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先日赤坂にあるホテル・オークラの一室で、メッセ・デュッセルドルフ日本支社が主催したプロヴァインのプロモーションイヴェントがあった。「プロヴァインProWein」のことを知っている人は、日本には少ないものと思われる。毎年3月下旬にデュッセルドルフで開催される国際ワイン見本市である。参加者を前にプレゼンテーションを行うメッセ・デュッセルドルフ営業本部長のミヒャエル・デーゲン氏。メッセ・デュッセルドルフがフランス食品振興会SOPEXA協賛でフランスワインのプロモーションイヴェント“ProVin”を開催したのが今から19年前の1994年。それがプロヴァインの原点である。現在世界約50ヵ国からおよそ4800の醸造所や団体が出展し、そのうち過半数がドイツ国外、つまりフランス、イタリア、スイス、オーストリアをはじめとしたヨーロッパ内外の生産地域の販売促進団体を中心とした出展者だ。ドイツで開催されるワインメッセではあるがドイツワイン専門のメッセではない。会場のレイアウト。ホール6がドイツ、ビオ、ヨーロッパ各国で、3がイタリア、4, 5の青がフランス。トルコ、スロヴェニア、クロアチア、グルジアなどの出展もある。プレゼンテーション資料から抜粋(©Messe Duesseldorf)。今年は3日間の会期中にのべ約45000人を数えた訪問者のうち、国外からの訪問者は43%を占めたという。つまりドイツの生産者にとっても国外に取引先を見つける重要なチャンスである。幕張メッセをいくつもつなげたような会場はホールごとに出展国が分かれているので目当ての生産国に辿りつきやすく、効率的に試飲ができるのも売りだ。会場のあちこちで開催される各種ワインセミナーや、一度に数百種類が試飲できるテイスティングゾーンなど連日イヴェントが目白押しで、大抵は事前申し込みがなくても参加出来る。一応業界関係者しか入場できないことになっていて、訪問者の約8割が購入決定権を持つバイヤーだと、今回訪日してプレゼンテーションを行ったメッセ・デュッセルドルフの営業本部長ミヒャエル・デーゲン氏は言う。それがプロヴァインを出展者にとって魅力的なイヴェントにしているそうだ。とはいえ、数年前からブロガーも参加が出来るようになったので、門戸が若干広くなった感じだ。ドイツ内外のワイン業界関係者やワインブロガーには血沸き肉躍る夢の三日間と言っても過言ではないのだが、日本ではボルドーのヴィネクスポやイタリアのヴィニタリーに比べると、知名度は正直なところイマイチだ。そこで日本の業界関係者にプロヴァインの魅力をアピールするのが、今回のプロモーションイヴェントであった。参加したのは約30人あまり。私は知人の御好意で今回初めて参加させて頂いたのだが、どうやら毎年同じ顔ぶれがそろうらしい。スライドを使ったプレゼンテーションの後、バーデンのハイトリンガー醸造所の試飲と会食に移った。今年からこの醸造所の輸入を始めたマルカイコーポレーションの藤川さんが解説しながら、9種類のワインにあわせて料理が提供された。ハイトリンガー醸造所はバーデン北部の石灰質土壌が主体のクライヒガウにある。そのワインはステンレスタンクを主体に上級キュベの赤はバリック熟成を行った現代的な造りで、エチケットも醸造所の頭文字Hをモチーフにしたモダンなもの。一方、数年前から同じオーナーになった、やはりクライヒガウのブルク・ラーヴェンスブルク醸造所は伝統的な造り。直線的で重心が高めなハイトリンガーと、しっとりとした落ち着きのあるブルク・ラーヴェンスブルクに合わせて提供されたのは、ホタテ貝の乗ったトマトリゾット(写真左上)、オマール海老のビスク(海老と野菜のスープ)(右上)、鱸のカダイフ巻き(左下)、和牛フィレのロースト(右下)、3種のチーズ盛り合わせ。印象に残ったのはまず、ブルク・ラーヴェンスブルクの2012リースリング辛口の料理とのあわせやすさ。やや大人しく品の良いリースリングで、リゾットのトマトのほのかな酸味や米の甘味、ほたての旨みに上手に寄り添っていた。オマール海老のビスクにはハイトリンガーの2011シュピーゲルベルクのピノグリ・グローセス・ゲヴェクスが良い相性。濃いめで力強い酒質でややこってりとした、オレンジのヒントのあるバリック熟成のピノグリが、海老の濃厚な味をよく受け止めていた。鱸のカダイフ巻のカダイフは、ギリシャやトルコが起源のトウモロコシの粉で出来た極細麺。これで鱸のフィレを蒔いてローストしたものに歯ごたえのある根菜の千切りが添えてある。これにはハイトリンガーの2012ピノ・ブラン「スムースリーフ」と2011シェレンブルンネン・リースリング・グローセス・ゲヴェクスが供された。