★スーパーマン★好きだ★ 0
プロット「イケメン」 0
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400字詰で80枚ほどの短篇だったのに、妙に数を消化。長い? 編集プロダクションの人にはかないませんが、味のあるキャラクターの 妙なお話をお楽しみいただけましたか?【笑】 関西人の関西人による小説なので、東京とかスタイリッシュなお話を 愛する方にはつまらないかも【笑】誤字脱字、たくさんあり。 数年前に、投稿済みのため、 似たようなのが出ていても、その辺の人は関知いたしません【笑】 あっちは有料。こっちはタダ。それだけね(笑) ビンボー人でも読めるビンボー人による小説。ネット環境は必要ですが。 「過剰」10 ラストきた~! 貼り付けるのも大変。これで猛烈に閲覧者が増える? 楽天の回し者じゃないし~。楽天さんって、アレ買えコレ買えってうるさい (笑)長編は書いても、自費出版する費用が工面できないので書いてもね。 すぐに似たようなのが出るし。アホがみるブタのケツ、ですか。 そうして熊川は思い付きの作戦を毎日決行した。これで容疑者が炙り出せるかどうか確信がなかったが、やらないよりはましだ。早くオンナのボディガードを終わらせるためにも、これが一番効果があるように思えた。 三日たって彼の思惑どおり、ウワサがたち始めた。 あの現場には幽霊が出る。毎夜毎夜殺された社長の幽霊が徘徊しているというものだ。 と言ってもも熊川が毎日現場に通って、懐中電灯で照らし、巡回していただけなのだが。それを一週間続けた。 すると、最後の夜に現われたのだ。「来たか」「そのようだ」 保安部長と鈴木主任と熊川は毎日巡回のあと、トイレに潜んでいた。 廊下を歩いてくる人影を、毎日息を潜めて待っていたのだ。 夜のオフィスのトイレは恐ろしく怪しげで、さすがの屈強な男たちもキモが潰れそうになる。「トイレの花子さん」というホラーを思い出して、ドキリとした。もちろん、警備の時は平然として振る舞っているのだが。 しかし今夜で、キモ試しのような任務も終わるだろう。待っていた人物がやってきたのだから。「ほら、しっかりと照らせ。アニキの幽霊が出てくるぞ」「幽霊なんていないわよ。あの人は成仏したわ。だって葬儀に五百万円もかけてやったんだから。坊さんもかなりの高僧なのよ。戒名にだってかなりお金を出したんだから。まったく生きていたときは五十円の値打ちもないようなオンナたらしの男だったけど。死んで保険金を残してくれたから、いい葬式出してあげたわよ。これで子供たちと幸せに生きていけるわ」「ねぇさんも悪人だな。オレを骨抜きにして、アニキを殺させるなんてさ」「そんなこと言ってないで、何も落とさなかったか調べてよ。あんたが証拠になるような物を落としたりしていたら、あたしにだって疑いがかかるんだから」「アニキは恨まれてたから、容疑者はこの世に一杯だ。うちの輸入食品のお得意さんたちはすべて容疑者だ。誰が犯人でもおかしくはないさ。もちろんオレも容疑者リストには載っているだろうが、そんなことは平気さ。うまく殺したんだから」「誰もいないわね。誰かが何か探してるんじゃないかって思ったんだけど」 熊川たちがそっとつけていくと、二つの懐中電灯の描くライトが何度も交差し離れ、動いている。オフィス中をくまなく探っているようだ。「やっぱりないぞ。幽霊もいないし、誰もいない。探っているやつなんていないぜ」「そこまでだ」 熊川と保安部長と鈴木主任が一斉にライトを向け、容疑者たちがそこで照らしだされていた。「だ、誰だ、お前たちは?」「大帝国警備会社の者です。あなたたちはここの社長を殺し、それを目撃した美咲陽子さんを何度か殺そうとしましたね」「美咲陽子? やっぱりあのオンナ見ていやがったのか?」「いいえ。何も。彼女は病気でね、仕事中に居眠りをするクセがあるんです。ナルコレプシーという病気ですよ」「ゴミ箱にテンプラ屋で拾ってきた揚げだまを大量に入れておいたのに、火事にもならなかった。クソ」「駅のプラットホームから突き落とそうともしましたね?」「いいや。そんなことはしてない。たしかにそっちの方がうまく殺せたかもな。もっと早く気がついてりゃよかった」 目撃者の彼女は、残業をしながら意識を失うように眠っていたことに、彼らは気づかなかったのだ。二人で交互に命を狙っていたらしいが、実はゴミの中に揚げだまを大量に入れただけだった。ニュースなどで知っていたので、入れたらしい。転落事故は違うという。二人とも意外に意気地がなかったらしい。「あなたたちを逮捕します。もちろん我々は告発するだけですが」 こうして美咲陽子のボディガードサービスは終了した。あまり金にはならなかったので、保安部長のしかめっ面は治らなかったが、警察のような逮捕劇ができたのでそれなりに満足していたようだ。 それから三日後、むしゃくしゃしていたといった理由で、女を突き飛ばしていた男が捕まった。 美咲陽子はそのうちの一回、被害者になっていただけらしい。後の一度は、ナルコレプシーの発作で意識が飛んだだけだった。 熊川はやっとオンナのお守りから解放されてほっとしていた。今度は、法人や大物vipのボディガードをさせて下さいと保安部長を拝んでみようと思った。それが男の仕事というものだ。 過剰。陽子はカードの分割払いをしてでもボディガードを必要としていた。必要以上に恐がっていただけだ。そしてあの二人も、犯人独特の怯えのせいで、陽子が犯行を見ていたと思い込んでいた。 しょせん、人とは弱いものだ。小さなことに怯え続けることになる。
2013.01.14
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「過剰9 ほんの数時間で、情報がやって来た。どういうルートを使ったのか、零細警備会社の割りにこういうことは妙に早い。保安部長はまるで捜査本部をしきる捜査一課長のように胸を張り、説明を始めた。 部長は刑事にはなったが、警視庁の警察官憧れの捜査一課には一度も正式に所属できなかった。所轄署の刑事として捜査に加わっただけだ。つまりアシスト止まりだったらしい。いまでもそのことにこだわっていて、こうしていつも捜査一課のデカチョウになりきっている。まるでバーチャルリアリティのゲームに参加しているようで、哀れでもあった。「事件は六月二日午前五時半に、東信ビル八階の健康食品会社「ジャパンイヤー」の高村俊彦がメッタ刺しにされていたのが、朝見回りをしていた管理人が発見したことから発覚した。死亡推定時刻はおよそ六月一日の午後九時半頃だと思われる。