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安倍氏銃撃事件から1年目の街の声を、9日の朝日新聞は次のように報道している; 安倍晋三元首相の銃撃事件から1年がたった8日、各地で市民らが花を手向けたり、事件現場を訪れたりして、その死を悼んだ。 東京都港区の増上寺で献花した板橋区の大学1年、田川奨士さん(18)は物心がついた時から「日本の総理は安倍さん」という感覚だったという。森友学園や「桜を見る会」の問題などでネガティブなイメージもあったが、「あんな形で亡くなり、ショックが大きい。暴力は決して許されてはいけない」と語った。自民党によると、増上寺の一般献花には約5千人が訪れたという。 奈良市の事件現場近くに設けられた献花台には、早朝から続々と人が訪れた。ジャーナリストの鈴木エイト氏は旧統一教会について触れ「問題が再燃し、顕在化するきっかけになった象徴的な場所」として毎月、足を運んでいるという。献花はしなかった。「なぜ事件が発生してしまったのか。それを問うことが自分の責務、役目だと思っている」 献花台周辺では、銃を模したような筒状のものを掲げた男が、軽犯罪法違反(儀式妨害等)の疑いで現行犯逮捕される騒ぎもあった。 安倍氏の地元・山口県下関市では、安倍氏の元事務所や自民党支部に献花台が設けられた。支援者だった同市の自営業大沢修さん(71)は「晋三さんのことが頭から離れない。あれほどの総理はもう出てこないと思う」と悔やんだ。2023年7月9日 朝日新聞朝刊 13版 31ページ 「暴力 決して許されない」から引用 この記事に登場する鈴木エイト氏以外の2名は、これが日本人の平均的政治感覚かと思うと落胆せざるを得ず、一般市民の政治感覚がこういうレベルでは、与党は平気で反社会的団体と癒着して集票活動をするであろうし、その結果社会は腐敗し、カルト団体に家庭を破壊された市民が再び「銃撃事件」という悲劇を繰り返す危険性は高いと言えるのではないでしょうか。死者を弔うのに否定的なことは言いたくないとは言え、「あれほどの総理はもう出てこない」は明らかな言い過ぎであり、正確に表現すると「あれほどのウソつきは、二度と国会議員にしてはならない」ということであり、下関市民に贈る言葉としたい。
2023年07月31日
日本の若手研究者が国内の職場で「雇い止め」と称する失業状態となったため、海外に職を求めた結果、中国の大学教授に再就職が決まったという事例について、16日の朝日新聞は次のように報道している; この6月、理化学研究所から雇い止めに遭った30代男性が、中国へと渡り大学教授になった。 「不当に雇い止めをされて、理研にはもう、未練はなくなりました」 男性は1年更新の契約で、2013年に理研に採用された。自身の研究室を持ちたいと転職を考え始めていた18年、上司から「ユニットリーダーにならないか」と持ちかけられた。と同時に、若手研究者を支援する国の「卓越研究員」にも応募するよう言われた。採用は18年10月付で、任期は7年とあった。 だが理研には、通算10年を超える有期雇用の契約を認めない「10年ルール」があった。男性は23年3月末に雇い止めになるはずだ。4年半ではまともに研究できない。それに任期前の雇い止めは問題ではないのか。 上司に疑問をぶつけると「25年3月までは心配しなくてよい」と言われたことを覚えている。ユニットリーダーの契約書にサインし、卓越研究員にもなった。■国内、ポストなく 事態が一変したのは、21年春だった。所属長との面談で「契約は残り2年だから、すぐに就活してください」と告げられた。「おかしくないですか」。反論したが、契約書には23年3月31日までとある、と一蹴された。 25年3月までというのは口約束で、ほごにされたのだ。1週間は、はらわたが煮えくりかえるような思いだった。だが「理研が自分を必要としないなら、別にいい」と頭を切り替え、手がけてきた研究を急いで論文にまとめ、就活を始めた。 国内ではポストが見つからず、中国にある大学に応募し採用された。論文は、英国の科学誌ネイチャーに掲載された。男性は契約通り、今年3月末に理研を去った。■未練ないけれど これで理研との縁は切れたと思っていた。 ところが4月、文部科学省の外郭団体に提出する卓越研究員の実績報告書の確認依頼がきた。昨年までは、本人の確認が必要な部分以外は空白で送られていた。今年は全て記入されており、「任期7年」という文字があった。担当者に確認すると、前年までの表記を踏襲したものだという。 理研が国に、自分の契約年数を7年と報告してきたのだとしたら、4年半での雇い止めは不当ではないのか――。 文科省に問い合わせると、理研からは「雇用期間を原則7年間とした安定性のある雇用環境を用意」「評価により2025年3月31日まで再契約可能」と説明されていた、と返信があった。 男性は理研の理事長に「雇い止めが不適切に断行された」と調査委員会の設置を求めた。理事長からはその日のうちに「早急に調査を開始し、状況を明らかにする」と返信があった。 業績で評価され、雇い止めに遭ったのならば文句はない。だが約束をほごにされ、将来設計にも不利益を被った。 「理研に未練はないが、雇い止めが不当だったかどうかは、はっきりさせたい。理研が自分を必要としないのであれば、自分を必要としてくれる条件のよい場所に移るまでです」■「経緯を調査中」 理研広報室は取材に対し、文科省の外郭団体に、卓越研究員制度の任期を「7年」と報告してきたことを認めた。当初の説明と異なり契約が4年半で終わった理由や、上司とのやりとりなどについては、経緯を調査中のため「回答を差し控える」とした。■進む「頭脳流出」、優秀な若手ほど 科学技術力、低下懸念 研究者の雇い止めは、日本の研究力低下に加え、「頭脳流出」を加速させる可能性がある。 文科省の昨年9月時点の調査では、今年3月末で約1万2千人の研究者が有期雇用10年を迎えるが、無期転換が見込める人は半数未満だった。理研の労働組合は5月、研究者ら97人が4月以降の契約を結べず、退職したと明らかにした。 雇い止めの影響は、有期雇用の割合が高い若手研究者でより深刻だ。国内には安定して活躍できるポストが少ないため、転職先を海外に求めざるを得ない状況もある。 一般社団法人「科学・政策と社会研究室」の榎木英介代表によると、2000年前後に民間企業の技術者が中国や韓国に渡る例があったが、最近は基礎科学系の研究者が海外に流出する例が目立ってきたという。「優秀な研究者ほど日本から流出したり、博士課程にすら進まなかったりする地盤沈下が進んでいる。このままでは、日本の科学技術力の低下につながりかねない」と指摘する。(吉備彩日、竹野内崇宏)2023年7月16日 朝日新聞朝刊 13版S 3ページ 「雇い止め後 中国で教授に」から引用 この記事は、日本の現状と将来を暗示する。小泉政権以前の日本は教育や学術の振興を国として支えてきていたのだが、小泉政権の頃から国立大学や理研のような研究機関が「独立採算制」と称して、国の予算で運営する組織ではなくなったため、国立大学の授業料は私立並みに高騰し、卒業して働き始める時点で莫大な借金を背負わせるという「地獄」のような社会になってしまっているのが、日本の現状である。この記事が述べるように、2000年代は企業の技術者が定年になった時点で「お払い箱」扱いされたために、多くの技術者が韓国や中国の企業に再就職して活躍したため、2000年以降は中国や韓国の家電製品が日本製と比較しても遜色ないレベルに達し、両国の経済成長に大いに貢献したのであったが、それから20年経って今度は研究者が国内で冷遇されて、海外に職を求める事態となっている。こうして日本は次第に国力を衰退させて、やがては中国を中心にした強大な国家組織の一部として組み込まれる「運命」にあるのではないかと危惧されます。
2023年07月30日
昨日の欄に引用した東京新聞・本音のコラム、斎藤美奈子氏の「125位の理由」は、12日の同紙・続編で「誰が日本を『125位』に引き落としたのか」具体例を挙げて論証している; 先週に続きジェンダー・ギャップ指数が125位に落ちた日本の現状について。1986年に男女雇用機会均等法が、99年に男女共同参画社会基本法が施行されるなど、90年代までは世界の趨勢に一応乗っていた日本のジェンダー政策が大きく後退したのは2000年代以降である。 02年、山谷えり子衆院議員(現自民党参院議員)が「行き過ぎた性教育」を批判。厚労省肝いりの教材が自主回収に追い込まれた。この頃から国と自治体は当時ジェンダーフリーと呼ばれたジェンダー平等教育への圧力を強めていく。 石原慎太郎都政(99年発足)は02年に東京女性財団を、03年に男女平等推進基金を廃止。04年、都教委は男女混合名簿を禁止した。国政レベルでは05年、自民党に安倍晋三を座長とする「過激な性教育・ジェンダーフリー教育実態調査プロジェクトチーム」が発足。06年にはついに内閣府男女共同参画局が「ジェンダーフリーの用語は不適切」と全国の自治体に通知した。 保守論壇、旧統一教会などの宗教団体、日本会議などの政治団体とも連動したこうした動きが、ジェンダー政策全体に及ぼした悪影響は計り知れない。その結果が世界に著しく後れをとった今の日本だ。失われた20年の背後には後ろから足を引つぱる人々がいた(今もいる)ことを忘れてはいけない。(文芸評論家)2023年7月12日 東京新聞朝刊 11版 19ページ 「本音のコラム-続・125位の理由」から引用 この記事に登場する3名の政治家のうち、2名は既にこの世にいないが、山谷議員はまだ現役議員である。次の選挙では是非とも落選させて引退していただくのが、日本のためになると思います。また、統一教会や日本会議などの支援を得て議員に当選する者も、まだ相当数存在し、次の選挙でもそういう団体の協力を得て選挙戦を有利に戦うであろうことは容易に想像がつくのであり、岸田政権が統一教会に解散命令を出さざるを得ない「環境」づくりが必要であり、また、ジェンダー政策を妨害する「言論」に対しては逐一反論していくというメディアの「姿勢」も大切だと思います。
2023年07月29日
世界経済フォーラム(WFF)が6月に「世界のジェンダーギャップ指数」を発表し、日本が125位であることが報じられると、文芸評論家の斎藤美奈子氏は7月5日の東京新聞に、次のように書いている; 男女平等度を示す今年のジェンダー・ギャップ指数が発表された(6月20日)。もともと100位以下が定位置だったとはいえ、日本は146力国中、過去最低の125位。G7中最低だなんて報道の仕方は甘すぎる。日本の後進性を思い知るにはせめて上位20力国を見ておかなくちゃ。 北欧諸国が最上位(1位アイスランド、2位ノルウェー、3位フィンランド)なのは納得の結果として、7位にニカラグア(中米)、8位にナミビア(アフリカ)がランクイン。20位まで見ると、12位ルワンダ(アフリカ)、14位コスタリカ(中米)、16位フイリピン(アジアでは最上位)、20位南アフリカ。途上国のイメージがある中南米諸国やサハラ以南のアフリカ諸国はじつは欧州各国にも迫る上位の常連国なのだ。 理由は簡単。国会議員の選挙制度にクォーター制を導入する、平等に向けた法律を整備する、教育プログラムを充実させるなど、これらの国々は特に2000年代以降、ジェンダー平等政策を積極的に推し進めてきたからだ。そしてその間、日本は何の手も打たぬどころかジェンダー平等にむしろ背を向けてきた。 ヨーイドンでスタートした各国の中で、日本だけが後ろ向きに走っていたら、そりゃ大きく遅れをとって当たり前。この間の日本がいったい何をやっていたか。それは次週で。(文芸評論家)2023年7月5日 東京新聞朝刊 11版 21ページ 「本音のコラム-125位の理由」から引用 私が良く知っている国としては、イギリスが15位になっているのが「さすが民主主義本国」という感じで、フランス、アメリカが40位くらいにいるのは「なるほど、先進国だ」と言う感じです。そして、韓国、中国が100位くらいの所にいて、その下に「日本」が来ていて、この三国はやはり数千年前に始まった「儒教思想」による「男尊女卑」の習慣が根強いのではないかと思われますが、やはり客観的に考えて女性を差別するのは「不当」であり、これは改善されなければならないと思います。手っ取り早い対策としては「国会議員の選挙にクォーター制を導入する」を、先ず実行するべきと思いますが、しかし、そのためには選挙制度を変更するために法律を改正しなければならず、男性議員ばかりの審議会でそのような議論がスムーズに進められるかどうか、甚だ疑問です。
2023年07月28日
押し入れを整理していたら、2年前のとある市民団体の機関誌が出てきた。2年前と言えば、コロナの大流行で人々が「県境を越える移動を控え」ていた頃であるが、自民党の一部議員が「国旗損壊罪」を刑法に追加するという「刑法改正案」を議員提案で国会審議に持ち込む予定であることが報道されて、それに反応した機関誌編集委員のうちの2名が、次のように書いている;◆自民党内では、徴用工などの問題にみられる日本の植民地支配への批判、アジア太平洋戦争への反省・責任追及に対して、これを「歴史戦」として捉え対抗していこうとする勢力がいるという。この流れか、自民党議員の「保守団結の会」が、国旗侮辱罪を刑法に新設するよう刑法改正案の議員立法の国会再提出を提案した。「日の丸」は、近代日本の植民地主義と侵略戦争遂行の象徴だ。どうして「日の丸」を尊重できようか。「歴史」の改ざんを許してはいけない。(有馬保彦)◆自民党が「国旗損壊罪」を今国会に提出するという。国旗は対外的には国家の名誉を代表するが、国内的には思想信条の統制、政治的な権力への従属を強いることにもつながる。旗は旗に過ぎない。自分か持っている旗を焼こうが切ろうが、それは私の自由だ。コロナ禍で多くの人が困難な状態に陥っているのに何か「国旗損壊罪」だ。旗と人の生命とどちらが大切だというのだろう。自民党には本当に腹が立つ。(細井明美)2021年2月1日 「市民の意見」 183号 36ページ 「編集後記」から一部を引用 その昔、神さまの子孫である天皇が国を統治すると言われた時代は「国旗を燃やすなど、神を恐れぬ重大犯罪」として取り締まりの対象となったかも知れないが、現在の日本国憲法は基本的人権を尊重するとの立場から「表現の自由」を補償しており「国旗を燃やして政府に抗議する」という「表現」が「国旗損壊罪」で規制されるようでは、そういう「刑法」は憲法違反だということになる。2021年の国会では、そこまで突っ込んだ議論がなされたのかどうか知らないが、結局廃案になったらしく、それは妥当な結末であったと言える。日本民主主義のお手本と言われるアメリカでは、国旗を損壊した者を罰するとする「刑法」が存在するが、何十年か前に「表現の自由に反する」との市民の提訴により、連邦最高裁は「国旗は尊重すべきだとしても、時の権力を批判する人たちが自国国旗を焼くといった行為は、権力に対する抵抗や反対の意思を象徴する行為であり、これは表現の自由として認めなければならない」との判決を下し、その後警察も検察も、国旗を燃やしたり引き裂いたりした者に「国旗損壊罪」を適用することはなくなったとのことです。このような事例からも、私たちは「表現の自由」の大切さを認識するべきだと思います。
