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2023.08.08
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テーマ: 読書(8559)

書名



絶滅危惧職、講談師を生きる (新潮文庫) [ 神田 松之丞 ]

引用



でもお客さん時代が長くて、こじらせていた期間があった人は、本当に俺はこういう芸人が聴きたかったのかな、とか常に自分に問いかけるし、プレイヤーであるときも、あれ、俺間違ってねえか、ここは昔の俺だったらどう思うかな、っていうのを客時代の一番頭おかしかったときの自分を基準にするでしょう。


感想


2023年173冊目
★★★

いわた書店「1万円選書」で選んでいただいた本。
(2022.02.06「 2022年1月に読んだ本まとめ/これから読みたい本 」)
2023.01.03「 2023年の課題図書48冊 」の1冊。

落語は、聞いたことがある。
私が大学生だった頃、宮藤官九郎のドラマ「タイガー&ドラゴン」(長瀬智也と岡田准一が落語家を演じていた)から一時期流行り、私も大学の図書館でCDを借りて聞いていた。

けれどそのうちに聞かなくなった。

能…は、「蝋燭能」を一度きり(秒で寝た)。
文楽は、三浦しをんの小説を読んで「面白そう」と見に行ったけど、はまらず。
歌舞伎と狂言は見たことがない。
伝統芸能ってもんはどうもこう、小難しくて退屈だという印象がある。

で、講談師ってナニ?
っていうレベルでこの本を読んだので、落語家とは違うのか…というところから理解した。
…「にほんごであそぼ」の神田山陽さんは、講談師だよね?
(っていうことを思うと、「にほんごであそぼ」という番組の革新性とメッセージ性と幼児への日本古典のサブリミナル効果すごいな)
べべんべん、と扇子を打つ、あれ?

著者は、1983年東京生まれ。

小学3年のときに父が自死。
内にこもる中学時代にラジオと出会う。
その後、プロテスタント系の私立高校に進学し、無二の親友と巡り合う。
「ラジオ深夜便」でやっていた落語をたまたま聞いて興味を持ち、武蔵大学経済学部に進学後は寄席へ通い詰める。
大学を卒業後、神田松鯉へ弟子入り。講談師の道を歩み始める。


という、反骨精神あふれる下っ端。
着物たたみ方?メモとっちゃだめ?動画で覚えりゃいいじゃん。

師匠や兄弟子たちは、さぞ手を焼いただろうなあ。
この本は、御本人へのインタビューと、周囲の方へのインタビューが両方入っていて、「当事者から見たあのとき」の主観と、他者の視点が補足され、認識のズレもまた面白い。

しかし、絶滅危惧職であった「講談師」の存在をいかに世間に訴えていくか、そのためにどう「見せる(魅せる)か」。
考えて考えて、戦略的にやっている。
ここらへん、伝統芸能でありながら若手の劇団員のようだった。
「二ツ目のうちは挑戦をしていい、それこそいかに良質な恥をかけるか、という勝負の時期」と著者は言う。
そうして圧力を恐れずどんどん新しいことに挑戦していく。
それに客がつく。
なんていうかな、存在が2.5次元俳優みたいな…?

著者の講談への思い入れはすごくて、ものへの執着もなくて、講談の台本と着物さえあればいいと言う。
大事なことは、この人の話を読んでいて、「講談って落語とどう違うんだろ、聴いてみたいな」と思うことだ。
調べてみると、居酒屋や喫茶店、区民センターや市民ホールでやっている。
値段も安い。
特に夏休みは、子ども向けのものも開催されていて、子どもを連れて行くのも良さそう。

ちなみに、落語や講談に娘(小2)を連れていけないかなと思って、手始めにお笑い(漫才)に連れて行ってみた。
結果は惨敗。
若手が半分、年配が半分で、ネタは1/4も理解できなかった模様。
最後は退屈していた…。
もともと夫がお笑いが嫌いで家で見せていないので、素養がなかったのも原因か。

みんな、映画を2時間見られなくなったという。
じっと座って、スマホを手に呟かずに、ただ映画を見るということが出来なくなった。
派手な映像で受け身なだけの映画ですらそうなのだ。
集中と想像が必要な「聴く」芸、あるいは「読む」ことだってそう。
絶えず自分好みの刺激を与えてくれるものを手に入れて、わたしたちは何を失ったんだろう。

しかし、タイパ(タイムパフォーマンス)でオーディブルブックが人気になっている今、落語や講談はある意味とっても良いポジションにいるのではないかしらん。
私も今回聴いてみようと思ったけど、古典ばかりだと「うーむ」となる。
著者は、話のまくらを入れたり、ダイジェストであらすじや時代背景を紹介してから噺に入っていくという。
そういうサポート、必要。

これが伝統芸能でござい、と胡座をかいていれば、積み上げた座布団はどんどん高くなって、世間から乖離していって、誰も見られなくなる。
エンタメだよ。語り継がれる楽しみのかたちなのだから。
「面白い」に、人は惹きつけられる。
「新しい」「なにそれ」「どういうこと?」。

「知りたい」。

古いは、忘れられるからこそ、また、新しい。


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最終更新日  2023.08.08 07:24:03
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