高村氏の会社は中国から輸入した漢方系の食品を通販で売っていたが、副作用が確認されて怒鳴り込まれたことがある。裏でヤクザが絡んでいるというウワサもあった。不良会社である。他にも闇で金貸しをしていて、取り立ても厳しかった。という諸事情から怨恨の線が強いが、あまりにも容疑者が多く、その中から金を借りていた男を一人参考人として事情聴取した。取り調べでも、殺しに行ったなどそれらしいことをほのめかしている」「八階か。美咲陽子のオフィスと同じくらいの高さだな」「会社に行くんですか? これから?」「ええ、何かつかめそうです。延長料金は取りませんから付き合ってください」 きょとんとしている陽子を車に乗せて、また彼女のオフィスに戻ってきた。警備にわけを言って入れてもらう。朝、制服を借りるときに丁重に礼をしていたので、上手く行った。やはり袖のしたは使うものだ。 二つもあるオフィスのカギを開けて、ずんずんと中へ入って行った。すでの十一時を過ぎていて、残業も終わっていた。まるで墓場のように静かだ。夜はオフィスも怪しげな場所にすぎなくなる。「六月一日の夜ことを覚えていますか?」「そうですね。あの日はたしかに夏号の編集のために残業していました。でも、ひと区切りついたので午後九時にはほとんどの者が帰ってしまいました。九時半頃に残っていたのは、あたしと課長と主任、そして新人の竜田君だけでした」「四人ですか」「えぇ、それは確かです」「それでは、その四人がどの辺りにいたか覚えていますか?」「そうねぇ。課長はそっちの課長の席にいて、資料を見ていたの。主任はそちらの奥で商品の確認。竜田君は片付けよ。私はそこのコンピュータの場所にいたの。エクセルに入力していました」「そうですか言いながら、ゆっくりと歩いてその四人がいたという場所を、一つづつ確認するように座っていった。 最後に陽子が座っていたという席に座ると、頬杖をついてじっと考えていた。「見えますね」「は?」「隣のビルの八階のある部屋が」「殺人事件のあった場所ですか?」「そうです。丸見えです。もし明かりがついていたとしたら、犯人と被害者が争っていた様子も見えていたかもしれない。警察が聞き込みに来ませんでしたか」「いいえ。あたしには誰も訪ねて来ませんでしたが、誰かは受けたかも」「こんなに丸見えだ。来なかったのが不思議だな。被害者の倒れていた場所は見えないから、気づかなかったのか。被害者が刺されてから移動していれば、血痕のあとでわかる。あなたは何か見ましたか?」「いいえ。早く帰りたくて一生懸命に仕事をしてましたから」「アレのせいかもな」「アレ?」「つまりあなたは見ていたのに、見えていなかったんです」「は?」 熊川はエレベーターですぐに一階へと下りた。すぐに走っていって、隣の東信ビルへと入っていった。警備員のいる管理室を避け、顔を見せることなくエレベーターに乗ることができた。偶然一人だけいた男と重なって、隠れてしまった。といっても長身の熊川は頭一つ出ているのだが。 事件現場の八階へと上っていった。殺人現場はもちろん封鎖されている。まだイエローラインが侵入者を阻んでいた。 熊川は警備員が追ってこないことを確認して、ゆっくりとイエローラインを越えた。オフィスのドアは施錠されている。しかし熊川には、まるで子供のオモチャのようだ。七つ道具を取り出すと、すぐに開錠することができた。 現場はきちんと保存されていて、まだ血痕や遺体の位置がくっきりと残されている。 生々しい殺人現場で、誰もが顔をそむけるだろうが、彼は元警察官だけあって現場は見慣れていた。それだけではない。暴走族同士の抗争やヤクザのケンカなど、修羅場をいくつも見てきた。そして恋人だった、いや好きだった女の死の現場も見てきた。 普通なら照れて言えないような言葉も、彼女になら言えた。 そうだ。愛していた。 今ここに彼女がいれば、死ぬまで永久に囁いただろう。 愛してる、愛してる。 我に返って、熊川は現場を探索し始めた。鑑識の眼になって見てゆく。 南の窓に立つと、オフィスビル群の谷間から遥か向こうのきらびやかな尖塔がいくつも見えた。もちろん再開発された高層ビルたちだ。 そして西側の窓辺に立つと、隣の陽子のオフィスが見えた。夜だとさらに見晴らしがいい。明かりがテレビのブラウン管のようにして、オフィスを浮き上がらせていた。そのくっきりとした美しさは、映画館のスクリーンのようでもあった。 視線を遠くに移すと陽子が手を振っていた。当日と同じ席に座っていてくれるように頼んでおいたので、明瞭に見えることが確認できた。 その夜から熊川があることを始めた。毎夜、毎夜ここにやって来た。 すると一週間後には、彼が期待していた事態が起こり始めた。「熊川さん。いいんですか?」 美咲陽子はボディガードそっちのけで、そちらに夢中になっている熊川をにらんだ。 もちろん、彼女には上司二人が交替で警護についていたから、心配はない。「そろそろ今日あたりには結果が出るでしょう。そう期待してますよ」「あそこへ行くんですか?」「もちろんです」 机の配置を見てみると、そこで判った。向こうのビルからは彼女しか見えないのだ。闇色の景色の中では、使われているオフィスがくっきりと見える。そして仕事に励む労働者たちも。 そう、彼女を目撃者だと思った者が命を狙っているのだ。しかし彼女は覚えていなかった。普通の視力であれば、殺人現場がくっきりと見えるのにだ。 熊川には判っていた。灰色の脳内では、すでに答えが出ている。 そこで、彼女の警備を終わらせるために、犯人を捜すことにしたのだ。 熊川は警視庁からの資料で容疑者リストを見ていたが、運の悪いことに容疑者はかなりいた。売っていた漢方薬が中国からの輸入食品で怪しげだった。副作用があるのではないかと、怒鳴り込んで来た者が大勢いたのだ。「てっとり早く容疑者を特定しましょう」「どうやって?」「警察の捜査を待っていると、あなたの警備費用がかかります。こちらとしてはありがたいのですが、そう言ってもいられない」
2013.01.14