2023年07月27日
LGBTQの人々の人権を侵害する差別発言をして首相秘書官を更迭された荒井勝喜氏が、この度官房審議官に発令されたことについて、元文科次官の前川喜平氏は9日の東京新聞コラムに、次のように書いている; 今年2月に性的マイノリティーについて「隣に住んでいたら嫌だ。見るのも嫌だ」、同性婚制度ができたら「この国にいたくないと言って反対する人は結構いる」などと発言し、首相秘書官を更迭された荒井勝喜氏。経産省で官房付になっていたが、4日付で官房審議官に発令されたという。 彼は局長経験者だから確かに降格人事だ。しかし彼の差別発言は「全体の奉仕者」(憲法15条2項)として明らかに問題であり、信用失墜行為として懲戒処分になってもおかしくなかった。経産省は「適材適所の観点から経産相が判断した」「本人は深く反省している」と説明しているそうだが、それなら西村康稔経産相はこの人事の理由を自ら説明するべきだし、荒井氏本人は自ら謝罪と反省の意を公にするべきだ。そして経産省は二度とこんな差別発言をする官僚が出ないよう必要な措置をとるべきだ。 僕は文科次官だった2016年に中堅幹部以上を対象に性的マイノリティーについて学ぶ研修会を開いた。退任時に全職員に送ったメールでは性的マイノリティーへの理解と支援を呼びかけた。職員がALLY(アライ)(理解者・支援者)だと示すためのステッカーも作った。荒井氏を要職に戻すならこれくらいはやってほしい。荒井氏にしっかり学ばせてアライに変身させられれば経産省も見直されるだろう。(現代教育行政研究会代表)2023年7月9日 東京新聞朝刊 11版 23ページ 「本音のコラム-荒井勝喜氏は反省したのか」から引用 我々国民の目から見れば、文部科学省も経済産業省もあまり変わらないように見えますが、文部科学省では既に2016年に、性的マイノリティについて学ぶ研修会を開いたというのは立派だと思います。官僚の意識改革は大事なことですが、与党である自民党の右翼議員が「LGBTQは本人の思い込みだから、治療や教育でまともな人間に戻る」などと妄言を吐くことも深刻な問題であり、こういう議員たちにも「研修会」が必要ではないかと思います。
2023年07月26日
LGBTQの人々への差別を解消するために法律を審議していたのに、出来上がった法律は「差別を増進する」内容に変わり、その法律が施行されたことについて、法政大学名誉教授・前総長の田中優子氏は9日の東京新聞コラムに、次のように書いている; LGBTQ(性的少数者)理解増進法が6月23日に施行された。ひどい修正がなされた結果、差別を助長してしまった。これは「差別増進法」と表現するしかない。 「不当な差別」という言葉で「不当でない差別」があるかのように思わせ、「全ての国民が安心して生活できるよう留意する」という言葉で当事者たちを不安の原因のように扱い、「家庭および地域住民その他の関係者の協力を得つつ」という言葉で教育現場に圧力をかけた。 問題は与党議員たちの想像力の欠如である。6月23日の朝日新聞に掲載された仲岡しゅんさんの寄稿が、その欠如を補ってくれる。トランスジェンダーというのは「長い時間をかけ、その人の性別のあり方を根本的に切り替えていく」作業だという。性を越境していく中で、その当事者が「さまざまなことに折り合いをつけながら、自分にふさわしい場を使いながら生きて」行くことなのである、と。心から納得した。「さまざまなことに折り合いをつけながら」なんとか生きて行くのは、まさにマイノリティーの生き方である。それは、外国人、女性、障がい者、高齢者など、全てのマイノリティーに共通している。女性なら、当然自分の経験から想像できるだろうと思っていた。 ◇ ◆ ◇ ところがこの修正案が通った日、某女性議員は「区別が必要だ」と言った。女性たちは「差別ではなくて区別だ」と言いくるめられながら、仕方なしに「さまざまなことに折り合いをつけ」て生きてきたのではなかったか。女性こそ自分の経験から、社会のあらゆるマイノリティーに寄り添うことができるはずだ。しかしそれが最も求められる国会議員に、その意思のない女性がいるのはどうしたことだろう? 人間は、いや他の生物も同様らしいが、男女に単純に「区別」はできない、という現実を私たちは知った。だからその現実と共に生きようとしている。にもかかわらず今さら「区別」と言うのは、現実を無視したい、と言っていると同じだ。 ◇ ◆ ◇ 彼らが言いつのる滑稽な事例で言えば、もし男性が堂々と女性トイレや女湯に入って悪事を働いたら、それは「自分にふさわしい場を使いながら」「折り合いをつけ」て生きてきた性的少数者であるはずはなく、ただの男の犯罪者に違いないから、罰すればよいだけのことだ。法律は、悪事を働いた者を罰する。悪事を働くかもしれない者や悪事を誘発するかもしれない者を勝手に想像することこそ「差別」なのである。個人はさまざまな要素を持った総合的人格である。そこから性や出自や欠損のみを取り出して攻撃したり消費するのは全て差別であるから、女性差別、性的少数者への差別、部落差別、外国人差別、障がい者差別は、同じなのだ。そして「差別したい人」は一瞬の優越感を手に入れるために、あらゆる差別をする。 そういう社会を乗り越えるためには、最初の法案にあった「差別は許されない」という言葉が必須であり、差別した者は罰せられる法律が必要なのである。 同性婚を法制化し、この差別増進法は撤廃すべきだ。同性愛を当たり前のものとしていた江戸時代末までの日本人が現代をみたら、「これは日本ではない」と青ざめるだろう。2023年7月9日 東京新聞朝刊 11版 5ページ 「時代を読む-差別増進法施行」から引用 この記事では与党議員たちは想像力が欠如しているのが問題だと言っているが、もっと正確に言えば「世の中の常識を知らない与党議員の存在が問題だ」ということになると思います。与党議員の中には「LGBTQは精神病だから、適切な治療や教育を受ければ普通の人間に戻る」などと公言する議員もいたりして、こういう非常識な議員の教育こそが必要とされているのではないかと思います。また、この記事では、日頃差別を経験している女性議員であればこそ、LGBTQ差別への理解があるはずなのに、その女性議員が「区別は必要だ」などと発言するのはどうしたことか、などと言ってますが、それは「女性議員」に対する買いかぶりに過ぎないわけで、与党の女性議員ともなれば、当人にしてみれば「世の中、女が差別されるのは当たり前」なのであって、そういう世の中を逆手に取って今日の地位を得ただけの議員に被差別者の「さまざまなことに折り合いをつけながら」なんとか生きて行く姿勢など、知るよしもないというのが実情と思います。いずれにしても、現行の性的少数者理解増進法は廃止して、まともな性的少数者差別禁止法の制定が必要と思います。
2023年07月25日
年々国民所得が目減りしているにも関わらず、大軍拡のために増税するかも知れない「自民党政治」について、9日の「しんぶん赤旗」は次のように報道している; バイデン米大統領が日本の大軍拡について発言したことで、あらためて日本の深刻な「アメリカ言いなり」の政治姿勢が明らかになっています。(田中倫夫記者) バイデン氏は6月20日、米カリフォルニア州での演説で「(岸田文雄首相に)軍事費を増やすよう、私が説得した」とのべました。日本政府が「日本自身の判断だ」と申し入れると、バイデン氏は1週間後の27日、「(日本の)首相はすでに(大軍拡を)決めていた」「説得は必要でなかった」とのべました。 要するに、岸田首相はバイデン氏が説得する必要もないほど、米国に従順だということです。 岸田政権は軍事費の2倍化=GDP(国内総生産)比2%を”自らの判断”と言っていますが、大軍拡の”震源地”はアメリカです。 2020年9月にトランプ政権のエスパー米国防長官は、日本を含む全同盟国に、軍事費をGDP比2%以上に引き上げるよう求めました。 21年に発足したバイデン政権は、中国に対抗していくために、日本の大幅な軍事分担拡大を要求。当時の菅義偉首相は、同年4月の日米共同声明で「自らの防衛力を強化する」と誓約しました。同年10月、岸田首相のもとで自民党は総選挙公約で初めて軍事費の「GDP比2%以上」を打ち出しました。 22年5月の日米首脳会談では、岸田首相は日本の国会と国民に何の説明もないまま、敵基地攻撃能力の保有検討と、軍事費の「相当な増額」を対米誓約。同年12月には、敵基地攻撃能力の保有と、5年間で43兆円の大軍拡を宣言した「安保3文書」を閣議決定しました。 これを”手みやげ”に岸田首相は翌23年1月に訪米。日米首脳会談で岸田首相は「安保3文書」を策定したことを報告し、バイデン米大統領は日本の果敢なりーダーシップを称賛」しました。 まさに「説得」の必要さえなく、アメリカいいなりに大軍拡路線を突き進んできたのが岸田政権です。◆◆自民の政治家は米国の腹話術人形◆◆ 京都精華大学准教授・白井聡氏の談話 日本の大軍拡をめぐるバイデン米大統領の一連の発言が浮き彫りにしたのは、日本の異常な対米従属体制です。 アメリカは、自分たちの出費を増やすことなく、どうやって世界に対するアメリカの覇権を維持するかを考え、同盟国に軍事費増額を求めています。日本に対しては、米国製の武器を買わせることによって増収を図る狙いもあります。 日本政府はバイデン氏に言われたから軍事費を増額するのではなくて、「主体的自発的」「自らの判断」だといいたいのでしょう。この意味することは、米側に言われる前に、日本側は先回りして軍事費の大幅増額を決定したということです。◆日中戦争の危険 「説得すら必要としない日米の軍事一体化」は私たちに何をもたらすか。台湾をめぐる米中対立、米中戦争の危険性がよく言われています。しかし、米国にとっての理想は、自分が出て行ってたたかうのは大変なので、日本にやらせるというものです。そのための敵基地攻撃能力の保有であり、大軍拡です。惨劇は「米中戦争」という形ではなく、「日中戦争」という形で現れかねません。それは私たちに破滅的危機をもたらすでしょう。 なぜこのような「日米一体化」が当然のように起きているのか。 自民党は長らく権力の座に居座り続けていますが、対米従属を見直すことは「夢想」だにしません。 いま岸田文雄首相は、安倍政権ですらできなかった大軍拡、敵基地攻撃能力の保有を進めていますが、その政策は、高市早苗(経済安全保障担当相)さんが自民党総裁選で唱えていたものです。その高市さんに政策を授けたのは安倍晋三さんじゃないですか。要するに自民党の政治家はみんな、米国による「腹話術人形」みたいになっているのです。 「対米追随」に疑問を呈しない、メディアの責任も大きいと思います。 私は、戦前の「国体」が「天皇」中心であったものを、戦後の自民党政権は「アメリカ」中心に取り換えて続けていると指摘してきました。そういう前提ならば、自民党のだれが首相になっても対米従属は変わらないでしょう。◆対等な条約こそ この対米従属に異を唱え、安保条約の廃棄を掲げているのは、日本共産党です。共産党は、対米従属から対等平等の日米友好条約を結ぶことを綱領に位置付けています。 この異常で恥ずべき対米従属関係を解消することが、日本政治の大きな課題となっていることはいよいよ明白です。<しらい・さとし> 京都精華大学准教授。政治学者。近著に『ニッポンの正体』『失われた30年を取り戻す』2023年7月9日 「しんぶん赤旗」 日曜版 5ページ 「大軍拡の”震源地”はアメリカ」から引用 戦後の日本の政治はアメリカの言いなりだという指摘は、正にその通りで、出来ることなら独立国の日本として自主的な路線を進むべきであるのに、自民党にその意思はなく、メディアもそのことを問題視しないのはおかしなことです。戦前は西欧資本主義の「覇者」であったイギリスが第二次世界大戦でナチスと戦って勝利はしたものの、その後没落してアメリカが取って変わって「覇者」となり、それに服従してこれまでやって来た日本の「進路」は、まあ間違いではなかったと言えるかも知れません。しかし、そろそろアメリカが覇者の「地位」に居られるのも時間の問題となりつつある今日、次の「覇者」となる可能性の大きい中国とのパイプを太くする「作業」に取りかかる時期に差し掛かっていると思われます。今さらアメリカの顔色をうかがって軍備拡張などしている場合ではありません。間違ってもアメリカの代わりに中国と戦争をするなどという馬鹿げた真似をしてはなりません。次の総選挙では、そういう「将来」を見据えて投票先を考えるべきだと思います。
2023年07月24日
安倍議員が銃撃されて一年経った今月8日の毎日新聞は、専門編集委員・伊藤智永氏の次のようなエッセイを掲載している; 安倍晋三氏がもう一度首相になろうと決意したのは、第1次内閣を1年で放り出してから5年後。身内や後援者ですら「まだ早い」と止めたのに、2012年自民党総裁選に名乗りを上げ、下馬評を覆して逆転勝ち。歴代最長政権はそこから始まった。 常識では推し量れない再登板への執念。安倍氏は祖父・岸信介元首相の無念を、何度も自らに言い聞かせていたに違いない。繰り返し読んでいた原彬久編「岸信介証言録」で、岸は語っている。 「もう一遍私か総理になってだ、憲法改正を政府としてやるんだという方針を打ち出したいと考えた。ひそかに政権復帰を思ったことは随分ありましたよ」 実弟の佐藤栄作政権が思いがけず長く続く間、口にはしなかったが、早く辞めろ、俺がもう一度やる、と狙っていたらしい。 首相をやって、野に下り、観察し、思い巡らし、「前の経験と結び合わせてもう一度総理をやった政治家は、前より大いに偉くなる。それを利用しないのは、国にとって非常に非能率だ。伊藤(博文)公にしても度々総理になって、非常に練達したわけだ」。すかさず原氏が、今でもその気ですかと突っ込むと、当時85歳の岸は「総理は務まるが、党総裁は務まらんよ」と笑った。 「安倍晋三回顧録」には、岸の教えに学んだ形跡がいくつも見られる。安倍長期政権は、岸の野望の世代をまたいだ実践でもあった。民主主義の衣を着た世襲政治の究極形が、ここにある。 強い国と強い指導者を持つには、血統による技術と知恵の継承もありだとの主張がある。とはいえ、安倍氏は8年近く政権を続けながら、岸の宿願だった憲法改正を実現できなかった。祖父から惰性で引き継いだ旧統一教会との「腐れ縁」により、あろうことか命を奪われ、政治不信を残した。 技術や知恵は継げても、思想はどうか。安倍氏は会社員を辞めるまで「家業」を継ぐ気はあってもノンポリだった。保守や国家を盛んに弁じたしたのは議員になってからだ。それも毎度お騒がせ型の発信が多く、心ある右翼や保守派は眉をひそめた。岸を模倣しようと無理したのかもしれない。 岸は複雑だった。「資本論」も読破し、天皇機関説を評価し、国家社会主義に共鳴した。極めつきは天皇観だ。国家を守るとは何か。「国土も国民も天皇制もあるが、人々の自由を守ることこそ政治の基礎だ。私の国粋主義は自由主義と矛盾していない」。もちろん一筋縄ではいかないが、「証言録」の白眉である。(専門編集委員)2023年7月8日 毎日新聞朝刊 13版 2ページ 「土記-世襲政治が極まると」から引用 いくら一周忌で故人を偲ぶと言っても、この記事はゴマの摺りすぎだ。安倍氏の「常識では推し量れない『再登板への執念』」は、祖父の無念を知っているからではなく、単に本人が非常識な人間だったからのことであり、自分では答弁書を書けないので、官僚に書いてもらって、それを読むのに漢字は全部フリガナが必要だったという、その程度の「学力」の人間に原彬久編「岸信介証言録」が読めるワケがなく、読みたいという意欲すら無かったであろうことは容易に想像がつきます。この記事では、「安倍晋三回顧録」には、岸の教えに学んだ形跡がいくつも見られるなどと書いているが、それも筆者の空想に過ぎず、当該「回顧録」はインタビューする側が事前に当人と打合せして、「私がこう聞いたら、こう答えてください。お爺様の「証言録」にはこういう記述がありますから」という打合せの上での発言であり、茶番とは正にこのことを言うものと思われます。岸信介氏は東京帝国大学を主席で卒業した名実ともに「秀才」であったのは事実のようですが、その孫ときた日には某私立大学にカネを積んで入学したものの、卒論ゼミには一度も出席しなかったため、担当教授は彼に単位を出さず、当然留年したものと思いきや、なんとこれまたカネを積んで裏口から卒業したのであったと、当時の担当教授が後日、朝日新聞に回顧録を語っておりました。こういう「歴史の事実」をさておいて、大新聞が上のようなオベンチャラ記事を書いているようでは、この国はまたもや進路を誤るのではないかと心配です。