どちらも縦方向への勢いがあり、ピノ・ブランはややクリーミィな柔らかい舌触り、リースリングは純粋で繊細、柑橘系のフローラルな香りが魅力的ではあったが、鱸のどちらかといえば淡泊な味から浮いていて、合わせるなら最初に出てきたラーヴェンスブルクのリースリングQbAの方が良さそうだった。和牛フィレのローストにはブルグ・ラーヴェンスブルクの2011ピノ・ノワールとハイトリンガーの2011ケーニヒスベッヒヒャー・ピノ・ノワール・グローセス・ゲヴェクスが供された。ラーベンスブルクは濃いめでベリー系の味わいがチャーミング。一方ハイトリンガーは落ち着いた深みのある繊細なピノ・ノワール。フィレ肉のローストには後者の方が自然に馴染んでいた。ともあれ、こんなちゃんとした料理とワインが出されるとは予想していなかった。聞いた話では去年まではビュッフェスタイルでワインもプロヴァインのプロモーションなのに3種類前後しかなかったというから、今年はどういう風の吹き回しだろうか。ただごちそうになっただけでは申し訳ないので、はなはだ拙いけれどこうしてご報告させて頂いた次第です。今週11月13日から15日まで上海で、食品・飲料見本市FHC Chinaと共同でプロヴァイン上海が開催され、26ヵ国から約500の出展者が参加するという。従来からプロヴァインに出展している各国の生産者に中国市場進出の足掛かりを提供するとともに、中国のバイヤーをデュッセルドルフに引きつけようという狙いがあるそうだ。彼らが中国市場を重視している様子が見て取れるが「もちろん、日本・韓国は消費者の質が高い重要な市場です」とデーゲン氏はフォローした。それにしても、より多くのインポーターなり日本のワイン生産者なりにアピールするなら常連の同窓会のようなイヴェントではなく、もう少し広い会場で試飲イヴェントを兼ねて開催することを検討してみてはどうだろうか。ごちそうになっておきながら批判するのも気が引けるが、どうも予算の使い方がもったいない気がする。同じことは大使館の主催するドイツワイン関連のイヴェントにも言えるようだ。毎年行われるVDPグローセス・ゲヴェクスのプレゼンテーションでは、これも約30人前後、大体同じ顔ぶれが毎年揃うと言う。どうやら何年も前から同じ関係者名簿をもとに招待しているらしい。ずっと以前、まだドイツワイン基金駐日代表部があった頃にドイツワインに携わっていたけれど、ここ数年はドイツワインと関係なくなったという人にも招待状がいまだに届いているという話もある。ただ、VDPの試飲会には今年何人か新しい人も加わって、結局40人近くになったらしい。だが、大使館の担当者はドイツワインを盛り上げる為の新しい取り組みを提案しても、マインツのドイツワイン基金本部(DWI)に聞いてくれと繰り返すばかりで動こうとしないようだ。それもわからないではない。本来DWIがするべき仕事をなぜ我々が手出しする必要があるのか、と守備範囲を限定するのはいかにもドイツ的だ。ドイツ商工会議所でもドイツワインのイヴェントを毎年開催しているが、ワインの選択はドイツの輸出業者に丸投げしているのでろくなワインが入ってこない上、イヴェント自体もドイツ企業関係者の懇親会的とコネづくりが第一で、ドイツワインはその手段に利用されている程度という。プロヴァインの話がなんだか脇道にそれてしまったが、日本市場におけるドイツワインを積極的になんとかしようという動きは、なかなか公の筋の方からは見えてこない。しかし先日、日本ドイツワイン協会連合会のケナー試験に食糧農林消費者保護担当のウルリヒ・ファスベンダー氏が、日曜にもかかわらずわざわざ参加者激励の挨拶に訪れたのは、すこしずつ柔軟な姿勢を見せ始めているということかもしれない。これからはドイツも大使公邸をインポーターに提供して自国のワインをプロモーションするイヴェントを開催したり、マーケティング機関に協力して業界関係者をワイン大使に選抜任命したりする、オーストリア大使館の活動を参考にしてはどうかと思う次第。いずれにしても、プロヴァインはワイン業界関係者ならだれでも行って損はしない。VDPをはじめとするドイツワインのトップ生産者の大半も出展しているので、ドイツワインをもっと知りたいと思うなら、プロヴァインに行くのが一番のおすすめである。本やネットを見ただけでは分からない、生産者とワインそのものに存分に接することが出来るだろう。
2013/11/12
