日々草

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2007.01.22
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テーマ: 今が旬の話(413)

秋のサンティアゴ巡礼街道(番外編)

大学センター入試問題(世界史B)に出題された
サンティアゴ巡礼街道

1/20~21日の2日間にわたり行われた大学入試センター試験の世界史Bに、
このブログで連載中のサンティアゴ巡礼街道に関する問題が
次のように出題されていた。

世界史B 第1問の問題(原文のまま転載)

第1問

 A  イベリア半島北西部のガリシア地方に位置するサンティアゴ=デ=コンポステラは、 (1) キリスト教 の重要なな巡礼地の一つである。9世紀に、イエスの使徒の一人ヤコブの墓とされるものが発見され、キリスト教の聖地となり、ヨーロッパ各地から巡礼者が多く訪れるようになった。「サンティアゴの道」と呼ばれる巡礼路が形成され、ヤコブは、 (2) 巡礼者や旅人 の守護聖人として崇拝を集めることになる。その一方で、イベリア半島のおける (3 レコンキスタ(国土回復運動) が盛んになると、異教徒に対して戦うキリスト教徒の守護 聖人として位置づけられるようにもなった。

サンティアゴコンポステラ聖堂にあるヤコブ像異教徒と戦うヤコブ像
 (写真はDanjoseが撮影したもの。これらと同じような写真が問題文にも掲載されていた)

サンティアゴ・デ・コンポステラの聖堂にあるヤコブ像
             (左が巡礼者としてのヤコブ、右が異教徒と戦うヤコブ)

問1 下線部(1)について述べた文として正しいものを、次の(1)~(4)のうちから一つ選べ。

    (1) イスラーム教を批判したイエスの教えをもとに、成立した。
(2) 『新約聖書』を経典とする。
(3) ディオクレティアヌス帝によって国教とされた。
(4) クレルモン教会会議(公会議)において、ウィクリフが異端とされた。

問2 下線部(2)に関連して、旅行や航海について述べた文として正しいものを、次の(1)~(4)から選らべ。

    (1)コロンブスは、スペインのイサベル女王の後援を受け、カリカットに到達した。
    (2)クックは、ポルトガルのジョアン2世の後援を受け、太平洋の島々を探検した。
    (3)カブラルがブラジルに漂着し、そこをポルトガル領にした。
    (4)リヴィングストンは、アフリカ内陸部を探検し、アクスム王国を訪れた。

問3 下線部(3)が行われた時期のイベリア半島について述べた文として正しいものを、次の(1)~(4)のうちから一つ選べ。

    (1)アッバース朝から独立した西ゴート王国の王が、カリフを称した。
    (2)イベリア半島西部にアラゴン王国が建国された。
    (3)イベリア半島に進出したムワッヒド朝は、ムラービト朝に滅ぼされた。
    (4)ナスル朝が、グラナダにアルハンブラ宮殿を建てた。

以上が世界史Bのセンター試験第一問目の一部で、さらにアンコールワットへの参詣、イスラーム教の巡礼の問題へと計9問設問されている。

これらの問題に解答できましたか?

私は、サンティアゴ巡礼街道の記事をこのブログに書くために、それなりに中世ヨーロッパについて勉強した。その私は、3問中1問しか正解出来ていない。
それ以上に、これらの問題のねらいは何か、受験者のどんな力を試そうとしているのかよく分からない。

世界史Bは、必修科目の履修漏れが発覚して、世間が大騒ぎした教科である。

なぜ、高校は嘘までついて、履修したことにしたか。

「世界史履修漏れ」事件騒動の時に、管理者(校長)のモラルを世間はバッシングすることに急であったが、高校の歴史授業がどう行われているかについては、ほとんど誰も問いかけていなかったといってよい。

日本史Bもそうであるが、高校の歴史の授業が、非常に瑣末な膨大な知識、語句の暗記教科になっており、子供たちに歴史ぎらい、歴史への無関心を大量に作り出している。

ある一定量の知識の暗記、そのための反復の勉強を私は否定するものではないが、意味もなくただ膨大な量を暗記して、エネルギーを無為にすることは、かえって害ではないか。
『サンティアゴ巡礼街道』とこれらの設問にどんな有機的な意味があるのか。
ヤコブ像の写真は、問題文や設問にどんな関連づけがあるのか。(ただ、気休めに、安直にその場を飾るために挿入しただけではないか)

『サンテイアゴの道』を暗記することが、その子どもの歴史観に何をもたらすと云うのか。
問題の出題者にその出題の意図を問いたい。

現代社会は、過去のどの時代よりも、世界がボーダレスの状態で日々進行している。
子供達が世界史を学ぶ意義は、かってなく重要であるといっていい。

過去の人類がどう生き、どんな社会を築いてきたのか。
その歴史的認識の学習なしには、現代社会を深くとらえ、人間としてどのような技能や知識を学び身につけていくことが、未来を生きる力になるのかという、広い意味での教養、知性を身につける事は、ほとんど不可能といってよい。

瑣末な膨大な知識は、過去の本のなかにあり、膨大な記録された過去の資料のなかにある。
その過去の膨大な遺産の中から、何をどう学ばせるのが現代の子供たちには必要か、何を身につけさせることが歴史を学ぶことか、検討し精選しなければいけないのではないか。
とりわけ青年期の子供達が、世界を見る目を大きく変えたり、世界を深く考えたりする基盤を作るような基礎学習をするには、どう歴史の教科を編成し、授業を展開していくかが厳しく問われている。
このことを欠いたまま、ただ単位の履修もれを「補習」で補っても、根本的な解決にならない。現場は益々混乱するばかりだ。
逆にいえば、履修しなくても、将来の勉強には余り関係ない内容だということを暴露しているだけである。

特に世界史Bを学ぶレベルの高校は、将来日本の中核を形成するであろう青年達が多く学んでいる。とりわけ理科系に進む生徒に未履修が多い。このコースの国立大学を志望している生徒は、気の毒なくらい多量な科目をこなさなければならない。
その量を高い質に転化できないような学習内容にとどまっている限り、未来を担う有能な人材を育てる教育など絵空ごとである。
理科系の青年にこそ、将来社会人として起つときの価値基準を形成していく土壌のひとつとして、世界史の教養的意義は重要だ。






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最終更新日  2007.01.23 07:34:41
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