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あらすじ2016年3月15日 2015年放送の『ロアノークの悪夢(マイ・ロアノーク・ナイトメア)』の出演者たちはトリクシー・マテルとエドワード・ハンセンが司会を務めるペイリー・フェストに出席し、世界各地から集結したファンたちと交流する。ロンドン在住で番組の熱狂的なファンの一人であるブリストルは自らの人生の苦しみをリー・ハリス本人の境遇と重ね、この日を待ちわびていた。念願であったリーとの抱擁に感激した彼女だったが、2016年の『ロアノーク2(リターン・トゥ・ロアノーク)地獄の3日間』の放送内容はブリストルの番組に対する信頼を打ち砕くものだった。続編はオリジナルにあった芸術性が失われており、金儲け主義に走ったシドニーの目論見が前面に出たことで悪趣味なものに成り下がったというのだ。実際に人が死ぬ映像が話題となり下品な論評の的となったことを嘆く彼女はYouTubeに番組批評を投稿、多くの高評価を集めた。一方同じ頃、生き延びたロット・ポークもまたYouTubeで自身の見解を披露していた。「ポーク家は不当な扱いを受けている」ドキュメンタリー番組『崩壊(crack'd)』内気で有能なリーは警官として勲章を受賞し2005年の秋、メイソン・ハリスと結婚。最愛の娘フローラが生まれる。しかしリーの薬物依存は夫婦関係に亀裂をもたらし、メイソンとの親権争いに発展する。フローラ誘拐、メイソンの不可解な死はリーの仕業であると警察は踏んだが彼女には状況証拠しかない。地方検事マーク・フィリップスはメディアの取材を受けTV番組に出演するリーを「犯罪ネタで稼ぐ女」とカメラの前で断罪した。しかし薬物専門家マーカス・ミニアーはポーク家で発見されたマリファナは特殊なもので幻覚作用があることを発表。ポーク家での残酷な映像を見せられた陪審員はリー・ハリスの行動に共感し始める。リーの弁護士ステファニー・ホルダーは「幻覚、トラウマ、監禁状態は心身衰弱に陥る典型的な要因である」と彼女を弁護した。リー・ハリスは全件で無罪を勝ち取った。地方検事マークはリーの容疑を夫殺し一本に絞ることにする。防犯カメラの映像、リーとメイソンの通話記録、そして目撃者である娘フローラの供述によりリーは苦境に立たされるが、「幽霊の友人」プリシラの存在を実在のものとして話す少女の目撃談は信じるに値しないと判断され、16日間を要した評決はリーの無罪であった。リー・ハリスは刑を免れたが、娘の信頼は失ったままである。生放送『ラナ・ウィンターズ スペシャル』ブライヤークリフを生き延びたジャーナリスト、ラナ・ウィンターズとの対談に応じるリーは、元夫の家族に引き取られたフローラとは未だ会えずにいるものの、生きる原動力の全ては娘だと答える。裁判後リーは体験談を出版、話題の人物の本はベストセラーとなり、講演で高収入を得ていた。ラナから1時間前にフローラが失踪したことを告げられたリーは狼狽する。生放送中のスタジオ内に銃声が轟いた。ロット・ポークが復讐を遂げに来たのだ。説得するラナを攻撃したロットはその場で射殺された。超常現象追跡番組『スピリット・チェイサーズ』11月18日放映分『ロアノークの悪夢』でクリケットを演じた俳優アシュリー・ギルバートをゲストに迎え、ボブ・キナマン、デイヴ・エルダー、そして技術担当のトレイシー・ローガンらスピリット・チェイサーズ・チームはロアノークハウスへ不法侵入する。ブラッド・ムーンの期間中何か起こるのか検証するためだ。トレイシーの機材が異常な数値を示し、ベッドシーツが吹き飛び、部屋のドアが突然閉まった。窓ガラスに映った人影はフローラを探すリーだった。リーは彼らに今すぐここから避難するように警告する。アシュリーを含むスピリット・チェイサーズは屋敷内で活動を始めた霊たちによって全員殺された。ニュース映像ロアノークハウスは警察によって包囲されている。リー・ハリスが娘を人質に立てこもったまま14時間が経過しようとしている、とレポーターは伝えた。『ロアノークの悪夢』でイライアスを演じた俳優ウィリアム・ヴァン・ヘンダーソン、自宅静養中のジャーナリスト、ラナ・ウィンターズがそれぞれインタビューに応じた。「彼女にとってフローラが全て」とラナは語る。夕闇迫るロアノークハウスにてフローラと再会を果たしたリーは自らの過ちを認め、再び一緒に暮らすことを提案するも、フローラにはねつけられる。フローラはトマシーンから友人を守るためプリシラと一緒にいたいのだ。リーはフローラに可能性を与えるべく自分が犠牲となってプリシラの保護者になることを約束する。屋敷内にガスを充満させたリーはフローラを逃し、プリシラに持たせた銃で自らの命を絶った。爆風と炎に包まれるロアノークハウス、そして警官に保護されパトカーに乗るフローラをプリシラと手を繋いだリーの霊が見守っている。空に赤い月が昇る頃、松明を掲げたトマシーンの一団がロアノークハウスへ向かった。終わり感想結果的にトマシーンとの約束(クリケットを通じて「ロアノークハウスを焼いてこの地を去る」と契約していた)を果たしましたね。リー・ハリス。その代償として自らの命を捧げて娘を守った訳で、母親が薬物依存(で現在は殺人犯)、粗暴な父親、という環境で育つよりフローラの人生のためには良かったと思うし、ハッピーエンドと言えるのでは。ラナ・ウィンターズとよく似たリーですが、彼女とは逆に子供を守って自分が犠牲になった。ラナはリーを「怪物と戦い、彼女自身が怪物となった」と評していましたが、人生の終え方は立派でした。森の魔女スカアハに命を与えられた者同士、トマシーンとリー、今後の両者の戦いの予感も感じさせます。終わり方はシーズン4(フリーク・ショー)に似た形だったと思います。「死は、時間のない状態が始まる」と言った哲学者がいますが、フリーク・ショーではエルサ・マーズ(ジェシカ・ラング)は舞台上で死に、死後の世界で永遠のスターになるという筋書きでした。エドワード・モットは同じくシーズン4のダンディの先祖でしたし、思い返してみれば霊能者クリケットは「ニューオーリンズから来た」と言っていて、彼はシーズン3(魔女団)の一員かもしれない。森の魔女も魔女団の最初のスプリームとも考えられます。さらに、リーの死に方は最愛の存在のため自己犠牲で火あぶりになったマートル・スノーを思い出させるものでした。また、リーの薬物依存のくだりはシーズン5(ホテル)に通じるものがある。そして今回シーズン2(アサイラム)の主役ラナが登場。今回のシーズン6第1話で「幽霊屋敷がテーマか、シーズン1もマーダーハウスだったなあ」と思っていましたが、全てのシーズンとつながりがありました。ラナ・ウィンターズの番組のオープニングがローズ・クオーツの色調だったことに気づきましたか? Pantone によればローズ・クオーツ(ピンク)とセレニティ(水色)は2016年のトレンドカラーで、「気品・流行に敏感・かっこいい女性の色」だそうです。