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クロード・ブルギニョン氏とリディア夫人。・石灰質と太古の海の記憶クロード氏の話が終わると、再びリディアさんにバトンタッチされ、参加者には試飲ワインが配られた。シャンパーニュの生産者でLAMSがコンサルティングしたドメーヌ・ヴェット・エ・ソルベの「ブラン・ダルジル」2008年だ。もともとピノ・ノワールを栽培していた畑の土壌はジュラ紀のキンメリジャン土壌(石灰質)と粘土質でその表面積も小さかった為、シャルドネへの植え替えを勧めたという。11年前のことである。伝統的な垂直型プレスを使用し、野生酵母により228ℓ樽で発酵し、オーク樽で9~10ヵ月澱の上熟成を行う。清澄や濾過は行わない。その後18ヵ月瓶内二次発酵と熟成。亜硫酸はプレス時に少量添加するが、醸造中とビン詰め時には添加しない。軽く繊細な香りにリキュールやナッツの仄かなニュアンス。口当たりは軽いが酸味の太くしっかりした芯のある味わいで、その周りから繊細な複雑さが絶えず放射されている感じ。青リンゴ、夏みかん、ヘーゼルナッツ等のヒントが混ざり合っている。試飲ワイン。リディアさんが言う。「石灰質土壌の畑のワインはわずかな塩味を余韻に感じる。それはその畑が海だった大昔の記憶が味に反映しているのだ」と。また、このワインは骨太で余韻がとても長い。石灰質土壌によるもので、頁岩、シェール、火山性土壌のワインとは異なり冷たい感じがする。シャンパーニュには実際、貝類の化石の多い地層が時折現れる。しかしなぜ海を思わせる味が出るのかは、化学的分析をしても理由は分からないという。人間が感知可能な閾値以下のはずなのに塩気を思わせるのは、あるいはホメオパシーの理論に通じるところがあるのかもしれない。そういえば思い出すのは、ビオディナミで使う水晶の調剤だ。桶一杯の水に小さじ一杯の水晶の粉末を溶かして、天体の配置が適切な時期に畑に散布する。我々の常識ではそんな微量の粉末を撒いても効き目があるはずがないと思うのだが、ビオディナミを実践する生産者に言わせると、確かに光合成が促進されて葡萄の質が向上するのだという。この場合水晶は単に物質であるだけでなく、それが雌牛の角に詰められて夏の間土中に埋められていた期間に全宇宙のエネルギーを吸収蓄積しており、それを水に溶かして渦巻をつくりながら攪拌することで、水全体に水晶に凝縮されたエネルギーが活性化して行き渡り、葡萄樹に作用するらしい。また、土中のミネラル分がそのままワインのミネラリティとして感知される訳ではないことは周知の事実だろう。石灰石のミネラル成分である方解石や火成岩の組成であるケイ酸塩などの岩石系生物はいずれも無味無臭である。また葡萄樹はミネラル成分を吸収する際も可溶性のイオンとして吸収し、そのごく一部が果実の成分となり、マストの中で発酵中の酵母の栄養となる。最終的にワインに含まれるミネラルの割合は約0.2%であり、人間が感知することは不可能なのである(ワインのミネラリティに関してはこちらのエッセイが大変興味深い)。それにしても『太古の海の記憶』とは、いかにもビオディナミらしい考え方だと思った。また、セラーには葡萄畑で見つかるのと同じ石材で建築した方がよい。他の産地の石材を使うとワインはだめになることが多いという。分析値だけでは理論的に説明がつかないけれど、体験的には確かに思い当たる節があることが世の中にはある。・ビオディナミと亜硫酸さて、試飲ワインのヴェット・エ・ソルベは1998年からビオディナミを実践している。「葡萄畑をビオディナミで栽培している生産者は多いが、そういう彼らもセラーでは培養酵母を添加しているのは残念だ。せっかく葡萄をビオディナミで造ったのなら、最後までビオディナミを貫いてほしい。亜硫酸添加もビオディナミの考え方に反する。収穫直後に少量添加するなら、醸造過程で香味への影響は消えてなくなるが、瓶詰前に添加するのは問題だ。葡萄樹や畑を信じて、醸造は葡萄の果実に任せてほしい。人が葡萄の仕事に介入しなければグランヴァンになる」とリディアさんは言う。正直、この亜硫酸無添加主義には驚いた。市場に出回っているワインは一部のいわゆる『自然派』あるいはヴァン・ナチュールを除けば、瓶詰前に亜硫酸添加されるのが普通だ。ワインに残留した可能性のある酵母の活動と酸化を防止し、流通過程での環境の変化に耐えるようにするには、一般には亜硫酸の添加は欠かせないものとされている。ビオワインにしてもEUの定める基準値よりもずっと控えめにせよ、瓶詰前に生産者の言うところの「必要最低限の量」を添加する場合がほとんどだ。しかしリディアさんは、醸造過程はもともと還元的なものなので、酸化する余地は少ないという。「アルコール発酵に際して自然に発生する二酸化炭素が酸化からマストを守り、熟成期間中は澱がワインを酸化から守る。つまり、澱引きをしっかりやりすぎるとワインは酸化しやすくなってしまう。完全に澄んだワインを熟成するのではなく、フィルターをかけずに澱引きして、ある程度澱を残した状態で熟成した方が酸化に対する抵抗力が高まる」これはプレモックス(熟成前の不自然な酸化、Premature oxidationの略。詳しくはこちらhttp://en.wikipedia.org/wiki/Premature_oxidation)対策についても言える。「亜硫酸を加えてもプレモックスは解消しない。カリウムが多く含まれる土壌でpH値が高い土壌に発生しやすい傾向がある。