mm DC, F9.0, 1/160, ISO 100.EOS Kiss D, Sigma 17-70mm DC, F4.5, 1/1000, ISO 100.
2006/07/14
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ひさびさに、友人と集まってワインを飲んだ。2004 Faehrfels QbA Riesling feinherbWeingut Cluesserath-Eifel (Trittenheim/Mosel)トリッテンハイマー・アポテーケ最上の一角を、クリュセラート・アイフェル醸造所とクリュセラート・ヴァイラー醸造所がトリアーのフリードリヒ・ヴィルヘルム・ギムナジウム醸造所から数年前に購入。2004年産のそれは香りにまっすぐなシーファーのヒント、非常に明確。味わいにもシーファー、ミネラルのヒントが明確で力強く、アフタまでごっそりと残る。それに対して果実味はマイルド、完熟した収穫を彷彿とさせるが、ミネラルに対抗するだけの力強さに欠ける。濃いめでたっぷりとして、ミネラルや土壌の味わいもしっかりしていて面白いが、個人的にはミネラルと果実味のバランスがひまひとつものたりない。(85/100)2005 Maximin Gruenhaeuser Abtsberg, Riesling Spaetlese(Von Schubert/ Ruwer)ほのかな酵母の香り、ミネラルと果実味の完璧なバランス。全ての要素が一体となって出過ぎず大人しすぎず、飲んでいて非常に心地よい。ニュアンスに富んだしなやかな果実味に赤リンゴ、柑橘、蜂蜜、香草のヒント。渾然一体となった様々な要素が上品な調和を示しており、理想のリースリング・シュペートレーゼである。(90/100)2003 Monzinger Fruehlingplaetzchen, Riesling Spaetlese(Weingut Emrich-Schoenleber/ Nahe)ミネラルが弱冠ごつごつしているが、濃いめの果実味には完熟したリンゴ、蜂蜜のヒント、甘みの背景にはしっかりした酸味があり、とても楽しめる。明確な個性、明確なミネラル、明確な果実味、飲みごたえあり。(88/100)2003 Erbacher Schlossberg, Riesling Spaetlese(Schloss Reinhartshausen/ Rheingau)やや引っ込み思案だが、まとまり感のある調和のとれたシュペートレーゼ甘口。やや没個性的ではあるが、反面一定の水準を満たしているという点では無難な選択。 (85/100)以上、3人で4本を3時間で飲み干し、帰宅した。アルコール度もそれほど高くなく、丁度いい酔い心地であった。
2006/07/13
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葡萄畑の丘の手前に聳える立方体をしたそのホテル・ヴァイスの建物は、なだらかな緑の斜面が広がる長閑な田園風景の中で、少しばかり目立つ存在だ。それは近隣のフォン・シューベルト醸造所やカルトホイザーホフ醸造所が100年以上の歳月を経て、風景にとけ込むように調和している様子と対象的に見える。もとよりそれは、オーナーのヘルベルト・ヴァイスがエルベン・フォン・ボイルヴィッツ醸造所を1982年に買い取り、そのケラーの上に建てた“新築“であるから、無理からぬことであるかもしれない。今年の新酒試飲会の様子。右から二人目がオーナーのヴァイス氏。「もともと、ホテルのワインを貯蔵するケラーが欲しかったんだ。」とヴァイスは醸造所購入の動機を語った。彼は大学で経営学を修め、ホテルのマネージャーとしての教育を受けて来たので、ワイン造りとはそれまで無縁であった。「買い取りの際、樽の中にあった1982年産のワイン80000リットルも込みだった。それが、翌年の1月1日に鍵を受け取ってケラーに入って試飲したら、ことごとく水みたいなワインで飲めた代物じゃなかった。ことごとく捨てるしかなかったよ。まるで詐欺にあったような気がしたね。」かつてフォン・ボイルヴィッツ醸造所は1867年のパリ万博の際、王立中央委員会から表彰されるほどの品質を誇っていたのだが、ヴァイスが買い取った時はどん底の状態にあったのだ。「そこで自分の納得のいくワインを造ることにしたんだ。しかし、やるからには誰にも負けたくなかった。勉強でもそうだったし、ホテルとレストランの経営にしてもそうだ。そしてワインもまた、誰にも負けないワインを造りたかった。」負けず嫌いで頑固一徹。それがヴァイスの性分であり、ワインにも現れている。とりわけ、その日最初に試飲した2005年産のハウスワイン、『フォン・ボイルヴィッツ』QbA辛口は、ヴァイス氏そのものと言っていい。口に含んだとたんにガツンとくる。