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天から降ってこないと、公演なんて行かないのが、下層。 それで、ママは家を建てました。教育よりも家、なのが下層。 「過剰」8 朝になって、熊川は交替するために依頼人の家に向かった。夜の担当者と交替をした。すると昨日の(毒入り)ポットはカラになっていた。「あのポットはどうしたんですか?」「それが、捨ててしまいました」「?」「だって、警察ざたになりたくないから、ボディガードサービスに高額の保証金を支払ったのに」「確かに。しかし」 もし毒が入っていたとしたら、彼女が命を狙われていたという明らかな証拠になった。民事不介入などというたわごとは言わないだろう。だが、そうなるとこちらの仕事もそこで終わりだ。保証金は預かっているが、精算すれば返金が発生する。そうなると、悪徳高利貸しのようになっていた保安部長の苦労が水の泡だ。「では、今日のご予定は?」 熊川がシビアなビジネスマンの顔になった時、弟が帰って来た。「ただいま」「お帰りなさい。また朝帰りね」「うっせぇ」 熊川はそのまま弟の後を追って行った。「君、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」「何も知らねぇよ。ネェちゃんの話なら、あれは勘違いさ」「いやその件じゃないんだ。おねぇさんは、ケムリが見えていないってことないよね」「は?」「つまり、鈍感ってことさ。いや、ちょっと違うかな」「あ、アレのことかな。ねぇちゃんって、あれなんだ」「アレ?」 「一種の病気なんだ」「だったら、就職できないよね」「ねぇちゃんの会社って、もともとジイちゃんの会社だったんだ。息子のうちの父親は継ぐ気がなくって、結局部下の一人に譲ったんだよ。だから、ネェちゃんの病気を承知で雇ってくれたんだよ」 今日は月曜日なので、彼女の出勤についてゆく。会社までずっと付きっきりだ。ひどい通勤ラッシュに巻き込まれたが、熊川は必死について行った。こういう時は、潜望鏡のような長身が役立った。ただ目立ちすぎるのが欠点だったが、もしものときは上司もいる。二人共が見失うことは多分ないだろう。 古くなったコレクターアイテムのスウォッチが、隣の女の袖のボタンに引っ掛かり睨み付けられた。「チカンさん?」「違います!」 すぐに誤解はとけて、事は大きくならなかった。ここでホームに引き出され、駅員でも呼ばれれば警護どころではなくなる。被害者に突き出された時点で告訴が完了している。最悪の事態だ。 難は逃れたので、そのまま陽子についてゆく。駅を出て会社へと地下道を通って向かって行った。楽勝だ。同じようなサラリーマンやOLたちが、闊歩している。こんな人込みの中で、陽子を殺そうとする者はいないだろう。 およそ十分ほどで会社のオフィスビルに着いた。最近開発された地域で二番目に高い高層ビルだ。最近はマンションまで高層だ。その高額な高層階から売れるらしい。世の中はよく判らないと熊川は思った。 俺は高層建築には住みたくないなと思う。風はきついし、エレベーターは込みあう。地震では上層階の方が揺れるし、綺麗な夜景が楽しめるだけだ。しかしオフィスなら経費を払うのは会社だし、摩天楼で仕事をするのは気分がいいだろう。いつかそういう立派な会社に、うちの会社にもなってほしいものだと思う。だが孫請け弱小警備会社はそうなる前に、潰れる可能性の方が高い。「うちの会社は、アパレルの通販会社なんです。そういう業種なので女性が多いんです。あたしも通販雑誌の編集をしています。靴から下着まで衣料関係はなんでも売っています。最近は業者からの売込で、インテリアなども売るようになりました」「そうですか。男は、いえ私はそういうことには疎いもので」「そうよね。男の人はよく判らないわよね。そういう事は、きっと恋人が教えるのよ」 そこでぎくりとした。熊川に今、恋人がいないことがバレている。女が喜ぶような気のきいた事が言えないのが原因だ。それとも、恋人を亡くした心的傷害なのだろうか。「会社には着きましたが、どうされますか? ここには警備員の方もおられますし、私は終業時間に来ましょうか? もちろん経費は正確に計算いたします」「いえ、それは困ります。いくら警備員がいても、あたしだけを守ってくれるわけじゃないわ。何度も突き落とすような犯人だもの。変装して入ってくるかも。もしかしたら、アポまでとって入ってくるかもしれない」「は、はぁ」 考えすぎだよと思わずつっこみそうになったが、そこはビジネスだ。「わかりました。ずっとオフィスの前で見張っていましょう。しかし私の身分保証を警備の方に、申請していただけますか?」「わかりました」 こうして熊川は一緒にオフィスまで行くことになった。私服のままだと怪しいので、ここの警備員の制服を借りることにする。 その制服に着替えて、陽子のオフィスについて行った。仕事とはいえ気が重い。女性ばかりの職場だった。思い切ってジロジロと見られればいいのだが、職務上妙な誤解は困る。正式な警視庁の警察官であればいいのだが、現実は警察手帳も銃も持てないしがない警備員だ。 女たちはかなりのミニで歩いているし、大声で笑っていた。まるで女子校のような乗りがある。共学には恥じらいがあるが、女子校には恥じらいがない。ここはそんな場所らしい。 そんな所にいることのできる男は、まるでハーレム状態だ。しかし喜ぶどころか、どことなくこちらの方が動物園のサルのような気分になっている。そういう小心者には、どこか男としての威厳とかプライドが欠けているのかもしれないと、熊川は思った。それが女にうけない理由か。「あたしは下着部門担当なんです」「おわっ」 陽子がドアを開けると、一気に見えた。何かというと、大量の下着だ。ブラジャーにパンティが机の上に置いてある。透けて見えるようなものや、Tバックのように細いものもある。恋人を誘惑したい女が買うのだろうか。それとも、すっかり夫婦の営みの少なくなった主婦が試してみるのだろうか。贅肉がはみ出した下着姿を見せられる男たちの哀れな顔を想像して気の毒になった。「すごいですね。私は外で待っています」「じゃ、お願いします。移動する時にはついて来て下さい」 熊川はほっと胸をなで下ろして、廊下で立っていた。通り過ぎてゆく女たちがクスクスと笑っている。妙な警備員が突っ立ってるわとでも言っているのだろうか。街角で制服を着ていなければ、恋人に待たされる男ということになるのか。 それから三時間待って、陽子が出てきた。もちろんランチタイムだ。 いつもいく最上階のレストランで、ランチバイキングを楽しむのだという。また着替えて、ただのにいちゃんになった。バイキングに一人で行ってウロウロしているのはどうも居心地が悪い。皿だけを持って、陽子の周辺を警戒していた。陽子と言えば、反応の鈍かったた昨日とは違って、今日は同僚たちと楽しそうに談笑している。 大人しい女ではないようだ。今時の普通のOLだった。成田杏子とは違っていて、少し安心した。 熊川はロールパンをかじっただけで、ランチを済ませた。そのまま食事を終えた陽子の後を、ボディガードの顔で尾行しオフィスへと戻った。まるで陽子のストーカーだ。レストランの支配人に怪しいヤツだと、睨まれていた。