肥料としてカリウムを与えすぎる、あるいは除草剤で葡萄樹の生命力を阻害していることも原因として考えられる。また、プレモックスはシャルドネで起こりやすい。ただ、25年前は無かった問題なので分からない点が多い」亜硫酸不使用に話を戻すと、「使用前に樽を燻蒸し、心配なら窒素が満たされた環境で瓶詰すれば良い。また、現代の亜硫酸は工業的に生産された水溶性の粉末か液体である点も問題で、昔は火山で採取した硫黄を燃やして煙をたてて、その中に葡萄を入れて酸化を防いだ。つまり自然な硫黄を利用していた」ちなみにドイツの場合、ほぼ100%の生産者は瓶詰前に亜硫酸を添加しており、例外は私の知る限りでは五本の指にも満たない。それに対してリディアさんは、ドイツの生産者はマストやワインの清澄をしすぎる点に問題があるのではないか、という。活性炭を使ったり、フィルターを使って澱引きすることもある。もう少し澱を増やして、心配なら窒素のもとで瓶詰すれば亜硫酸を添加しなくても問題はないはずだ、という。****************************今回の講演でブルギニョン夫妻から聞いた話は、大体こんなところだろうか。「泥の医者」を自称する彼らに調査を依頼すると、一か所の土壌サンプル分析で大体1050ユーロ(約13.6万円)、畑の状態によって数か所からサンプルを採取する必要がある。土壌調査は表土だけでなく地下深くまで掘り起し、表土、中間層、深層の土壌タイプと粒子の大きさ、生物相の調査と根の張り具合など多岐にわたる。また、葡萄樹の病気や植え替えなど長期的に対応する必要がある場合は、契約を結ぶことになる。ビオディナミを推奨しているが、その分析と対策は超自然的でも神秘主義的でもなく、科学者らしく論理的で明快だ。1990年に夫妻が独立した当時、ブルゴーニュには約3軒しかビオの生産者はいなかったが、現在では約12%が有機栽培に取り組んでいるという。日本のワイン生産者も、試しに一度依頼してみる価値はあるかもしれない。以上、ご参考になれば幸いです。
2013/11/05
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・土壌に適した品種の選択「テロワールは言ってみれば楽譜であり、葡萄樹は楽器に例えることが出来る。そして生産者は演奏家だ。テロワールを自分なりに解釈してワインに表現するのが仕事となる。その為土壌をどのように管理するかが大切だが、同時に自然の豊かさを壊さないように作業する必要がある。とりわけ大切なのは、葡萄樹の根を可能な限り深くまで張らせること。その為には土壌の構成を深くまで知る必要がある。畑の土壌は何から構成されているのか。大きく分けて粒子の荒い砂と、細かい粘土と、その中間の大きさの粒子があり、粒子の大きさで土壌の性質を判断することが出来る。粘土の粒をさらに調べるとその構造は層になっており、一枚一枚の層をはがしてならべると、1gの粘土で30平米から800平米の表面積にもなる。その薄い層と層の間にカルシウム、リン、カリウムなどの微量元素が含まれていて、それらと根を通したイオン交換で植物は成長する。そして粘土粒子の内部の表面積の大きい方が、赤ワイン用品種に向いている。逆に表面積が小さいと黒ブドウは色がつかず力強さに欠けたものになってしまう。例えばモンラッシェもクロ・ド・ヴージョも粘土の含有量に大差はないのだが、粘土の表面積に倍近い差がある。こうした観点から土壌構成とその性質にあわせた品種を選択することが重要だ」・雨水の処理が問題な日本の葡萄畑ちなみに、今回の訪日で見た北海道の葡萄畑では、必ずしも土壌に適した品種が選択されていなかったという。また降水量が多いので排水管理が非常に大切となる。「ボルドーでも水捌けの管理に苦労している醸造所が多く、降雨量は年間1000mmを越え、ブルゴーニュに比べても湿度が高い。水捌けが悪いと酸素が不足し、生物相がうまく循環しなくなる。そのボルドーの畑でオーガニックに取り組んでいるのは良いのだが、植樹前に堆肥を入れていた畑があった。そこでは微生物が消化しきれず毒素を出して葡萄樹の成長を阻害していた。こういう畑は土の匂いでわかる。また、微生物の活動には熱も必要だが、湿気が多い畑が熱を持つには乾燥した畑の7倍のエネルギーが必要となる。施肥はなるべく土の上に自然に落ちた物質が、自然に酸化し発酵するのがよい。日本の場合は火山性土壌の下に粘土層がある。火山性土壌を浸透した水分は粘土層の上で停滞すると土中の湿度が高くなり根腐れを起こす。逆に表土の下に粘土層が十分ないと、肥料は雨水でそのまま地下水に流されてしまう。湿気の問題がある場合、既に葡萄が栽培されている畑では土壌を掘り起こして素焼きの土管を埋めるわけにもいかないから、畝と畝の間を低くして排水路を設けることで、ある程度の改善が見込まれるのではないか」クロード・ブルギニョン氏・土壌を活性化する微生物テーマが土壌からそこに生息する微生物にかわり、講演者はリディアさんからクロード氏にバトンタッチ。