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2022.04.29
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テーマ: 読書(8290)

本のタイトル・作者



男と女の台所 [ 大平 一枝 ]

本の目次・あらすじ


男と女の台所
・同卓異食は終わりの始まり
・与えられ、失われ、見守られ、愛される
・人気フードブロガーの恋
・結婚五四年。団地暮らしの夫婦のものさし
・路上生活夫婦のあるきまじめな日常
・離婚。味覚をなくした先に……

・四○代。家庭内クライシスの先にみつけたもの
・彼女と彼女の食卓
・古民家の台所で今日も彼は
・少しずつ母になってゆく記
・二十八歳彼が四十一歳彼女に作る豚の角煮
・トルコ、団欒の手がかり
・築五〇年の文化住宅が教えてくれた暮らしの音
・空間が教える夫婦の相性
・“家”と結婚。母子ふたりの料理天国
・九二歳、祈りの中で生きる作法

料理家の台所

・考えすぎない幸福ーサルボ恭子さん)

台所見てある記
①仲睦まじい夫婦は日本酒をよく飲む!?
②その後の恋の話

あとがきにかえて

引用


女はあちこち頭をぶつけ、ころんだり、起き上がったり、歩いたり、戻ったりしながらだんだんお母さんになり、ようやくコツを摑み、一人前の母になれたと思った頃には子どもが巣立っている。


感想


2022年103冊目
★★★★

(有)いわた書店
2022年1月に読んだ本まとめ/これから読みたい本

これは、良かった。
ただしい暮らし、なんてなかった。 [ 大平一枝 ]
を読んだときに、「この人の書くものが好きかも知れない」と思ったけれど、好きだ。
他の本も読みたい。

家族の形態、生活様式もさまざまな、19人の台所。
薄暗がりの中からほんの少し見えた、ドアの隙間。
そこに人生がある。
短編の小説を読んでいるような気がする19編。

台所は、不思議だ。
吉本ばなな『キッチン』を洋書で読み返して、改めてキッチン(台所)になぜこれほどまでに惹かれるのか、と考えていた。
それは家庭の心臓のような場所。
家じゅうに新鮮な血液を送る。

洗濯や掃除と違って、家庭や母親のイメージが台所と結びつきやすいのは、「食べること=生きること」だからだろう。
それは、育てること、でもある。

摂食障害の本を読んだときに、「拒食・嘔吐は母親の愛情の拒絶・否定」とあったことをよく覚えている。
食べさせることは、愛を与えること。
だからそれを―――拒む。全身で。命を懸けて。

残業して帰る電車の中で引用部分を読んで、ぼろっと大粒の涙を零してしまった。
無我夢中で、日々を送って行くだけで精いっぱいで、そうこうしているうちに子どもが大きくなって手を離れてしまうのだろうな。
いつかこの「今」を、私は大金を積んでもあの頃に戻りたいと、願うのだろうか。

ごはんを作る。
食べさせる。
毎日毎日。

台所に立つ者たちは、当たり前にそれを繰り返す。
時にひとり、涙を流しながら。

前に読んだ本に、「親が死んだ日も、次の日には飯を食った」というような一文があった。
その時に思った。
かなしみはかなしみのまま、胸に凝る。
喉につかえたような、それをそのままに。
それでも、腹は減る。飯を食う。
ご飯を炊く。

日常の暴力が、すべてを薙ぎ倒していく。
その繰り返しの強さは、何にも負けない。

私が台所に惹かれるのは、だからかも知れない。

このままでいいのだろうか、と悩む。
このままではいけないのではないか、と問う。
それでも、今日も、ごはんを作る。
食べる。食べさせる。

「今できること」を淡々とやっていく。
目先のことを、手を動かして片づける。

小さなこどもは、どんどん大きくなる。
ただただ、健やかであれかし、と願う。

「当たり前」を飽くほどに繰り返して。
その強さに打ちのめされて支えられて。

親が死んだ次の日には飯を食ってくれ。

これまでの関連レビュー


ただしい暮らし、なんてなかった。 [ 大平一枝 ]




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最終更新日  2022.12.04 00:20:10
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