2016年、ローズ・クオーツの色はカルバンクラインの広告やグッチのファッションショーなど至るところで見られ、イヴァンカ・トランプ.com では今でも使われています。ラナは現在それなりの年齢に達しているはずですが若さを保っている(老けた特殊メイクはしていましたが、それでも若い)のは、いまも鋭い感覚のまま第一線で活躍していることとシーズン2の最後に短縮ダイヤルで医師に電話していた部分に秘密がありそうです。19世紀末アメリカ文壇の大御所ウィリアム・ディーン・ハウェルズの『サイラス・ラッパムの向上』(1885年)の主人公で、ペンキ製造によって財を成した田舎者サイラス・ラッパムは上流社会に仲間入りを目指す野望の一環としてボストンに豪邸を建てます。アメリカ文学研究者で翻訳家の柴田元幸さんによれば、「<自己創造の意志が外の世界に投影されるとき、アメリカ文学では「館」を建てる(あるいは買う)という形を取ることが多い>ということになると思う。要するに、家を作ることは自分を作ることなのだ。例えばサイラス・ラッパムのように、self-made man(自分で自分を作った男、自力で叩き上げた男)というアメリカ起源のフレーズがいかにもふさわしい、経済的には相当「向上」し、すでにある程度の自己創造を成し遂げた人間にとって、豪邸を建てることは、社会的に自己創造を遂げるための必要不可欠のステップなのだ(結果的には、豪邸は建設中に焼失し、ラッパムは経済的に没落するが、それを機に愚かしい栄華の夢からさめて人間的に「向上」する、というのがタイトルの意味)」と解説しています。地獄の3日間を生き延びたことで経済的には申し分のない生活を送っていたリー・ハリスですが、最初から最後まで一貫して願っていたのは娘の幸せでした。館に火を放ち残りの人生を全て娘の未来に捧げたことで彼女の人生は完成したと言えます。
October 7, 2017
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あらすじTV番組『マイ・ロアノーク・ナイトメア(ロアノークの悪夢)』のファンサイトを運営するソフィー・グリーン(タイッサ・ファーミガ)、マイロ(ジョン・バス)、トッド・コナーズ(ジェイコブ・アーティスト)の3人はロアノークの森の中で血まみれの女性の霊に導かれ、横転した車内にダイアナの遺体を発見する。地元警察に訴えるも信じてもらえない3人のブロガーは夜陰に乗じて森へ戻る。事前のシドニーの指示によりピギーマンの扮装で現れたディランは Uber で移動してきており携帯電話等の通信手段は持っておらず、リーとオードリーを落胆させる。モネ救出とテープ奪還のため、リー、オードリー、ディランはポーク農場へ向かった。モネとテープを発見したオードリーはイシュマエル・ポークに引き止められるが、オードリーはリボルバーを引き抜いて彼を撃つ。イシュマエルは農場のビニールシートを朱に染めて転倒した。ロット・ポークは、ポーク家のトラックで待機していたディランを襲って彼を放擲し、運転して逃げ出す。オードリーとモネがロアノークハウスへ戻りリーの殺人告白テープを見ていたその頃、傷ついた体でひとり森を彷徨うリーは森の魔女の差し出した獣の心臓を食べ、全身に力が漲るのを感じていた。メーソンの殺害現場にたどり着いた3人のブロガーのうち、トッドは、森の魔女に精神を支配されたリーによって殺される。ソフィーとマイロは自分たちの周囲に人型のオブジェが多数吊るされていることに気づき、シドニーのトレーラーに逃げ込んだ。トレーラー内のモニターでロアノークハウスにリーが近づきつつあるのを確認した2人はリーの凶行を止めようと走り出した。屋敷に入ったリーはモネを二階から突き落として殺害した後、地下貯蔵庫に逃げ込もうとしていたオードリーの左肩を刃物で刺し、彼女を落下させる。ロアノークハウスへ到着したソフィーとマイロは、トマシーンの一団によって臓物を引きずり出されているディランを目撃する。逃げようとした刹那2人はリーに捕まり、串刺しにされ焼かれた。翌朝。ブロガー3人が生配信していたネット動画を見た視聴者から集団リンチの通報を受け警察が到着する。惨劇の残骸を目の当たりにした警察はかろうじて生きていたリーを保護。パトカーへ乗せようとしたその時、地下貯蔵庫から自力で上がってきたオードリーが警察の銃を奪いリーへ向けた。警官たちの一斉射撃を受けオードリーは絶命した。地獄の3日間、ブラッドムーンを生き延びた一人とは、リー・ハリスだった。感想タイッサ・ファーミガ再び登場! 嬉しい!願いが叶うなら、またエヴァンとカップル役をやってほしい。彼女はホラー向きだし、アメリカンホラーストーリーの世界観にもよく合ってると思う。彼女の主演した『ファイナル・ガールズ』も最高だった。B級ホラー映画女優だった母親を事故で亡くした女子大生がホラー映画の世界に入り込んでしまい……という映画。この映画はコメディなんだけど、途中、タイッサが「(ママ、)バージンを大切に」って言うシーンがあるんです。そこでなんだかわからない涙が出た(笑)懐かしいし面白いし、感情がかき乱される良い映画です。森の魔女、スカアハ。北欧神話の女神ですけれども、この北欧神話のタトゥーはアメリカの白人至上主義者たちが好んで入れているモチーフだそうです。ポーク家にでっかい南軍旗が貼ってありますけれども、保守的なポーク一家、トマシーンとは親和性が高いキャラクターと言えます。
October 1, 2017
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アメリカンホラーストーリー シーズン5 ホテル日本版の出演者を勝手に考えました。役名(オリジナル版出演者)… 日本版出演者、の順です。(妄想です!!)リズ(デニス・オヘア) … 太田光(爆笑問題)アイリス(キャシー・ベイツ) … 田中裕二(爆笑問題)※田中も猫飼ってるし、いいと思う。リズは葛藤を抱えた複雑な女性で韜晦の人なのですが、向田邦子の世界を完璧に理解する太田がどう演じるか本気で見たい。アイリスの息子ドノヴァン(マット・ボマー) … ウエンツ瑛士※田中と仲良いから警察署の女性警官 … 黒沢かずこ(森三中)吸血鬼と化した小学生軍団に襲われる校長 … 麿赤兒マーチ(エヴァン・ピーターズ) … 小日向文世※私はエヴァン・ピーターズ大好きです、だけど、この役はもっと年をとった貫禄ある役者の方が良いと思って観ていたし今もそう思う。トリスタン・ダフィーとルドルフ・ヴァレンティノ(フィン・ウィトロック) … 高知東生※2016年ホテルにて薬物所持で逮捕された時の言葉は「ありがとう」。ありがとう、いい薬です不動産屋エヴァース(メア・ウィニンガム) … あき竹城※私はあき竹城が好きだ! しくじり先生終了で残念だけれども、あの番組はあき竹城の代わりに時々榊原郁恵を出していたのが不満であった。なんなの〜「おばさん」でくくられてんだろうけど、全然違うじゃんあの二人。でもあき竹城さんをレギュラーにしてくださったスタッフの方、ありがとうございました!殺人鬼たちリチャード・ラミレス(アンソニー・ルイヴィヴァー) … IKKOアイリーン・ウォーノス(リリー・レーブ) … 寺島しのぶ※アイリーンについては映画『モンスター』を観ていたので、「いくらリリー・レーブでもシャーリーズ・セロンは超えられないだろうな」なんて思ってましたが、観てびっくり。アイリーンそのものでした。彼女が話している間、ずっと私は泣いていた。ジョン・ゲイシー(ジョン・キャロル・リンチ) … 西田敏行ジェフリー・ダーマー(セス・ガベル) … えなりかずきゾディアック … 美川憲一ジョン(ウェス・ベントリー) … 袴田吉彦エリザベス(レディ・ガガ) … 元谷芙美子ロケ地ホテルコルテス … アパホテル全体的に『ダーティ・ハリー5』のオマージュになっているので、これからシーズン5を観る人は最初にダーティ・ハリーを観ておくと良いと思います。