「土壌は表土、中間層、深層に分かれ、その下には岩盤と地下水がある。それぞれの層に多様な微生物が住んでおり、例えばダニ類やトビムシ類は地中の通気性を改善し、ゲジゲジなど多足類は植物の茎など固い部分を食べ、もっぱら死んだ根を食べる小動物や根の形に合わせて移動する線虫など実に様々生物が、それぞれの生息圏で生きていて、しかも地方によって種類が違う。顕微鏡でなければ見えないものも多く、一生を地中で過ごす生物の中には目が退化しているものもいる。こうした土中の微生物はまだ全体の5%前後しか見つかっていない。それら数多くの微生物の生命活動で排せつ物が出されるが、それは地中の母岩に付着し蓄えられた養分となり、土壌多孔質化し、水と空気の循環を助ける。ミミズは表土と深層を垂直方向に行き来して土壌をかきまぜる働きをする。1m近い巨大なミミズをジュランソンで見たことがある表土には落葉がたまって土壌の豊かな資源となるので、ここを上手に育ててやることが大事だ。根は水平方向と垂直方向に伸びるが、水平方向に張った根は切ってもかまわない。大切にしなければならないのは垂直方向に地下に向けて伸びる根で、最大で70mに達する。しかし同じ土壌の同じ品種の同じ樹齢の樹でも、機械で耕した土壌かビオで育てた土壌かで根の張り方はまったく異なる。機械で耕した畑は深さ10cmしか根が張っていなかったのに対して、ビオの畑は80cmまで伸びていた。また除草剤も葡萄樹には苦痛となる」そう言ってクロード氏は一枚の葡萄樹の写真を見せた。その樹の根は幹から下に行かず上に伸びて、除草剤がかかっている所をまたぐようにして、その外側で再び地面に潜り込んでいた」左は機械で耕作した土壌、右はビオ。・土壌の中の微生物の役割「根は自ら栄養を取ることが出来ず、元素は一度水に溶かされてはじめて吸収される。そしてビオディナミで世話をした土壌は1時間あたり80~100mmの水の透過があるが、慣行農法では1mmにしかならない。植物が利用する元素の酸化も微生物の役割であり、酸化されることで元素は植物にとって利用可能となる。従って土壌中で多くの生物が活動して酸素が空気の循環がうまく行われていることが、葡萄樹の成長を左右する。葡萄畑の土壌1gの中には約100万匹の生き物がいる。ここに銅や硫黄を蒔きすぎると生物相が破壊されてしまう。そうなっては葡萄樹はうまく成長出来ない。おいしいワインをつくるには土壌は大した問題ではない、という生産者もいる。例えばオーストラリアのスマート氏のように、キャノピーマネジメントで光合成を促進し、糖度を上げることを重視する栽培家もいる。しかし糖度の上昇で得られるのはアルコールであり、高アルコールであることはワインの品質とは関係がない。また光合成は炭素、酸素、水の三つの元素が作用して行われる。しかし植物が土壌から吸収し利用する元素は24種類に及ぶ。そして酸素が24元素にどのように作用するかはテロワールによって異なり、それがワインのアロマに影響するのだ。それにもかかわらず化学肥料を使うと、テロワール固有の元素がワインに反映されなくなってしまう。そして葡萄品種と醸造家の味だけが見えてくる。葡萄畑ではなく、ミシェル・ロランの顔が見えるといった具合に(笑)。しかし良い生産者は自分の味ではなく土壌の味を引き出すものだ」(つづく)
2013/11/05
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3. セミナーメモさて、そんなブルギニョン夫妻が今回初来日して、福岡と札幌に続いて東京でセミナーを行った。福岡と東京では大学農学部で有機農法全般に関するセミナーを行い、東京ではテーマをワインに絞って現代におけるワイン造りのありかたを夫婦で交代しながら90分講義し、その後休憩をはさんで約50分間の質疑応答の機会が設けられた。質疑応答には岩手や長野、山梨から出席した生産者から葡萄畑の状況について真剣な質問が出て、参加出来なかった醸造所からも事前にファックスなどで質問があったというから、日本の生産者達の関心の高さが伺えた。セミナー風景・テロワールとは「テロワールとは、翻訳出来ない独特なニュアンスを持つ言葉です」と、最初にマイクに向かったリディアさんは言った。醸造家が来日すると奥さんを同伴されることもあるが、大抵は影のように寄り添っている。彼女の堂々とした講義ぶりに私は最初意表を突かれた。「昔は美味しいワインは4, 5年に一度くらいしか出来なかったし、翌年にはすえてお酢になったものだ。ところが場所によっては、毎年上等なワインが出来た。それは降雨量、位置、傾斜など優れた葡萄を栽培する条件に恵まれた場所だった。それがテロワールなのだ。良い葡萄が出来る畑は貴族が買った。彼らは時間も資金もあったから、高品質なワインのために改良と投資を重ねていった。