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写真はホテルの窓から見た萩市内。向こうに見える水面は松本川とその先にある日本海。○ランキング今何位? ○姉妹ブログ・「文理両道」・「本の宇宙(そら)」
June 30, 2010
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写真は新山口駅の駅弁、「かしわめし」。かしわ飯が、錦糸卵、鶏そぼろ、きざみのりで3色に彩られ、食欲を誘う。隣は、山口県のお茶のブランドである小野茶。○ランキング今何位? ○姉妹ブログ・「文理両道」・「本の宇宙(そら)」
June 29, 2010
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春期限定いちごタルト事件 表紙イラストの感じが気になり買ってみた「春期限定いちごタルト事件」(米澤穂信:東京創元社)。○「春期限定いちごタルト事件」(米澤穂信:東京創元社) 主人公は、小鳩情吾朗と小山内ゆきの二人。二人とも、高校に合格したばかりだ。二人は、恋愛関係にある訳ではないが、共に小市民を目指すための互恵関係にあり、よくいっしょに行動をしている。なにゆえに、二人はその若さで、小市民などを目指しているのか。実は二人とも頭は切れるのだが、どうも中学校の時に、いろいろあったようで、目立たない小市民こそが理想だとの結論に達したようである。 実は、小山内さんは、小学生でも通るちっちゃな体で、引っ込み思案な生徒を装っているが、自分に危害を加える者を徹底的に仕返しをするのが大好きであり、そのためなら、スパイまがいのことも朝飯前のようだ。小鳩君に言わせれば、 「ぼくが狐だったとたとえるなら、あれは昔、狼だったんだ。」ということらしい。そして、小鳩君は、狐というだけあって、智恵を働かせて推理をするのが得意なようだ。中学生で狐だの狼だのというのも大げさだと思うのだが、この作品は、そんな二人が、身近に起こった事件を、「小市民たれ」というモットーに反して解決していくというものだ。 もっとも、事件と言っても、小市民を目指す高校生のこと、出会うのは、たわいもないものが多い。全体を通しては、小山内さんが、春期限定のいちごタルトを、積んでいた自転車ごと盗まれたというのがメインの事件なのであるが、その他にもちょこちょこと、小さな事件が挿入されている。しかし、それもポショットが盗まれたとか、どうやっておいしいココアをつくったのかといった極めて小市民的なものである。もちろん、小市民なので、ミステリーにつきものの殺人事件などは出てこない。 小市民を目指しても、どうしてもなりきれない二人をコミカルに描いた、とても面白い青春ミステリーといったところで、一遍で虜になってしまった。イラストも、この作品のストーリーにぴったりで、作品に魅力を添えている。○ランキング今何位? ○姉妹ブログ・「文理両道」・「本の宇宙(そら)」
June 28, 2010
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先般「鋼の錬金術師」が最終回ということで、掲載誌の「月刊少年ガンガン」(スクウェア・エニックス)がすぐに売り切れたことで話題になった。その「鋼」の作者である荒川弘(あらかわひろむ)は、北海道の農家の生まれで学校も農業高校の出身だそうだ。だから、農業や食糧問題に関しては一家言あるようだ。「百姓貴族(1)」(荒川弘 :新書館) は、そんな荒川氏の北海道時代の生活に基づき、農家の実態を面白おかしく描いたエッセイ風漫画である。なんでも、キャッチコピーによれば、「日本初☆農家エッセイ」らしい。もっとも、農家と言っても、なんといっても、「でっかいどう、ほっかいどう」である。たぶん、こちらの方の農家を考えると、だいぶイメージが違うのではないかと思う。 なお、この漫画は「月刊ウィングス」(新書館)に連載中である。ちなみに、荒川氏が女性であることは、うちの子から教えられて、初めて知った。○百姓貴族(1)(荒川弘 :新書館) 荒川氏の実家は、畑作と酪農をやっているようだ。繁忙期の1日を描いた円グラフが掲載されているが、これがなかなか厳しい。何しろ、食事時間を除けば、朝5時から夜12時まで、畑仕事や牛の世話で働きづめ。僅か5時間の間に、睡眠をとり、洗濯をし風呂に入る。とても、私にはまねができない。それにしても、こんな生活の中で、荒川氏は、いつ漫画の勉強をしたんだろう?おまけに、自然を相手の仕事だ。台風などによるリスクもある。台風により、敷地内の川が氾濫し、牛の運動場がきれいさっぱりと洗い流されてしまったこともあったそうだ。なお、北海道では、敷地内を川が流れているのは普通らしい。さすがは北海道だ。 しかし、描かれている日常は、まさに抱腹絶倒。特に、荒川氏の農業高校時代の様子は面白い。しかし、ただ笑えるだけではない。ちょっぴり涙を誘うような話もある。牛は頭の良い動物で、人の言葉もある程度解するようになり、自分が肉として売られていく時も分かっているというのだ。たまに涙を流す牛もいるらしい。まさに「ドナドナ」の世界である。 北海道で酪農をやっていたため、牛に関する話題が多いだけでなく、作者自信も、なぜか牛の姿で描かれている。作者によれば牛は人になついて「かわいいし!! 強いし!! なにより美味い」らしい。そんな牛に対する思いがたくさんと詰まっている、ユーモアとペーソスに溢れた、とても面白い農家エッセイ漫画だ。○ランキング今何位? ○姉妹ブログ・「文理両道」・「本の宇宙(そら)」
June 27, 2010