September 19, 2017
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あらすじアグネス惨殺を目の当たりにしたドミニクとシェルビーは、ロアノークハウスからの脱出を試みる。しかし地下通路ではチェン家の霊に阻まれ、屋内では殺人看護師、ピギーマン、チェン家の長女が二人を襲う。屋敷の前にはトマシーンの一団が待ち構えており、退路を断たれたドミニクとシェルビーは二階のバスルームに閉じこもる。愛する夫マットを殺してしまった罪の意識に苛まれたシェルビーは頸動脈を切り裂き自ら命を絶った。一方、ポーク一家に補足されていたモネは一人で逃げ出し、その後をイシュマエル・ポークとロット・ポーク親子が追った。ポーク家が人肉食を始めたのは大恐慌時代、飢えた人々に家畜の豚を盗まれたのがきっかけだった。その後彼らは代々人間の肉を食べ、警察に賄賂を渡して事件が明るみに出るのを防いで来た。1800年代、ポーク家の先祖キンケイド・ポークは解体した豚の頭の皮を被り殺人を犯しピギーマンとなる。トマシーンの儀式を真似た彼は伝説となった。左脚の肉と右耳を削がれ死を覚悟したリーは、ジェサー・ポーク(フィン・ウィトロック)の持つカメラの前で夫殺しを告白し、ジェサーを誘惑して殺害した。ポーク一家の奇妙な儀式のために歯を抜かれたオードリーを救ったのはリーだった。オードリーはママ・ポークを殺し、リーとともにロアノークハウスへ戻る。マットとシェルビーの遺体を発見したリーとオードリーはドミニクを非難し、彼を部屋から締め出す。ドミニクは屋敷内を跳梁していたピギーマンによって殺害された。殺人を告白したテープを取り戻したいリーはオードリーを説得し翌朝再びポーク家の牙城を目指す。ロアノークハウスの玄関ドアの先にいたのは、トマシーンの息子アンブローズを演じた俳優ディラン(ウェス・ベントリー)だった。感想「ポーク家は他と違って特別なんだ」と虚ろな目で語るジェサー・ポーク。両親双方の残忍性と無関心のせいで彼は指導も受けず、愛情も注がれず、道徳的価値についての確固たる感覚を身に付けることもなく成長したようです。人肉を食べ親子間で性交することに疑問を抱いていない。演じていたフィン・ウィトロック、最初誰だかわからず、スタッフロールで「?」ってなってもう一度見直しました。別人すぎ。これまでのアメホラでの彼の役柄は、シーズン4:富豪の美青年殺人鬼、シーズン5:アルゼンチンタンゴの名手で世界中の女性を虜にした美男子、スキャンダルに塗れたファッションモデル。今回変態一家の三男。てことは7話にも出てたのか。全然気づかなかった。デニス・オヘアの変わりようもすごいけど、フィン・ウィトロックもすごいねえ。■豚の話アメホラに必ず出てくるものの一つ、浴槽。現代のアメリカ人が使っているホーロー引きのバスタブは、元々豚の解体・皮剥ぎの際そこに熱湯を満たして使われていたもので、それがのちに人間の入浴用として使用されるようになったと聞いたことがあります。これまでのアメホラではバプテスマを思わせる表現の中で逆に死を迎える(殺される)シーンが多かったのですが、今回は豚が主役。豚と演劇との関係は古く、シェイクスピアの時代まで遡ります。『ジュリアス・シーザー』が上演されるときは必ず舞台裏で豚が一頭屠られ、膀胱が取り出されていました。取り出された膀胱はジュリアス・シーザーを演じる役者のガウンの裏に結び付けられ、ブルータス役は小道具の短剣でこの豚の膀胱を突き刺すのです。舞台には豚の鮮血が衣装を伝って溢れ出てくる仕組み。当時の役者の日記には、立ち見客が豚の血だまりに右手の指を浸し、その手を役者に向かって振った、とあります。この出し物が気に入ったというメッセージでした。(『世界でいちばん面白い英米文学講義』著者:エリオット・エンゲル 訳:藤岡啓介「ウィリアム・シェイクスピア 血まみれ、涎まみれの一大エンターテイメント」)■歯のネックレスポーク一家が犠牲者たちの歯を使って作るネックレス(彼らはこれが魔除けになると信じている)、何かで見たことあるなあ、と感じていたのですが、映画『イージー・ライダー』で主人公たちが南部の町を通りかかったとき地元の住民に、つけてたアクセサリーを「歯のネックレス」呼ばわりされていたんでした。そこで差別的な言葉を浴びせられた彼らは住宅地を離れて野宿するのですが、そこでの会話が素晴らしかったのでここで引用してみます。「昔はこの辺も良いところだったんだけど、どこでどうまずくなっちゃったもんかね」「みんな臆病者になったのがいけねえんだ。現に俺たちは二流のホテルにだって断られたじゃないか。俺たちに喉でも切り裂かれるんじゃないかって怖がってやがるんだ」「君らを怖がってるんじゃないよ。君らが象徴してるものを怖がってるんだよ」「そうかな、奴らは俺らを散髪の必要な人間としてしか見てねえさ」「君たちが象徴しているものは自由だよ。自由にも二通りある。君の言う自由と、奴らの言う自由とは、似て非なるものなんだな。彼らは自由ってもんをマーケットでものを買うように買うわけにはいかないってことを知ってるんだよ。でも冗談にも奴らが自由じゃないなんて言っちゃいけないよ。そんなこと言ったら奴ら自分が人殺しをしてでも自分が自由だってことを証明しようとするからさ。なるほどみんな個人の自由とかについてはよく喋るよ。喋るのはそりゃ楽だからね。だけど口先だけだよ。違う自由がそこに現れると怖くて仕様がないんだ」「怖がってるって顔じゃない」「そう。かえって凶暴になるんだ」ポーク一家も過去の亡霊たちも、侵入者が怖いのではなく、侵入者たちの象徴するものが怖いんだと思う。自分たちの常識・価値観を揺るがされるのが。来週はエミー賞授賞式放送のため、ドラマは一週お休み。
September 13, 2017