それには市場へ通じる道路の整備であったり、マーケティング活動も含まれていた」リディア・ブルギニョンさん・バッカスは丘を愛する「美味しいワインは傾斜地に育つ葡萄から収穫されることが多い。ローマ人が『バッカスは丘を愛するBacchus amat colles』と言っていた通りだ。というのも、傾斜があれば雨が降っても土壌の湿気が低く抑えられる。葡萄が熟すには熱が必要なのだが、湿気があると土が暖かくなるのに乾いた土の約7倍のエネルギーが必要となる。そして傾斜地は太陽の光を集めやすいのもメリットとなる。だが時代が下るにつれて収穫量を増やすための栽培技術が発達して、土壌の重要性は忘れられるようになってしまった。我々は技術を利用して生産されたワインを『ガレージワイン』と呼んでいる。ガレージの中で車を修理するようにして造ったものだからだ。そうしたワインにはテロワールがない。テロワールとは何か。まず気候である。それは温暖化で変化してきているし、地域によってうまく育たない品種もあるから、次に大切なのは適切な品種を選ぶことだ。そして土壌。土壌が生きている時はしっかりと根を張ることが出来る。たとえばこれは100年に一度の猛暑だった2003年の葡萄の様子の写真だが、右は葡萄の根が深くまで伸びているので葉は生き生きとしているが、左は化学肥料を使っているから根が伸びておらず、水不足で葉が黄色くなっている」・ヴィニフェラ系葡萄樹は石灰質を好む「火山国の日本には火山性土壌が多いが、ヨーロッパには石灰質土壌が多い。地球全体でみると土壌の9割が花崗岩などの火成岩や頁岩など堆積岩あるいは変成岩で、石灰質土壌はその内約7%にすぎない。しかしヨーロッパの約55%が石灰質土壌であり、太古から葡萄栽培が行われてきた地中海沿岸やフランスにはとりわけ石灰質が多い。ヴィニフェラ系の葡萄樹はもともと石灰質を好む植物なのだが、石灰質でなければ育たない訳ではない。例えば変成岩では岩盤のひび割れを伝って葡萄は深くまで根を張ることが出来る」青い染みが石灰質土壌のある場所。・テロワールを生かすのは人の仕事「テロワールは地質、気候、地形、土壌に分けることができるが、それを生かすも殺すも人次第だ。まず土地に合った品種を選ぶのは人の役目だ。次に土壌に適した植樹密度で植えなければならない。土地が肥えていたら密度を高め、痩せていたら減らして、なるべく根が深くまで張るようにする必要がある。例えば19世紀にはDRCは24000本/ha、シャンパーニュは50000本/ha、ソーテルヌは10000本/haだったが、現在はDRCとシャンパーニュは10000本/ha、ルーションでは4000本/haと減らしている。次に剪定もまた土壌にあわせて人間が変える必要がある。つまり土が痩せていたらギュイヨ、肥えていたらコルドン・ロワイヤというふうに。剪定や仕立て方は国によっても異なり、その土地の気候条件にあった仕立て方が工夫されてきた。例えばギリシャでは雨が少ないし海風から葡萄樹を守る必要があった。だから地面に這うようにして渦巻状のゴブレ型(アンブリア)に仕立てられている。また、葡萄樹はフィロキセラ耐性を持たせるために接ぎ木をする必要があるが、台木によって根の張り方が違う。ここでも土壌に適した台木を選ばなければならない」・石灰質の少ない日本の葡萄畑にはリパリア・グロリアか161-49がおすすめ「今回訪問した北海道の醸造所では101-14、 SO4、5BBといった台木が目についたが、SO4や5BBは質より量を求める台木品種で、ブルゴーニュでも1950~70年代にSO4が流行っていた。しかし日本は湿度が高く、また石灰質も少ないことを考慮しなければならない。だから石灰質をあまり好まない台木品種リパリア・グロリアか、収量が少なく高品質な収穫となるリパリア系の161-49を勧めたい」(セミナー後に聞いた話)・自根は素晴らしいワインをつくる「またフランスの葡萄畑には大抵フィロキセラがいる。だから基本的には耐性のあるアメリカ系台木に植え替える必要があるのだが、フィロキセラは砂地を嫌う。そして砂地のあるフィトーには根を深くまで伸ばしたフラン・ピエ(自根)の葡萄樹が栽培されている畑があり、収量を低く抑えたワインは素晴らしいものだ。サンセールのダグノーは『アステロイド』というフラン・ピエからのワインを造っている。これも素晴らしい。ブルゴーニュのとある醸造所でも試験的にフラン・ピエを栽培・醸造して良い結果を出している。近い将来リリースされるかもしれない」とリディアさん。ドイツでは自根の苗木を新たに植樹することは法律で禁止されていますが、と聞くと、フランスではそんなことはない。あえてそうしても枯れてしまうのは新たに植えたフラン・ピエだけで、他の葡萄樹には影響しないから、という。(これもセミナー後に聞いた話。このセミナーメモは会場で聞いた話と、その後に聞いた話もまとめてあるので念のため。)(つづく)