元警察官としては、かなり辛い。 そのままずっと陽子が仕事を終えるまで、廊下で張っていた。のどかな午後だった。人畜無害の時間が過ぎてゆく。何度も心地よい睡魔に襲われ、頭ががっくりとなる度に、自分の顔を叩いた。こうしてヒマでいることの方が、拷問のようだ。スリルとサスペンスに満ちていた警察官の時代が懐かしい。 やっと午後六時を過ぎて、陽子が勤務を終えた。 一応、確認のためにカフェで上司の撮ったビデオを見てみた。「ストーカーだと思う男がいたら、教えてください」「はい」 だが、陽子は首を振った。思い当る男はいなかったらしい。「しかし、こんなに執拗に狙われるのだから、きっと理由がありますよ。あなたを殺したいほどの理由が。なにか思い出しませんか?」「さぁ。あたしは殺されるほどの悪いことをした覚えがありません。もしも相手が恨んでいて、あたしがまったく忘れていたりすれば別ですが」「でも、理由のないストーカーはいません。前に付き合っていた恋人とかと、喧嘩別れ方をしたとかありませんか?」「いえ、お互いにきちんと理解して別れたはずです。会社のの同僚ですが」「なるほど。あなたを疎ましく思っているということは?」「判りません。あたしがそう思い込んでいるだけなのかも。そうだ。気づいた事と言えば、隣のビルで殺人事件があったそうなんです」「殺人事件?」「警察からの取り調べはあったんですか?」「いえ、何も。新聞で見ただけです」「じゃ、その事件について詳細な情報を仕入れましょう。警視庁に元上司がいるんですよ」 電話してから、一時間後に陽子の家の前の車で監視をしていた熊川の所に同僚の鈴木が資料を持ってきてくれた。警視庁からの資料がファックスされてきたのだ。もちろんこんなことができるのは、警視庁にあらゆるコネや人脈があるからだ。社長も保安部長も元警察官だし、部長の子供たちは三人とも警視庁に勤めている。
2013.01.14
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3話目も書かないとね。短篇ならなんとかなるかしらん。主人公の名前はバレエダンサーの熊川さんから拝借しました。新聞の広告に国際会館での公演が掲載されていたので。別にファンというわけでは。低年収なので、バレエ公演なんて行けません【笑】「過剰」7 四十分が経過した。 陽子はキッチンへ行ったのか、換気扇の音がしている。湯でも湧かしているのだろうか。熊川は緊張で一瞬だけ、意識を失って窓で頭を打った。プロとして失格だなと苦笑した。 陽子がいるらしい部屋を見ていた。打ち合せの時に書いてもらった家の見取り図を参考にすると、そこは和室。つまりお茶の間だ。その隣にはもう一つ部屋がある。そこにも窓があった。「何も、起こらないな」「当たり前ですよ。彼女の思い込みです」 そう断言したが、本当は今日線路に転落したことは、ただの事故ではなかったような気がしていた。それでも認めたくはない。偶然だ。そうだ。何度も言聞かせた。「!」 熊川は体を起こした。「煙、出てませんか?」「うん?」「出てるぞ!」 二人は車を飛び出して、美咲家に走った。ホーンを押して、陽子を呼び出した。「どうなさったんですか?」「火事ですよ!」「え?」 まったく頓着しない陽子を玄関に置いたまま、熊川と田村は奥へと入っていった。簡易の見取り図を見ながら、煙が漏れていたキッチンに飛び込んだ。「火だ!」 ごみ箱が倒れて火が出ていた。運よくそばに消火器があった。そのままひっつかんで、安全ピンを引き抜いた。プシューと、一気に化学物質が吹き出した。視界が漂白されたようになっていった。 オレンジ色の火が見えなくなったので、消火器の操作を止めた。「何が燃えたんだ?」「ゴミ箱みたいだな」 手を伸ばして触ってみると、真っ黒になったゴミがあるだけだ。まだ灰色の煙が出ている。「火事だったんですか?」「そうです」 他人事のように見ている陽子を、困ったといった顔で熊川は見ていた。「どうして気づかなかったんですか? ケムリがあんなに出ていたのに」「あたし鼻が悪くて」「見えなかったんですか? もしかして寝ていたとか?」「いいえ、あたしは起きていました。コーヒーを飲みながら、ニュースを見ていたの」「煙が見えなかったなんて」「熊川、大事な依頼人サマだ。丁重に扱え。依頼人サマが見えなかったと言ってるんだから見えなかったんだ。判ったな」「ハイ」 ゴミを触って、検分をしてみるとそれは揚げだまだったことが判った。「揚げだまが火元?」「今日、天ぷらを揚げましたか?」「はい。今日ボディガードサービスの依頼に行くと決めていましたが、いつ帰ってくるか見当がつかなかったので、朝に揚げておきました」「揚げだまは、火元になることがあるんですよ。消防庁の報告書で読みました。量が多いと、時間が経ってから自然発火するんです」「そうなんですか? もしかして、この火事もあたしの命を狙って」 また、この女はそんなことをと思ったが、依頼人サマにそんなことは言えない。そこはプロとして、ビジネスのために堪えた。仕事を逃してはうちの会社が危なくなる。高額の保証金は貴重だ。「だから、こういう火事は大量の揚げだまが原因ですから」「でも、あたしそんなに大量に捨てていません。家庭の天ぷらですよ。今は弟と二人分しか作らないし、そんなに作りませんでした。だから揚げだまもそんなに出ませんでした」「でも、まさかあなたの命を狙っている犯人が、揚げだまの量を増やして火事を起こしたなんてことは考えられない。よっぽどのバカか天才かどちらかだ」 結局は、消防署へは連絡を入れたが、すでに消火されていたということで、二人だけがやって来て、検分だけして帰っていった。「じゃ、私たちもまた車に戻ります。しかし、私たちが直接戸締まりを確認しておきましょう」 ゆっくりと二人は窓を確認して回った。一応、プロの仕事らしく、冷蔵庫なども細工をされていないかどうかを見ていった。 ポットを開けた。「どうして、ポットを開けたんですか?」「ま、毒でも入れられていたらと思いまして」 湯気をクンクンと嗅いだ。もちろんただの湯だ。「!」しかし嫌の匂いがした。一瞬だが、ただの湯とは匂いが違っていた。「これはなんですか?」「もちろんお湯です。当たり前でしょ」「いや、湯じゃない。嫌な匂いだ」 陽子が飛んできて、ポットの湯を匂った。「ホントだわ」「よくわからないけど、飲まない方がいい」「警察を呼ぶ?」「明日届けよう」 それからはもう一人と見張りを替わり、熊川は帰る事になった。また明日の六時に交替することになっていた。 あのポットの湯はただの変質か、それとも毒を入れられたのか?