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前回(第6話)まとめ:ローリー死亡第7話 あらすじ『ロアノーク2』製作用トレーラー内で、マットとドミニクの邂逅シーンをチェックしたシドニーは自身の奸計が功を奏したことに欣喜雀躍したのもつかの間、トマシーンの衣装を身につけたアグネスに惨殺される。地下貯蔵庫に据えたカメラの前でアグネスは、シドニーとカメラマンのみならず、アシスタントのアリッサまで殺めてしまった軽挙に動揺する。心境を述懐している彼女の周りには、知らぬ間に木ぎれで作られた人型のオブジェが吊るされていた。ローリーが姿を消したまま朝を迎えたロアノークハウスでは、モネはアルコールを呷り、リーは自身の無実を証明すべくカメラを回し、ドミニクはリアリティ番組における悪役としての役割を演じ切ろうとマットの前でシェルビーを口説いた。マットに誤解され傷心のシェルビーをアグネスが襲った。ドミニクがシェルビーの窮地を救い、左肩を負傷した彼女に代わって3人の女性(リー、モネ、オードリー)が助けを求めるため屋敷を出る。地下道はエドワード・フィリップ・モットの霊に邪魔されて通れず、森を抜けてトレーラーにたどり着いた3人はシドニーらの死体を見つけ戦慄する。現れたアグネスを銃で撃ち森へ逃げた3人は、木から吊るされたローリーの遺骸を目にする。驚く3人をポーク一家が拉致。リーの脚の肉を削ぎ、リー、オードリーに食わせママ・ポークは哄笑した。夜中ふらふらと何処かへ向かうマットを不審に思ったドミニクは、寝ていたシェルビーを起こし、マットと森の魔女が地下室で激しい物音を立てている様を見せた。襲われているマットを助けようとバールで魔女を殴りつけるシェルビー。しかしマットは魔女を愛していて、彼女が欲しくてロアノークへ戻ったと言う。それを聞いたシェルビーは持っていたバールでマットの頭を複数回殴り殺害した。ロアノークハウスの表では、自ら銃弾を摘出したアグネスが篝火をたき、それに吸い寄せられるように松明を持った集団が囲み始めた。本物のトマシーンがアグネスの頭に肉斬り包丁を振り下ろすのを、シェルビーとドミニクはロアノークハウスの2階から見つめていた。感想爆笑なんだけど!! 内臓丸出しのシドニーを見てオードリー「シドニーが死んでるみたい」リー「みたい!?」オードリー「私はアメリカ人じゃないの。虐殺は慣れてない」アメリカ人も慣れてねえわ! アグネスの断末魔の叫びも「テレビに映りたかっただけ」って!まぁそんなものかもしれないですね、突き詰めたら誰しも。台本なんてなくとも出演者は期待された役割を演じて視聴率に貢献しようとするし、「より多く映った者が勝ちだ」(ドミニク談)と思う。だけど『恋のから騒ぎ』(1994〜2011。番組を盛り上げた人、特に憎まれ役を演じた人は年間MVPとして表彰される)のエピソードトークでさえ未だに全部本当だと思い込んで元出演者を攻撃する人がいるのだし、アグネスみたいに現実と虚構の区別がつかなくなってしまう人というのは一定数いるわけで、危ないよなあとも思う。(アメリカでもあるそうです、リアリティ番組で悪役を演じたがためにその後数年に渡ってFacebook等で嫌がらせを受け続けるケース。あれは本当の私じゃないんですよ、と言っても一旦攻撃を始めた人は聞かないらしい。嫌われるきっかけなんて「見てる人を笑わせようとして大げさなこと言ったけど、スベった」くらいのことなんだろうな)マット、第5話でちょっと見直したのになあ! 足首を破壊されたシェルビーとフローラを見捨てずに妻を落ち着かせて。シェルビーは一度の過ちとはいえマットを裏切って酷いよなとまで思っていたのに。それなのにマット「魔女とセックスしたくて森に来ました」って。日野皓正が聞いたら往復ビンタだよ。しかしシェルビーは日野皓正ではなかったのでバールでマットの頭を原型がなくなるまで殴りつけたのでした……。あれほどマットのこと好きだったのに。好きだからこそか。愛と憎しみは表裏一体。日野皓正事件が話題になってましたけど、シェルビーの殺人も愛がある体罰に入りますよね。愛してない人が森の魔女と何をしようとどうでもいいし、関心なかったら暴力なんて振るわないんだから。だから昔の暴力教師の「愛のビンタだ!」とかも本心なんだろうし、かつて暴力を振るわれた側の「愛を感じた」っていうのも本当だと思う。だって実際愛があるんだから。だけど愛のあるなしで行為の正当性を決めるのは危険だ。
September 5, 2017
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あらすじ2015年、『マイ・ロアノーク・ナイトメア(ロアノークの悪夢)』テレビシリーズは好評を博し、最終回は全米で2300万人の視聴者数を獲得した。NFL中継、『Empire 成功の代償』『ウォーキング・デッド』を凌ぐ視聴率を叩き出したことでテレビ局は続編の制作に乗り出した。プロデューサーのシドニー・アーロン・ジェームス(シャイアン・ジャクソン)はネットワーク局の重役たちに『ロアノーク2(リターン・トゥ・ロアノーク)〜地獄の3日間』は3日間のブラッド・ムーンの期間、再現俳優と当事者たちが同じ館の中で生活するリアリティショーにしたいと構想を語った。■ブラッド・ムーン10週前シドニーは出演を拒むシェルビー(リリー・レーブ)にインタビューを試みた。シェルビーはテレビ放送後自宅のドアにナイフを突き刺されるなど悪質な嫌がらせにあっており、しかもマット(アンドレ・ホランド)との夫婦関係が蹉跌していることを告白する。別居の理由は彼女とマットを演じた俳優ドミニク・バンクス(キューバ・グッディング・ジュニア)が週末関係を持ったためである。マットとの関係を修復したいシェルビーはドミニクを共演させないことを条件に出演を了承する。■ブラッド・ムーン2週前ロアノークハウス内に定点カメラを設置、ジャンプ・スケアー(ホラー映画・ビデオに使われる技法で、イメージや大きな音で怖がらせる)装置を取り付けた。シドニーのアシスタント、ダイアナ(シャノン・ルーチョ)が超常現象の偽装に抗議していると、クルーたちが騒ぎ始めた。館の外で屠殺された豚の胎児がサークル状に繋ぎ合わされ何かの儀式が行われた形跡を発見したのだ。ポーク一家はここ数週間地域から消えているという。シドニーはトマシーンを演じたアグネス・メアリー・ウィンステッド(キャシー・ベイツ)にインタビューする。アグネスはテレビ出演後ハリウッド大通りで刃物を振り回し、施設に6ヶ月間入所していた。殺された豚の胎児の写真に見覚えはないと答えるアグネス。ブッチャー/トマシーンを演じたのは素晴らしい体験だったと言い、後編への出演を渇仰するアグネスだったが、シドニーは参加を見送り、さらに彼女に対してロケ地への接近禁止令を出した。「Eニュース」の司会者クリスティン・ドス・サントス(@KristinDSantos 本人)にインタビューされたリー・ハリス(アディナ・ポーター)は、義母は裁判でフローラの養育権を争うつもりであるが、自分は無実であり世間から殺人犯呼ばわりされることに傷ついていると胸の内を語った。テレビ局の法律顧問は全員免責同意書に署名させたため、収録中リーが殺人を犯してもテレビ局の法的責任は発生しないと言う。