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「韓国人気童話シリーズ」の第14巻に当たる、「ぼくらのスーパー大戦争」(ユンスチョン/イヒョンミ /吉田昌喜:現文メディア)。家族の絆というものを描いた作品である。○ぼくらのスーパー大戦争(ユンスチョン/イヒョンミ /吉田昌喜:現文メディア) この作品の主人公ドンホは、小学生の男の子。家は「夜明けを売る店」というスーパーをやっている。もっともスーパーと言っても、イラストや文脈から判断すると、個人商店のようなもののようで、日本のスーパーとはちょっとイメージが異なるようだ。「夜明けを売る店」というのは、夜明けに一番早く店を開けることから名づけたらしい。ドンホは、店の手伝いが大好きで、朝早くから起きて手伝っている。ドンホには、兄と姉がいるが、兄は勉強が大変よくできるが朝寝坊である。姉は足が不自由なため、ずっと家にいるが絵が得意だ。 この家はとにかく温かい。父親は誠実な人柄で、足首を痛めていても注文が入ると、足を引きずりながら、配達に出かける。店の手伝いには見向きもしなかった兄も、そんな父の姿を見て、自ら手伝うことはないかと店に出てくるようになった。ドンホにしても、川辺で砂のお城を作ってみたいという姉のために、川でバッグ一杯の砂を集めてきたりする。 そんなドンホの一番の悩みは同級生のアラのこと。本人同士は仲が良いのだが、アラの家は、ドンホの店の隣で「21世紀スーパー」という店をやており、いわばライバル同士なのである。どちらかと言えば、アラの両親の方が、競争意識を持っているようなのだが、アラを好きなドンホにとっては、何とも悩ましいことである。 ところが、そんな2軒のスーパーの近所に、大型スーパーができることになる。このままでは、2軒とも、壊滅的な打撃を受けることになるため、ドンホのお父さんはある英断をする。ラストは、正に災い転じて福となすような終わり方だ。日本では希薄になっているかのような家族の絆や、ドンホとアラの未来への希望と言ったようなものを感じさせてくれる作品である。 なお、本書は、現文メディアさまより献本いただいたものです。ありがとうございました。○ランキング今何位? ○姉妹ブログ・文理両道・本の宇宙(そら)(本記事は「本の宇宙」と同時掲載です。)
June 26, 2010
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それぞれ忍者の子孫なのだが、大したとりえのない神社の後継ぎの鴨志田甲斐(ただし、誰かが危ない時に一時的に忍者の技が出ることがある)、記憶力抜群で死んだふりの得意な現役東大生巫女の中村貴湖、そして、大事なことはすぐ忘れるくせにつまらないことはよく覚えているという特技を持った甲斐の高校の同級生の柏木竜之介の3名が活躍する「カンナ」シリーズの最新巻「カンナ 鎌倉の血陣」(高田崇史:講談社)。○「カンナ 鎌倉の血陣」(高田崇史:講談社) 読者にはお馴染みだろうが、この「カンナ」シリーズは、同じ作者のQEDシリーズと同様、歴史上の謎と現在に起こった事件を絡めて、同時並行で解いていくという形の歴史蘊蓄系のミステリーである。タイトル名から分かるように、今回の舞台は、古都鎌倉。源頼朝が鎌倉幕府を開いた土地である。 私が高校生くらいの頃は、「いい国(1192)つくろう鎌倉幕府」という語呂合わせもあり、頼朝が鎌倉幕府を開いたのは、1192年だと教えていた。最近は、これにも諸説あるようだが、父の義朝が平治の乱で敗れたために、伊豆に流されていた頼朝が、北条氏などの助力を得て、平氏を破り、12世紀の終わりごろに鎌倉に幕府を打ち立てたことは誰もが知っている。しかし、この頼朝に始まる源氏の将軍家も頼家、実朝とわずか三代で絶え、その後は頼朝の妻政子の実家である北条氏が執権として実権を握ったことも周知の事実である。 しかし、この源氏3代の死には、大きな謎がつきまとう。頼家、実朝は暗殺と言っても良いだろうし、頼朝にしてもその死因には多くの説がある。そして、昔から不思議だったのは、「尼将軍」と呼ばれて絶大な権力を持っていた頼朝の妻・北条政子が自分の子や孫が滅んでいくのに、何の手も打っていないように見えることであった。 この本の話に戻ろう。今回は、甲斐は婚約者の海棠聡美といっしょに、加賀美宗朝という人物の主宰するお茶会に出席するために鎌倉を訪れる。貴湖と竜之介も別ルートでこの茶会に招かれて出席するのだが、その会で宗朝が何者かに殺害されたのである。宗朝は、鎌倉幕府の源氏三代について調べていたらしい。ということで、宗朝の事件と頼朝らの死の謎とが絡まった事件にいつもの3人組+聡美は関わっていくことになるわけだ。 このシリーズ最初のころは、貴湖の死んだふり以外はほとんど取り柄のなかった3人組だが、巻が進むにつれてレベルアップしていくようで、この巻では、甲斐も貴湖もだいぶ忍者らしくなってきた。もっとも竜之介だけはあまり進歩が見られないようだが(笑)。 この巻にも、QEDシリーズから棚旗奈々がゲスト出演のような形で出ている。加賀美宗朝の茶会に出席していたという設定だ。この巻では、奈々のことを次のように描写している。 「美人というわけではないが、しとやかそうで、とても魅力的な雰囲気を持った女性だった」 おそらく、QEDシリーズから読んできたファンにとっては、棚旗奈々はすごい美人だというイメージができていたのではないだろうか。何しろ、名前から、七夕のおり姫にちなんだような名前なのである。ところが、このシリーズでは、魅力的という注釈つきにしても、はっきりと「美人ではない」と断言している。ファンとしては複雑な気持ちになるだろう(笑)。 ところで、この巻では、貴湖が大学を休学した理由が明らかになる。大学で師事しようとしていた教授の学問上の変説に失望してのようだが、奈々の話を聞いて、復学を決意する。その理由というのが、毒草師、御名形史紋のことを聞いたからというのが面白い。御名形史紋も今後このシリーズに登場してくるのだろうか。でも、彼が出ると、余りの存在感に、他の登場人物がすべてかすんでしまい、実質「毒草師」シリーズに変わってしまいそうだ。しかし、貴湖が復学すると、ズッコケトリオはこれからどうなるのだろうか。まさか代りに聡美が入る訳はないだろうし。○ランキング今何位? ○姉妹ブログ・「文理両道」・「本の宇宙(そら)」(本記事は、「本の宇宙」と同時掲載です。)
June 25, 2010