2013.01.14
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編集プロダクション経験者の作家の子供とかも続々デビューする世界だから、その辺の人は、頑張らない方がいいよ。趣味の世界にしといたほうがいいかもね。一章づつでも入らない【笑】「過剰」6 依頼者の美咲陽子が大丈夫だというので、病院へは行かなかった。しっかりと歩いているので確かに大丈夫らしい。一番ほっとしたのは熊川の方だった。自分の警護ミスがあったことは明らかだった。病院や警察で恥をかくことになるのは辛い。 二十分ほど歩いて、美咲陽子の実家に着いた。家はごく普通の一戸建だった。最近の流行りモノらしく、どこか洋風だ。明るいクリーム色の色に、石目調のタイルで装飾している。「マンションではなかったんですか? 屋上に閉じこめられたと、おっしゃっていましたよね」「あれは、親戚の家なんです。ベビシッターに母と行っていた時に、夜景が見たくて屋上へ出ていた時なんです」「そうですか」 二人を迎えたのは弟だった。「ねぇちゃん。俺、出かけるから」 姉の顔を見るといきなり弟は言った。ジャケットを着て準備をしている。「その後にいるにいちゃん誰?」「ほら話したでしょう。あたしが最近突き落とされたり危険な目にあっているって。心配だから警備会社のボディガードサービスに依頼したの。もちろんお父さんたちが旅行に行ってる間だけよ」「ふーん。ただの勘違いなのに。大げさだな。バカみてぇ。でもボディガードにゃ見えないな。なんだか、服売場の店員みたいだ」 睨むようにして陽子の弟は、熊川を見た。妙に高そうなサービスだなとでも言いたげだ。「タカシ、最近どこに行ってるの。悪い友達の所?」「どこでもいいじゃん。だってあんたに関係ないだろ?」「だって、心配なのよ。お父さんたちがいない間、タカシのことはあたしの責任だから」「うっさいな!」 陽子のすがるような腕を振り払って、弟は出かけて行った。 それを熊川はそばで見ていた。ごく普通の兄弟ゲンカだ。ボディガードの出る幕はない。「あのこ、最近悪い仲間と一緒にいるようなんです。心配だわ。まだ高校生なの。あたしとは七才も離れているんです。まるでお互いが一人っ子のような兄弟なんですよ。おしめを替えたりして、まるでママごとの延長のようにあのこの世話をしました」「ま、夜遊びとか、あの年頃にはめずらしくはないですよ。大人しくて、無口で社会への不満を溜め込んでいるヤツの方が、突然暴発するんですよ。」「でも、抜けられなくて、悪いことをムリにやらされたりしたら? そのことで警察に補導されたりしたら、あのこの将来はどうなるのかしら。補導ならいいけど、人を殺してしまったりしたらどうしましょう」「確かに。見か目よりも意志は弱そうだ。引きずられることも考えられますね」「はぁ。いざとなったら、またあなたにストーカー退治ではなくて、悪友撃退でもしてもらおうかしら」「ハハハ。それはいい。何でもしますよ。もちろん保証金は戴きますがね。では、最初にお部屋の方の安全を確認させて頂きます」「弟がずっといましたから大丈夫です」 陽子はどうも嫌がっているようだった。もちろん、ボディガードがそこまでするとは思っていなかったのだろう。命の危険を感じ、切羽詰って依頼はしたものの、あまりプリバシーに踏み込まれるのは嫌なのだろう。それなら仕方がないと思った。「じゃ、私は外で見張っていましょう。弟さんが戻って来たら、次に仲間と交替します」「判りました」「それでも家では一人ですから、まず戸締まりをしっかりして下さい。風呂やトイレの窓も二階の窓も完全に施錠して下さい」「判りました。ではよろしくお願いいたします」 美咲陽子はぺこりと頭を下げた。熊川はそのまま門を出た。すると交替要員の運転する車がやって来たので乗り込んだ。家が見渡せる場所に、車をバックでつけて位置に着いた。バックシートを見ると上司がいた。目配せをすると、頷いた。すでに作戦は始まっている。 陽子は門を締め、家の中へと入っていった。施錠したのか、カギの音がしている。熊川は時計を見た。午後五時半。あと二時間で交替だ。
2013.01.14
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「過剰」5 最寄りの駅へと向かって歩いて行った。普通は依頼人の半歩先を歩いて、潜望鏡のように上から見張りをするのが警護のやり方だ。もちろん法人からの依頼なら、数人いるから背後を固めればいい。しかし今回は犯人を探すことが目的だ。いや、そのように振舞っている。今回は当然。依頼人の勘違いだからだ。 成田杏子の時は、一人の警護が初めてだったのでひどく振り回されたが、今度は二度と同じ目には合わない。適度にこちらが暗示のような指示を与えて、いいように誘導していこうと思っていた。(そうだ、俺は元警官だ。命令するのは得意だ) そうして熊川は、依頼人の真後を歩いている。長身の体を利用して、潜望鏡のように見回している。依頼人はかなり緊張しているようだ。ただの思い込みなのに、まったく臆病な依頼人だと熊川は思っていた。 順調に駅に着いて、ホームへと上がった。ホームは遠足帰りなのか幼稚園児のような子供で溢れていた。 突き落とされたというので、一応熊川も気をつけていた。もちろん気をつけているフリだ。もう少しで口笛を吹きそうになって、慌てて堪えた。 美咲陽子は電車を待つ間、ベンチに座っていた。チビッコたちが気になるようだった。確かに又の下に纏わりつくような大勢の幼稚園児たちは、警護の邪魔になった。 熊川も通りすがりのにいちゃんの振りをして、すぐ横に座った。並んで座っても、座高の高い熊川は、陽子の頭の上から監視することができた。今のところ怪しいヤツはいない。外回りで移動するサラリーマン。銀座へとランチを食べにいくらしい主婦たちの群れ。誰もが善良が庶民たちだ。少なくとも熊川にはそう思えた。 肩に何かが触れた。見ると依頼人が熊川の肩に倒れ掛かっている。なんだよっと思って見ると、どうも視線が定まらずぼうっとしていた。 おいおいと思ったら、すぐにはっとして頭を上げた。こちらもほっとする。(もうすぐ電車がまいりますので白線の内側にお並び下さい) 待ちに待ったアナウンスが聞こえた。立ち上がった依頼人に続いて、熊川も立ち上がった。幼稚園児たちも電車に乗る為にスタンバイを始めた。甲高い嬌声が大人の男には耳障りだ。 美咲陽子がフラフラと電車の方にゆく。あっと思ったが、彼女は意識が明瞭のようだった。 電車のドアが開いて、足に纏わりつくような幼稚園児に押され、膝から下が自由にならないので、熊川は苦戦していた。楽勝だ。もちろん当たり前なのだが。 真横に張りついていたが、洋子は反対側を向いていた。頭一つ高い位置から、不審者を割り出していた。上司の田村も乗り込んでいて、カバンに隠し持ったデジタルビデオを回している。 電車をもう一つ乗り継いで、美咲陽子の実家の最寄り駅に着いた。だが何も起こらなかった。今回の件は殺意を感じるという陽子の勘違いだと熊川は推理していたので、無事故は当たり前だ。 しかしそうではなかった。陽子が下り続いて熊川が下りたが、遠足帰りの小学生の群れがプラットホームへ上がって来た。幼稚園児よりはましだが、さらに巨大な塊になっていた。その勢いに押されて熊川の方が転びそうになった。陽子も押されて転がっていた。しまったと思って、慌てて陽子を抱き起こそうとしていた。「大丈夫ですか」「は、はい」「よかった」 しかし二人は小学生の勢いに押されて、反対側のホームの端まで来ていた。(もうすぐ電車がまりますので白線の内側にお入り下さい) 通過列車だ。 