それよりもリーを演じた女優モネ・ツムシーメ(アンジェラ・バセット)を危惧していた。彼女はアルコール依存症の治療中であるため故意に酒を渡せば責任を問われる。大道具スタッフがチェーンソーで自分の頭部を切り落とす事故が発生。撮影続行を指示するシドニーに落胆したダイアナは車で現場を離れるが、帰り道後部座席から現れたピギーマンに襲われ車は大破。車内カメラに残った映像は回収されたが彼女の遺体は忽然と消えていた。シェルビーを演じた英国女優オードリー・ティンダール(サラ・ポールソン)と、エドワード・フィリップ・モットを演じたローリー・モナハン(エヴァン・ピーターズ)は最近結婚したことを明らかにする。2人がロアノークハウスに到着すると、窓の外の不審な人影が窓を叩き一同はアグネスが来ているのかと騒然とする。狙っていたサターン賞をオードリーに受賞され、アグネスはナイフを持ってオードリーの家に押しかけたこともある。夏の間8週間撮影していて霊など見なかった、と笑い合う俳優たちにマットはブラッド・ムーンは10月だと警告する。空には赤い月が出ていた。ロアノーク2(リターン・トゥ・ロアノーク)〜地獄の3日間〜モネがキッチンで飲酒を始めた頃、廊下のカメラはリーの後ろに全身焼けただれた黒人男性を捉えていた。番組を盛り上げるためにシェルビーとの約束を反故にしシドニーが送り込んだドミニクがロアノークハウスに到着した。激昂して飛びかかるマット。玄関ホールで出演者たちが仲裁している間、2階ではオードリーが浴室でピギーマンと遭遇し裂帛の声をあげる。助けに向かったローリーは2人の看護師に刺し殺された。マットは壁の「MURDE」が「MURDER」に変わっているのを発見する。RはRoryのRだった。■ブラッド・ムーンの3日間で出演者たちは謎の死を遂げた。たった一人を除いて。感想今回、第6話(第6章)のディレクターはアンジェラ・バセット(再現VTRリー・ハリス役で、今回モネ・ツムシーメ役の女優。アメホラには演者としてシーズン3から参加しています)。制作は今回初参加ですが、良いですね! 特にアグネス(キャシー・ベイツ)のインタビューシーン。「俳優の役目は等身大の人間を見せることよ。私やあなたと同様彼女(ブッチャー/トマシーン)にも欲望や弱みがある」アグネスがシドニーから神経衰弱、統合失調感情障害を指摘された際の「あぁ?」って表情も良かった。それまでのニコヤカさとは一転して。狂気を感じるもん。アグネス、ロアノークハウスにガンガン行って欲しい。『マイ・ロアノーク・ナイトメア』の視聴者数は2300万人だったそうですが、今回(第6話)の視聴者数は248万人でした(アメリカで)。ちなみにアメホラ最多視聴者数はシーズン4(フリークショー)の初回613万人。レディ・ガガ(シーズン5)超え。「スターが出るよ」と言われるよりも「見世物小屋くるよ」と言われた方がみんなワクワクするんでしょうか。まぁ、第1話の比較なので、そのシーズン全体のテーマや内容に対する評価というより前のシーズン(シーズン3魔女団)が面白かったから続けてみる、とか評判が良かったから見てみるって人が多かったんだと思います。台所にジャンプ・スケアー、ビックリさせる装置を入れてましたが、シーズン1の撮影時の出来事がヒントになっていそうです。ライアン・マーフィーと共同制作者のブラッド・ファルチャックが管理人に聞いたところによると、ドラマ(シーズン1)に登場する建物には昔から様々なタイプの幽霊が棲んでおり、その中でも足のない男性の幽霊がしょっちゅう鍵を盗むなどの悪さをするそうで、マーダーハウス撮影中にもいきなりハロウィンの飾りが壁へ向かって吹き飛ぶなどの不可解な現象が起きたらしい。シーズン1の第2話にも看護師グラディスとマリアの話が出てきます。1968年、殺人鬼フランクリンが血まみれで「手当てをお願いできませんか」と看護学生寮のドアを叩き、親切心で鍵を開けた学生たちを殺害したエピソード。これには元になった事件があって、1966年7月13日深夜11時、イリノイ州シカゴの看護師寮にリチャード・スペック(24歳)が侵入し8人の看護師を殺害した、というものです。フィリピン人看護師コラソン・アムラオがベッドの下に隠れて難を逃れ、朝になるのを待って近隣に助けを求めて事件発覚。犯人に対する熱狂的な崇拝者による模倣殺人まで起こりました。今回ローリーを殺したのはミランダとブリジット・ジェーン姉妹ですが、元になった殺人看護師はグウェン・グラハムとキャサリン・ウッド。豚の胎児サークルを見て思ったんですが、撮り方が『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』っぽい。撮影の仕方も演者から見えないように撮影車をなるべく遠くに離したり。『ブレア〜』もリアルな俳優の表情を取るために最後の方はほとんどスタッフとの接触もなく、役者さんたちは精神的にものすごく大変だったらしいです。森の中に取り残されて。だけど制作費6万ドルで興行収入18億6000万円だよ〜ホラーって夢あるね。前回のポーク一家の食卓は、『悪魔のいけにえ』ですね。トビー・フーパー監督8月26日に亡くなってしまいました。『悪魔のいけにえ』はリメイク(テキサス・チェーンソー ビギニング)で最初に見たんですけど、怖すぎて死ぬかと思いました。一家全員狂ってて。気失って目覚ましたら状況一個も変わってないでやんの。狂気の一家が変わらずご飯(人肉)食べてんの。あんな嫌がらせある!? 死ぬかと思った。POV手法(ポイント・オブ・ヴュー、手持ち撮影)のホラー映画、賛否両論ですけど私は結構好きなので、今後の展開が楽しみ。出演者全員が持たされたカメラに写っているものとは。
August 29, 2017
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あらすじ歴史学者ドリス・カーンズ・グッドウィンはロアノークの館について詳述した。1792年エドワード・フィリップ・モット(エヴァン・ピーターズ)はフィラデルフィアに妻と子を残し、彼と彼の美術品、そして愛人である使用人ギネス(ヘンダーソン・ウェイド)が引きこもるための家をロアノークに建設した。ある晩何者かによって絵画コレクションを破壊され激怒したエドワードは、ギネスを除く使用人全員を地下貯蔵庫に幽閉する。土地を奪取され瞋恚に燃えたトマシーンは館を取り囲みエドワードを串刺しにした上火あぶりにして処刑した。ギネスは馬で逃げたがその証言は烏滸の沙汰と判断され投獄された。ギネスが報告を怠ったため窮地に陥った使用人たちの白骨死体は数年後発見される。1952年、モット一族の末裔がフロリダのジュピターで不名誉な死を遂げ、館はモット家の所有を離れることとなった。現在エドワードと同じ状況に陥っているミラー夫妻に、チェン家の長女やピギーマン、ハンター3人が攻撃を始めた。彼らはトマシーンの犠牲者たちで、今ではその恐怖心を利用され彼女の傀儡として動いていた。