2023年07月23日
岸田政権の政治姿勢について、8日の東京新聞は次のように書いている; 安倍晋三元首相が参院選の応援演説中に銃撃され、死亡した事件から8日で1年。与野党は暴力でなく言論で問題解決を目指す重要性を再認識した。一方で岸田文雄首相は安倍氏が敷いた保守の政治路線を加速させている。日本の安全保障政策の大転換となる敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有や防衛費の倍増方針を決定。安倍氏がなし得なかった改憲の実現にも意欲を示している。(佐藤裕介、市川千晴、坂田奈央) 首相は7日、安倍氏の死去から1年を前に、官邸で記者団に「安倍氏の遺志に報いるため、先送りできない課題に取り組んできた。こうした姿勢を大事に職責を果たしていきたい」と強調した。 岸田政権は2021年10月の発足後、政策面で「検討中」を繰り返し「検討使」とも称されたが、安倍氏の急逝後は一変した。 昨年末、安倍氏が唱えた敵基地攻撃能力の保有や、防衛費倍増を盛り込んだ国家安全保障戦略を閣議決定した。原発政策でも今年2月、60年超への運転期間延長を含め「最大限活用」との基本方針を決定。過去に首相が「考えていない」と発言していた原発の建て替え方針も盛り込んだ。 政治手法も説明責任を問われ続けた安倍氏を想起させる。安倍氏の国葬は、国会を素通りして閣議だけで決定。安保政策も原発政策も、国会での議論をほとんど経ないまま決めた。 首相周辺は「敵基地攻撃能力の保有や防衛費の大幅増は、安倍氏だったら反発が大きくてできなかったが、成し遂げている」と首相の自負を代弁する。 だが、首相が率いる自民党岸田派は第4派閥で党内基盤が弱い。首相が「安倍路線」を突き進むのは、来年9月に任期を迎える党総裁選で再選するため、最大派閥の安倍派など保守派の支持を得る狙いがあるとも指摘されている。 改憲に関しては、複数の自民党保守派議員が「首相は改憲で安倍さんを超えたいと思っている」と口をそろえ、党幹部の1人も「改憲への首相の思いは本気だ」とみる。 首相は6月21日の記者会見で「目の前の任期で改正すべく努力するとの思いを(以前から)申し上げている」と語り、来年9月までの実現を目指す考えを強調した。ただ、改憲には衆参両院での3分の2以上の賛成による発議と、国民投票での過半数の賛成が必要。国民の理解を得る十分な説明が大前提になる。2023年7月8日 東京新聞朝刊 12版 2ページ 「岸田政権『安倍路線』を加速」から引用 安倍氏が存命中であれば、安倍氏本人が最大派閥の安倍派に一声かければ「岸田続投」は簡単に実現できたのであったが、安倍氏がいなくなった今は、複数のリーダー候補が互いにけん制し合って誰がリーダーになるのか、今も決めることができず話し合いの会合を開くこともままならない状況である。そうなると、元々確固たる政治信条など持ち合わせていない岸田氏としては、頼る安倍氏がいないのだから、こうなったら安倍氏ならやったであろうことを自分がやって安倍派の支持を取り付けようという算段である。首相周辺は「安倍氏だったらできなかったであろうことを、岸田氏は実現している」などと発言して褒めたつもりかも知れないが、国会を無視してなんでも勝手に「閣議決定」して「これで決定だ」という政治手法を続けていけば、それに対する庶民の「抵抗」は「銃撃」や「爆弾」という方向へ向かわざるを得ないという歴史的教訓を、岸田氏もやがて思い知る日が来るのではないかと危惧されます。
2023年07月22日
去年、選挙演説中に銃撃されて死んだ安倍晋三議員は「自民党山口県第4選挙区支部」と「晋和会」という2つの資金管理団体を持っていて、安倍議員の死後は妻の昭恵氏が引き継いだと6月28日の「しんぶん赤旗」が報道している;◆私人が非課税で引き継ぎ可能 昨年7月に銃撃事件で亡くなった安倍晋三元首相の主要な政治団体を、妻の安倍昭恵氏が継承していたことが27日、本紙の調べで分かりました。これらの政治団体には2021年末の時点で、合計約2億4400万円の政治資金が残されていました。昭恵氏は元首相の跡を継がず議員になっていません。現行法では、後継者が議員にならなくても、代表交代という形で政治団体の資金を非課税で継承できます。政治資金の私物化にもつながりかねないことから、法の不備や道義的問題が指摘されてきました。(三浦誠) 元首相の関連政治団体は6団体あります。このうち昭恵氏が継承したのは、元首相が代表者だった「自民党山口県第4選挙区支部」と「晋和会」です。晋和会は元首相の資金管理団体でした。21年は、この2団体が元首相の政治資金を集めていました。 官報と山口県報によると、昭恵氏は元首相が亡くなった22年7月8日付で両団体の代表に就任しました。晋和会の所在地は、衆院第1議員会館にあった元首相の事務所から昭恵氏の自宅住所に移っています。 昭恵氏は元首相が亡くなった後、今年4月の衆院山口4区補選に立候補しませんでした。国税庁によると、親族が政治団体の新しい代表となっても相続税を課されることなく政治資金を引き継ぐことができます。 政治資金収支報告書によると、両団体の残金は21年12月末の時点で、同支部が約1億9200万円、晋和会が約5200万円でした。同支部の残額には政党助成金約2400万円も含まれています。総務省政治資金課によると政治資金規正法には、政治団体の代表が亡くなった場合、残金処理の規定はありません。このため残金の処理方法は、団体の新代表まかせとなります。 昭恵氏は同支部を今年1月31日付で解散させています。同支部の解散時の収支報告書はまだ公表されていないため、残金をどのように処分したか現時点では不明です。 ただ元首相の関連政治団体の一つである「山口政経研究会」は、昨年12月31日に解散する直前に残金34万円を晋和会に寄付の形で移動しています。同じように同支部の資金を晋和会に移動していたなら、公党の支部を“私物化”した疑いが出てきます。 晋和会は元首相の資金管理団体でした。資金管理団体とは公職の候補者のために資金を得ることができる政治団体です。元首相の政治活動のために集めた資金を、候補者とならなかった昭恵氏が引き継いだ形です。 昭恵氏に両団体の代表に就任した理由や政治資金の処理について文書で質問しましたが、回答はありませんでした。2023年6月28日 「しんぶん赤旗」 1ページ 「安倍元首相の政治団体 妻 昭恵氏が継承」から引用 昭恵氏が引き継いだと言われる政治資金管理団体というのは、上の記事が言う通り国民の税金から政府が支給する「政党交付金」も含まれたもので、国民は当然、政治家が政治活動に使う資金であると理解しているわけであるが、それをいくら親族だからとは言え、政治家ではない、近い将来立候補する予定も無い一私人が継承しても「別に違法ではない」というのは、如何にも自民党が作った法律らしく、大きな抜け穴を抱えた法律である。確か、今年の春の選挙では、安倍氏の後継者として吉田某という若い議員が立候補して当選したのであったが、「安倍氏の後継」とは言いながら政治資金は継承していないとは、如何にも安倍家的な対処法だと思います。その後の週刊誌報道などによると、昭恵氏は「安倍晋三記念館」の建設を計画しているとのことで、政党助成金をそんな目的に使用しても違法ではないのか、次の国会では質問してもらいたいものです。
2023年07月21日
安倍政権下で菅義偉総務大臣(当時)が始めた「ふるさと納税」という愚劣な制度について、現代教育行政研究会代表の前川喜平氏は6月25日の東京新聞コラムに、次のように書いている; 僕はふるさと納税をしていないし、これからもしない。僕だって牛肉や蟹や酒や果物などの返礼品はほしいが、我慢している。税金を流用してそんなものを手に入れるべきではないと思うからだ。ふるさと納税制度は公共サービスを支える地方税制を著しく歪めている。本来居住自治体に納めるべき税金を使った「官製通販」と堕している。納税額の多い高所得者ほど得をする逆進性もある。ただ、制度は現にあるのだから、利用する人を責めるつもりはない。悪いのはこんな制度を作った政治家だ。 東京都世田谷区ではふるさと納税制度に伴う区税の流出が、2023年度は前年度比10億円増の97億円に達したそうだ。保坂展人区長は「耐えられない」と悲鳴に近い声を上げている。区長は税控除率の引き下げや交付金による補填を国に求めた。制度を所管する総務省の官僚たちもふるさと納税制度の見直しが必要であることは重々承知しているはずだ。 問題は政治にある。08年に始まったふるさと納税制度は、菅義偉総務大臣(当時)が導入を決めた。菅氏はこの制度が国民に喜ばれるいい制度だと思い込んでいるらしい。低所得で制度が利用できない住民税非課税世帯などまるで頭にないのだろう。僕はこんな制度を喜ばない。こんな悪い制度は一刻も早く廃止すべきなのだ。(現代教育行政研究会代表)2023年6月25日 東京新聞朝刊 11版 19ページ 「本音のコラム-ふるさと納税しない宣言」から引用 この記事が主張するように、自治体は住民から税金を集めて住民が安心して住めるように公共のインフラを整えるのが仕事であるが、自民党が人気取りのつもりで始めた「ふるさと納税」も行き過ぎると、本来税収を得るはずの自治体が減収となって十分な住民サービスに支障をきたすことになり始めている。疲弊する「地方」に救いの手を、という発想は良かったのかも知れないが、行き過ぎれば上の記事が書いてる通りの「弊害」が出てきているのだから、この問題は政府によって速やかに解決されるべき問題だ。
2023年07月20日
NATOとソ連(現ロシア)の間で戦後長らく中立を維持してきたフィンランドが、ロシアによるウクライナ侵攻後、中立政策を捨ててNATOに加盟したことについて、フィンランド国際問題研究所主任研究員のマティ・ペス氏は8日の朝日新聞で次のように述べている; ■侵攻で対話より防衛・抑止優位に ――ロシアと1300キロの国境で接するフィンランドの人々が長年の軍事的中立の立場からの転換を支持し、北大西洋条約機構(NATO)加盟に至りました。何が変わったのでしょう。 昨年2月、ロシア軍の戦車が連なる映像が流れ、全面戦争の始まりが示されました。キーウ近郊のブチャ周辺での残虐行為についての映像で「これまでとは違う、何かが始まった」という見方が強まりました。分水嶺(ぶんすいれい)でした。 多くの人がブチャは「フィンランド東部の町の一つだったかもしれない」と考えました。フィンランド人は、1939年に始まった「冬戦争」で、(現在ロシアからの侵攻を受けるウクライナのように)いわれのない侵略を受ける経験をしています。 ――専門家にも世論の激変は驚きだったのですか。 そうです。ロシア軍の侵攻前から「(侵攻が起きたら)フィンランドはNATOに加盟するだろうか」という議論は始まっていましたが、私は「世論は加盟に反対だから」と否定的に見ていました。 今起きていることは自然な展開に見えるかもしれませんが、30年近く一貫して加盟に反対してきた世論が急速に、劇的に変化すると、侵攻前に見通すことは困難でした。 ――対ロシアで慎重にならざるを得ない事情があります。 小国フィンランドが、大国ロシアと長い国境を接している。この紛れもない事実、そして「力の非対称性」に対処することが外交・安全保障と防衛政策の中核なのです。 フィンランドは主に2つの方法で対処してきました。「対話」と「防衛・抑止」です。歴代の政策立案者は、ロシア(旧ソ連)に「非同盟」の立場で対話する道を選んできました。そして冷戦が終わってもフィンランド人の大半が軍事同盟に参加しない方がいいと考えた。ロシアとの関係維持に役立つからです。 しかし昨年2月、第2次世界大戦後で初めて、対話に比べて「防衛・抑止」が明白に優位になり、加盟に至りました。 ――それまでは対話も現実的な道として続いたのですね。 それもフィンランド人が選んだ道でした。同時に伝統的な領土防衛を堅持してきたことも重要です。ロシアに挑発的にはならない姿勢を保ちながら、一方で防衛力を高めてきた。フィンランドはロシアとの良好な関係を模索しながらも、防衛面でナイーブ(無邪気)ではなかったのです。(聞き手・金成隆一) *<Matti Pesu> フィンランド国際問題研究所の主任研究員(外交・安全保障)。大学や欧州委員会、フィンランド外務省での勤務経験もある。2023年7月8日 朝日新聞朝刊 13版S 9ページ 「侵攻で対話より防衛・抑止優位に」から引用 フィンランドは戦後長らく、「対話」と「防衛・抑止」の2本立てで隣国との平和共存の道を進んできたが、ここにきてロシアは突如隣国を武力侵攻する国であることが明らかになったので、今後はNATOの一員として「防衛・抑止」のみでロシアに対峙していくと、このように説明しているように思われます。このようなマティ・ペス氏の説明に致命的に欠落しているのは、何故ロシアは武力侵攻に踏み切ったのかという「視点」だと思います。「ロシアはいきなり武力行使をする国であることが明らかになったので、自分たちはNATOに加盟して、『対話』は止めて『防衛・抑止』で対峙することにした」と言ってる。これは、現状を正確に認識しているとは言い難い「思考」ではないかと思います。ウクライナは米国CIAに唆されて親ロシア派の大統領を追放して、親欧米派のゼレンスキーを大統領にし、米軍基地をウクライナに建設するなどと言い出したからロシアは武力侵攻に踏み切ったという重大な事実を無視して、「世論が急変したから、『対話』は止めて『防衛・抑止』一本でいくことにした」などと言っても、やがては「自分たちは進路を誤ってしまった」と後悔する時を迎えるのではないかと危ぶまれます。