BUUUUUUUUUUUUUUNN! 目の前の陽子の体がふわりと浮いていた。いや、浮いているように見えているのかもしれない。 熊川の視界の中で、女の姿が消えた。神隠しにあったように消えてしまった。(どこだ?) 熊川は一瞬で態勢を整えて、立ち上がるとダッシュして走った。ホームの端に立って陽子の体を探した。「美咲さん!」 背後に走ってくる列車の風圧を感じた。しまったと思った。「!」そのままの勢いで、線路へと身を投じた。 GOOOOOOOOOONNNNNN! 列車が通過してゆく。何の躊躇いもなく、機械の固まりは高速で走り抜けていった。「誰かが落ちたぞ!」 まもなくして、誰かに呼ばれた駅員が走って来た。「大丈夫ですか!」 肩で息をしながら、駅員はプラットホームの端にやって来た。恐々と見回して、何も落ちていないことを確認してほっとしている。もちろん跳ねられていたとしたら落ちているものは、人間の破片だ。駅員は人身事故でないことを確認すると、羊のように四つん這いになって、穴蔵を覗き込んだ。「すいません。どいて下さい」「!」 顔を出したのは熊川だった。少し顔が汚れていた。続いて立ち上がって出てきたのは、美咲陽子だった。熊川は無言でに、ひらりとホームに上がると、続いてはい上がろうとした陽子に手を貸した。「大丈夫ですか?」「はい」 怪我はないようだが、ヒザや肩を擦りむいていた。しかし当の陽子はあまり動転していないらしい。先日の転落事故がただの偶然だと決めつけていた熊川の方がかなり驚いていた。冷汗まで出てきて、これまでにないほど動悸と息切れがしていた。いつも沈着冷静でいなければならないプロのボディガードとしては失格だった。「病院へ行きますか?」「帰ります。大丈夫ですから」「今度こそ相手の顔を見ましたか?」「い、いえ」「見なかったんですか?」「ええ。小学生の群れが波のように退いてゆくのを眺めていたら、体が急に浮いて」 熊川はちらりと視線を動かして、上司の田村に目配せをした。(何か、見ましたか?)(だめだった)上司の返事はこうだった。どうもこっちのほうも姦しい小学生たちに、気を取られていたらしい。
2013.01.14
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南海トラフの連動による大津波で死ぬかもしれないので、読んでちょ。「過剰」4 綿密なプランを立てて契約を済ませた依頼人を、熊川が家まで送ることになった。もちろん背後には上司がついてくる。 熊川はボディガードだとばれないために、私服で任務に就くことになった。だが、背広ではない。その辺の若者風ファションだ。裏原系とか色々流行があるが、熊川はそんな事には無頓着だ。ユニクロのようなカジュアルなシャツを軽く着ている。 この方がいい。ただのにいちゃんのように見えるほうがいい。「では、これからどうされますか? まっすぐお帰りになりますか? 契約も済みましたし、保証金もお預かりしてますから、車で送ることもできますが、ストーカーを特定するためにもできれば公共機関をお使いになって下さい」 熊川は様になってきた丁寧語に満足していた。警官になった頃は、舌がもつれそうだった。「はい。電車で帰りますから、ガードをお願いします」 美咲陽子はペコンと頭を下げた。これでは依頼人がどちらなのかわからない。「上司の田村が、ビデオカメラを持って周囲の様子を撮っていますから、後で確認することもできます。もし移動中にそれらしい男を見つけたら、すぐに報せてください」「はい」「で、田村とも対策を練りましたが、今回はあなたが妙齢にご婦人だということもあって、一歩後を歩いていきます。私はこのように身長がありますから、後からでも警護ができるでしょう」「はい。よろしくお願いします」 前回の成田杏子よりは、ずっと普通の女だ。可愛げもある。もちろん私情ははさまないが。二、三日やれば、命を狙われているという思い込みに気づくだろう。ただの気のせいでしたと、精算をしようとするだろう。きっと、女の自意識過剰の産物だ。(よくいるんだよな。自分がもてるから、いつも見られているとか思う自意識過剰なヤツが。これはきっとその延長だ) そうでなければ、保安部長の術中にはまってローン地獄にされるだけだ。
2013.01.14
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1月14日、都心、大雪ですか。大変ですね。 関西は雨です。バイトなのに。スーパーって出入りが激しいのよね。 夜便の置き場所は屋根なし。大きな屋根がほしいわ。 買い物も、通販でできるので、余り困らなくなりましたね。 ネットにはビンボー人の夢と希望が一杯。 一万字しか載せられないので、細切れになりましたが、1から読んでね。 その辺の人なので、編集プロダクションにはかないませんが。「過剰」3「熊川です。入ってもよろしいですか?」「入れ」 こういう礼儀正しいところは、警視庁の警察学校でたたき込まれた。背筋をぴんと伸ばし、直立の立つ姿勢は、一番いいぞと誉められた。敬礼もぴしりと、格好良くできる。ドラマの敬礼を見ていると、そうじゃないぞもっと気合いを入れてやれと突っ込みたくなるほど、こういうことにはうるさい。一種の職業病か。今でも職業病を引きずっている。 コンビニ店員が買物をしながら、商品を整えてしまうようなものだ。 長身の熊川が敬礼をすると、なおさら空を突くように見えた。今考えると、自衛隊にでも入っていればよかったかなと思ったこともある。そうすれば、少尉などのイカシタ階級がもらえたのになと考えた。パイロットにでもなって、大空を飛び回るのもよかったと思った。 熊川はいい姿勢を保ったまま、ドアを開けて入っていった。保安部長が座っている。そしてその前には、やはり女、がいた。 また血の気が引いてゆく。サーという音まで聞こえそうだ。吸血鬼に血を吸い取られるというのはこんな感じだろうか。「こちらが、今回ボディーガードサービスを依頼される美咲陽子様だ」「く、熊川と申します」 やはりそうか。俺はまた女の警護をするのか。「依頼人がお前を指名されたので、お前に警護してもらう」「あのお言葉ですが、やはりご婦人には女性のボディガードの方がよろしいかと、私は思いますが」「いや、男の方がいいそうだ。頼りがいがありそうだからだ」「しかし私は」「いいか、熊川これは決定だ」「はい」 熊川は、あきらめの境地で静かに席についた。これから、綿密な打ち合せだ。もっとよく事情を知らなければならない。「美咲さま、熊川は若さだけが取り柄のようですが、これでも元警察官ですし、柔道も合気道も初段以上です。安心してお任せください」「お願いします。わたし、本当に命を狙われていて何度も殺されそうになったんです。両親が旅行に出るので、弟と実家に二人っきりになりますし、通勤中も恐いので警護していただきたいんです」「それなら、もちろんうちのボディガードサービスが一番です。個人様向けに、お安く承っております」 これではまるで、スーパーマーケットで歳暮を売るようなものだ。お堅い警察官だったくせに、どこでこんなセールストークを仕入れてきたのかと、熊川は腹の中で面白がっていた。「先日のご依頼のあったストーカー対策も万事うまくゆき、ストーカーと突き止め諭して、二度のストーカー行為をしないように御灸をすえてやりました」 熊川はちょっと違うだろうと思ったが、保安部長はおかまいなしだ。このさい、変人成田杏子のストーカー事件は、シナリオを書き替えるつもりらしい。「警察に言っても、そんな確証のないことに警官をつけるわけにはいかない、せめて空き巣でも起こればパトロール強化というところで、巡回を増やせますがねというんです。