がっしりとしたミネラルと強烈な酸味がビシリと舌を打ち、口当たりのいい甘みで取り入ろうとする気配は微塵もない。自己主張をして譲るところを知らない、気性の強さが伝わってくる。「去年の秋は素晴らしい好天が続いて、葡萄がどこもよく熟した。しかし、ボトリティスも広がった。だが、辛口にボトリティス香は邪魔だ。そして糖度が上がりすぎると辛口に仕立てた時、アルコールが高くなりすぎてしまう。ボトリティスのない、澄んだアロマで、しかもモーゼルらしい軽やかさと、ルーヴァーらしい酸味のあるワインを造りたかった。そこで、近所の他の醸造所よりも1週間ほど早く収穫作業を始めたんだ。」出来るべきワインをこうと決めたら、近隣の様子を伺うまでもなく、収穫作業を始めるところはいかにも彼らしい。オーナー兼醸造家のヘルべルト・ヴァイス。「こいつの出来には自信がある。」と言って出してきたのが、カーゼラー・ニッシェンのシュペートレーゼ辛口『セレクション』。しっかりした辛口で、アルコールの高さからくるボディとミネラルの充実感が相まって、力強いがある意味でモーゼルらしくない印象を受けた。「どうだ?」と眉間に幾筋も皺をよせてヴァイス。アルコール度が高く、力強いが、個人的にはセレクションではないシュペートレーゼ辛口の方が好きだと答えた。鋼鉄の様な酸とミネラルと果実味の繊細な調和に、モーゼルらしさを感じたからである。「そんな筈はない。」と意外なことを聞く様な面もちをされた。「セレクションの方が、ずっと念入りに造ったんだ。発酵の進み具合も思い通りに行った。ノーマルが上に思えるとしたら、瓶詰めして少し経って、落ち着いてきたからだろう。」と、ここでも玩として譲らなかった。今でこそ畑の世話から醸造までをホテルの経営とともにこなすヴァイスだが、数年前まではケラーマイスターを雇っていた。デッツェム村で醸造所を営むシュテファン・ラウエンである。親友の様に仲が良かったラウエンから、ヴァイスは持ち前の負けず嫌いでどん欲に醸造技術を学び、最後には乗り越えてしまったようだ。ラウエンのワインはアロマティックでたっぷりした果実味が魅力的なワインだが、ヴァイスのワインはさらに力強さと上品さを備えている。辛口では目立つミネラルも、甘口では濃厚な甘みの中で自己主張を控え、ワインに立体感を与えている。また、例年アイスヴァインはルーヴァーはもとより、モーゼルでも最もインパクトの強い濃厚な仕上がりだ。ホテルのテラスに飾られたゼラニウムの鮮やかな赤が、一面の緑に染まったルーヴァーの夏景色に映えていた。普段は宴会場として使われる部屋の壁に沿ってテーブルが並び、試飲会に訪れた数人の訪問客の談笑が、閑散とした空間に静かに響いている。「オーナーの性格はともかく、ワインの出来はいいよな。」と、今回同行した友人は小声でささやいた。一昨年、彼とワイン仲間数人をここの試飲会に誘ったことがある。大抵の場合は問題なく参加出来るのだが、ここでは情け容赦なくはねつけられた。かと思うと、在庫がないからと、ハーフボトルの値段でフルボトルを売ってくれたりもする。ヴァイスは自分が醸造所の主であることを充分に自覚している。訪問者は、彼の意向に大人しく従うより他はない。時として苦い経験をさせられることもあるが、しかしそれでも、彼の野心の詰まったワインは、ルーヴァーのトップクラスの一つとして、注目に価すると思う。Weingut Erben von BeulwitzEitelsbacher Strasse 454318 Mertesdorf/ Ruwertalwww.hotel-weis.deinfo@von-beulwitz.deアクセス:トリアーから車で15分ほど。公共交通機関はバスのみ。トリアー駅前からルーヴァー方面行きの30番か87番のバスで30分ほど、Abzweig Eitelsbach Mertesdorfで下車。バス停のすぐ近くにある白いホテルが醸造所。補足情報:ワインはホテルのフロントでいつでも買えるが、試飲させてもらえるかどうかは運次第。また、10月3日から11月30日まで、宿泊客は葡萄収穫体験が出来る。要予約。一泊39,50Euroと通常料金より安いのは、手間賃といったところか。
2006/07/10