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「公序良俗を見出し人権を侵害する表現を取り締まる」という建前のもとに、「メディア良化法」という法律が施行され、図書の検閲押収が行われているという近未来の日本を描いた「図書館戦争」シリーズの完結編、「図書館革命」(有川浩:アスキー・メディアワークス)。 ○「図書館革命」(有川浩:アスキー・メディアワークス) この巻では、検閲押収を行っているメディア良化委員会は、原子力発電所のテロ事件をきっかけに、それとよく似た作品を書いた作家の執筆活動までを制限しようとする。これをなんとか阻止して、表現の自由を守ろうとするのが図書隊というわけだ。このシリーズの根本的なテーマは、もちろん、「表現の自由」ということだろう。 言葉と言うものは、単語だけをとって、適切かどうかを判断できるものではない。問題は、文脈のなかで、どのように使われているかということだ。しかし、世の中には、そんなことなど考えずに、自分独自の判断基準によりクレームをつける者も多い。そして、そんな声ほど大きく聞こえるものだ。そして、どんどんと言葉が規制されていく。この作品は、そんな風潮への警鐘を鳴らしているように思える。 しかし、この作品の本質は、明らかにラブコメだ。特に主人公の笠原郁とその上官である堂上のやりとりが最大の魅力だろう。堂上が郁をいじり、郁がそれに対して、キャンキャン、プンプンと噛みついたり、むくれたりしながらも、ラブラブなところがなんとも面白い。本編の方は、これで完結だが、実は別冊が後2巻あり、こちらは、もっとラブコメ度が高くなっている。そちらの方も、そのうちにレビューを掲載してみたい。○ランキング今何位? ○関連過去記事・図書館戦争・図書館内乱・図書館危機○姉妹ブログ・「文理両道」・「本の宇宙(そら)」(本記事は「本の宇宙」と同時掲載です。)
June 24, 2010
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隠岐の西郷港からほど近いところにある「隠岐騒動勃発の地」の碑。隠岐騒動は、1868年(明治元)に、松江藩の支配を嫌った隠岐の住民が、郡代を追放し、自治政府を立ち上げたという出来事である。明治維新のころには、この静かな島にも、そんな激動の歴史があったのだ。○ランキングの順位は? ○関連過去記事・隠岐の島西郷港(続隠岐旅情2) ○姉妹ブログ・文理両道・本の宇宙(そら)
June 23, 2010
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飲食関係のビジネスを行おうとすれば、どうしても、客の集まりやすいところを狙ってと考えがちである。しかし、タヌキとキツネ、時々クマしかこないような山の中に個人で開業したワイナリーとレストランが思いの他繁盛しているという。長野県東御市の北側に位置する標高850メートルの山の上に建っているというヴィラデストワイナリーである。「里山ビジネス」(集英社)は、そのワイナリーのオーナーである玉村豊男氏が、自らのビジネスに対する考え方を世に問い、成長というものが前提になっている経済社会というものに一石を投じた書である。○「里山ビジネス」(玉村豊男:集英社) 山中の、人気のない場所に、不安がいっぱいで始めた、ワイナリー・アンド・レストランだが、蓋をあけてみれば、思いのほか好調であり、初年度から単クロ(単年度黒字)を出すことができたようだ。著者は、本を出したり、絵を描いたりしており、まるっきりの無名な人というわけではない。初年度の好調さは、彼の店が、マスコミにも何度か紹介されたことが大きかったのだろう。しかし、有名人の開いた店でも、立地の良い場所に開きながら経営不振になった例は多い。問題は、何年もこの状態を継続できるようにするということだ。凡庸な経営者なら、初年度の成功に奢り、それからの戦略がおろそかになってしまうものだが、氏は、問題点を改善していき、このような立地条件の悪さにも関わらず、レストラン部門で毎年利益を出し続けているというのがすごい。 ワイン造りは、規制の多い、なんともリスキーな商売のようだ。免許を取るためには、年間6000リットル以上製造できる設備と施設が必要なため、初期投資が大きくなる。また、ブドウが育つまでには時間がかかるため、別の収入減も必要なのだ。その収入源が、氏の場合はレストランというわけだ。もっとも、現在のところ、毎年、その収入を上回る位の設備投資を続けているとのことだが。もちろん、ワイナリーの方は、まだまだ赤字だということである。しかし、この本を読む限り、前途は十分に開けているように思える。 玉村氏のワイナリービジネスが、これまでのところうまく回っているのは、氏のビジネスに対するコンセプトが非常に明確だということにあるのだろう。氏の考え方が表れていると思われる部分を何箇所か抜粋してみよう。 「経済的な裏づけや資金の調達の方法を考えるよりもずっと早い段階から、自分がつくるならどんなワイナリーにしたいのか、それによってなにを達成したいのか、という、事業の目的とコンセプトは明確に形成されていました。」(p69)「食べることが好きで、料理をするのが好きで、バカ話をして大笑いするのがもっと好きで、人が善意を抱くことができる瞬間を共有するのがいちばん好きな、私がやりたい仕事は明確でした。」(p80)「ここでおこなわれている農業の仕事や、料理やパンやワインをつくる仕事のすべての過程を、隠すところなく見てもらう、というのが、ワイナリーをつくるときの基本的なコンセプトであり、設計の目的だったのです。」(pp87-88) 客は、コンセプトが明快だからこそ、共感を感じて、こんな不便な場所にある店にわざわざ足を運ぶのだ。これが、何がコンセプト化分からないような店だったら、街中にいくらでもあるので、わざわざ、長野県の山中まで足を運ぶ必要はないだろう。 氏は、ワイナリービジネスを通じてた「里山ビジネス」という考えに思い当った。里山の自然の恵みと共に、拡大しないで持続し、持続しながら生活を豊かにするというものだ。 経済学の常識では、経済は成長しないといけないらしい。だから、経済成長率と言ったものが非常に問題にされる。しかし、これはネズミ講といっしょで、有限な資源を考えれば、どこかで破たんするのは明らかだろう。この「里山ビジネス」というコンセプトは、問題山積みの日本経済に対する処方箋の一つとなるのではないだろうか。○ランキング今何位? ○姉妹ブログ・「文理両道」・「本の宇宙(そら)」(本記事は「本の宇宙」と共通連載です。)
June 22, 2010