2023年07月19日
戦前の日本では政府が雇用した学校教員は政府の意向に従って生徒を教育するものであるとの認識で、「日本国は天皇が統治するもので、国民は天皇の命令に絶対服従するのが当然だ」という、いわゆる天皇制イデオロギーを全国の小中学生に教え込んだもので、その結果、国民は国が侵略戦争を始めても、それに抗議することが出来ず、命令されるままに戦地に出掛けざるを得ず、徴兵を拒む者は刑務所に送られる羽目となった。このような過去の歴史を反省して、現在の日本国憲法は「教育の国家権力からの独立」を補償しており、その理念を実現するために「教育基本法」が制定されたのであった。しかし、この「教育基本法」を改悪し、戦前風の「政府による教育の支配」を企てたのが安倍政権で、不運にも安倍氏の企ては次々と「強行採決」で実施されたのであったが、必ずしもその試みは成功したとは言えない状況であることを、6月25日の東京新聞が、次のように報道している;◆教育に政治介入、安倍政権肝いりで導入したけれど 安倍氏は二度の政権で「教育再生会議」「教育再生実行会議」という私的諮問機関を設け、報告や提言を通じて自身の政策を次々と実現した。「愛国心」に関する文言を加えた教育基本法の改定。道徳の教科化。昨年廃止されたが、教員免許に10年の期限を付けて更新講習を受けさせる仕組みも取り入れた。 独立した組織として、国や首長と切り離して運営してきた教委の改革もその一つ。総合教育会議設置の他に、教育委員長と教育長を統合した新たな「教育長」をトップとし、首長が議会の同意を得て任命や罷免するようにした。教育行政の最終権限は教委に残したものの、首長が干渉する余地を許す変革だった。 「政治介入は恣意的な教育を可能にする」。金沢大の石川多加子准教授(憲法学)は、教育の政治的中立性を保つのが教委に望まれた役割と説く。「戦前、天皇中心国家に尽くす人材を育てるため、国が教育を主導した。結果、戦争に突き進んだ。その反省で戦後は平和、人権、民主主義など、憲法が掲げる社会の実現のための教育を目指した」 戦後、教育の考えや制度を定めた教育基本法は、いわば教育の憲法と考える石川氏は、安倍政権の改革に厳しい目を向ける。「安倍氏は教育に執着していた。悲願の改憲を果たすには、教育を通じて国民の心を変える必要があったからだ。教育基本法をあっさり変え、指導する教員の養成や研修にも手を付けた」改革の肝だったはずの総合教育会議は不振。「教育再生」への反旗にも見えるが、名古屋大の中嶋哲彦名誉教授(教育行政学)は「教委たたきで集票していた首長にとって、誤算があった」とみる。「口出しするということは、首長も責任を負うこと。また、教育行政の最終権限を持つのは教委。必ずしも好き勝手できるわけでもない」。一方、教委の怠慢が露わになったとも指摘する。「首長は地域の教育に必要な予算を付ける責任がある。教委は会議という公の場で、予算のない事業に首長の協力を求められる。だが、そう機能していない」 中嶋氏は会議の「害」は、教育大綱ににじんでいるという。「多くの大綱で、全国学力テストの正答率やいじめの件数など数値目標を並べている。学校現場はその達成を求められ続け、疲弊している」。牽制し合う首長と教委は、大綱づくりでは「共犯」となって現場を締め上げ、責任を押しつけるという構図だ。中嶋氏は、老朽校舎の解消や少人数学級の維持など、現場の後押しや教育の質を上げるものを大綱に盛り込むよう訴える。 専修大の岡田憲治教授(政治学)は安倍氏の「教育再生」を「自分の権力基盤の強化や改憲に利用しただけ。どう再生するのか深い議論はなかった。保守層には響いても、時代遅れで国家主義的な『改革』だった」と切り捨てる。 中でも、安倍氏の教委制度の改革で問題の本質がずれたと指摘する。「当時の教委は形骸化していた。市民の声を吸い上げ、教育課題に向き合う組織ではなく、文科省の下請けとなって学校現場に同調圧力を効かせるマシンと化していた。それを何とかするのが『教育再生』なのに、首長権限の強化という違ったことをし、問題がねじれた。皮肉にも『安倍的なもの』から教委を守れ、となった」 21年度の不登校の子は24万4940人と、初めて20万人を超えた。自ら命を絶った子は22年で過去最多の514人。岡田氏は訴える。「子どもの安心安全を確保し、多様な学びを子ども自身が選べる環境が必要だ。それをどう構築するかが今、問われている。真の意味での教育再生に立ち返るべきだ」<デスクメモ> 「教育に政治家がタッチしていけないものではない」。第2次政権の前、安倍氏はそう主張した。多くの犠牲を強いた戦争を経て得た教訓を軽んじる発言だった。彼の理念を象徴する会議がどうなっているか。政治と教育の関係という根本的なところから、考え直すべき問題だ。(北)2023年6月25日 東京新聞朝刊 11版 19ページ 「こちら特報部-開かずの総合教育会議」から後半を引用 この記事では、終わりの方で専修大学の岡田憲司教授が「当時の教委は形骸化していた」と発言して、あたかも現在の教委はまともな活動をしているかのような印象を受けるが、当時も今も日本中の教育委員会はあたかも文部科学省の下請け組織であるかのように振る舞っているのが現実であり、憲法が理想とする「教育の自由」が確立されているとは言い難い状況であることを、私たちは忘れてはならないと思います。戦後の民主主義政治がスタートした時点では、教育委員は市町村議会の議員のように住民投票で選出されたのであったが、民主主義体制を快く思わない自民党によって「教育委員は自治体首長が議会の同意を得て任命する」というルールに変わってしまったため、教育委員会に住民の意思が直接繁栄される機会が失われ、政治家の意向が強く影響する状況になっている。これを、更に「自治体首長の権限」をもっと強くしようとしたのが、安倍晋三であったが、この先も安倍と同じことを試みる政治家が出ないとも限らないわけで、憲法の理想を実現するために、国民がより一層理解を深めることが期待されます。
2023年07月18日
ある日の朝日新聞「天声人語」は、日本人の偏見について次のように書いている; 「どこの国の出身ですか」。 日本で生まれました。 「うおーハーフかいな」。 ハーフじゃないです。ダブルです。 「箸の使い方、上手やなあー」。 ・・・・・。 「日本食は好きなん」。 はい。 「きょうは外人、多いなあ」。 ラーメン屋の客が、見た目が外国人のような若者に対し、立て続けに不躾(ぶしつけ)な質問を放つ。いかにも不愉快といった表情で、言葉少なに応じる若者。4年前に発表された映画『WHOLE』の一場面である。 兵庫県出身の川添ビイラルさん(33)が監督を務めた。父親はパキスタン籍、母親は日本人。自分や弟の体験を盛り込んだ作品だ。この国に生まれ、育ったのに、日本人とみられない若者たちの心の葛藤を描いた。 いま日本で生まれる子どもの100人に2人は、片親が外国人だ。彼らを外見だけで外国人扱いする偏見の強さに驚く。一方で、スポーツなどで活躍すれば、「国の誇り」と持ち上げる。そんな嫌な風潮はないだろうか。 先日、一本の投書が本紙に載っていた。「ハーフが関西弁でしゃべると気持ち悪い」。大阪の中学生は、かつて同級生に言われたという。幼いころから「当たり前」に使ってきた関西弁だが、それからは話すのを避けるようになったそうだ。読んでいて、何とも暗い気持ちになった。 「相手のことを知らず、知ろうともしないから、傷つけてしまうのかな」。川添さんは言った。自戒を込めて思う。自分の何げない一言が、誰かを悲しくさせていないか。もっと想像力を、多く持ちたい。2023年7月3日 朝日新聞朝刊 版 1ページ 「天声人語-ハーフでなく、ダブルです」から引用 見た目が外国人風だとどこまでもその人を外国人扱いするのは、私たちの日常によくあるように思います。しかし、本人にしてみれば片親が日本人で、日本で生まれて成長した人は、毎日の食事はよほどの大金持ちでもない限り、普通の日本人と同じ食事をするであろうし普通の日本人と同じ学校で同じ授業を受けて育てば、外見はどうであっても中身は我々と同じ日本人になるほかないわけです。ところが、世の中のそういう摂理を理解せず、外国人コンプレックスの強い日本人は、どんな流暢な日本語を聞いても、見た目のインパクトのショックで「この人には日本人ではない血が入っているから、きっと日本語は下手で、箸の使い方も覚束なくて、日本食なんてあまり食べる機会がないに違いない」などと勝手に決めつけてしまうのが、一般的な日本人だと思います。しかもその一般的な日本人は、アメリカに住んで日本語はあまり話さない大坂なおみ選手のことは「国の誇り」とばかりにもてはやすというのは、この記事が言ってるとおりです。見た目外国人風の日本人は、この先どんどん増えることと思います。古い先入観を卒業して、多様性が当たり前の時代を迎える心の準備がこれからの日本人には必要だと思います。
2023年07月17日
先月92歳で生涯を閉じたアメリカの経済学者で平和運動家のダニエル・エルズバーグ氏について、中央大学教授の目加田説子氏は6月25日の東京新聞コラムに、次のように書いている; 強大な権力を握っていなくとも、一人の決断で歴史は動く。そのことを、身をもって示したのがダニエル・エルズバーグさんだ。1971年。ベトナム戦争への無謀な軍事介入の過程が記された「ペンタゴン・ペーパーズ」(国防総省秘密文書)を米国の有力新聞にリークした。国防長官の下で自らも作成に加わった公文書である。このリークは、反戦運動が高まるきっかけを作り、ニクソン大統領を政権の座から追いやる一因ともなった。 国防総省勤務の後、エルズバーグさんは軍関連の戦略研究などを行うランド研究所に戻った。自著『世界滅亡マシンー核戦争計画者の告白』によると、自身の研究室に保管されていた大量の公文書、約1万5千ページをコピーした。その中には約7千ページの「ペンタゴン・ペーパーズ」も含まれていたが、残りは自身も関わった米国の核戦争計画をめぐるものが大半を占め、いわば「もうひとつのベンタゴン・ペーパーズ」だった。 ◇ ◆ ◇ スパイ罪など12の罪で起訴され裁判が進められる中、後年に公表するつもりでコピーを兄に預けていた。当局の追跡を逃れるため、公文書は何度も場所を変えながら大切に保管されていたが、最後は埋められた崖から暴風雨で流されて行方不明となった。それでも、エルズバーグさんはあきらめなかった。手元に残った文書やメモ、その後に公開された公文書などをもとに『世界滅亡マシン』を著し、核戦略の実態を明らかにした。 たとえば-米国は大陸間弾道ミサイル(ICBM)をいつでも発射できる即応態勢をとっている。米政府はその目的について、(1)ソ連のICBMによる第一撃を抑止すること(2)抑止が崩れてソ連の第一撃が始まった場合に、ソ連のICBMが米国のICBM基地に着弾する前に米国のICBMを発射して報復すること、と説明してきた。 しかし、これは「意図的な偽り」でしかないとエルズバーグさんは述べる。本当の目的は、米国が先に第一撃を実行した後に、即座にソ連のICBM基地を破壊し、相手からの報復による米国の被害をできるだけ限定することだった。数億人の民間人を死に至らしめる冷戦時代の核戦争計画がいかに秘密裏に進められたのか。そして、今日までどのような核の危険が続いているのかを明らかにしたのである。 「人類の歴史の中で、これほどまでに倫理にもとる(中略)政策はあったためしがない」。権力内部にいた者(インサイダー)の、良心からの叫びのような言葉だ。 ◇ ◆ ◇ 「ペンタゴン・ペーパーズ」を暴露した時、生涯を牢獄(ろうごく)で過ごすこともありうると覚悟した。起訴されたものの、彼を貶(おとし)めようとする政府の不正行為が明らかになり、投獄は免れた。それでも命がけの内部告発だったのは違いない。著書『国家機密と良心』の中で彼は、機密情報漏洩による危害よりもむしろ、明らかにした場合の公共の利益と恩恵の方が勝っていることがあると指摘している。 そのエルズバーグさんが、92歳で6月16日に他界した。彼と同じスケールの挑戦を誰しもができるものではない。だが、「良心」に基づくインサイダーの決断は社会や世界を動かせる。このことを彼の遺訓として受けとめていきたい。2023年6月25日 東京新聞朝刊 11版 5ページ 「時代を読む-インサイダーの良心」から引用 国防総省秘密文書を民間の新聞に暴露された米国政府は、国家機密を漏洩した者を重罪にしようとしてかえって不正な手段を弄したために、本人を投獄することが出来なかったというのは、如何にも民主主義のアメリカらしい逸話です。エルズバーグ氏の後に続く良心的インサイダーがいなかったために、アメリカはベトナム戦争の後も次々と世界のあちこちで不正な戦争を起こしてますが、やがて何時の日にか、そのような不正な戦争は出来なくなる日がきっと来ると思います。
2023年07月16日