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夕刻、ワインスタンドを通りすがると、顔見知りのベッカー氏が手を振った。「買い物の後でまた来ます。」と言うと、「俺はそろそろ引き上げるから、一杯とりあえず一緒に飲もう。」という。彼は大学の近くのアパートの管理人をしていて、かれこれ10年近く、ワインスタンドに通っている。気前のいい人で、大抵一杯おごってくれるので、つい、好意に甘えてしまう。ベッカー氏は今年ここに来たのは今日が初めてだそうだ。常連は来ているか、というので、何人かの顔は見ました、と報告したついでに、ディーターのことを思い出した。僕がトリアーに来たばかりのころ、ワインスタンドに来ると必ず彼がいた。近郊のホテルでソムリエをしていると聞いたが、いつもいるので、てっきり引退したと思っていたが、当時まだ現役だったという。一体いつ仕事をしているのか、不思議に思ったものだ。ともあれ、ワインスタンドに行くといつも彼がいて、常連達とゼクト一本で長話をしていた。ふとした折りに目が合うと、「あぁ!」と笑顔を見せ、軽くグラスを持ち上げて挨拶した。「ディーターは、去年の秋に死んだよ。」ベッカー氏は告げた。「がんになっちまって。ま、なっちまったら仕方がないやね。今のうちに楽しめるだけ、楽しむだけだよ。」ディーターが前立腺のがんを患っていたことは、一昨年彼から直接聞いた。昨年時々見かけた時も、ひどく顔色が悪かった。最期の頃は立っているのがつらいので、椅子のあるマルクトハレのワインバーで飲んでいたらしい。ディーター体調を崩してワインスタンドに滅多に現れなくなってから、常連の顔ぶれが少し変わった。いつもアットホームで和気藹々としていたのが、少し酒癖の悪い人々が長居することが増えたような気がする。「おい、あんた。いい加減充分飲んだだろう。そろそろ家に帰りな。」そう言って場を仕切ってくれたのが、ディーターのいた頃の常連達だった。ディーターという核をなくしても、ワインスタンドは相変わらずトリアーの真ん中にあり、気軽に色々なワインを飲める場所に変わりはないのだが、いつも彼がいた一角を見ると、そこだけぽっかりと穴があいているような気がした。ベッカー氏が去った後、彼がいつも飲んでいたゼクトを一杯頼んだ。そして心の中でディーターに向けて軽くグラスを上げ、冥福を祈った。
2006/07/06
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ドイツが負けて、イタリアが決勝にすすんだ。今週末にお祭りのあるモーゼルの川縁にステージが組まれ、大型スクリーンが設置され、土手は試合開始の2時間前からほとんど人で埋め尽くされた。午後7時をすぎても30度を超える日中の熱気が残っており、屋台のビールが飛ぶように売れていく。4000人近い観衆が見守る中、試合は延長にもつれ込み、最後の最後でイタリアのゴールが決まった時、悲鳴と諦めのため息がもれ、あまり盛り上がることもなく終わった。これで勝っていたら、決勝の日曜日、モーゼル祭りは大にぎわいとなったことだろう。国歌斉唱のシーン。国民意識の高揚は、ワールドカップが始まって以来目を見張るものがあったのだが。帰り道、クラクションを鳴らしながらイタリア国旗をはためかせて走る車が数台あった。失望とうっぷんのたまったドイツ人ファンは殴り込みに行きそうな剣幕で罵ったが、警護の白バイ警官に遮られた。友人の乗った帰りのバスの中では、『ドイチュラント!ドイチュラント!ガイジンはすぐにバスから降りろ!』と怒鳴る若者がいたという。ドイツのワールドカップ熱と国民意識の高揚も、これで一区切りといったところか。試合開始前、黒赤金の三色クレヨンでメークしあう女の子。
2006/07/04
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ドイツ対アルゼンチンを大学の学生会館で観戦した。スクリーンを見やすくする為、黒いビニールシートで窓が塞がれた会館は、開始前から大入り満員。酸欠気味で息苦しいほどだった。しかも外は30度近い暑さの快晴で、サウナに近い状態であった。大声の応援歌が響く中、前半は0対0で終了。休憩時間はカウンターでビール類が上々の売れ行きを見せる。会館の外ではバーベキューコンロでソーセージや焼き肉が売られ、香ばしい匂いとともに風に流された煙が場内に立ちこめる。あまりの息苦しさに音をあげたのか、後半は前半よりもやや空いていた。アルゼンチンが先制点を挙げる。失望のため息と高まる緊張感。『オーレー、オーレー、スーパードイッチュラント!』『ルールールー、ルカースプドルスキ!』などなど、サッカー場さながらの熱気の籠もった声援が会場に木霊する。残り時間もあと10分足らずとなり、せっぱ詰まってきた中で、ようやく同点に追いついた時の耳をつんざくような歓声の嵐はすさまじかった。そのまま延長戦にもつれ込み、PK戦。ゴールが決まる度に期待と興奮のボルテージはどんどん上昇、勝利をつかんだ時には興奮と喜びが爆発!誰彼かまわず抱き合い、手を打ち合わせ、上へ下への大騒ぎとなった。試合が終わってもいつまでも熱に浮かされた様な余韻が続き、その夜遅くまでクラクションと応援歌が遠くから聞こえてきた。一夜明けたドイツでは火曜日の準決勝対イタリア戦にむけて、静かな興奮が続いている。おまけ。今日の葡萄畑。開花から2週間、順調に膨らみつつあるリースリング。
2006/07/01
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