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「赤眼」を読んでから、ちょっと気になっている三津田信三のホラー「凶宅」(光文社)。一言で言えば「祟りモノ」である。○「凶宅」(三津田信三:光文社) 私は、「祟りモノ」には2通りあるのではないかと思う。まず第1のパターンは「因果応報型」。何か悪事やタブーを犯した報いとして、祟りを受けるというものだ。そして第2のパターンが、「巻き込まれ型」。まったくの偶然に、恐怖の事件に巻き込まれてしまうというものである。前者は、原因がその人間にあるため、話は、一種の教訓のようなものだと考えることができるだろう。しかし、後者は、本人には何の咎もないのに、祟られてしまうという、まったく理不尽なものだ。これは、予防のしようがなく、いつ自分の身に降りかかってくるかと思えば、前者よりはずっと怖いだろう。 この作品は、典型的な「巻き込まれ型」と言えるだろう。主人公は、日比乃翔太という小学四年生の男の子。父親の栄転で、東京から奈良に引っ越してきた。ところが引っ越し先の家が、どこか変である。山の斜面を削って宅地用に開発した土地は4区画あるのだが、他の区画は、工事途中で、急に放置されたような状況になっており、彼らが引っ越した家だけが、ポツンと建っていたのだ。この家で、翔太は、信じられないような恐怖を体験することとなる。 恐怖は、妹のところに得体のしれないものが訪れるようになったことから始まる。妹は、この山に住む「ヒヒノ」が来たという。翔太には、何か不思議な感覚があるようだ。この家は絶対にヘンだと、翔太は、友人となった少年幸平の助けを借りて、家の過去を調べ始めるのだが、そこには恐ろしい秘密があったのだ。 幸平は母親と、翔太たちの家があるのと同じ山に建つアパートに住んでいる。ちなみに大屋も同じ人物だ。このアパートもかなり変だ。幸平母子の住む部屋の中には、いくつもの御守りで作った暖簾がぶら下がっている。「山から気色の悪いものが降りてくる」のを防いでいるとのことだ。ここだけを読むと、ちょっと危なそうな母子だが、実は、一番翔太を助けてくれることになるのは、少し面白い。 周りに住んでいる人々も、どこかおかしい。翔太は、幸平たちと同じアパートに住む女子大生の香月希美に襲われるのだが、その動作がまるで蛇なのである。この辺りは、まるで、楳図かずおの「蛇女」シリーズを読んでいるような、古典的な怖さを感じる。 大屋の老婆にしても、相当不気味である。普段は、普通の老婆なのだが、時々オン・オフが切り替わって、まるで山姥か鬼婆のようになる。こちらも、相当に恐い。 そして、ラストは、かなり衝撃的な終わり方である。ここまでやるかという怖さだ。おまけにすべてが過ぎ去ったと思った時に、新たな恐怖を予感させて締めくくっている。この手のホラーでのお約束といえばお約束なのだが。○ランキング今何位? ○姉妹ブログ・「文理両道」・「本の宇宙(そら)」(本記事は、「本の宇宙」と同時掲載です。)
June 21, 2010
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魔女伝説の伝わる六軒島で繰り広げられる惨劇を描いた「うみねこのなく頃に」の新シリーズ、「うみねこのなく頃にEpisode 3(1) Banquet of the golden witch」(夏海ケイ/竜騎士07:スクウェア・エニックス )。○「うみねこのなく頃にEpisode 3(1) Banquet of the golden witch」(夏海ケイ/竜騎士07:スクウェア・エニックス ) こちらは、右代宮金蔵の娘の一人である絵羽(エバ)が主役を務めるようだ。才気あふれる絵羽は、凡庸な兄蔵臼(クラウス)ではなく、自分こそ右代宮を継ぐに相応しいと思っていたが、女ゆえに軽んじられていた。そんな屈折した絵羽の記憶から、新たなベアトリーチェと戦士(バトラ)のゲームが始まる。 ところで、この巻の冒頭では、少女時代のベアトリーチェが登場する。今のような邪悪さからは想像もできない、可憐な少女だったようだ。どう道を踏み外したら、これだけ変わってしまうのだろうか(笑)。ベアトリーチェというのは、彼女の師匠の名前でもあるようだ。歌舞伎や落語のように、魔女の名前も、代々襲名していくということか。そういえば、同時に始まった第4部の方では、新たなベアトリーチェも登場していた。この第3部と第4部を同時に読んでいくと、このうみねこ世界がもっとよく理解できそうだ。○ランキング今何位? ○姉妹ブログ・「文理両道」・「本の宇宙(そら)」
June 20, 2010
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壮大な出雲神話の残る出雲は、神々の故郷とも言える国である。なにしろ、10月のことを、他の地方では「神無月」と言うが、出雲では、神々が集う月として「神有月」という位である。そして、もう一つ、出雲を他の国々から際立った存在としてるのは、「風土記」の存在であろう。風土記は、713年(和銅6)に太政官から全国の国司に向けて出された官命により全国で作成されたが、多くは失われた。しかし、出雲国風土記は、もっとも完本に近い形で残っており、古代日本の様子を私たちに示してくれる。 出雲の神社と言えば、なんといっても出雲大社であるが、出雲国風土記には、神々の国らしく、その他多くの神社についても記されている。幕末に、この風土記社を、出雲国風土記を片手に参拝して歩いた小村和四郎重義という人物がいた。彼は、その時の旅日記を残しているが、「古代出雲への旅」(関和彦:中央公論社)は、著者が、小村和四郎の旅日記である「風土記社参詣記」(名称は著者の付けた仮称)を辿りながら、現代から、幕末そして古代出雲の3つの時代を見つめるという、時代を超えた出雲のガイドブックとも呼べる本である。○古代出雲への旅(関和彦:中央公論社) 著者は、出雲国風土記研究のために訪れた島根県立図書館で、春日家文書という資料群から、たまたまこの「風土記社参詣記」を発見する。そして、この後も著者は、いくつかの偶然に出会う。 小村和四郎が大根島で出会った又右衛門と言う人物についての素性が、たまたま手に入れた「大根島」という冊子により明らかになったこと、宇夜八幡宮で出会った神々しさを感じさせた少女が、その後女子教育の功労者となったことを、これもたまたま出雲図書館で手にした「島根の百傑」と言う本で知ったことなどである。これらは、神々の導きだったのだろうか。まさに出雲らしい。 本書を通して知る、「風土記社参詣記」からは、幕末のあわただしい時代における、普通の出雲の人々の様子を窺うことができる。当時は、人情も今よりずっとあったようで、見ず知らずの人でも、割と気軽に宿を貸してくれたようである(もちろん断られることもあったようだが)。極めつけは、和四郎が、中海に浮かぶ大根島の船頭に宿を提供された時のことである。夜中に彼が目を覚ますと、可愛い船頭の14になる孫娘が添寝をしていた。彼は、「客人(まれびと)」として扱われ最高のもてなしを受けたのである。二人の間に何かあったのか、それともただ添寝をしただけなのかは書かれていないが、当時こんな風習があったことは極めて興味深い。 巻頭のカラー写真だけでなく、文中にも白黒ながら多くの写真が挿入されており、旅情を掻き立ててくれる。たまには、過去に思いを馳せる、こんな旅も面白いのではないかと思う。ただ、少し残念だったのは、和四郎の辿った道筋の地図は示されているのだが、縮尺の関係で、かなり大括りな地図となっており、この地図を頼りに和四郎の旅を再現するのは、難しいだろう。もっと詳細な地図も付けて欲しかったと思う。○ランキング今何位? ○姉妹ブログ・文理両道・本の宇宙(そら)(本記事は、「本の宇宙」と同時掲載です。)
