語りと筆しごと~書家香玉のうずまき帖
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ご無沙汰しています。夏休みも終わろうとしています。なるべく「いつもどおりに」と思いながら、いろいろとできない事だらけの夏でした。毎年再会する友人たちとの約束もキャンセルしてしまったし、筆文字の仕事も普通に受けていましたが、お盆を前に限界となり、店をしめてしまいました。待っていてくださっている方、本当に申し訳ございません。またいつか必ず復活したいです。「龍馬」は、テレビの番組制作会社に勤める友人からの依頼で、書かせてもらいました。来月、九州山口ネットで放送される龍馬の特集番組のスタジオで使ってくださるそうです。これがとりあえず最後の筆仕事となりました。私に書を教えてくれた65歳の父。大好きな父が一大事なのです。今年の夏は…私にとってこの先きっと忘れられないであろう、試練のときとなりました。いやまだ終わったわけではないのですが…ひとまず小休止です。もうすぐ9ヶ月になろうという次男を抱え、最近とても頼りになる小3の長男と共に夏休みのほとんどを実家ですごしました。こどもを喜ばせることが何よりの生き甲斐である父、夏休みともなると毎年いつもはりきって虫捕り、川遊び…田舎ならではの遊びにこどもたちを連れ出してくれていました。料理好きな母は、そんなみんなのためにたくさんのごちそうを作ってもてなしてくれていました。そんな食卓を囲んで、父とキンキンによく冷えた吟醸酒を飲むのがまた至福のときでした。日中は酷暑の夏でも、山あいの一軒家である実家の夜はとても涼しく山から吹いてくる風がしんと冷たい。外灯がほとんどないため空は漆黒に澄んで、夏の星座がまばゆいばかりに煌めいている。下の集落で一晩中響く盆踊りの太鼓にまじって、クツワムシ、コオロギと早くも秋の虫の音も遠くに感じながら眠りにつく夏の夜。これだけは今年も同じだったけど、決定的にいつもと違ったのは父母が不在であったこと。子供たちと三人、そして飼い犬のハチですごす実家の夜はとてもとても静かで寂しいものでした。先月15日に末期の胃癌の手術を受けた父は、その後も経過が思わしくなくて24時間、点滴につながれたままの絶食状態で、苦悶の日々をすごしていました。そんな父に母はずっと付き添い、病室に置かれたソファで寝起きする毎日。動けないものの、意識はしっかりと、決して悲観することなくただひたすら早く治って退院することだけを念じ、目をギラギラと見開いている父。新聞も雑誌も、テレビも見ようとせず、ただ一心に時間が自分の体を治していくのを確認するかのように、天井を見据えて、見えない魔物と闘っています。そばにいる私たち家族はそんな父をなんとか生還させてあげたいとそのためには何ができるかを、必死に考えています。あきらめず、それでも何かとがんばっているところです。必ず起死回生の何かが起きるはずです。未来のある、無邪気な子供たちの笑顔が何よりの救い。どこにも連れていってあげられなかったけど、それなりに夏らしい思い出も作ってあげようとがんばりました。じぃじぃとまた、早く遊べますように。
2010年08月24日