アメリカでは酪農家に支払われる加工原料乳価は市場の相場に任せず、政府が価格を決めて酪農家の生活を保障する仕組みになっていると、東京大学大学院教授の鈴木宣弘氏が6月15日の「しんぶん赤旗」に書いている; 牛乳を守ることは国民の命を守ること、と欧米では認識されています。その理由について、米コーネル大学教授は「欧米で酪農が保護される第一の理由は、牛乳の供給を海外に依存したくないということだ」と言っていました。フロリダ大学教授も「生乳の秩序ある販売体制を維持する必要性から、米国政府は酪農をほとんど電気やガスのような公益事業として扱っており、外国に秩序が崩されるのを望まない」と話していました。◆◆◆◆ 米国では、連邦ミルク・マーケティング・オーダー(FMMO)と呼ばれる制度で、酪農家に最低限支払われるべき加工原料乳価は連邦政府が決め、飲用乳価に上乗せすべき最低限の金額も2600の郡別に政府が設定しています。 2014年から「乳代-(マイナス)エサ代」に最低限確保すべき水準を示し、下回ると政府が補てんするという、コスト上昇に応じた仕組みを完備しました。生産コスト上昇時には価格を指標にした制度では所得を支えきれないため、14年農業法(18年農業法で拡充)で、全体の政策体系を「販売収入-産コスト」を支える体系に組み換えたものです。 具体的には、100ポンド(45・36キログラム)当たりの生乳販売収入と生乳100ポンドを生産するための飼料コストとの差額(マージン)が4ドルを下回った場合には、4ドルとの差額を基準生産量の90%について支払います。これが「酪農マージン保護計画」です。生乳Iキログラム当たり約9円で、100頭経営で約700万円の「最低所得保障」が得られるイメージです。 フランスでは酪農家の農業所得に対する補助金の割合が143%というデータがあります。欧州では赤字の酪農経営に補助金が支給され、飼料代などの不足分を払った残りが所得になるため、所得に対する補助金の割合が100%を超えることは普通になっています。◆◆◆◆ カナダでは酪農の指定団体にあたる州別MMB(ミルク・マーケティング・ボード)に酪農家が結集し、寡占的なメーカー・小売りに対する対抗力があります。MMBを経由しない生乳は流通できません。そうしないと法律違反で起訴されます。MMBとメーカーはバター・脱脂粉乳向けの政府支持乳価の変化分だけ、各用途の取引乳価を自動的に引き上げる慣行になっています。 米国もカナダもEU(欧州連合)も、設定された最低限の価格で政府が乳製品を買い上げ、国内外の援助に回す仕組みを維持し、生乳需給の最終調整弁を政府の役割と位置付けています。 欧米では、直接支払いの補助金と価格支持=政府買い入れの両方で酪農を支えています。価格支持を廃止し、直接支払いも不十分なのは日本だけです。日本の酪農は飼料価格高騰で1キロ生乳を搾るたびに30円もの赤字で離農・廃業が相次ぎ危機的状況です。「価格支持十直接支払い」政策を早急に導入すべきです。<すずき・のぶひろ 東京大学大学院教授>2023年6月25日 「しんぶん赤旗」 日曜版 24ページ 「経済これって何?-政府が乳価支え赤字経営には補助金」から引用 欧米では「牛乳を守ることは国民の命を守ること」と認識されているとのことですが、日本でも実は60年代までは「米を守ることは国民の命を守ること」との認識から、農家が生産した米は農協を通じて一旦国が買い取ってから米穀販売業者に卸される仕組みになっていた時代があり、政府が買い上げるから農家の生活は保障されるということで、選挙のときは全国の農家が自民党支持で結束し、自民党長期政権が続いたのでした。しかし、自民党の政治活動の資金源は主に経済界から出ていたために、農家を保護する政策は次第に廃れていって、自民党も農家よりは財界を優遇する政策に切り替えていったため、家電製品や自動車を輸出する代わりに欧米で余った米や小麦、乳製品等を輸入しなければならないということになり、70年代になると輸入した小麦から出来たパンが国民の食卓で米にとって代わり、次第に米が余るようになり、確か80年代には政府は農家の米を買い取ることを止めて、米価は市場に任されてしまったと思います。そのため、農家は米を作るだけでは生活が成り立たず、兼業農家が増えました。今では米を作るだけでは、農機具の購入や肥料代の負担などがあり、米作りだけでは生きていけない事態となっており、親として子に跡を継がせることは不可能な事態となっており、昔稲作で繁栄した地域は耕作放置で荒れ放題になっている。日本の食料安全保障は破綻しており、完全にアメリカに依存しているために、バイデンが「戦闘機を買え」と言えば爆買いしなければならず、「防衛予算を倍増しろ」と言えばそれに従わなければならない、そういう国になってしまっていることを、「これでいいのか」私たちは真剣に考えるべきではないかと思います。
2023年07月15日
先月、国会の会期末が迫ると岸田首相は盛んに「解散風」をふかしたのであったが、最終的には「解散して民意を問うようなテーマは、今はないから」ということで、解散は今年の暮れ以降に持ち越しになった。しかし、毎日新聞専門編集委員の伊藤智永氏は「解散の大義」ならいくらでもあるとして、6月24日の同紙に次のように書いている: 衆院解散を巡る政治家の掛け合いは漫才としか聞こえない。 「解散の大義を教えていただければというような感じがしている」(麻生太郎自民党副総裁) 「大義をどこに求めるかは首相が決断されることだと思いますが、ないということはありえません」(森山裕選対委員長) 「大義を考えて解散してる人誰もいないよ。解散の後に大義はついてくる」(古賀誠元幹事長) 首相の専権だから理屈は何だっていい、あってないようなもの。衆院議員を全員クビにし、経費約600億円かけて全国民に投票で重要政治課題への意思を尋ねようかというのに、いま何を聞いたらいいのかねえ、知らないけど首相が何か考えるでしょ、そんなの後で考えればいいんだよ、というのだから、ふざけた話ではないか。 大義は誰が持つべきか。政権が国民に示すものというのは硬直した思い込み。政権の側に大義がないなら、国民の側から政権に問いただしたいことは山ほどある。 例えばマイナンバーカード。1億枚近い29項目の総点検を秋までに行うというが、最後は各自治体が人手でやるしかない。とても無理だ。秋以降、解散するなら当然「マイナ解散」で願いたい。 それにしても、担当が河野太郎デジタル相なのは偶然なのか。どうしても新型コロナウイルスワクチン供給の混乱とダブる。いくら個人でデジタル発信するのが得意でも、1億人に間違いなく物を届ける経験や能力を欠いた人が、なぜまたこの役に就いたのか。トントン拍子で出世する世襲政治家の実害を考えないのは難しい。岸田翔太郎元首相秘書官の問題もあった。そこで提案。もう世襲は禁止しよう。「脱世襲解散」。自民党議員の4割は引退だ。 小選挙区の定数是正は意義深い。「10増10減」の変更で自公連立に亀裂が入った。連立は続けるべきか。与党が国民に尋ねないなら、国民から与党に聞きたい。 人口動態に合わせて選挙のたびに区割りが自動的に引き直されれば、世襲は激減し、惰性的な連立も続かない。落選したのに復活当選する奇怪な制度もやめよう。選挙制度の是非を問う。それこそ議員が身を切る改革である。 どれも有権者が今の政治に抱く素朴で根本的な疑問だが、今の制度では政権が選挙の争点に掲げることはまず期待できない。そんな選挙にどうして関心を持てよう。どうせ平均2年の周期で解散しているのだから、いっそ衆院議員の任期を2年に改め、首相の解散権を大幅に制約する「解散権解散」はどうですか。(専門編集委員)2023年6月24日 毎日新聞朝刊 13版 2ページ 「土記-解散の大義あります」から引用 例によって伊藤氏のコラムは既知に富んでいて、読んで面白い。岸田政権はマイナンバーカードの問題を秋までに総点検するなどと言ってるが、その実務を担うのは岸田政権でもなければ政府職員でもなく、地方公務員である。小泉政権以来、正規職員の非正規化は地方自治体にまで及び、市町村役場の窓口は必要最小限の人員でぎりぎりの業務を行なっているところに、マイナンバーカードの紐付け作業などという余分な仕事まで押しつけられて大変なところに、その点検作業までやらされるのは気の毒の一言に尽きる。暮れか年明けに解散するのであれば、「マイナンバー解散」が良いと思います。そもそも加入は任意だと言って始めたマイナンバーカードを、全国民が加入する健康保険に紐付けることは明らかな「矛盾」であることを、全野党が選挙戦を通じてアピールすれば、問題の所在がより鮮明になって、与党の信用は地に落ち野党には政権交代の可能性を見いだす機会があるのではないかと思います。
2023年07月14日
横浜市にある私立学校で非正規雇用の教員が学校の都合で次々と解雇されるという不当労働行為を社会に訴えるために駅前でビラまきをしたところ、今度はそのビラまきをした教員が懲戒解雇されるという事件があった。しかし、その懲戒解雇された教員は裁判に訴えて戦ったところ、東京高裁で和解が成立したと6月24日の東京新聞が報道している; 非正規教員の大量退職を問題視した労働組合活動などを理由に、懲戒解雇された横浜市の学校法人「橘学苑」の元教員2人が、法人側に処分無効の確認などを求めた訴訟は東京高裁で和解が成立した。法人側が処分を撤回し、2人と労組に計約6600万円の解決金を支払う。和解は2日付。(畑間香織) 和解条項によると、法人側は2人の停職と解雇処分を撤回した。労組「総合サポートユニオン」宛てに「今後このような行為をしない」と記した陳謝文を23日、学校のホームページ上に掲載した。 横浜地裁判決などによると、40代と50代の正規教員で組合員だった2人は2020年9月~11月、非正規教員が大量退職している学校の現状を批判するビラを駅前で配布。この行為などが懲戒規定に当たるとして、法人側は2人を21年3月に懲戒解雇した。法人が運営する私立の中高一貫校では13~20年度に少なくとも計166人の教員が退職していた。 昨年12月の地裁判決では「正当な組合活動を逸脱しない」として、懲戒処分は無効と認定。法人側が控訴していた。 23日に会見した40代の元教員は「組合活動が正当と認められ、うれしい。使用者側からの理不尽な対応に対抗する手段かおることを知ってもらいたい」と述べた。法人側は取材に「陳謝文に示した通り」と向答した。2023年6月24日 東京新聞朝刊 12版 6ページ 「学校法人と元教員和解」から引用 その昔、天皇が神様の子孫だと言われた時代は、教員は学校で生徒に授業をしていればいいのであって街頭に出てビラをまくなどもってのほか、というのが常識で、下手をすると警察官が取り締まりの対象にしたかも知れない事例であるが、そういう社会が戦争で負けた結果、民主主義の国として生まれ変わって、新しい憲法の下で労働者の権利も尊重されるようになったのでしたが、国鉄民営化と同時に大手の労働組合が解散に追い込まれたのを切っ掛けに、わが国の労働運動は財界の回し者が操るような「連合」などという組織に絡め取られて、通常の労働組合活動が経営者から「懲戒解雇の対象」扱いされる時代になったのは由々しき事態と言うほかありません。幸いにして「司法」はまだそこまで腐敗はしていないので、なんとか労働者の「勝訴」を勝ち取ることはできましたが、これからの高校生たちは先生方の「労働者としての戦い」をよく見て学習し、自分たちが生きていくための「力」にしてほしいと思います。
2023年07月13日
ヘイトスピーチの解消を目指す条例の制定について、2年前は「効き目があるかどうか、確証が持てない」などと答弁していた神奈川県の黒岩知事は、同じ質問を受けた先月の県議会では「条例制定も選択肢の一つだ」と一歩前進を示唆する答弁をしたと6月21日の東京新聞が報道している; 黒岩祐治知事は20日の県議会代表質問で、ヘイトスピーチ解消を目指す県条例の制定について「選択肢の一つだ」と答弁した。知事は2021年6月の県議会で「条例が実効性を担保できるのか、確証が持てない」などと答弁しており、2年を経て一歩前進した。 質問した県議は、任期が4期目に入った知事の方針を確認するとして、4月の横浜市議選の選挙期間中に中国出身の候補が誹謗(ひぼう)中傷された問題を引き合いに出し、ただした。知事は「どういう内容であれば実効性を確保できるのか、国や他自治体の動向を注視しながら考えていく」と述べた。 ヘイトスピーチ対策を定めた条例は、県内では川崎市が制定済み。相模原市も制定を目指している。 また、県民を対象としたインターネット上の差別的な書き込みに対し、県がプロバイダー(接続業者)に直接、削除要請をする仕組みを年内に整える方針も答弁した。これまでは横浜地方法務局を通じて要請していたが、より迅速に対応できるようにする。(志村彰太)2023年6月21日 東京新聞朝刊 21ページ 「ヘイトスピーチ県条例制定」から引用 黒岩知事と言えば、テレビのアナウンサーをしていた頃は保守的な発言が目立つ人物で、私は神奈川県の知事には相応しくないと思ってました。案の定、知事に当選してからの足跡を辿ってみても、保守派支持の人々の目にはそれなりに黒岩知事の実績を前向きに評価する人もいるのかも知れませんが、私の目には「やっぱり保守派なんだな」としか映りませんでした。しかし、この記事によれば、保守派の黒岩知事の目からみても、昨今のヘイトスピーチの状況は「これは放置しておくわけにはいかない」という事態であることは確かで、黒岩氏をして「何かしら有効な手を打たなければ」という気分にさせたものと思われます。黒岩県政が一日も早く有効な「ヘイトスピーチ対策」を実施するように希望します。
2023年07月12日
第二次世界大戦で侵略戦争をしたことを反省して平和憲法を制定し、武器輸出を禁止してきた私たちの戦後の伝統を覆して輸出を解禁し、原発事故を機会に建築から60年を過ぎた原発は使用停止にするという規則も撤回する岸田政権について、ルポライターの鎌田慧氏は6月20日の東京新聞コラムに、次のように書いている; 福島原発事故をもたらした東日本大震災の復興特別所得税を軍事費に転用すると岸田内閣が決定したのは、昨年末のことだった。こんどは会期末に防衛費倍増の「防衛財源法」を成立させ、防衛力強化資金を創設する。 今でさえ年間5兆円強だが、10兆円になると、米中についで世界第3位の防衛予算になる。それも「防衛装備移転」の名目で武器輸出の解禁さえ狙われるようになった。 岸田内閣は航空自衛隊のF15のエンジンまで売り払う方針(本紙19日)。この大型戦闘機100機は改修に適さないので、エンジンなど売却するとか。もったいないようだが、禁じられてきた殺人兵器の輸出だ。 安倍政権時代、トランプ大統領にF35をバカ買いさせられたツケの支払いもあって、肝心の日本の防衛産業は粗末にされてきた。それで防衛費を倍増させ、並行して「防衛産業強化法案」を成立させた。そのための「防衛増税」は世論の反発が強く、一年延期にして風当たりを避ける姑息さ。 さらに宇宙航空研究開発機構(JAXA)と防衛省による「宇宙防衛」の準備も始まり、ミサイル開発とあわせた「敵基地攻撃能力」が着々と進められている。「台湾有事」を進軍ラッパに憲法9条の足元が攻撃され、原発への逆走とあわせて、兵器と原発の三菱重工などのメーカーを活性化させている。(ルポライター)2023年6月20日 東京新聞朝刊 11版 21ページ 「本音のコラム-兵器と原発の逆走」から引用 日本が防衛費を現在の2倍にすると、世界で3番目の軍事大国になるということは、日本は過剰な防衛費を支出するということである。日本は、人口も国土面積も中国の10分の1なのだからその防衛に必要な費用は中国の10分の1で済むはずである。過剰な防衛費を予算立てするということは、その予算で特定の企業を潤わせて、そういう企業から支援をキックバックしてもらって政権の延命のエネルギーにしようという、戦前の日本の政治家がやっていたことを、戦後も繰り返すのでは、この国はまたしても間違った道に進むということになる。国民もいい加減に目を覚まして、愚かな政府の進路をコントロールする知恵を身につけるべきである。
2023年07月11日