冷たくって」「そうでしょ。そうでしょ。警察って所はそういう所です。だから、うちのようなサービスが皆様のお役に立つのです。これはアイディアマンを自認するうちの創業者が考えたのですよ。今までは法人向けにやっておりましたが、こういう物騒な世の中になってこそ、うちのようなサービスが必要です。そう思われませんか?」 自分も警視庁の警備部にいたくせにといった視線で、熊川は部長を見ていた。もちろんオトナだから顔には出さない。腹の中ではいつもこういうことを考えている。「ちょっと、高額でしたけれど、助かります。でも命には代えられません。しかし長引くと、あたしのボーナスでも足りなくなりそうなので心配です」「ご安心下さい。クレジットカードでの分割払いでも、承っております」 なかなかのタヌキだ。警護術だけでなく、営業もさすがにベテランだ。最初はただのお堅い警察官だっただろうが、中堅警備会社で責任者になれば、それなりに達者になるのだろう。「なかなか犯人が突き止められなかった場合は、そのようにお願いします」「わかりました。お任せ下さい。で、その命の危険を感じたというのはどんな時でしたか?「それが、突き落とされたんです?」「突き落とされた?と言いますと」「ですから、通勤途中で電車を待っていた時に、線路に突き落とされたんです。呆然としていたら電車が入ってきて、それで」「それで?」「助けてくれようとしていた人が轢かれてしまいました」「ひ、轢かれた?」「そうなんです。あたしは待避所に潜り込んだんですが、助けてくれようとしていた人が電車にはねられて、惨いことに」 熊川と田村はツバを飲み込んだ。轢死体を見たことがあるが、それはもう酷いものだった。現役の時には、色々と雑用をさせられたものだ。「本当にその方には申し訳なくって」「他には何か?」 田村は脳内の死体の映像を早く消し去りたくて、話を進めた。「マンションの屋上に出ていたときに、扉を閉められたんです」「まぁ、そういう情況はないとも限りませんな」「いいえ。あれは午後十一時を過ぎていて、そこで閉められれば朝まで夜の寒さに震えることになりました。もしかしたら凍死してしまったかもしれません」「それは大げさでしょう。管理人とかを呼べば、助かったでしょ」「それがその日に限って管理人が急病で、いなかったんです。どんなに非常ベルを押しても来ませんでした」「どうして助かったんですか?」「それは、大声をずっと出していたからです」「よかったですね」「でも、あのマンションの周辺はいつも騒音で、普通は声なんか聞こえないはずなんです。それが、運よくあの日は警察が検問をやっていて、車が少なくなっていました。だからあたしの声を聞いてくれた人がいて、警察に報せてくれました」「なるほど。でもそれだけで、警護なんか依頼しないでしょうね」「そうです。昨日も、車に跳ねられそうになったんです」「東京は車が多い。気のせいでは?」「違います!」 美咲陽子は机をたたいて怒った。熊川はあぁやったとばかりに、目をおおった。依頼人を怒らせて折角のビジネスチャンスを破談にするつもりかと思った。警察官はやはりビジネスには向いていない。なぜなら、疑うのが仕事だからだ。依頼人が身の危険を感じた事件も、ただの偶然で日常誰にでも起こる事だと思っている。 もう少し部長は勉強が必要だった。余計なコメントは、ビジネスには不要だ。 そう思いながら、熊川は引き続き二人を観察し始めた。「あ、まぁ。落ち着いて下さい。申し訳ありませんでした。それは命を狙われているのかも知れません。大変です。すぐに対策が必要ですな」 突然、手のひらを翻した。依頼人をなだめてすかして、そしてビジネスチャンスを逃がすまいとしている。ここは年の功だ。上手に取り繕った所はさすがだった。依頼人も、納得したらしい。素直に話を聞いている。「警護の形といたしましては、昼はこの熊川が、そして夜は私が外で張っております。もう一人を加えて三人で交替にさせていただきます」 保安部長は、依頼人相手に流暢に警護の態勢の説明を始めた。依頼人の美咲陽子もうんうんとうなづいている。夜もとなると、かなり高額の警護になる。どうしても陽子に、カードでの分割払いをさせるつもりらしい。お堅い保安部長は、悪徳高利貸しのような顔つきになっていた。 熊川はその様子を腹の内では他人事のように眺めながら、これからの先行きに不安を持っていた。 だが、保安部長はビジネスとして淡々と話を進め、契約までこぎつけた。「それでは、これからこの対ストーカー作戦を始めます。宜しいですか?」
2013.01.14
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貧乏人しか出てこないワタクシの小説。下層の私か書くから、下層しか出てきません。理香ちゃんは、小金持ちの高校生でしたけど。お金持ちの東京の人には、つまらないかもね。土壌が関西なので、関西ベースです。泥臭い話が多いと思います。リッチでスタイリッシュとは程遠い登場人物ばかりです。この主人公の話は、これで2話目です。まだ2話しか書いていません。何を書いて投稿したらいいのかわからなかったので、書きたいものから書いていたら、色々できちゃってね。トリックものとか書けないし。投稿するとクライマックスが設定になった話がすぐに発表されちゃうので、クライマックスには凝らない方がいいです。適当にね。業界人の子弟、親類縁者も多いので、その辺の人は夢と希望は持ちすぎないようにね。「過剰」2 熊川真也は今日も、ガタガタという中古の原付バイクでアパートを出てきた。小さな駐車場に止めると、いつものゆったりとした歩調で大帝国警備保障会社へと出社した。 下町にある会社なので、貧相な築三十年以上のビルで、小さな小さな駐車スペースがある。そこはすぐに、出社してくる社員の車で埋まってしまうので、近所の月極め駐車場も借りている。 最近、毎朝やっていることがある。それは、ストーカーのように付きまとう女が背後にいないかどうか調べることだ。何度も念入りに、振り返って気配を窺う。これが毎日の儀式になっていた。 気配がないようだと、ほっと胸をなで下ろした。次の難関は、金属探知機付きの会社の玄関を入ることだ。これも、社長の迷惑なアイディアだ。警備会社が泥棒や暴漢にでも侵入されたら、それこそ名折れだと社長が言った。それは正しいと熊川は思ったが、それよりも最近は、完全に名前負けしている会社の前途が心配になっていた。名は体を表すという諺は、この会社には当てはまらなかったらしい。 細々と下請けで生き延びている弱小警備会社だ。ワンマン社長が会社を潰す可能性もないことはない。失業するまえに転職先を探してい方がいいらしい。 この前上司の田村が警告を受けたときには、高血圧症の田村の血圧がさらに上がって、昏倒してしまった。背後で熊川が受けていなければ、頭を打っていたはずだ。高村はそれからこの装置に恨みを持っているが、社長には逆らえないので我慢しているらしい。 社長が空港並みに感度をよくしたので、カギや小さな金属でも鳴ってしまう。だから、それだけは、特別に作られたポストに先に放りこんでおく。 Pipipipipipipi! 慎重に入館してきたのに、なんだと思った。飛び出しそうな心臓を両手で、必死に押さえた。「あ、これ何?」「成田杏子?」 振り返ったらあの女がいた。変り者の女。小汚かったが、熊川の前で変身していった女。 今は熊川のストーカーだ。「俺についてくるな。ここは俺の職場だぞ」「お弁当届けにきたの。これ食べて、クマカワさん。女の子は大好きな人に、手作りのお弁当をあげるんだって。