June 19, 2010
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この門は、浜田城址の入口。ここから少し上った所に、かって城があった。 訪れる人も少ないが、上から垣間見える、海の景色は、まさに絶景! ⇒ 浜田城址から見る日本海風景(「文理両道」掲載)○ランキングの順位は? ○関連過去記事・浜田亀山神社(浜田市ウォーキング3)○姉妹ブログ・文理両道・本の宇宙(そら)
June 18, 2010
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写真は、浜田城主歴代の碑がある亀山神社。 碑は、神社の裏手にドシンとした感じで建っている。○ランキングの順位は? ○関連過去記事・出雲大社浜田分祠(浜田市ウォーキング2)○姉妹ブログ・文理両道・本の宇宙(そら)
June 17, 2010
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写真は、出雲大社石見分祠。しめ繩が、いかにも出雲大社らしい。○ランキングの順位は? ○関連過去記事・JR浜田駅(浜田市ウォーキング1)○姉妹ブログ・文理両道・本の宇宙(そら)
June 16, 2010
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写真は、JR浜田駅の入口。よく見ると、こんなキュートな石見神楽のキャラクターが描かれている。○ランキングの順位は? ○姉妹ブログ・文理両道・本の宇宙(そら)
June 15, 2010
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昨年亡くなられた、京都大学名誉教授で、我が国の動物行動学の草分けである日高敏降氏による、身の回りの小さな自然をテーマにしたエッセイを集めた、「セミたちと温暖化」(新潮社)。 セミたちと温暖化価格:500円(税込、送料別) 収録されているエッセイのモチーフとなっているのは、身近にいる生物が多いが、特に昆虫は多く取り上げられている。また、表題が「セミたちと・・」となっているように、セミの話題は、何回か出てくる。 昆虫がモチーフになっているエッセイが多いのは、元々種類が多い上に、私たちにとっても身近な存在だからということなのだろう。私の場合、現在は街中で暮らしているため、あまり多くの種類の昆虫にはお目にかかれない。しかし、子供のころは、田舎暮らしであり、身の回りには多くの昆虫が溢れていた。もっとも、近年は、田舎でも、どんどん昆虫の種類が少なくなっており、あの頃の風景は無くなってしまったようであるが。 ところで、本書を読むと、身近な生き物たちにも、それぞれに面白い生態系を持っていることが分かる。正に生物界は多様性に富んでいるのだ。この本は、その多様性が、どんなに素晴らしいものであるかを再認識させてくれる。○ランキング今何位? ○姉妹ブログ・「文理両道」・「本の宇宙(そら)」(本記事は「本の宇宙」と同時掲載です。)
June 14, 2010
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写真は、大崎上島名物の一つである「木造5階建て」の建物。木造5階建てというのは、お寺の五重塔位しかお目にかかったことはない。こんなものが残っているということは、この辺りは、昔はかなり栄えていたんだろう。かっては、海運が、輸送の主流で、瀬戸内海の島は、その要所だったところが多い。この辺りもそうだったようだ。○ランキングの順位は? ○関連過去記事・大崎上島の旅館大安(大崎上島ぶらぶら歩き3)○姉妹ブログ・文理両道・本の宇宙(そら)
June 13, 2010
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「日々あらゆる病に罹って、こまめに死にかかっている」という「病の強者(つわもの)」である「若だんな」こと一太郎が活躍する「しゃばけ」シリーズ第6弾の「ちんぷんかん」( 畠中恵:新潮社)。今回は、ついに、若だんなが、あの世に行ってしまう!?○「ちんぷんかん」( 畠中恵:新潮社) 若だんなは、大店の廻船問屋兼薬種問屋である長崎屋の跡取り息子である。実は、この若だんな、祖母が「皮衣」という大妖で、妖の血をひいているため、妖怪たちが見えるという能力を持っている。しかし、その他には、特別な能力はなく、とても妖の血をひいているとは思えないような病弱さであり、日々死にかけて寝込んでいる。両親は、その若だんなにものすごく大甘なのだが、その他にも長崎屋には正体は強力な妖怪である仁吉、佐助という手代が、過保護という言葉では言い足りない位の世話を焼いているのだ。しかし、これだけ甘やかされているにも関わらず、若だんなの心はとても優しい。だから、彼の周りには、多くの害のない妖たちが寄ってくるし、貧乏神でさえも、害を成すことができずに、福の神とならざるを得ない。 ところで、「火事と喧嘩は江戸の華」という言葉があるように、江戸は火事が多かったことで有名である。この「ちんぷんかん」の冒頭も、火事の場面で始まっており、何と長崎屋が焼けてしまい、その火事騒ぎで煙を吸った若だんなは、なんと三途の川の賽の河原に行ってしまう。そして、その火事騒ぎをきっかけに、若だんなの異母兄である松之助の縁談話が進んでいくというのが、この巻の大まかな流れだ。全体は5つの短編からなっているが、全体で一つの大きな物語を構成するという連作短編となっている。収録されているのは、以下の話。