国際政治学者の羽場久美子氏が5月に横浜市で開かれた「平和のための戦争展 in よこはま」で講演した内容を、6月18日の神奈川新聞が、次のように要約して伝えている; ロシアによるウクライナ侵攻を契機に、中国が台湾を攻撃する「台湾有事」への危機感が国内でも強まった。国際政治学者の羽場久美子さんは、背景にある世界情勢の転換を説き、東アジアで戦争を起こさせないために、近隣国と経済や文化で連携することを呼びかける。5月20日に横浜市内で開かれた戦争と平和を語り継ぐ催し「平和のための戦争展 in よこはま」での講演を再構成して伝える。(構成・山本 昭子)■アジアの時代 いま「台湾有事」が叫ばれる背景には、中国をはじめとするアジアの経済成長があります。欧米の時代が頭打ちになり、ゆっくりと終焉に向かい、アジアの時代になりつつある。データで見ていきましょう。 2100年の世界人口はアジアとアフリカで8割を超えると推計されています。この「新しい8割」は貧困にあると言われた20世紀のアジア、アフリカではありません。IT(情報技術)やAI(人工知能)を持つ中国やインド、ASEAN(東南アジア諸国連合)がけん引するアジア、アフリカです。 昨年の名目国内総生産(GDP)は1位が米国、2位が中国、3位が日本でした。中国は2010年に日本を抜き、12年間で日本の4倍に成長しました。5年後の28年には米国を抜くと言われています。米金融大手ゴールドマンサックスの推計によると、75年には1位中国、2位インドとなり、米国は3位に転落します。その後に続くのはインドネシア、ナイジェリア、パキスタン、エジプト、ブラジル・・・・日本は12位です。 つまり、あと50年もすれば先進国が入れ替わる。G7(先進7力国)が後発になり、G20がトップに立つ時代になるということです。少子高齢化が進む日本は60年には労働力人口が半減します。改革は急務で、防衛費にお金を使っている場合ではないのです。■友好が不可欠 にもかかわらず今、世界は不安定化する危機の時代と言われます。先進国ではナショナリズムが高まり、軍事力で世界秩序を維持しようとしている。欧米によるウクライナへの軍事支援の目的はロシアを倒すことではなく、中国を封じ込めることにあると言われます。中国が経済力で米国を追い抜く前に、軍事力で封じ込めようとしているのです。 この状況をいかに克服すべきか。スイスで開かれた世界経済フォラム年次総会(ダボス会議)が答えを出しています。今年1月に集った賢人たちは、分断化された世界における協力をテーマに話し合い、レジリエンス(回復する力)や相互信頼、対話が重要だと言いました。コラボレーションやイノベーション、人間の善意と工夫によって危機をチャンスに変えることができるのだ、と。 特に日本は近隣国との友好が不可欠です。中国を含む世界経済は密接に結びついており、経済と文化関係で手を結べば戦争をしなくて済む。しなくてもいい戦争に備えるために、沖縄にミサイル配備を進めているのが現在の姿です。沈滞しつつある日本経済が浮上する可能性を、なぜミサイルで自ら撃ち落とさなければならないのでしょうか。 米国のバイデン政権は「価値の同盟」を打ち出し、「民主主義」対「専制主義」という構図で世界を2分しています。成長するアジアを専制と呼び、軍事力を強化し、同盟国に武器を販売している。安全保障面では日米豪印の「クアッド」や米英豪の「オーカス」などで何重もの網の目からなる封じ込めを促進しています。 地政学的に米国から日本を眺めると、約3千キロにわたる列島は中国やロシアが太平洋に進出するのを封じ込める自然の要塞となります。ここに反撃能力(敵基地攻撃能力)を持つ形でミサイルを配備すればどうなるでしょうか。1発に対して100発返ってくるかもしれません。もう「戦争前」の状況は始まっています。■平和のハブを 私の母は岡山大空襲に遭い、父は広島で被爆しました。第2次世界大戦では日米停戦の遅れにより、沖縄戦や全国のじゅうたん爆撃、原爆投下という大量の犠牲が生じました。同じことがウクライナで繰り返されており、早期に停戦すべきです。ウクライナ戦争が続く限り、「東アジアも危ない」というメッセージが繰り返し出され、ミサイル配備を拡大し、防衛費も膨らんでいきます。 では、東アジアで戦争をさせないために私たちは何をすべきか。沖縄を平和のハブにすることです。東アジアの中心に位置し、歴史的に中国などと友好関係を築いてきた沖縄をミサイル基地にするのではなく、経済と文化の中心にすれば、東アジア全体の平和と発展が実現することになります。 モデルはあります。冷戦期の2極化を克服した全欧安全保障協力会議(CSCE、後の欧州安保協力機構<OSCE>)です。1975年に中立国・フィンランドのヘルシンキで会合を開き、東西の国々が武器ではなく、話し合いの場を持ち、冷戦終焉のきっかけとなりました。 米国や中国、ロシア、韓国、北朝鮮、そして日本。東アジアを巡るこれらの指導者らの面々からして、各政府に平和を求めて手をつなげといっても難しいでしょう。重要なのは自治体、市民の力です。沖縄県は「地域外交室」をつくり、独自に韓国訪問などをしています。横浜市も自治体間の協力関係を進め、世界とのネットワークを持っていると聞きます。私たち自身が自治体や議会から平和を発信していくことが重要であり、緊急でもあります。沖縄を平和のハブに、「東アジアの国連」を市民の手でつくっていきましょう。2023年6月18日 神奈川新聞朝刊 15ページ 「論説・特報-ミサイルではなく対話を」から引用 世界のどこかでいつも戦争をしていないと生きていけないアメリカの軍需産業は、ロシアを包囲してウクライナ紛争を引き起こし、散々武器をつぎ込んで、そろそろ潮時になりかけているので、次は「台湾だ」と言わんばかりに、台湾は中国の一部であるということを認めつつも、中国政府を介することなく直接武器を売りつけてあからさまな中国包囲網を構築し、何かの切っ掛けをつかんで戦端を開こうと虎視眈々と狙っている。賢明な中国政府は、ロシアがアメリカの挑発にのってウクライナに武力侵攻して、どのような事態になっているか、仔細に検討しているはずで、無謀な武力行使などしなくても、今のまま自国の経済力を地道に成長させていけば、そのうち自然に台湾も中国経済の一部として活動するのが当たり前の時代が来ることを予見していることと思います。したがって、台湾有事などと言って沖縄やその周辺の島々に自衛隊基地だのミサイルだのを配備しても、それは沖縄に厄災を招くばかりでプラスになることは何もないことは、先の大戦の結果が示しているのであり、沖縄県はアメリカや韓国に外交団を派遣したのに続いて、中国とも外交関係を樹立して、東京の政府をあてにしないで独自の「生き延びるための道」を切り開いて行くべきだと思います。
2023年07月10日
ある日の朝日新聞に、世襲の政治家を批判する読者の投書が掲載された; 親の職業を世襲する者は、皆と同じスタートラインからではなく、ゴールに近い位置からスタートするようなものだ。これは、どんな世襲にも共通する特徴だろう。世襲政治家も歌舞伎役者も、子どもの頃から政治の世界や歌舞伎を学び、ある程度の専門的な知識や技量を身に付けることができるのは確かだ。 だが世襲の可否は「公共性」から考えるべきだ。歌舞伎では、世襲した役者の技量不足で観客が減り、廃業することがあるかもしれない。だがこれはその役者の問題であって、公共の利益を害さない。 一方、政治は違う。言うまでもなく政治の巧拙は国民の生活に直結する。だから公職選挙法や政治資金規正法などによって、選挙活動の制限と公平化が図られているのだ。ところが、後援会組織の充実度、知名度の有無、選挙資金の多寡や集金力、いわゆる「地盤、看板、かばん」を持つ世襲候補が極めて有利なのが現実だ。理念や政策、資質で選ばれるべき政治家の登場を妨げる世襲は国民の利益になるまい。もっとも、世襲候補がそのように優れた人物であれば、親の地盤以外で立候補して当選を目指せばいいのではないか。2023年6月20日 朝日新聞朝刊 13版S 12ページ 「声-世襲のよしあしは『公共性』から」から引用 この投書は論理が明快で分かりやすい。歌舞伎の役者は世襲で一向に構わないが、政治家は出来るだけ優れた人物を選ばないと、素質のない者が政治家になると国の予算の使い方を理解できず、親類縁者の仕事を有利にするような不正な国家予算の使い方をして恥じないという、安倍政権に典型的に見られた「悪政」が行なわれるということを、我々はこの目で確認した。現行の選挙制度では、才能のない人物でも集票に有利であるために簡単に「親の跡目を継いで」政治家になることができるが、これによって国民は大きな迷惑を被っているのは、最近の日本が国民所得の低さやジェンダー差別を克服できずにいるなど、先進国の地位から明らかに「転落」してしまっていることからも明白である。従って、今後は親と同じ選挙区からの立候補を禁止する法律を作っても、憲法が保障する「職業選択の自由」に抵触することはないと考えて、可及的速やかに実施するべきである。
2023年07月09日
先月の国会で活火山法改正案が全会一致で可決成立したことについて、現代教育行政研究会代表の前川喜平氏は6月18日の東京新聞コラムに、次のように書いている; 活動火山対策特別措置法(活火山法)の改正法が14日の参議院本会議で可決・成立した。火山の観測や調査研究を一元的に担う「火山調査研究推進本部」が文部科学省に設置される。文科相を本部長とし、火山に関する総合的な調査観測計画を策定。関係行政機関の調査研究予算の調整も行う。8月26日を「火山防災の日」とすることも定められた。改正法は来年4月に施行される。立憲主義に背き、国民の信託を裏切る法律が次々に成立した今国会にあって、全会一致で成立したまともな法律だ。 火山列島の日本では、常にどこかで火山が噴火する危険性が存在する。火山の噴火は人間の力で制御できない。宮沢賢治の童話「グスコーブドリの伝記」では主人公が冷害を食い止めるために人工的に火山を噴火させるのだが、21世紀の今日においても賢治が思い描いた人間による自然の制御は実現していない。 戦争と火山噴火。我々はどちらを恐れるべきなのか。その答えは明らかだ。戦争は人間が起こすものだから人間が防ぐことができる。火山噴火は自然が起こすものだから人間が防ぐことはできない。できるのは調査、研究、観測、予知の努力を通じて災害に備え、被害を最小限に食い止めることだ。軍拡予算はそっくり火山、地震、水害などの自然災害対策に振り向けるべきなのである。(現代教育行政研究会代表)2023年6月18日 東京新聞朝刊 11版 23ページ 「本音のコラム-改正活火山法」から引用 戦争は人間が起こすものだから人間が防ぐことができる、というのは理屈としてはその通りであるが、実際にはそう簡単に防ぐことは出来ず、数千年の歴史の中で人間は数限りない戦争を繰り返してきており、今日に至るもいまだその状態から脱却できずに相変わらず戦争をしている。なぜ戦争を止められないのか。それは、兵器産業経営者にとって莫大な国家予算を公然と自分のフトコロに入れることができる「活動」だからであり、兵器産業経営者は米国政府を操っていつも世界のどこかで「戦争」が出来るようにしており、今戦われているウクライナ紛争も、冷戦終結と言われた時代から米国政府がNATOを唆して、ウクライナの親露派大統領を失脚させて親米のゼレンスキーを大統領にしてウクライナに米軍基地を建設するような方向に話をもっていったから、プーチンがウクライナ侵攻に踏み切ったものである。米国政府が軍事力にものを言わせて自国に都合のよい状況を作り出すという「悪行」は、第二次世界大戦後に世界のあちこちで繰り返されたもので、この米国の横暴を止めさせれば「戦争を防ぐ」ことは実現するのであるが、兵器産業に支配された米国政府をまともな民主主義国政府にするのは、至難の技で、数十年後に米国経済が落ちぶれて、中国が世界の「覇者」の地位を占めるようになれば、もしかしたら、中国政府なら米国政府のように兵器産業資本に支配されるようなことはないかも知れないが、あるかも知れない。中国が米国を追い抜いて、世界のトップになる時代になるまでに、今よりももっと人権を尊重する思想を普及させて、武力で世界を支配したのは昔のことだと言えるような時代を、私たちの手で切り開いて行きたいものです。
2023年07月08日
近頃の世間はメディアに対する「見方」が偏っているのではないかとの主旨から、専修大学教授の山田健太氏は6月18日の東京新聞コラムに、次のように書いている; 大学で学生と接していると、メディアに「完璧さ」を求める声が強い。この「感情」は学生だけにとどまらず、社会全体を覆うメディア批判とも重なると思われる。その中身として主に3つが挙げられる。 ◇ ◆ ◇ 第一は「無謬(むびゅう)性」だ。報道は絶対に間違いが許されないとの思い込みがある。例えば、週刊誌の憶測(おくそく)記事はもってのほかとされるが、果たしてそうか。全メディアが均質で同様の「確からしさ」を身にまとっていては、私たちの生活は味気ないものになるだろう。雑多な情報があってこそ豊かな情報空間が生まれる。 事実は一つだから、さまざまな報道があるのはおかしいとの声もよく聞く。しかし、ものの見方は多様で、同じ事象を見ても受け取り方は人によって異なる。こうした声を突き詰めると、メディアは一つあれば十分ということになりかねない。 受け手側はメディアの違いを理解し、情報を見分ける力を身に付ける必要かあるし、ましてや公権力に「浄化」を求めるようなことがあってはならない。そもそも締め切りに迫られて報じるにあたり、完璧さを絶対条件にしては、記事や番組は出せないだろう。大切なのは、不確かなことを断定しない「誠実さ」や、とことん真実に迫ろうという真摯な「追求努力」があるかどうかだ。 第二は「品行方正」だ。プライバシーを侵害するなどもってのほか、記者は社会の迷惑にならないよう範を示す立ち振る舞いが必要というわけだ。それは、ある意味正しいものの、正当な取材行為が日常生活のルールと異なることはままある。とりわけ事件や事故に遭遇し、緊急性や非代替性がある際は形式的に法に反することがあり得る。何より取材で政治家や公務員から情報を聞き出す行為自体、形式的には情報漏洩(ろうえい)をそそのかす行為にほかならない。 あえて言えば、みんなが聖人君子のように振る舞えば、私たちの知る権利は満たされないことになる。しかし、今の学生には、そこまで無理しなくていいのではないかとの気持ちが強い。必要以上に行儀のよさが強調される社会は息苦しく、多様性を失うことにならないか。 ◇ ◆ ◇ 第三は「中立性」だ。主張することは良くない、報道は常に不偏不党であるべきだとの判断基準は、時に政府が言っていることは正しいはずで、否定するのはおかしいとの思いにつながる。いわゆる偏向批判ということだ。もちろんジャーナリズムが党派性を帯び、政治的、社会的対立をあおることに精を出してしまっては、分断が進み、報道機関の重要な機能である議題設定も、社会的合意を生み出すこともできなくなる。 だが、日本の報道機関は客観中立をうたいつつ、取材先と協調的な関係をつくる中で情報を入手してきた結果、メディアと政治の距離の近さが問題になった。一方、市民運動や住民運動に肩入れすることは、運動と一体化することで許されないと評価されてきた。しかし、社会の弱い立場に寄り添い、小さな声を拾う作業こそが「公正さ」の発露であるはずだ。そもそも課題解決のためにも一歩踏み込んだ「主張」が必要な場合は多いだろう。 もちろん、やんちゃが過ぎると世の中から嫌われるし、ジャーナリストとして最も大切な信頼性が失われるため、十分な注意と節度が必要なことは言うまでもない。2023年6月18日 東京新聞朝刊 11版 5ページ 「時代を読む-ジャーナリズムのやんちゃ性」から引用 「報道は間違いが許されない」というのは、見方によってはジャーナリストを過信しているためと言えるかも知れません。ジャーナリストだって人間ですから、それはたまには間違いをすることもあるでしょう。大事なことは「間違い」であることが分かったときに、それを誤魔化すのか訂正するのか、という点です。どこかの政治家のように、言を左右して責任の所在を不明にしてしまうようなことこそ問題視されるべきであって、頭から「間違いは許されない」と思うことこそ「間違い」なのです。 「品行方正」については、今どきの学生は誰に吹き込まれてそんな思い込みをしてるのか、不思議です。取材対象の政治家が何か不都合な事実を持っている場合には、あらゆる手段で隠蔽を試みるわけで、そういう相手から真実を引き出す場合には、時や場所を選ばず夜討ち朝駆けをしなければならない場合もあるでしょう。インターン活動などを通して世間の厳しさを体験すれば、「品行方正」とばかりは言っていられないという現実を知ることでしょう。 「不偏不党」については、現場のジャーナリストを統括する責任者が判断しコントロールするものであって、個々のジャーナリストが考える話ではないと思います。個々のジャーナリストは己の信念に従って、労働者の声を多く集めて「日本の労働政策はこうするべきだ」という記事を書けばいいのであって、また、あるジャーナリストは多くの経営者の声を集めて「経営戦略の観点からは、一定程度従業員の協力も必要だ」という記事を書くこともあるでしょう。いろいろな立場から、さまざまな記事を集めて、それをどのように紙面に配置して中立性を発揮するのか、そこが編集部の腕の振るいどころというものでしょう。若い学生諸君も、これから世間に出て、いろいろ体験を積んで、より良い社会にするために自分はどう貢献するのか、考える機会がきっとあると思います。