2013/11/05
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日本にいると、ある意味視野が広がる気がする。ある意味というのは、もしもトリーアに住んでいたら恐らく十中八、九は出会わなかったワインを飲んだり、人の話を聞けたりする機会がいくらか増えた、という意味だ。ドイツに住んでいた頃は、地の利を生かしてドイツワインに集中して、それを拙いながらもブログなどで伝えることにしていた。それに他国のワインに手を回すほどのお金も時間もなかった。しかし2年前に帰国してからは、自然にというか必然的にドイツワイン以外のワインに接する機会が増えた。日本市場に出回っているワインを見渡せばドイツワインは圧倒的な少数派だ。逆に10年以上ご無沙汰していたフランス、イタリア、スペインなどのワインに接する機会が増えた。そして日本を留守にしていたこの十数年で、生産地域や生産者に関する日本語の情報量は格段に増え、ビオワインや無数の若手生産者が頭角を現している。ほとんど浦島太郎状態であり、新たな発見をする機会を喜びつつも、自らの無知に改めて気づき、反省することも多い。さて、前書きが長くなったが、先日東京で開催されたクロード・ブルギニョン夫妻のセミナーに参加して来た。主催はインポーターのラシーヌ(株)。ビオディナミの生産者を調べていると名前を目にすることが多い著名な土壌コンサルタントである。土壌微生物学の専門家で、奥さんのリディアさんと一緒にブルゴーニュで土壌内微生物分析ラボ(Laboratoire Analyse Microbiologique Sols, 略称LAMS。サイトはこちら)を運営している。そう、ブルゴーニュである。私にとっては、ほぼ未知の世界だが、この産地ほど日本でよく知られ、研究された産地もおそらくないだろう。以下にブルギニョン夫妻について少しばかり聞いたことを紹介するが、当然地元の話が出てくる。聞き間違いや思い違いがあるかもしれない。また、講義の内容も同様である。私は本質的に一介のワイン好き、アマチュアにすぎない。が、それでも、私の理解した範囲で出来る限りお伝えしたいと思う。それだけの価値がありそうに思われた講演だった。1. ブルギニョン夫妻のことさて、まずブルギニョン夫妻のことを、少し紹介してみる。おしどり夫婦とは、こういう夫婦のことを言うのだろうか。普段はどちらかと言えば寡黙そうだが、講義になると剛速球のような力強い早口で語るクロード・ブルギニョン氏と、天真爛漫で芯の強そうな、肝っ玉母さんタイプのリディア・ガブッチ・ブルギニヨンさんは、既に37年間連れ添っている。クロード氏は1951年生まれ。もともと国立農業研究所(INRA)の研究員であったが、研究テーマは「土壌に生息する微生物数の計測」であった。簡単に言えば、土の中にどんな微生物が何匹いて、どんな役割を担っているかが彼の関心事だった。1gの生きた土の中には100万匹もの微生物がいるのだという。その微生物の活動が土中に空隙をつくり空気の含有量を増やし、水捌けを良くして、しかも排泄物が土壌を肥やす。すると葡萄樹などの植物は根を地中深くまで伸ばすことが出来る。地中深くまで根を伸ばさせることが、質の高い葡萄を作る基本なのだという。土中微生物の活動なくして健全な農業はありえない。それがクロードの研究成果の要諦である。だがしかし、皮肉なことに89年まで彼が勤務していた国立農業研究所は、農薬や化学肥料を利用を通じて農業の効率化と生産性の向上を推進する立場にあった。除草剤を散布すれば雑草は生えなくなるが、土壌中の微生物も同時に死に絶える。フランスの農業は70年代から80年代にかけて農薬漬けになっていた。「ブルゴーニュの葡萄畑に生息する微生物の数は、サハラ砂漠よりも少ない」とは、クロード氏の有名な言葉である。彼はヨーロッパで行った調査で、土壌内の微生物の活動がその9割を破壊されていることに気づいていた。そんな状況を変えなければならないと思ったものの、農薬業界の影響の強いINRAではビオロジックなど誰も聞く耳を持たなかった。まして、ルドルフ・シュタイナーが1924年に提唱したビオディナミ農法など、おおっぴらに話題にすることすら出来なかった。そこで1982年にローヌのマレヴァル村にビオディナミ農法を教える学校を、同僚と妻のリディアさんの3人で開設した(College Agro-Biodynamique de Malleval)。INRAには内緒で週末やヴァカンスに開講していたが、おそらく評判が広がったのだろう、やがて職場に知られることになり、講座をやめるようにと通告される。「彼らには黒魔術も同然だったのよね。雌牛の角に牛の糞や水晶を詰めて埋めたり、天体の運行を基準にして農作業をしたりするから」とリディアさん。だが、INRAの通告に従うことは、フランスの農地、ひいては自然環境の破壊に手をこまねいて傍観することになる。