周章狼狽して階段を降りたシェルビー、マット、フローラを救ったのはエドワードの亡霊だった。人嫌いのエドワード・モットは死を恐れておらずトマシーンに恐怖を感じないのだ。彼は地下通路へと3人を案内した。通路を出てエドワードと別れ、森の中に一筋の光を見たミラー夫婦はポーク一家に捕らえられる。ポーク家には先客がいた。イライアス・カニングハム博士その人である。イライアスは矢で撃たれた後ポーク一家に食料として回収されていたのだ。イライアスの手足で作ったジャーキーを口にしたママ・ポーク(フランシス・コンロイ)は肉が腐敗していることに立腹しイライアスの頭部をハンマーで打ち砕いた。200年前ポーク家の先祖はトマシーンと契約を結んでいる。生贄を捧げる限り、ポーク家はトマシーンの虐殺から逃れられる。次の生贄はミラー夫妻とフローラに決まった。3人をトラックに載せロアノークの館へ戻る途中、マットともみ合いになったポーク家の銃が暴発。銃弾は南軍旗を貫き一家の息子の頭部を貫通した。ママ・ポークは報復のためハンマーをシェルビーの足首へと振り下ろした。メーソン殺害の濡れ衣を着せられたリーは警察の尋問を終え、証拠不十分のため解放された。その足でロアノークの館に向かったリーは、フローラたちがトマシーンらに囲まれているのを発見する。母の行動に疑問を抱いていたアンブローズはトマシーンを抱きかかえ火の中に飛び込んだ。エドワードがミラー夫妻を自由にし、襲いかかるピギーマンをリーの運転する車が撥ねた。シェルビー、マット、フローラは車に飛び乗り、ロサンゼルスに帰ることに決めた。インタビューでシェルビーは語る。あの時の悪夢は未だに彼女を悩ませ続ける、と。感想再現VTR『マイ・ロアノーク・ナイトメア』部分終わり。面白かった。エドワード・フィリップ・モット、ダンディ(シーズン4)の先祖でしたね!シーズン4(フリークショー/怪奇劇場)を見ていない人のために説明すると、ダンディ・モットはお金持ちのお坊ちゃんで、病的なナルシシズムを抱えた男なのですが、その羨望の先は見世物小屋の演者たちに向かい、やがては取り返しのつかない事件を起こすのです。彼の母親(フランシス・コンロイ演じる)によると犯罪を犯すのは父方の遺伝でどうにもならない、とのことでしたが、ダンディが癇癪起こして「I hate you!!」て9回ぐらい言う癖はエドワードの「Lies!!」4回からきてるんですね。子孫になって回数が増えている。無辜の民を殺してるし……串刺しになって火で焼かれるのも苦しいけど、地下の狭いところに入れられて餓死する方が辛いだろうと思いました。食いかけのリンゴ放り込まれて。「子供や大人、そして先祖を守ってきた家の壁には何が刻み込まれているだろうか。苦しみか喜びか」とダフネ・デュ・モーリアの一節が引用されていましたが、デュ・モーリアはフランスのエミグレ(逃亡貴族)の家系で、「パーティや社交が何よりきらい」と常々口癖のように言っていたそうです。今回のエドワード(社会不安障害)の話にぴったり。ちなみにデュ・モーリアも同性愛者だったのではないかと言われています。トマシーンの息子である「アンブローズ」というキャラクター名はデュ・モーリアの『レイチェル』にも登場します。どちらのアンブローズも運命に翻弄される男なのです。(私は『レイチェル』に登場するライナルディって女なんじゃないか?って思ってます。バイセクシャルのレイチェルと恋愛関係にあったんじゃないか、と)エドワードに関してもう少し言うと、夜中暴徒が彼を襲ってシーツを切り裂いて顔を出すシーン、シーズン5のサリーに縫われた人間が出てくるシーンと構図が一緒でした。こうなったらもう助からないよ、ということかもしれません。そして、地下道を通っているとき松明の明かりの加減でエヴァン・ピーターズの顔がドクロに見えるシーン、あれは確実にシーズン1のテイトです。テイトが地下室でヴァイオレットをいじめてた女の子に復讐する場面でストロボを焚いたような光の点滅があるのですが、そこで何回かドクロの顔に変わるんです。テイトが銃を持って学校に行った時と同じ。そういう風な仕掛けをして、シーズン1から見ていたファンに「エドワードを信用して良いのか? 悪魔かもしれないよ」と思わせてるんですね。おぉ〜。エドワードは人助けしたかったわけではなく、人がきらいだからこれ以上自分の敷地内に幽霊が増えてもらっちゃ困る、という理由でミラー夫婦とフローラを逃してくれたんでした。
August 27, 2017
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あらすじ角飾りの女性(レディー・ガガ)と密会していたマットを追求するシェルビーは、リーとマット姉弟が彼女に対して陰謀を企てているのでは、と考え始める。その夜、シェルビーは浴室から現れたピギーマン(Piggy Man:頭部がブタの男)に襲われているところをイライアス・カニングハム博士(デニス・オヘア)に救われる。博士によると、1792年にこの館を建てたエドワード・フィリップ・モットが失踪、1952年3人のハンターがお互いを撃ち合い死亡、1973年台湾からの移民であるチェン一家全員失踪、1989年ここを老人ホームとして使っていたミランダとブリジット・ジェーン姉妹が入居者を殺害後失踪している。いずれの死亡・失踪も10月の上弦の月から血の月(ブラッド・ムーン)までの6日間で起こっている。この6日間は霊は殺す能力を得るという。そして今夜は上弦の月である。マットとシェルビーは博士の案内でプリシラ(エステル・ヘルマン)たちに囚われたフローラの姿を認めるが、博士はその場でトマシーン(キャシー・ベイツ)の手先によって矢で射抜かれ殺された。ミラー夫妻が帰宅すると、出迎えたクリケットがロアノーク植民地の真の支配者である角飾りの魔女(レディー・ガガ)の話を始めた。ロアノーク植民地には定期的に生贄を捧げる習慣があり、それに反対したトマシーンの息子アンブローズ(ウェス・ベントリー)を中心とした入植者たちはトマシーンによって殲滅され、トマシーン自身も魔女に手ずから殺されることでその儀式を完成させている。トマシーンらの血は大地に染み込み、彼らをこの地に永遠に縛り付けた。毎年その惨殺の記念日に彼らは殺人鬼に変わる。宿泊中のホテルにセージを取りに戻る途中、フローラを見たクリケットはUberを止め彼女を追いかける。クリケットを待つ間シェルビーは寝入ってしまい、マットは屋外の貯蔵庫に惹きつけられ、そこで角飾りの魔女に誘惑される。魔女との最も親密な繋がりを通じてマットは彼女の過去を知ることとなる。密航してイギリスを出た彼女の船は不運に見舞われ、船旅の災いの原因とされた彼女は魔女として火あぶりの刑に処されることとなったが、古代の神々に兵士の生き血を捧げ森に逃げたという。松明を持ったトマシーンの一団が館を取り囲み始めた。シェルビーに呼ばれ慌てて戻ったマットの元にフローラが飛び込んできた。プリシラが助けたのだ。集団の中に残されたクリケットは生きたまま内臓を抉り出された。