2023年07月07日
国から支給される科学研究費で「慰安婦問題」を研究する学者を「国の予算を不正に使っている」などと誹謗中傷したことが「名誉毀損」に当たるという、衆院議員・杉田水脈に対する大阪高裁判決が確定したことについて、6月18日の「しんぶん赤旗」は原告である牟田和恵氏へのインタビュー記事を掲載している;◆学問・フェミニズムへの攻撃 ノーの意思表示と連帯で勝利 自民党の杉田水脈(みお)衆院議員を名誉毀損(きそん)等で提訴したフェミ科研費裁判の控訴審判決が5月30日、大阪高裁でありました。昨年5月、原告の請求を全面棄却した京都地裁判決を一部覆し、杉田氏に33万円の賠償を命じる逆転勝訴判決が出され、確定しました。原告のひとりで、高裁判決で杉田氏による名誉毀損が認められた牟田和恵さんに聞きました。(党学術・文化委員会 朝岡晶子)――高裁判決は、牟田さんらの科研費研究には、杉田氏が言うような科研費の不正使用・ずさんな経理はなかったとし、地裁判決を一部見直しました。【牟田】 高裁判決は、地裁判決を覆す画期的な判断だったと思います。 杉田氏は、私たちが科研費研究の助成期間終了後に作成したショートムービー「『慰安婦』問題は#MeTooだ!」に対して、助成期間終了後に経費を支出していてずさんな経理だなど、私たちが科研費を不正使用したかのような発言をしてきました。 しかし、助成期間終了後に研究成果をまとめて発表することはしばしばあることですし、そもそも終了後に科研費を使えるわけがありません。 それにもかかわらず一審では、「研究期間終了までに動画が完成していなかったのは事実」であり、「被告がずさんと述べたのは、原告の牟田であるか、所属大学であるのか明らかではない」と、杉田氏の発言になかった判断までされて驚きました。 二審は、助成期間終了後に科研費が使用されたとは認められず、牟田の「名誉を毀損する違法なもの」として杉田氏に慰謝料の支払いを命じました。 これは、国会議員が科研費をはじめとした公金の支出について、何の根拠もなく好き放題に発言することへの歯止めにもなる重要な判断だと思います。この判断は、私たちの科研費研究にとどまらず、「反日研究に公金を使うな」などと言った科研費たたきや、東京都の若年被害女性支援事業の委託を受けて活動してきたColaboたたきの問題にもつながるものだと考えます。―― 一方、「慰安婦」研究に対し、杉田氏が「ねつ造」だとした発言については、「立場・見解の相違」であるとし、名誉毀損にあたらないとされました。【牟田】 二審が、「慰安婦」問題については、私たちの研究と杉田氏に意見の違いがあるのは周知の事柄であり、杉田氏が「ねつ造」と言ったのは、「慰安婦」には強制はなかった、性奴隷制は事実に反する「ねつ造」であるとする立場・見解から述べたのであって、私たちの研究について言ったわけではないとして判断を回避したのは、一審に続いて残念なことでした。 このように、裁判所が歴史修正主義に肩入れしているように思えるのは残念です。しかしこれは裁判所の問題というより、安倍晋三氏の官房長官時代以降、国家権力が主張してきた歴史修正主義に問題があると思っています。 今日、日本政府は、「慰安婦」には強制性があったとした1993年の「河野談話」ではなく、2016年、女性差別撤廃条約政府報告審査で杉山晋輔外務審議官(当時)が行った「強制連行は確認できなかった」という発言を政府見解としています。本来、三権分立に基づいて独立した判断をすべき司法が、行政・立法とむしろ歩調を合わせていることを確認する結果となりました。――2019年2月の提訴から4年3カ月。この裁判にはどのような意味があったとお考えでしょうか。【牟田】 杉田氏を提訴する以前、私たちの研究を理解してくださっている方からも、「杉田氏が差別的な発言をくり返す人物なのはわかっているのだから、裁判などしなくてもいいのではないか」と言われました。 しかし私は、杉田氏の発言を放置しておくことが、今後、科研費や学問の自由、そしてフェミニズムへの攻撃がされたときに、“あのとき私たちが放置していたからではないか”と思うかもしれないと考えると、いたたまれませんでした。私自身の学問的立場・社会的立場の責任からしても、ここではっきりとノーと言っておかなければならないと思ったのです。 実際、私たちが提訴した翌年の10月、菅義偉首相(当時)による日本学術会議会員任命拒否問題が起きたように、学問・研究への政治介入はいっそう強まっています。そのようななかで、高裁判決は、多少なりとも、国会議員が学問・研究に口出しするなということをアピールすることになったのではないかと思っています。――フェミニズム・ジェンダー研究や運動との関係ではどうでしょうか。【牟田】 杉田氏が科研費バッシングをしはじめた当初は、私たちの研究ではなく、科研費の助成額がより高額である別の研究を批判していました。しかし、途中から私たちの科研費研究に焦点を絞ってきた。 それは私たちの研究が、「慰安婦」や性暴力、セクシュアリティーを扱っている研究だったため、バッシングしやすかったのでしょう。加えて、この研究グループの全員が女性研究者であったということも関係していると思います。 そして残念ながら、京都地裁、大阪高裁の裁判官にも、それに近い認識があったのではないかと思わざるを得ません。杉田氏が私たちの研究にたいして「ねつ造」、「とんでもない研究」であると言い放ったことは、研究者の社会的評価をおとしめるばかりか、研究者生命にもかかわる重大な発言です。しかしこの問題について裁判所には理解されませんでした。 一方、ジャーナリストの伊藤詩織さんの裁判や選択的夫婦別姓裁判などがそうであるように、女性たちが黙らなくなってきました。そしてそれらが一定の支持を得るようになってきた。女性たちが声をあげることをよしとしない人たちは、それに対しての危機感をもっているのでしょう。ですからそれをつぶしたいと考えている。 裁判では、毎回たくさんの市民―なかでも女性たち―が傍聴席を埋めてくださり、多くの研究者がひとごとではないと受け止めて支援してくださったことも大きな力になりました。 引き続き、こうしたみなさんとともに、杉田氏のような歴史修正主義者が大手を振っているような社会状況に対して声をあげていきたいと思っています。<むた・かずえ> 1956年生まれ。大阪大学名誉教授。2023年1月までグラスゴーカレドニアン大学客員教授。『ジェンダー家族を超えて―近現代の生/性の政治とフェミニズム』(新曜社)、『部長、その恋愛はセクハラです!』(集英社新書)ほか2023年6月18日 「しんぶん赤旗」 3ページ 「焦点・論点-フェミ科研費裁判 杉田水脈氏に賠償命令確定」から引用 記事の中で牟田氏が訴えているように、歴史修正主義者の杉田水脈に言わせっぱなしにしないで裁判に訴えたことは良かったと思います。勝訴の判決は高等裁判所から出たので、もし被告側に「自分は間違っていない」という信念があれば最高裁に訴えるという「道」もあったのですが、さすがの杉田議員も高裁の判決内容と己のしでかした事を仔細に比較検討した結果、この高裁判決を最高裁で覆すことは不可能と判断したわけで、それだけの「判断力」を持ちながら、なぜ歴史修正主義の言動を改めようとしないのか、不思議な人だなと思いました。
2023年07月06日
ニュージーランドでは先住民族の権利がどのようにして回復されたか、社会人類学者の深山直子氏が6月15日の朝日新聞に、次のように書いている; 世界に先住民運動が起こっだのは1960年代でした。国際社会で議論が続き、国連で2007年、「先住民族の権利に関する宣言」が採択されました。そこではあえて、先住民を定義していません。定義すると、排除される人が出るためです。 しかし、共通項はある。まずは、他の民族に意思に反する形で土地を取られたり、支配されたり、同化政策があったりという植民地化の経験です。その結果、今もマイノリティーの立場にあります。 日本では19年施行のアイヌ施策推進法で、やっと「先住民族」と明記されました。時間を要したのは、入植国家ほど植民地化か明瞭ではなかったからでしょう。しかし、先住民の視点で過去を振り返ると、やはり他の先住民の経験と共通項が多い。先住民という概念が拡張しながら国際社会に理解されるようになったことも、重要な背景です。 先住民という概念は、国家あるいはマジョリティーと対比されるものです。本来、一地域の問題ではなく、「この国に先住民がいる」と言った瞬間、全ての国民が関係する問題になる。でも日本の現実は、そうなっていません。 他方、私が研究するニュージーランドは、先住民運動が盛り上がった75年ごろを境に、急速に国の形を変えていきました。先住民マオリと欧州系住民による2民族・2文化・1国家という、近年の多文化主義のはしりとなる2文化主義の方針を、すでに70年代に決めました。半世紀を経て、最近のニュージーランドでは、国名もマオリ語の呼び方と組み合わせて「アオテアロア・ニュージーランド」と称することが多いです。 自治区はありませんが、国から土地が返還されたり、特定の自然資源の優先的利用が認められたりしており、多岐にわたる権利が認められています。その過程では、補償や権利以前に、負の歴史、すなわち植民地化の過去が徹底的に調査され、検証されます。誰が、何を、どれだけ、どういう形でやったのかを白日の下にさらすわけです。 先住民問題はしばしば「3F」、すなわちファッション、フード、フェスティバルなどといった、わかりやすい文化の振興という形に落とし込まれます。しかし、権利の話でもあり、裁判や政治、資源や金銭の話でもある。国家観や歴史観も問われます。 過去に向き合う時、感情的な抵抗も伴います。現在の私たち自身が植民地化をしているわけではないのに……と。しかし、今ここにある私たちの社会は、過去の上になり立っています。そして負の歴史に向き合うと同時に、その過去を経た現在、一つの国に複数の民族がいて、複数の文化がある。その豊かさ、すばらしさもかみしめたいと思います。(聞き手・岡田玄)<ふかやま・なおこ> 1976年生まれ。東京都立大学准教授。専門は先住民研究。著書に「現代マオリと『先住民の運動』 土地・海・都市そして環境」。2023年6月15日 朝日新聞朝刊 13版S 13ページ 「オピニオン-過去見つめた先の豊かさ」から引用 ニュージーランドは先住民族政策の先進国で、国名にも一部先住民の言語が入っているのは素晴らしいと思います。私がサラリーマンだった一時期、職場に北海道出身の人がいて、その人の祖先は明治の政府が屯田兵として本土から送り込んだ兵隊の一員として北海道に渡り住民となったのだとのことで、その人も小学校時代にはクラスに数人のアイヌの子弟がいて、学校の中は当然、日本語を話すことが当たり前になっており、アイヌの小さい子がうっかりアイヌ語を口にするとその子の兄が厳しく叱責する場面に何度か遭遇し「可哀相だな」と思ったものだった、と聞いたことがあります。ところが、数年前には、札幌市で現職の市議会議員が「アイヌ民族なんて、今はもういない」と暴言を吐く事件がありました。マイノリティの人権という点では日本は明らかに後進国であるという事実に失望するほかありません。
2023年07月05日
デタラメな国会審議の果てに重要法案を次々と強行採決した国会の状況を、メディア各紙はどのように報道し論評したのか、ジャーナリズム研究者の丸山重威氏は6月18日の「しんぶん赤旗」に、次のように書いている; 「立法の根拠が揺らいでいるにもかかわらず徹底的に追及せず、成立ありきで強引に採決に持ち込む国会運営は乱暴すぎる」。東京新聞(10日付)の社説です。入管法改定を論じたものですが、健康保険証を廃止する「マイナンバー法等改定」や防衛費財源確保法案にも触れ、「批判に耳を傾け、法案の問題点を改めるという国会の責任放棄」と批判します。 今国会の大問題、岸田大軍拡。自民・公明・維新・国民、さらには立憲まで賛成した防衛産業支援法も、防衛費財源確保法案も、肝心の軍拡について議論が深まったとは、とても言えません。 マイナ保険証に別人の医療情報が大量にひも付けされるなか、自民・公明・維新・国民が賛成し、成立したマイナンバー法等改定。新聞各社がそろって批判の社説を掲載しています。「保険証の廃止見直しは今からでも遅くない」(「読売」7日付)、「混乱続くマイナカード 拙速排し立ち止まる時だ」(「毎日」9日付)、「マイナ保険証 『一本化』強行許されぬ」(「朝日」同)。法成立後に、これだけ「反対」がそろうのは、あまり例がありません。 1980年に法制化されたグリーンカード(少額貯蓄等利用者カード)も、85年に廃止。「読売」が言う通り「廃止方針をいったん凍結し国民の不安を払拭するのが筋」。それでも岸田文雄首相は12日、健康保険証廃止の方針に変更はないと表明しました。 入管法改定も、生命、人権に関わる問題なのにあっさり成立。「難民認定や収容の現場での耳を疑うような問題が表面化したさなかの幕引き」(「朝日」10日付)で、「これでは人権を守れない」(「毎日」同)のです。 法律成立後も、批判すべきは批判するのは当然です。しかし、なぜ審議中にもっと書かないのか。でないと権力監視はできません。メディア自身も「見直し」が求められます。(まるやま・しげたけ=ジャーナリズム研究者)2023年6月18日 「しんぶん赤旗」 日曜版 31ページ 「メディアをよむ-保険証廃止に批判沸騰」から引用 紙の健康保険証の廃止は一旦凍結し国民の不安を払拭するのが筋だと、あの読売新聞ですらそう主張するのだから、何が何でも紙の保険証は廃止だとする岸田政権の姿勢は「常軌を逸している」のは明白です。そういう常識的な判断もできない程度にまで自民党議員のレベルが低下したと考えるほかありません。こういう脆弱な政治家には見切りをつけて、野党に任せるほうが、かえって真剣に政治に取り組むであろうことが期待できると思います。