○鬼と小鬼 火事で煙を吸って意識不明になった、若だんなは、賽の河原に行ってしまう。果たして、無事に生還できるのか。○ちんぷんかん 妖退治で名高い、広徳寺の高僧の寛朝の弟子となった秋英のお話。寛朝の命で、秋英は初めて、依頼者の相談を聞くことになるが、それがとんでもないことに。○男ぶり 若だんなの母親で、やはり妖の血をひくおたえと、父親の藤兵衛との馴初めの話。大店の美しい跡取り娘だったおたえが、どうして山ほどある縁談話にも拘らず、店の手代だった藤兵衛を選んだのか。○今昔 若だんなが、陰陽師の操る式神に襲われる。この式神騒動は、松之助の縁談相手の米屋の大店である玉乃屋と何か関係があるようだ。○はるがいくよ 兄が縁談が決まって、店を出ていくことになり、寂しい若だんなの前に現れた赤ん坊。それは、あっという間に成長して消えうせてしまう、桜の花びらの精だった。 それにしても、あいかわらず若だんなは優しい。賽の河原では、鬼に追いかけられているにも関わらず、知り合った男の子がずるをして、三途の川の渡し船に乗れなくなることを心配し、小紅と名付けた桜の花びらの精に対しては、なんとかこの世に留めておくことはできないものかと画策する。特に「はるがいくよ」は、しんみりとなりそうな話だったが、この若だんなの人情味が、読む人の心をほんのりと温かくする。○ランキング今何位? ○姉妹ブログ・「文理両道」・「本の宇宙(そら)」(本記事は「本の宇宙」と同時掲載です。)
June 12, 2010
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昔は巨大だったコンピュータも、半導体技術の発達により、どんどん小さくなってきている。しかし、現在の動作原理では、どこまでも小さくできる訳ではない。ミクロな世界では、良く知られているように、量子力学に支配されるからである。半導体が、どんどん小さくなっていくと、量子力学的な効果が無視できなってくるのだ。 量子力学の支配する世界では、物事は決定論的ではなくなってくる。現在のコンピュータの中では情報を0と1で表しているが、ミクロな世界では、0と1を区別できなくなってくるのだ。量子力学的に言えば、0と1の二つの状態が、重ね合わされた状態になっているのである。このことは、従来のコンピュータ技術では不都合なことなのだが、発想をがらりと変えて、この量子力学的効果を積極的に活用していこうというものが量子コンピュータなのである。「量子コンピュータとは何か」(ジョージ・ジョンソン/水谷淳:早川書房 )は、この量子コンピュータとはどのようなものかについて、初心者向けに解説したものである。 量子コンピュータとは何か価格:756円(税込、送料別) 例えば、原子の上向きスピンを1、下向きスピンを0に対応させれば、量子論では、この2つの状態は重ねあっている。これは、言い換えれば、1と0の2つの状態を一度で表すことができるということだ。そして、この原理を使えば、計算速度を飛躍的に増大させることができる可能性がある。 1キュビットの回転(原子を1や0に反転させたり、それらの重ね合わせにする操作)と「制御NOTゲート」と呼ばれる2つの操作を使えば、原理的には量子コンピュータを設計できるという。 現在のコンピュータでは、計算に時間がかかり過ぎて、解くのに困難な問題も多い。量子コンピュータはこのような問題を解決するために有用なツールとなるかもしれない。本書は、その原理と大きな可能性について教えてくれる。しかし、その実現には、まだまだ時間がかかるだろう。思えば、私たちが学生の頃、21世紀には核融合が夢のエネルギーとして実用化されるようなことがまことしやかに言われていた。だが、21世紀に入って10年経ったが、いまだに実用化の気配はない。原理がきっちりとしていたとしても、実用化までの道のりというのは、思ったよりはるかに長いのである。 ところで、この本では、コンピュータの原理を説明するのに、チューリングマシンまで持ち出したり、ティンカートイというおもちゃで、簡単なコンピュータが実現できると言ったようなことが述べられている。確かに、チューリングマシンは、コンピュータの原理として、学生のころに、計算機工学で最初に出て来た覚えがあり、懐かしいのだが、現在において、コンピュータの原理を説明するのに、このようなマニアックなところから始める必要があるかは疑問だ。また、ティンカートイによる、コンピュータの原理の説明も同じようにマニアックであるうえに、それ自体が、我が国ではなじみがないので、説明自体があまりピンとこなかったのは残念だ。○ランキング今何位? ○姉妹ブログ・「文理両道」・「本の宇宙(そら)」(本記事は「本の宇宙」と同時掲載です。)
June 11, 2010
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) 大崎上島に渡った時に泊ったのは、「大安」という旅館。大西港からも近く便利の良いところにある。この島には、観光ホテルが一つあるが、やはり値段を考えれば、こういったところに泊る方が性に合っている。 下の写真は、大安で出た夕食。リーズナブルな値段で、御馳走を食べさせてくれる。機会があれば、また泊ってみたいものだ。 ○ランキングの順位は? ○関連過去記事・大崎上島大西港(大崎上島ぶらぶら歩き2) ○姉妹ブログ・文理両道・本の宇宙(そら)
June 10, 2010
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「絶対領域」の表紙イラストに、思わず買ってしまった、「メイド・ロード・リロード」(北野勇作:アスキー・メディアワークス)。著者の北野勇作氏は、ユニークな作風で知られるSF作家ということだ。そのユニークな作家が描いた、一言で表すならば、ナンセンスSFとでも言うべき作品だろうか。○「メイド・ロード・リロード」(北野勇作:アスキー・メディアワークス) 確かに、ユニークと言えばユニークだ。なにしろ、一読した後、思わず、 「くっ、くっ、くだらねー!! 」と叫びそうになったくらいである。しかし、「くだらない」ということは、ナンセンスものとしては、褒め言葉なんだろうな。きっとこれも作者のねらっていたところだろう。たぶん・・・ 何しろタイトルにしても、冥土とメイド、道(Road)とコンピューターのロード(Load)との、良く言えばダブルミー二ング、つまりはダジャレである。