トマシーンが二階から見ているミラー夫妻に向かって鉈を振り上げた。次はお前たちの番だ、と言うように。感想季節は秋。そして頻繁にブタ登場。秋、ぶた......秋豚。......秋元康のことか(「女の子」を愚弄した秋元康を<断罪>する 『glee』が私たちに教えてくれたこと)......そんなわけありませんね。なぜならピギーマン、ミスターピギーはシーズン1から登場するキャラクターだからです。浴室からの登場の仕方も同じです。上記カッコ内のリンク先はドラマ愛を感じる記事。ライアン・マーフィーの言いたいことってまさにこういうことだと思う。ちなみにアメリカン・ホラー・ストーリーもライアン・マーフィーの手によるものです。今回クリケットがブッチャーたちを黙らせるためにホテルに取りに行ったセージは除霊効果のあるハーブで、シーズン1にも登場します。怪しい隣人ジェシカ・ラングからのプレゼント。シーズン5でもキャシー・ベイツがホテル内でセージを焚いていました。あのホテル、霊が悪さしてしょうがないから。トウモロコシ等の食料が豊富に得られているのは生贄として人間を捧げているからだ、というトマシーンの考え方は、シャーリー・ジャクスンが『くじ』に書いてある内容と一緒です。罪のない人を石打ちの刑に処す。『くじ』はフィクションですが、似たようなことは私たちの世界にもあるんじゃないか? と思わせるリアリティがあります。こんなこと今言ったところでしょうがないんだけど、まぁ言いたいから言うけど、ジェシカ・ラングまた出てくれないかなあ!? シーズン4終わったらもう出ないって言って、どれだけライアン・マーフィーが説得してもダメだったらしいんだけど、さみしいもんですね……と思ってたら、今回キャシー・ベイツ良くないですか!? 最高〜!! と思ってたら、シーズン7にはキャシー・ベイツ出ないんだって……他の仕事が入っててスケジュール的に無理だそうです。そしたらアメホラの女王的役割はアンジェラ・バセットに頑張ってもらうしかないな。ピギーマンを最初に見た時の驚き&慌てふためきの演技よかったです。次回(第5章)いよいよエヴァン・ピーターズ登場。楽しみですね〜
August 15, 2017
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あらすじリー、シェルビー、マットは警察と地元有志の協力を得ながらフローラを探索する。しかし失踪者の発見率が30%を切ると言われる72時間が経過してもフローラは現れなかった。豚の頭部の傍には四肢を切断された少女人形の胴体が転がっている。森の中でそれを見たリーは嘆声を発した。近くの民家の前には豚の胴体と人形の頭が置いてあり、リーたちは内部を捜索する。腐敗した動物の死体が散乱し虫が湧いているさまを見ながら家畜小屋へ進むと、そこでは巨大な雌豚の乳を吸う2人の少年がリーたちの声真似をしていた。少年2人はこの地を不法占有していたポーク家の子供で育児放棄されており、「クロアトアン」以外の言葉を知らなかった。瞋恚に燃えたメイソンは口論の末リーを突き飛ばして家を出た。その15分後リーが外出し、4時間後帰宅する映像が監視カメラに残っている。森の中にはメイソンの焼死体があった。ニューオーリンズに住む霊能者のクリケット・マーロー(レスリー・ジョーダン)がフローラ捜査を申し出る。ボンネットを拾ったクリケットはフローラは1500年代後期の霊プリシラと一緒だと言う。プリシラと会話しようとクリケットは交霊会を行うが、ブッチャー/虐殺者(キャシー・ベイツ)の霊が召喚されてしまう。ブッチャーは侵入者からこの土地を守ると言い、ガラス窓を割った。刹那「クロアトアン」と叫んだクリケットにその意味を訊くと、悪霊にさらわれた娘を助けてやる報酬として2万5000ドル払えと言う。霊能は詐欺だと厭悪しているマットはクリケットを叩き出したが、直前に囁かれた言葉が気になったリーはクリケットと契約を結ぶ。リーは17歳で最初の娘エミリーを出産しており、エミリーはリーの買い物中車内から消えていた。ブッチャーは洗礼名をトマシーン・ホワイトと言い、ロアノーク植民地の総督ジョン・ホワイトの妻であった。ジョンが物資調達のため英国へ渡っている間トマシーンが植民地の管理を任された。しかしジョンが戻ると116人の入植者は跡形もなく姿を消していた、という集団失踪事件はアメリカに古くから伝わる伝説である。クリケットが語るところによると、トマシーンは息子アンブローズ(ウェス・ベントリー)を含む仲間に裏切られ森に放擲されていたところを角飾りの女性(レディー・ガガ)に助けられ、復讐のため植民地へ戻った。アンブローズを除く何人かを殺し主権を簒奪したトマシーンはロアノーク島を出て本土に渡り統治を始めた。それはマットとシェルビーの家が建っている場所だった。クリケットはブッチャーと取引を行う。誰もこの地に侵入できないよう家を焼き払い引っ越す代わりに、プリシラにフローラを手放すよう命令してほしい、と話すのを聞いたシェルビーはマットがいなくなっているのに気づく。マットは男たちが見ている中角飾りの女性とセックスしていた。マットにこの時の記憶はないが、夫の不倫現場を目の当たりにしたシェルビーは一人で帰宅する。ブッチャーと取引を成立させたリーは待ち構えていた警察に連行される。感想マットのメガネ曇ってたね。あーやだやだ。アメリカンホラーストーリーに出てくる夫たちみんな浮気して。シーズン2(アサイラム)のエヴァン・ピーターズは厳密には浮気ではない(妻が宇宙人にさらわれたため)けども、毎回セックスにおける三位一体が必ず出てくるので、それは私はちょっと嫌です。性的なシーンはシーズン5(ホテル)でたくさん。もういらない。それ以外の要素は最高なんだけど。前シーズンでホテルから連れ帰ったホールデンが飼い犬の血を吸うシーンありましたけど、今回はそれがパワーアップ。巨大な豚のお母さんの死骸の乳首を吸う小汚い子供に。しかも子供の数もダブルになってた! 大変良いと思います。ポーク家にどんな事情が。前回の内容に補足です。1988年に殺人を犯したという看護師ミランダとブリジット・ジェーンですが、実話でした。1987年、看護師のグウェン・グラハムとキャサリン・ウッドは老人ホームでアルツハイマーの5人の高齢者を殺害しています。「MURDE」のイニシャル通りに。(Gwendolyn Graham and Cathy Wood)
August 8, 2017