2023年07月04日

LGBTQ法と防衛財源確保法が、十分な審議をしないままに6月16日の参院本会議で可決成立したことを、翌日の東京新聞は「審議尽くさないまま成立」と、国会がまともに機能していない危機的な状況を一面トップで報道した。2つの法律のうち防衛財源確保法については、次のように書いている; 防衛費を増額するための財源確保法が16日、参院本会議で与党などの賛成多数で可決、成立した。ただ、財源の一つである増税について、政府が同日閣議決定した経済財政運営の指針「骨太の方針」で、先送りを示唆。税外収入などほかの財源の捻出も簡単ではなく、なし崩し的に国債(政府の借金)に頼る懸念もある。(山田晃史、近藤統義) 骨太の方針では、防衛費増のための増税時期について「2025年以降のしかるべき時期とすることも可能となるよう」と明記された。従来の方針は24年以降としていたが、選挙を念頭に増税を嫌う自民党からの提言を受け、延期される可能性が出てきた。 増税の代わりに、今後は同法成立で創設された防衛力強化資金の税外収入など他の財源からの追加負担も検討される。ただし「5年間で総額43兆円」と支出の規模ばかりが先行し、どの財源も盤石ではない。 近年の当初予算では税以外の収入は5兆~6兆円ほどで推移し、歳入の5~6%を占める。野村総研の木内登英氏は「税外収入をほかの予算項目から回す形で賄うことになれば、その分国債の発行が増える。防衛費増に国債を使わないとする政府方針が看板倒れになる」と指摘する。 決算剰余金についても近年は経済対策の財源に使われてきた。剰余金の半分は借金返済に充てられるルールのため、防衛費に回れば回るほど、暮らしに必要な政策の財源が不足することになり、代わりの借金が増える恐れがある。 防衛費増と同様に、岸田政権が重点を置く少子化対策の財源も骨太の方針で詳細は示されず、結論は年末に持ち越した。木内氏は「先送りすると後の混乱を招く可能性が高く、最終的に国債頼みになる恐れがある。本来は規模、内容、財源を一体で決めるべきで、財源を考慮して規模や中身を見直すことも必要だ」と話す。 防衛財源確保法 防衛費増額のための財源の一つで、税以外の収入をためて複数年度で使う「防衛力強化資金」の創設などを定める。税外収入は国有財産の売却や特別会計からの繰入金など。財源はほかに歳出改革と一般会計の決算剰余金、増税がある。防衛力強化資金が創設されると4つの財源が既定路線となるため、増税に反発する野党が反対していた。2023年6月17日 東京新聞朝刊 11版 1ページ 「審議尽くさぬまま成立-LGBTQ法・防衛財源確保法」から一部を引用 防衛費を倍増するための法律というのは、憲法の平和主義にそぐわない憲法違反の疑いが濃厚な法案だったのだから、野党議員にしてみれば「突っ込み処満載」の法案であり、共産党や社民党議員の鋭い質問に政府側はまったく答弁ができず、問題をはぐらかしたり抽象的な言葉で誤魔化したりするばかりで、質問に正面から答えることができずに、予定の時間がきたからというので例によって強行採決をした。これでは国会が機能を果たしたとは言い難い。わが国の防衛政策が憲法を裏切るような方向で施行されだしたのは「60年安保」の後からで、それ以前の日本は名実ともに軍隊を持たない平和国家であった。しかし、世界中に自国軍隊の基地をもつアメリカは、その一部を日本に任せたいと考え、CIAのエイジェントであった岸信介が首相をしているのを良いことに日米安保条約を改定して、自衛隊が米軍と共同作戦をとることが出来るようにしたのであったが、この時は労働組合や学生運動が総力をあげて連日、安保反対のデモを行ない、デモ隊が国会に突入しそうになったり、警備の警察官の暴力で女子東大生が殺害されるという事件まで引き起こして、強力な反対運動があったため、安保条約は改定されたものの、日米両国政府はベトナム戦争やイラク戦争、湾岸戦争、アフガニスタン侵略などに自衛隊を動員できずに来ている。「60年安保」から60年も経ったから、そろそろ日米共同作戦の実施を、というのがアメリカの本音で、己の政権延命のためにそれを飲んだのが岸田文雄である。次の総選挙では、憲法を蔑ろにする岸田政権に鉄槌を下し、憲法を順守する政権を樹立したいものである。
2023年07月03日
一部国会議員による邪な意図に基づいた改憲論議について、東京新聞政治部記者の佐藤裕介氏は6月17日の同紙に次のように書いて批判している; 「憲法改正は国会が発議するが、最終的には主権者たる国民が国民投票で決める。すなわち、憲法改正の主役は国民の皆さまです」 岸田文雄首相(自民党総裁)は5月26日、東京都内で開かれた改憲派集会に出席し、そう訴えた。 改憲は代議制民主主義を採用する日本で珍しく、直接民主主義の仕組みになっている。国会発議には衆参両院で総議員の3分の2以上の賛成という高いハードルが課されているものの、あくまで「本番」はその後60~180日の間に行われる国民投票。それだけに、現行憲法の規定のままでは著しく支障を来すなどと、世論がおおむね一致した時に初めて実施されると考えるのが自然だろう。 では、自民党や日本維新の会といった改憲勢力が血眼になって国会発議を目指す緊急事態条項の新設はどうか。ロシアによるウクライナ侵攻が起こり、有事の備えには国民の関心も高まりつつあると言えるが、総選挙の先送りや国会議員任期の延長を認めることに幅広い合意があるとは思えない。 自民党などは「緊急事態時の国会の機能維持のため」を大義名分に掲げる。だが、そもそも衆院解散後に国会の権能を代行する制度として、憲法が定める参院の緊急集会についての検討を進める前に任期延長を打ち出しており、改憲ありきの印象は拭えない。有権者が政権を選択するという意味で、民主主義の根幹をなす総選挙を軽視しているようにも映る。 5月18日に行われた衆院憲法審査会に参考人として招かれた早稲田大大学院の長谷部恭男教授は「選挙の実施が部分的とはいえ可能である以上、緊急の事態においても困難が解消され次第、可及的速やかに順次、選挙を実施することが(憲法の)基本権の観念からも要請されている」と指摘。議員任期延長の改憲論議が加速していることにも触れ、「あたかも将来のことが確実に分かっているかのように(振る舞い)総選挙を長期にわたり先送りすることは、果たして国民の目にどのように映るか」と苦言を呈した。 国会の憲法論議が、衆参とも審査会の開催すらままならなかった安倍政権下に比べ、格段に活発化したのは間違いない。しかし、最近の中心テーマとなっている緊急事態条項を見ても、なぜ改憲が必要なのかという肝心な部分が曖昧で、「比較的に各党がまとまりやすい議員任期延長で改憲発議するのが現実的だ」(自民党若手議員)という思惑含みで盛り上かっているのが実態ではないか。 リベラル系の野党からは「好きなように発議させ、国民投票で否決するのが一番早い」(立憲民主党の枝野幸男前代表)という声も上がるが、改憲勢力が数の力に任せて事を進めれば禍根を残す。国会には冷静かつ慎重な議論を期待したい。(政治部)2023年6月17日 東京新聞朝刊 11版 6ページ 「視点・私はこう見る-国民の合意なき改憲論議」から引用 この記事は冒頭で岸田首相の発言を引用しているが、首相が言うまでもなく「憲法改正」は国民が主体となって行なうもので、国会議員が行なうものではない。実際に世の中を見渡しても、「憲法のせいで国民生活にこのような支障を来している」などと言う事例は、戦後の憲法施行から今日まで、只の一度もありはしない。だから、国民は「憲法改正」にはまったく無関心であるのが実情である。上の記事では、最近の国会は改憲論議が比較的活発化しているなどと書いているが、そもそも今の改憲論議は、憲法9条が「軍隊の保有」を禁止していることに不満を持った安倍晋三議員ら中心となって、「9条削除」を最終目標にした「改憲運動」なのだ。安倍議員などは「一部の法律の専門家の中に、自衛隊は憲法違反だなどという学説があるため、学校でいじめられて帰宅した小学生が『お父さんは、憲法違反なの?』と涙ながらに親に尋ねた。こういう事態を改善して、誇りをもって国防の仕事に就けるように環境を整備するのが政治家の仕事だと思う」などと演説したのであったが、後でこれはまったくの作り話であったことが露見している。これではマズイというので、その次に思いついたがの、非常事態と衆議院解散が運悪く重なった場合を想定して、「緊急事態条項を新設する必要がある」などと言い出したのが今の「改憲論」であるが、これもそんな緊急事態条項などなくても、現行憲法に「そういう場合は、国会はどう対処するのか」ということは既に明記されており、「国会が開けないため、政府が国として非常事態に対応ができない」などという事態はあり得ないことは、憲法を注意深く読んだ国民は知っている。しかし、中には財界がカネの力で毎日のように「憲法改正」のテレビコマーシャルを流せば、それに騙されて「改憲賛成」を言い出す国民が出てくるのもあり得る話で、国民が判断を誤ることのないように、新聞は日頃から「憲法の常識」を広く世間に周知してほしいと思います。
2023年07月02日
東京電力の柏崎刈羽原子力発電所はかなりの長期間に渡って操業を停止しており、東京電力全体の中では経費を食いつぶすだけで1円の利益を稼ぎ出すことも出来ていない。従って、そういう部署で働く社員の意識もそういう環境から悪い影響を受けて、モラルが低下し、様々なケアレスミスが発生しては世間を呆れさせている。自治体住民の命と生活に責任を持つ自治体首長は、そういうモラルの低下した企業に原子力発電という難しい事業を任せることはできないと発言していることを、6月14日の東京新聞は次のように報道している; 東京電力に対して改めて今、猛烈な批判が湧き上がっている。震源地は福島県と並ぶ東電の一大拠点、新潟県。柏崎刈羽原発の立地地域の首長や自民党県連の幹部までもが「事業者として不適格」「原発稼働は別組織で」と唱えだした。その東電は福島第一原発の事故処理として汚染水処理などを抱える。「失格」の烙印(らくいん)が押されつつある東電に一任していいか。監視を強めるべきでは。(中沢佳子、中山岳) 「柏崎刈羽原発では細かいトラブルがいくつか発生している」 「原子炉施設の安全や核物質防護に影響を与えるものではない」 7日の原子力規制委員会。事務方の原子力規制庁からオンラインで参加した渡辺健一・柏崎刈羽原子力規制事務所長はそう語った。 些細なミスを話題にしたかのようだが、地元では今、大ごとが起きている。 「東電という会社が再稼働を担うことのできる会社なのか。他の会社があるのではと自問自答を始めた」 柏崎刈羽原発がある柏崎市の桜井雅浩市長は1日の定例会見でそう口にした。 桜井氏は2016年の市長選で再稼働を条件付きで認めると掲げ、経済界や自民党などの原発推進派を中心に支援を受けて初当選。20年の市長選も「条件付き容認」を唱えて再選した。柏崎市といえば再稼働を巡る同意権者。東電にとって軽んじられない存在だ。 前日の5月31日にも隣接する長岡市の磯田達伸市長が会見でこう述べた。 「現時点で(東電に原発を運転する事業者の)適格性はない」 「国は東電ではない発電の体制や仕組みを考えたほうがいいのでは」 同氏は初当選した16年市長選で再稼働に慎重な姿勢を取り、民進や社民の推薦を受けた。長岡市長は県内全市町村による「原子力安全対策に関する研究会」の代表幹事。発言は重い。 失格の烙印を押すような言葉が出るのも無理はない。同原発では20年、職員が他人のIDカードで中央制御室に入る不正が発生。今年1月には災害時の活動拠点になる免震重要棟でパソコンが出火し、4月にも作業服を洗濯する建屋の洗濯機付近で火災が起きた。 地元をあきれさせたのが5月の「事件」。社員が原発関連の内部資料を無断で持ち帰り、封筒に入れた資料を車の屋根に置いたまま走らせ、一部を紛失した。 2人の市長はこれらに触れ不信をあらわにしたが、似た発言は自民県連からも。前幹事長の桜井甚一氏は3月に「東電が事業主体として原発を動かすのは受け入れがたい」ときっぱり。現幹事長の岩村良一氏も5月、「東電の信頼が回復されたかというと低減している認識だ」と指弾した。 一連の発言を原発反対派はどう捉えるか。 柏崎市の星野幸彦市議は「再稼働を見据えた大事な時期に不祥事を続発する東電にいらだって、揺さぶりをかけた」と推し量る。 「東電は原発事故を起こした当事者なのに、今も不祥事を繰り返している。体質は変わっていない」 その一方でトラブルが絶えない今、批判した方が得策と考える政治家もいるとみており、国が再稼働をごり押しすれば批判を引っ込める可能性もあるとみる。 かたや東電はどう受け止めるのか。同社の広報担当者は、本社機能の移転や外部人材の登用などに取り組んでいるとし「改革を進めて安全な発電所を実現し、地域に信頼されるよう実績を積み上げる。地域の皆さまに取り組みを伝え、いただいた声を運営に生かす」と答えるにとどまった。<デスクメモ> 原発稼働は東電以外で。どこまで本気の発言かとも思う。しっかりせいと辛口に背を押す意図はないか。ただ要職者が公然と語る様子を見ると不信は相当と推察される。3・11から10年余。変わらぬ「東電リスク」。原発自体の危うさともども根源的に、根気強く問い続けるべきだ。(榊)2023年6月14日 東京新聞朝刊 11版 23ページ 「新潟発 東電を猛烈批判」から引用 東京電力の技術力の低さとモラルの低さは深刻な問題であるから、自治体首長は住民の命に責任があることを自覚して東電の現状を深く憂慮しているものと、私は思います。しかし、この記事の特に<デスクメモ>には、「どこまで本気の発言か」などと暢気な気分で書いているのは、事態の深刻さをまったく理解していないことを示しており、そういう気分で記事を書かれたのでは、読者にも「事態の深刻さ」は伝わらないのではないか、と心配です。東京電力柏崎刈羽原子力発電所は、地元自治体の首長が心配するように、東京電力の社員が再稼働させるのであれば、必ず福島原発のような深刻な事故を起こすと考えられます。どうしても再稼働するというのであれば、東京電力ではなく、もっとしっかりした責任感のある企業体に運営を依頼するという必要性は、これは避けて通ることはできない「条件」だと思います。
2023年07月01日
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