前者は、もう使い古されている感があるし、後者はそもそもRとLが違うし・・・ 内容をかいつまんで紹介すれば、メイド・ロード・リローダーという、ヘンな機械により、生きている状態と死んだ状態の重ね合わせという、これまたヘンな状態にされた売れないSF作家が、思いつくままに、ライトノベルを書いていくというもの。リロードとは、うまく行かなければ、最初にもどって、上書(リロード)すればいいやということだ。プロットなしに小説を書くことで有名なミステリー界の大御所である内田康夫センセじゃあるまいに、売れないSF作家と言う設定の主人公にそんなことさせちゃだめだろう。メイドは、作中作に出てくる勇者の連れという設定だが、どうして、勇者にメイドの組み合わせかはよく分からない。もっとも、ナンセンスものだとすれば、分かろうとすること自体が無駄なのかもしれない。 腐女子向けのBLモノを表した言葉に「やおい」というものがある。すなわち、山なく、オチなく、意味もないということだ。この作品の場合は、一言で特徴を表せば、「やおいも」だろう。「やおい」のうえ、メイドが出てくるのに、「萌えなし」なのである。 しかし、内容はともかく、表紙には強力な魔法がかけられているようだ。何しろ、知らないうちに、この本をレジまで運んで行きそうになるのだから(笑)。○ランキング今何位? ○姉妹ブログ・「文理両道」・「本の宇宙(そら)」(本記事は「本の宇宙」と同時掲載です。)
June 9, 2010
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江戸時代の諸藩で起こった怪事件や奇妙な話などを集めた、「江戸諸藩妖談奇譚手控え帖」(新人物往来社)。旅の徒然を紛らわすために、山陰行きの長距離バスに乗る時に買った本だ。 江戸諸藩妖談奇譚手控え帖価格:700円(税込、送料別) 本書には、52の話が、49人の著者によって執筆されている。タイトルからは、怪談・奇談ばかりを集めたものだろうと、つい思ってしまうが、実際の収録されている話は、全部がそのようなものと言う訳ではない。確かに、「大蛇退治」や「お菊伝説」などタイトルに相応しい話も結構収められているのだが、「前田慶次行状記」や「黒船一番乗り争い」のような、歴史こぼれ話といったような話も多い。 それにしても、自分が住んでいたところに関する話でも、案外と知らないことが多いものだ。例えば、幕末に、長州藩で亡命中の勤皇派公家である中山忠光が暗殺された事件があったとか、漫画「朝霧の巫女」のモチーフとなった、広島県の三次市に伝わる、「稲生物怪録」の主人公である稲生武太夫が、松山で八百八狸退治に乗り出した話があったとかなどは、この本で初めて知った次第だ。 歴史こぼれ話はともかく、いわゆる怪談・奇談にしか思えないような話についても、おそらく、その裏には、何らかの歴史上の事件があったのだろう。そんなことを考えながら読んでいると、珍妙な話も、案外と面白いものだ。○ランキング今何位? ○姉妹ブログ・「文理両道」・「本の宇宙(そら)」(本記事は「本の宇宙」と同時掲載です。)
June 8, 2010
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テレビ朝日系の土曜ワイド劇場で5日に放映された「内田康夫サスペンス・福原警部」。前作からちょうど1年ぶりで、福原警部としては、2回目のテレビ作品となる。原作は、内田康夫原作の短編集「死線上のアリア」に収録されている「死あわせなカップル」という作品だ。死線上のアリア価格:560円(税込、送料別) 内容を、ごく簡単に紹介しよう。奥多摩で、一見心中事件のように見える男女の死体が発見された。二人は、それぞれ新婚で、不倫の果ての自殺と考えられたが、福原警部は、その見解に疑問を呈し、事件の真相を追い求めていくというもの。 この福原警部、名前を聞いて、誰もが「河豚腹(フグハラ)」と聞こえてしまうくらいの超肥満体という設定だ。だから、画面でも、とにかく何かを食べているシーンがやたら多い。そうでなければ、居眠りしているかだ。きちんと、仕事をしているようなシーンは本当に少ない(笑)。 とても、普段の姿からは、そうは見えないが、これでも、警視庁きっての「切れ者」だという設定が面白い。使われたトリックは、どちらかと言えば、古典的なもので、最初から何となく結末が見えており、オープニングの事件から、ちょうど1時間位のところで第二の事件が発生するという、サスペンスドラマのお約束通りの展開だったが、福原警部のキャラで、楽しく観ることができる。 それにしても、美味しそうなものがたくさん出て来たものだ。サスペンスということを忘れて、ついグルメ番組として観てしまいそうになる。(笑)(原作)・内田康夫:「死あわせなカップル」(短編集「死線上のアリア」収録)(監督)・伊藤寿浩(出演)・石塚英彦(福原警部)・渡辺いっけい(小野捜査係長)・藤谷美紀(椿和美刑事)・国分佐知子(羽山喜代子)・宅麻伸(南田奥多摩署長) ほか○ランキングの順位は? ○関連過去記事・「内田康夫サスペンス・福原警部」 ○姉妹ブログ・文理両道・本の宇宙(そら)
June 7, 2010
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明治時代といえば、仏教にとって受難の時代だろう。廃仏毀釈の嵐が吹き荒れ、仏教は存亡の危機に瀕していた。そのような中、仏教最高のために、経典を求めて、チベットを目指した一人の青年僧がいたという。東本願寺を本山とする真宗大谷派の僧侶・能海寛(のうみ ゆたか:1869年(明治元) - 1903年(明治36))だ。 「暁の密使」(北森鴻:小学館)は、この能海寛の実話をもとに、当時の混迷する世界情勢を絡めながら、北森氏の想像力で大きく膨らませて、歴史ミステリーとして仕上げたものである。○「暁の密使」(北森鴻:小学館) 能海が、西蔵(チベット)を目指したのは、日本が日清戦争に勝利し、遼東半島を割譲されるも、フランス、ドイツ、ロシアの干渉により、返還を余儀なくされた少し後のころだ。欧米列強は、アジアの覇権を争い、地勢の要である西蔵(チベット)に手を伸ばそうとしていた。そして、日本もまた、西蔵との同盟を目指していたのだ。 能海には、まったく私心はない。私心なく道を求めようとする者に、人は魅せられるものだ。中国人の揚用や、山の民の義烏、明蘭などの単なる友情以上とも言える助力により、彼は、ただひたすら、聖典を求めて、辛い旅を続けて西蔵を目指す。