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2022.07.30
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テーマ: 読書(8213)

本のタイトル・作者



女人入眼 (単行本) [ 永井 紗耶子 ]

本の目次・あらすじ


建久六年(1195年)。
二十歳の周子(ちかこ)―――六条殿に仕える女房名「衛門(えもん)」は、東大寺落慶法要に、六条殿の主で亡き後白河院の皇女・宣陽門院、その母である丹後局の名代として参列していた。
鎌倉殿こと源頼朝が征夷大将軍に任じられ三年。
その北の方である御台所北条政子は、最愛の娘・大姫を入内させようと画策する。
姫を后とすべく鎌倉へ遣わされた周子だったが、感情ひとつ見せず病に伏す姫の指南は難航する。
大姫をとらえるものは、いったい何なのか。
男たちが戦で彫り上げた国の形に、玉眼を入れるのは、女人。

引用


「めでたい日故に、大仏様がお笑いになられて地が揺れたのであろう。天の神は慈雨を下さり、仏は笑い、地の神もそれに応えられた。誠にめでたいこと」


感想


2022年192冊目
★★★


面白かったです。

鎌倉時代、知略を武器にのし上がろうと野心を抱く京の都の女房。
しかしそれを「碁盤に蹴鞠」のように蹴散らしてしまう武士の妻・政子。
京と鎌倉の対比が興味深かった。
今年は大河ドラマが鎌倉だから、それを見ている人はより楽しいのじゃないかな。
私は見てないんだけど。

海野幸氏(ゆきうじ)がとっても格好良い。
でも私、読みながら「ゆきうじ」という名前ではなく、「さいわいし」という名字だと思ってたからね。
最後の最後に気付いた。笑

大姫が自らの感情を見せず、己を過去に縛っている理由。
それが悲しくて、どうしようもなくて。

こういうシチュエーションたまらんな、どこかで読んだけど滾る…と記憶を浚ったら、ファンタジーアニメの和風BLパロ二次創作だったんだけど。

政子のことを、「過たない」と言う理由。
冒頭に、引用部の発言があって「すごい考え方するな。ポジティブ―!」と思ったそれ。
すべてが自分のせいではないから。
納得する物語を用意して、現実をそれに合わせてしまうから。

ただ進んでいく。振り返らずに。

だから、娘はその物語を生きるしかない。
愛されて愛されて、愛され抜いて。
だからこそ逃げ道は、どこにもない。

私が泣くと、誰かが死ぬ。
幼くして涙を封じた姫に、周子は泣く理由を与える。
花の香のせい、歌のせい。
それで涙が出た、そう言えばいい。
あなたは泣いてもいいのだ、と。

けれど―――。
母の偏愛は、妄執は、大姫を追い詰めていく。
用意された物語。求められる筋書き。

死して、なお。

大姫にとっては、それこそが最高の復讐だったんだろうか。
自由を得るための唯一の方法。たったひとつの解放。弱者に出来得る最大限の抵抗。

けれどそれさえ、彼女を悔やませることはない。
母・政子は、歩みを止めることはない。
すべてを踏みにじり、その上に花を咲かせ。
帝をすげ替え、国をも動かす。

姫には、生きていてほしかったな。
仏門に入って、ひっそりとでも。
はじめて自分の物語を紡いでほしかった。

大姫の境遇が非常に気になったので、大姫を題材にしたほかの作品も読みたいな。




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最終更新日  2022.12.03 23:51:51
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