折しも1980年代後半は有機農法を取り入れる農家が、わずかだが次第に増えつつあったころだ。ドイツでもビオワインの生産者団体Ecovinが1985年に結成されている。やがて1989年にブルギニョン夫妻は研究休暇をとって1年間北米に滞在。翌1990年に自分達の研究所『土壌内微生物分析ラボ(LAMS)』を立ち上げた。ちなみに、ブルギニョン夫妻はINRAのカンティーネ(社員食堂)で知り合ったそうだ(どうでもいいことかもしれないが)。理学修士だったリディアさんは食品に含まれる油を分析する部署で、土壌微生物を調査する部署にいたクロード氏とは仕事の上では関係なかったが、偶然カンティーネで同席して意気投合したのが、二人のなれそめだった。リディアさんは醸造技師の資格を取り、仕事の上でもクロード氏の良きパートナーとなった。恐らく彼女がいなければLAMSが設立されることもなく、クロード氏の活動も今とは違った形になっていたかもしれない。酒類情報サイト“The drink Business“でも2012年12月に、彼女を「ワイン業界で最もパワフルな女性トップ50」の24位にランクインさせている。クロード・ブルギニョン夫妻2. 研究所の成功さて、INRAを辞めて独立し、晴れて思い通りのことが出来るようになったとはいうものの、たった二人ではじめた小さなラボが、どうやって現在のような世界的にその名が知られる存在になりえたのだろうか。きっかけは1993年、ドメーヌ・ド・ラ・ロマネコンティ(DRC)が複数の栽培コンサルタント会社に講演を依頼した時のことだったという。1993年はDRCにとっても難しい年だった。すでに5年間ビオディナミに取り組んでいたが、その年蔓延したベトかび病の対策に銅を使った調剤を散布する際、粘土を含む水道水を利用して被害を拡大してしまった。粘土表面には負の電荷があり、銅には正の電荷がある。銅は粘土と結合し効力を失い、黴のはびこる畑にさらに湿気を補うこととなってしまったのだ。おそらくこれを反省した同社は、初心に帰ってビオディナミ農法に改めて取り組もうとしたのだろう。クロード・ブルギニョンがDRCで行った講演で、彼は葡萄栽培にとって土壌がいかに大切かを熱烈に語った。それは大成功だった。聴衆のなかにはドメーヌ・ルフレーヴのオーナー、アンヌ=クロード・ルフレーヴがいた。1990年に醸造所を継いでからやはりビオディナミに取り組んでいた彼女は、クロード氏の話に大いに感銘を受けて、ビオディナミに興味を示していた友人達に「LAMSに相談してみたら」と勧めてまわったという。こうしてDRCから葡萄畑のコンサルティングを依頼されるとともに口コミで評判が広がり、夫妻のラボは次第に有名になっていった。ルフレーヴはもちろんピエール・モレ、ラファルジュ、シュルマン、デュジャック、ラフォン、トラペ、シャトー・ド・ポマールといったブルゴーニュの生産者から、ボルドーのトロロン・モンド、カノン・ラ・ガフリエール、ル・ピュイ、ヴィルモーリーヌ、シャンパーニュのセロス、ベデル、フルーリー、ヴェット・エ・ソルベ、シャルトーニュ・タイエ、ロワールのユエ、ダグノー、シデーヌ、メロ、その他フランス各地、イタリア、スペイン、ドイツではDr. ヘーガーとケラー、オーストリア、アメリカ、ニュージーランドなど、顧客は現在では世界各地に広がっている。ちなみに、DRCから依頼されたロマネコンティの畑の改植は、リディアさんによれば7年毎に7列づつ25年かけて進める予定だったという。1.8haの畑には約14000本のピノ・ノワールと0.5~1%のピノ・グリが栽培されている。大半の葡萄樹は1947年に植樹されたもので植え替えの時期にさしかかっていた上、一部はウィルス性の病気にかかっていた。ところが改植は1994年ともう一回行っただけで、とん挫してしまったという(ワイナート49号のDRC特集43頁では1948, 94, 97, 05, 08年に改植となっている)。「30人以上いる株主の中から植え替えに反対意見が出たの。でも葡萄樹は今はもう70歳、20年後には90歳よ。植え替えると7, 8年は収穫出来ないから、どうするのかしらね」と言う。ともあれ、DRCをはじめとする依頼を受けた畑でのコンサルティングは着実に成果を表し、土壌は健康を取戻し病気が減った。その実績こそが、LAMSを名高い土壌コンサルティング会社にした第一の理由だ。設立して23年目を迎えるが、今も夫妻と息子のエマニュエル、技術者一人、それに秘書の5人というこぢんまりとした所帯で運営している。顧客の大半は醸造所だが、小麦やゴルフ場などのスポーツ施設の土壌分析も手掛け、葡萄畑だけでなく各地の土壌環境を少しずつ蘇らせている。(つづく)
2013/11/05
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