しかし、混迷する時代の波は、彼の意思とは無関係に、容赦なく能海を飲み込んでいった。彼は、知らず知らずのうちに、壮大な陰謀の重要な駒にされてしまっていたのだ。彼の周りには、阿片戦争の先鞭をつけたという、英国ジャーデン・マセソン社の影が付きまとう。 「不惜身命(ふしゃくしんみょう)」という言葉がある。もともとは、仏道修行のためには身命も惜しまないことだが、一時相撲の昇進の口上で四文字熟語が流行した時に、なんだか言葉が軽くなってしまった。しかし、この作品は、正に命を捨てて仏教復興を目指した男の物語であり、真の意味での不惜身命というものを教えてくれる。 最後に、作品中で気に言った台詞をひとつ紹介しよう。揚用に、存亡の危機に瀕している日本の仏教が、果たして経典ひとつで救えるのか、能海の命がけの行為が報われるのかと聞かれた時の彼の答である。 「たとえるなら・・・・・・・蒼天の月、とでもいっておこうか」 「・・・わたしが経典を求めて長い旅の途上にある。いや旅の途上にある拙僧がいることが肝要なのだ。一人の仏教者として」(pp30-31)○ランキング今何位? ○姉妹ブログ・「文理両道」・「本の宇宙(そら)」(本記事は「本の宇宙」と同時掲載です。)
June 6, 2010
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あらゆるものに、黒い線が付いているのが見え、そこを刃物でなぞるだけで切ることができるという「直死の魔眼」 を持つ志貴と、吸血鬼の「真祖」の姫君アルクェイドらの数奇な運命と、戦いそして愛を描いた「真月譚月姫」(佐々木少年:アスキー・メディアワークス/角川グループパブリッリシング)の第8巻。6巻から7巻の間が2年も開いた割には、8巻は比較的早く出た。○「真月譚月姫(8)」(佐々木少年:アスキー・メディアワークス/角川グループパブリッリシング) 最凶の死途ロアの転生したシキに襲われた志貴は、瀕死の重傷を負う。そして、ついにロアが覚醒。アルクェイドはロアを倒すべく戦いに赴くというのが、今回の大まかな内容だ。 志貴の「志貴を愛している」という告白を陰から聞いたアルクェイドのうれしそうな顔は、とても死地に向かう者とは思えない程幸せそうだ。きっと、そのほにゃ~んとした表情に「萌え」る者も多いことだろう。○ランキング今何位? ○関連過去記事・真月譚月姫(7)○姉妹ブログ・「文理両道」・「本の宇宙(そら)」○関連ブログ記事・MEGA-DRIVER'S DIARY・アキバBlog
June 5, 2010
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ここは、隠岐島の島後にある西郷港。この辺りは、結構開けていてパチンコ屋もある。○ランキング今何位? ○関連過去記事・隠岐への玄関口七類港(続隠岐旅情1) ○姉妹ブログ・文理両道・本の宇宙(そら)○関連ブログ記事・Jabberwocky ・隠岐から:風待ち海道倶楽部の情報お届けブログ
June 4, 2010
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ここは、七類港。隠岐島への玄関口である。松江駅から連絡バスで、約40分。結構遠い。○ランキング今何位? ○関連過去記事・隠岐旅情5(隠岐からの帰還) ○姉妹ブログ・文理両道・本の宇宙(そら)
June 3, 2010
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JR松江駅の隣にある松江テルサ前にある、はじめ人間ギャートルズ。作者の園山俊二は松江の出身である。○ランキング今何位? ○関連過去記事・松江の水路夕景(松江のお散歩7)○姉妹ブログ・文理両道・本の宇宙(そら)
June 2, 2010
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「韓国人気童話シリーズ」の第13巻に当たる、「成績があがる魔法のチョコ」(チョン・ソンラン/イ・テホ/高橋宣壽:現文メディア)。どこにでもいそうな、勉強の苦手な男子小学生のお話だ。○成績があがる魔法のチョコ(チョン・ソンラン/イ・テホ/高橋宣壽:現文メディア) 主人公のヒョンジェは、あまり成績が良くないようだ。英語の塾のクラスでもう4カ月もCクラスに滞留している。母親は、いつも友達のヨンギュと比べて小言を言う。おかげで、ヒョンジェはストレスでいっぱい。ところが、夏休みに母親の田舎で、不思議な体験をする。 川遊びをしたときにトイレに行きたくなったヒョンジェだが、用を済ませて出て来た彼の前に、入った時と全く違う風景が広がっていたのだ。 そこにあるのは、ヘンな店ばかり。表題の「成績があがる魔法のチョコ」もそんな店の一つで売られているのだが、これには、オチがあって、実際のところは、そんな都合のよいものなんてあるわけはないのである。また、ジュースをおかわりしてしまうと、ウェーターにされてしまうような店もあり、ヒョンジェは、結局その店で働くことになってしまう。そしてて、インラインスケート・ウェーターとして評判になったり、インラインスケートの大会に出たりするのである。 もっとも、こんな変な店があるわけはなく、どうもヒョンジェの夢だったようだが、この物語を読むと、色々と興味深いことに気づく。 この物語で、一番言いたかったことは、人の才能はそれぞれと言うことだろう。ヒョンジェには、勉強の才能は無いかもしれないが、運動神経は良く、インラインスケートの才能はすばらしいようだ。金子みすずの「私と小鳥と鈴と」という詩に、「みんなちがって、みんないい。」という一節があるが、持っている才能は人によって違うのだ。このシリーズの他の作品でも感じるのだが、韓国では、日本以上に勉強の競争が激しいようだ。そして、これは我が国でも多いと思うのだが、塾に入れておけば安心とばかりに、たとえ勉強がその子に向いていなくとも、小さいころからお勉強に勤しませる。そんな風潮を、やんわりと批判しているのだろうか。 なお、本書は、現文メディアさまより献本いただいたものです。ありがとうございました。○ランキング今何位? ○姉妹ブログ・文理両道・本の宇宙(そら)(本記事は「本の宇宙」と同時掲載です。)
June 1, 2010
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