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AHSシーズン6:Roanokeあらすじシェルビー・ミラー(リリー・レーブ)とマット・ミラー(アンドレ・ホランド)夫婦、マットの姉のリー(アディナ・ポーター)はカメラの前で自分たちの異常な体験を語った。再現VTR『マイ・ロアノーク・ナイトメア』幸せな結婚生活を送っていたヨガ講師のシェルビー(サラ・ポールソン)とセールスマンのマット(キューバ・グッディング・Jr)はある事件をきっかけに住み慣れたロサンゼルスからノースカロライナへ引っ越し、新居として古い農家を購入する。その夜から奇怪な出来事に襲われた2人は、原因を地元の農夫による嫌がらせと考え警察に連絡するも自衛を促されるばかり。そこで元警察官のリー(アンジェラ・バセット)を呼び寄せマット出張中のシェルビーの警護を頼むのだが、タイプの違う女性2人は仲違いする。口論中何者かが屋内に侵入したことに気づいたリーとシェルビーは地下室で気味の悪いビデオを発見。停電が復旧し地下を出ると室内には無数の木ぎれで作られた人型のオブジェが吊るされていた。出張先のホテルで携帯電話から防犯ビデオの映像を確認したマットはすぐさま帰宅する。耐えきれずシェルビーは家を飛び出し、女性(キャシー・ベイツ)を車でひいてしまう。女性の後を追って森に入ったシェルビーは道に迷い、木にぶら下がった人型のオブジェを見る。怯えたシェルビーがさらに進むと、そこには頭皮を剥ぎ取られた男性を取り囲む群衆がいた。感想最高。原点回帰。シーズン1に似た雰囲気でストーリーもキャラクターも最高だった。本編より怖かった(?)オープニングをなくしたのも新しかった。シーズン1は幽霊屋敷ものだったのですが、幽霊屋敷を題材にした作品の祖といえばシャーリィ・ジャクスンの『山荘綺談』。今回『山荘綺談』からの引用もしっかりあって、ドアがバンとしまったり、あられのようなものが屋敷に降り注いだり(山荘綺談では小石、ロアノークでは歯)、ヒロインの見たものが幻想なのか現実なのか混乱したり。ホラーはヒロインで決まるところがあって、それを考えるとサラ・ポールソンは適役。繊細で考えなくていいことまで考えてしまいそうな雰囲気がある。シーズン5で言うと、スカーレットが襲われそうになってたら「あぶない!」と思えるけど、ナオミ・キャンベルが首絞められてても大丈夫そうな気がする。木ぎれで作られた人型オブジェは『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』(1999)への目配せ。残されたビデオが気持ち悪いのは『食人族』(1980)を意識していると思われます。シーズン6となる今作ではシェルビーとマット夫妻はロサンゼルスから引っ越しますが、シーズン1ではハーモン夫婦がボストンからロサンゼルスへ、チャールズとノーラ夫婦はフィラデルフィアからロサンゼルスへ引っ越しています。そしてシェルビーの流産。夫のマットが暴漢に襲われたのがきっかけですが、この事件でシェルビーは深いショックを受けます。シーズン1でもヴィヴィアンは流産と夫の浮気を経験しており、オーガニック好きのヴィヴィアンとヨガ講師のシェルビーはどこか通じるところがあります。ちなみに『山荘綺談』作者のシャーリィ・ジャクスンも実生活では夫の浮気に悩まされ、アルコールと薬物依存に陥っていました。シャーリィ・ジャクスンが結婚生活を送ったノースベニントンでは反ユダヤ主義と反知性主義に遭遇し、「人々から迫害を受ける」彼女の作品に影響を与えたと言われています。マットとシェルビーは本当に「地元の農夫(マットはホワイトトラッシュと発言)」から迫害されているのか。アメリカには「ゴーストマウンテンの人食い族(Ghost Mountain Cannibals)」という伝説があって、ゴーストマウンテンとはペンシルバニア州バックスカウンティにあるヘイコックマウンテンのことで、スプリングハウスレインにあるガラス張りの家に人食い族が住んでいて、面白がって自分たちを探しに来る軽はずみな人間を待ち構えている、という話です。これは植民地時代からの都会と田舎の対立が背景にあり、僻地はあまり文明的でない、という考えが元になっているとされています。人食いについてはアメリカだけでなく世界中に伝説があり、代表的なものは16世紀スコットランドのKin Killing Cannibalsで、これはソニー・ビーン一家の話。スコットランド対イングランドの数世紀続く対立の歴史の中で、「見かけは同じでも中身は違う」と人々に信じ込ませるために食人族ソニー・ビーン一家の話は度々持ち出され、今日でも辞書で「ソニー」を調べると「愚か者」「間抜け」「スコットランド人」と出ます。シャーリィ・ジャクスンについてもう少しいうと、アメリカンホラーストーリー:シーズン1のコンスタンス(ジェシカ・ラング)は『ずっとお城で暮らしてる』のメリキャットの成長した姿なんじゃないか、と私は考えています。悪意の塊なんです、コンスタンスは。ダウン症の娘を持って「私の時代に羊水検査があればね」と初対面の妊婦に話したりするし、なぜ自分が他人から怪訝な顔を向けられるのかわかっていないところがある。シーズン3のマートル・スノーの火刑の場所が採石場だったのも『くじ』から来ているのでは。魔女の仲間が禁を犯したら火刑に処す、というルールと、毎年くじを引いて村人の中から一人を石打ちの刑にすればトウモロコシの豊作が約束される、という因習は似ている。どちらも形骸化しているのにやめられない。『山荘綺談』の訳者小倉多加志さんはこう書いています。「今日のアメリカではゴシック・ノーヴェルは嘘のように広い読者層を持ち、古典の流れを汲んで恐怖を前面に押し出したもの、いわゆるニュー・ゴシックと呼ばれるものなど、まことに盛観である。現代風な解釈をすれば、古城や古い館は閉鎖、森への逃避は権威や束縛からの脱出と解放、回想は動機の解明の象徴と見ることができる。しかし閉鎖の解放はかならずしも自由とは限らず、死を意味することもある」シェルビーが語る「闘争か逃走か」のその先にあるものとは。シーズン4(怪奇劇場/フリークショー)の元になった(と思います)小説、長らく日本では絶版だったキャサリン・ダン「異形の愛」が今年発売になっています。見世物巡業サーカスを営むフリークス一家の話。異形の愛 [ キャサリン・ダン ]「美しいのはヴァラエティ」「あたしたちは傑作なんだよ。どうして大量生産品の仲間にならなくちゃいけないの? あんたたちなんか、服の違いでしかお互いの見分けがつかないじゃない」「おまえ自身、群れに背中を向けて来たんだろう?」傑作です。
July 25, 2017
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