恋愛マニュアルに書いてあったの」「マニュアル、マニュアルって、今時のヤツは教科書がないと何もできないのか。自殺までマニュアルがあるくらいだもんな」 熊川は思わずオヤジくさいことを口走った。しまったと思い、口を押さえた。「はい、おべんと。食べて、クマカワさん」 成田杏子は、大きな包みを熊川に向かって差し出した。それでも高感度な警報機に捕まっているので、一歩も踏み出せないでいた。たしかに社長の装置は、確実に侵入者を防いでいる。 それに警報が止まらないと、ドアも開けられないシステムになっていた。「・・・・・・君の作ったものは何もいらない。君は俺の恋愛対象にはなっていないし、これからもならない」「冷たいのね。ま、そういうクールな所がいいんだけど」「サヨナラ」 熊川はクールに言うと、さっさと中へ入ってしまった。成田杏子は、入り口で警報機にまだ捕まっている。 一歩踏み出すたびに、ピーピーと警備装置に怒鳴られていた。「人でなし」 背後で女が、呪いの言葉を吐いている。熊川は、首一つ振らなかった。なんと言われてもあの女には関わらないほうがいい。もう懲り懲りだ。いくら金を積まれても、女の警護は断ろう。 やはり男が警護するのは、もっとすごいVIPだ。特別な対象がいい。 総会屋に狙われている取締役やヤクザに脅迫されている経営者など、弱者には違いないが、警護のしがいがある。どこか血なまぐささを嫌いながら、どこかで修羅場を求めている。これは男の性なのだろうか。それとも、それが自分の本性なのだろうかと熊川は思いを巡らしていた。 たしかにケンカっ早い所はある。しかし血を見るのはもう嫌だ。 あの女が絶命してたあの場所も、一面赤い色彩で飾り立てられていた。 血の洗礼だ。裏切り者に対する報復だった。「おい、熊川」はっとして、我に返った。「おはようございます」 背後から、上司の田村が入ってきた。「あれ、もしかして成田杏子か? お前も可哀想にな。仕事とはいえ、ストーカー対策に警護してやって、その女にストーカーになられるとはな。お前の仕事は報われず、この世にストーカーを一人増やしただけだったな」「よしてください」「ほら、弁当。受け取ってきてやったぞ」「田村さん!」「男用の大きな弁当箱を胸に抱きしめてさ。わざわざ買ったんだろうな。けなげじゃないか。どうせ、お前は女にもてないんだから、彼女でもいいだろう。意外にうまくいくかもな」「やめてください」 熊川は田村の相手をするのをやめて、席についた。田村は弁当を振って、面白そうにしている。若輩者をからかうのは、オヤジたちの唯一の楽しみだ。「熊川、ちょっと来い」「は、はい。朝礼が始まりますが」 熊川はさっそく保安部長に呼ばれてしまった。毎朝の朝礼も始まっていないというのに、応接室に呼び出された。応接室。接客中だ。あの中には依頼人がいるかもしれない。もしかしたら、例の依頼人かもしれないのだ。血の気が引いていった。すでに踝辺りまで干上がっている。
2013.01.14
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この前にもう一つ話しがあったんですが、どこかへいったらしい。一ブログの文字数が限られているので、複数に分かれます。(1)から読んでね。そうでないと、クライマックスから読むことになりますよ【笑】小説を書くのにどうして小説を読まないかといわれると、ノンフィクションや教養書のほうが賢くなるからで、人の小説には○と○が○と○○感がないからです。最近のハリウッド映画のほうがあるかな。小説と映画は違うといわれれば違うけどね。「過剰」 女には縁がないらしい。 オレが警備員として勤めている大帝国警備保障会社は、ワンマン社長の鶴の一声で、最近個人向けのボディガードサービスを始めた。 部下たちは気乗りがしなかったが、創業者には逆らえない。 仕方なく会議を重ねて、サービス開始の運びとなった。もちろん今時はどこでも似たようなものはやっている。 このサービスはボディガードを、写真や経歴から指名できるのが特徴だ。 ホストじゃあるまいし、なぜ指名制なのかというと、これも社長のアイディアだからだ。あの社長はアイディアマンである自分にいつも酔っていて、思いついたらすぐに実行する男なのだ。 こうすることで偉大なる創業者は、客がジャンジャン集まると思っている。 もちろん大半の依頼人は、経歴やどのくらいの能力かで選ぶから、ベテランの猛者ばかりだ。 オレのような若造はまだ敬遠されていて、どちらかというと下請けで展示会の会場警備をやっている。もちろんこれでも元警察官で、保安部長から警護術のスパルタ教育を受けている。 なのに、いつも俺を指名してくる女は変り者ばかりだ。 この前警護した女は汚いナリできて、保証金三十万円を払った。 話によるとストーカーに狙われているという。何者かが毎日怪しげなメールを送ってくるらしい。両親の保険金があるから、金はあると言った。 だが、そのルックスはとてもストーカーに狙われているようには思えなかった。 誰がこんな小汚い女のシリを追いかけるのかと、上司と二人で首を傾げていた。(もちろん腹の中で、である) 太った女がストーカーに殺されたというアメリカのニュースもあったことだし、蓼食うムシも好き好きなのだなと、女を眺めながら俺は自身を納得させた。 これはビジネス。恋愛ではない。プロの仕事だ。 しかし家に送る途中で最初に行った所は美容室だった。そしてそこで女は、プロにメイクをさせボサボサの髪も、女優のように整えて戻ってきた。 でも首から下は、まるで子育てに疲れた主婦だった。シミのついたトレーナーに、着古したジーンズをはいていたのだ。こいつはなんなんだよと仰天していたら、今度はデパートへと行くように俺に命令した。 俺はこれもビジネスなので、シンデレラに支えるネズミの従者のようにひれ伏して、専属のドライバーに徹していた。高額の保証金を気前よく払うお客さまだ。(上司によると金ヅルらしい) 怒らせないように、唇をかみしめてボディガードとしてのプロに徹していた。 この女ときたらストーカーを恐がっていながら、一日中人込みの中ばかり行きたがった。 デパートで大量の買物をして、今度はブランドのスーツで着飾り、突然美人になった。宝飾品もこれでもかと買って、女は変身していった。 俺を仰天させたのは、それだけではなかった。クラブで踊ったり、テーマパークでアトラクションを楽しんだりと、女の道楽は終わらなかった。万引きや怪しげな男に絡まれるたびに俺は、何度も救助するはめになった。 ストーカーを特定しようと、こちらが苦労しているのに、その女はまったく頓着しなかった。そしてその任務には仰天のラストが待っていて、俺は海に飛び込むはめになった。 まったくあの女には振り回されたが、なんとか俺は生き延びることができた。もちろんがめつい保安部長の請求どおりに、料金を払わせた。 しかし、しかしだ。俺にとって恐ろしいことが始まった。あの女が時折俺のストーカーとなって会社に遊びに来るのだ。はっきりいって、そのしつこさにはすっかりまいっている。姿が消せる薬があるのなら、悪魔に魂を売ってでも手に入れたいものだ。 あの女は生きがいを見つけたと言った。それが俺でないことを祈っている。 記念すべき、第一回目のボディガードの仕事があの女だったことで、俺は将来を悲観しはじめた。 女は不気味だ。宇宙人だ。いや魔術を使う魔女だ。 そう思うとオレは女性不信で、このまま一生独身ではないかと不安になる。 一人老人ホームで呆けてゆくのか。 毎日が恐い。
2013.01.14
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