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2021.11.24
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テーマ: 読書(8283)

本のタイトル・作者



三十の反撃 [ ソン・ウォンピョン ]

"서른의 반격"
by 손원평

本の目次・あらすじ


キム・ジヘ。1988年生まれ、30才。職業・インターン。
半地下の部屋に住み、大企業DM社のグループ事業・ディアマンアカデミーで最低賃金に見合う仕事をしながら、給料の大半をTOIECとカフェに注ぎ込み、正社員になることを夢見る。

1988年生まれに一番多い名前――「知恵(ジヘ)」。
「私」はクラスに何人もいるジヘの中の、「ジヘ(ダ・6)」「小さいジヘ」だった。
大勢の中の一人。路傍の石。下から水面を仰ぎ見る魚。


だと、思っていた。
あの日、小石が投げ込まれて、世界にさざ波が立った。
波が押し寄せ、世界が揺れた。
ちいさな波紋が、隅々まで届いていく。

それは、弱き者たちの、反撃の投擲。

引用


「遊びたいんです。硬直化した世の中で、みんな無気力症に陥っています。僕は反旗を翻してみたいんです。青臭いと罵られてもいいから、せめて抵抗してみたいんですよ。歴史が物語るように、急進的な革命は失敗するでしょう。世の中はどんどんパサパサに乾き、コチコチに固まってきて、ちょっとでも目立った動きをすればすぐに見つかってつまみ出されてしまいますから。僕は統制や検閲が及ばないようなことをしてみたいんです。楽しく、遊びのようにね」


感想


2021年278冊目
★★★★

2020年本屋大賞「翻訳小説部門」第1位となった『アーモンド』に続く2作目。
第5回済州4・3平和文学賞受賞作品。

私は『アーモンド』よりこっちのほうが好きだった。
年齢や性別的な親近感なのかもしれないけれど。

職場であるディアマンアカデミー(カルチャースクールみたいなところだ)で、同じインターン生のギュオクに誘われ、ジへはウクレレ講座を受けることになる。
そこで出会ったのは、30代と50代のおじさん。

苦労して開発したレシピを企業に奪われ、今は食事の様子を配信して小銭を稼ぐシングルファザー。
ギュオクは、皆に社会への反撃を持ちかける。
ちいさな理不尽へ、一泡吹かせてやる。価値観の転覆。
それから4人の奇妙なテロが始まる。

映画になりそうなストーリーラインと、見せ場のある構成。


最後、街に取り残された円形の石段を劇場にしてしまい、「誰でもあがれる舞台」にしてしまう。
このシーン、『モモ』で、モモが住んでいた場所を思い出した。

そして「家具工房」という仕事が、冒頭のギュオクの「椅子」の台詞にもつながって来る。
椅子は、ただ置いてあるだけ。
華美なものがぽつんと置かれていれば、そこに座れば主人公のように見える。
たくさんのパイプ椅子が並べてあれば、そこに座れば観客になる。
ギュオクは、椅子はただ椅子なのだ、と言う。
これまでずっと、「観客席」に座って来たジヘは、最後に自分の手で椅子を作ることにするのだ。
その人にあった椅子を。

私は、ウクレレの発表会と、この誰でも舞台のところが特に気に入った。

韓国の小説を読んでいると注釈を見ないと分からないことがたくさんあって、それだけ文化が違うのだなあと思うし、グローバリゼーションの中で文化が残っているのだなと思う。
韓国で生きていくことは、ほんとうに、ものすごく、大変そう。特に女性は。
『三十の反撃』では、主人公の友人、ダビン。
彼女でまた一冊本が本で見たいくらいのエピソードの持ち主。
夢があって、努力して、でも社会の要求に応えるしかない。
この重圧の中で、未来がないように見える中で、どうやって生きていこうとしているんだろう?
韓国の小説は重たいものが多いのだけど、もっとライトでポップなのもあるよね?
そういうのも読んでみたいな。

これまでの関連レビュー


アーモンド [ ソン・ウォンピョン ]




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最終更新日  2023.01.01 17:28:40
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