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あらすじ森で儀式的殺人を目の当たりにしたシェルビーは道の真ん中で気を失っているところをリーに助け出され病院で検査を受ける。頭皮を剥がれた男性が豚の頭部を被せられ火で焼かれていた、というシェルビーの証言は警察にまともに取り合ってもらえなかった。リーの元夫メーソン(チャールズ・マリク・ホイットフィールド)が、娘フローラ(サニヤ・シドニー)を連れて来る。フローラはこの屋敷の中で「プリシラ」と会ったと言う。リーは割れたガラスのそばに古びたボンネットを見つける。屋敷に来てから不気味な内容を口走るようになった娘を見て怒ったメーソンはフローラをリーから引き離し帰宅してしまう。親権のないリーはアルコール依存が再燃。夜間、怪音で目覚めたシェルビーとマットは森の中で燃えている大きな木製の人型オブジェを発見し、警察に通報する。警官(コルビー・フレンチ)はポーク一家を疑い、この家の警護を約束した。その夜マットは階下で怯えた老婆を銃殺する看護師2人を見る。看護師は壁に赤のスプレーでMと書きけたたましく笑った。マットに呼ばれ現場を警官(マイケル・マッカスカー)が捜査するも何も見つからない。屋敷の裏庭にある地下貯蔵庫には人が暮らしていた形跡があり、そこで新たなビデオを発見したミラー夫妻は映像の中のイライアス・カニンガム教授(デニス・オヘア)が言っていた内容を確認する。この屋敷はかつて、看護師ミランダとブリジット・ジェーン姉妹が老人ホームとして使っていたのだが、姉妹は老人5人を殺して姿を消したのだという。犠牲者5人の頭文字をつなげると「MURDE」となる。何度塗り直しても壁の文字が消えないのだと聞いたマットが壁紙を剥がすと、そこには書きかけのマーダー(殺人)の文字が浮き上がっていた。ミラー夫妻は屋敷の恐ろしい過去を事前に知らされていなかったとして銀行に抗議したが、エージェント(ジョナサン・ペッシン)はお金は返せないという。リーはフローラをメーソンに無断で連れて来てしまう。これでは誘拐になると慌てたシェルビーはメーソンと電話で話し穏便に済ませようとする。その間フローラが姿を消し、外に探しに出たリー、シェルビー、マットはショックを受ける。フローラの衣服が巨木のてっぺんに結び付けられ揺れていた。感想殺人看護師の謎を究明しにきたカニンガム教授も『山荘綺談』のストーリーと重なります。山荘綺談は幽霊屋敷研究のためモンタギュー博士が霊感のある若者を連れていわくつきの山荘を訪れる話です。フローラがイマジナリーフレンドらしきプリシラと会話していましたが、ドラマでイマジナリーフレンドがいた人物ということで思い出すのは『フルハウス』のジョーイです。シーズン1の第2話で、一人っ子だったジョーイは長年のイマジナリーブラザーであるレオンに話しかけています。ジェシーもそれに合わせて、ダンスするときレオンにも声をかけていました。人情を感じる。あと、リーが見た、釘で打ち付けられた豚のしっぽ(か、内臓)がいっせいに動くシーンは『バタリアン』(1985)オマージュだと思います。バタリアンでは動物標本がいっせいに動いていました。バタリアンはゾンビが「死って痛いんだよ〜人の脳みそを食べるとその痛みを一瞬忘れられるんだ」と言うシーンがあるのですが、当時テレビで見ていた子供の私は「マジで!?」と思ったものです。死んだらそこから先ずっと痛いって嫌じゃないですか......しかも脳みそ食べても痛みが治まるのはたったの一瞬。痛み以外にもバタリアンの世界では死にそうに(ゾンビに転化しそうに)なった人間がやけに寒がっていたのも嫌だったな。ちなみにバタリアンはゾンビが思考し喋るという変わった設定で、食べる人間の量が減ってきたことに気づいたゾンビが救急隊員になりすまして「応援頼む」と無線で消防と連絡とってたのが印象的でした。大人が見るとコメディ、子供が見るとハッとする映画。死んじゃいけないな、と思わされる。(けど、墓場でのストリップシーンもあった気がするのでお子様には見せないほうがいいかもしれません)今回歌ったり曲が流れるシーン全然ないですね。私の好きな森ソングはこれ。ドイツのゆるキャラ森ボーイ(?)、すこしこわい。
August 1, 2017
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AHSシーズン6:Roanokeあらすじシェルビー・ミラー(リリー・レーブ)とマット・ミラー(アンドレ・ホランド)夫婦、マットの姉のリー(アディナ・ポーター)はカメラの前で自分たちの異常な体験を語った。再現VTR『マイ・ロアノーク・ナイトメア』幸せな結婚生活を送っていたヨガ講師のシェルビー(サラ・ポールソン)とセールスマンのマット(キューバ・グッディング・Jr)はある事件をきっかけに住み慣れたロサンゼルスからノースカロライナへ引っ越し、新居として古い農家を購入する。その夜から奇怪な出来事に襲われた2人は、原因を地元の農夫による嫌がらせと考え警察に連絡するも自衛を促されるばかり。そこで元警察官のリー(アンジェラ・バセット)を呼び寄せマット出張中のシェルビーの警護を頼むのだが、タイプの違う女性2人は仲違いする。口論中何者かが屋内に侵入したことに気づいたリーとシェルビーは地下室で気味の悪いビデオを発見。停電が復旧し地下を出ると室内には無数の木ぎれで作られた人型のオブジェが吊るされていた。出張先のホテルで携帯電話から防犯ビデオの映像を確認したマットはすぐさま帰宅する。耐えきれずシェルビーは家を飛び出し、女性(キャシー・ベイツ)を車でひいてしまう。女性の後を追って森に入ったシェルビーは道に迷い、木にぶら下がった人型のオブジェを見る。怯えたシェルビーがさらに進むと、そこには頭皮を剥ぎ取られた男性を取り囲む群衆がいた。感想最高。原点回帰。シーズン1に似た雰囲気でストーリーもキャラクターも最高だった。本編より怖かった(?)オープニングをなくしたのも新しかった。シーズン1は幽霊屋敷ものだったのですが、幽霊屋敷を題材にした作品の祖といえばシャーリィ・ジャクスンの『山荘綺談』。今回『山荘綺談』からの引用もしっかりあって、ドアがバンとしまったり、あられのようなものが屋敷に降り注いだり(山荘綺談では小石、ロアノークでは歯)、ヒロインの見たものが幻想なのか現実なのか混乱したり。ホラーはヒロインで決まるところがあって、それを考えるとサラ・ポールソンは適役。繊細で考えなくていいことまで考えてしまいそうな雰囲気がある。シーズン5で言うと、スカーレットが襲われそうになってたら「あぶない!」と思えるけど、ナオミ・キャンベルが首絞められてても大丈夫そうな気がする。木ぎれで作られた人型オブジェは『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』(1999)への目配せ。残されたビデオが気持ち悪いのは『食人族』(1980)を意識していると思われます。シーズン6となる今作ではシェルビーとマット夫妻はロサンゼルスから引っ越しますが、シーズン1ではハーモン夫婦がボストンからロサンゼルスへ、チャールズとノーラ夫婦はフィラデルフィアからロサンゼルスへ引っ越しています。そしてシェルビーの流産。夫のマットが暴漢に襲われたのがきっかけですが、この事件でシェルビーは深いショックを受けます。シーズン1でもヴィヴィアンは流産と夫の浮気を経験しており、オーガニック好きのヴィヴィアンとヨガ講師のシェルビーはどこか通じるところがあります。ちなみに『山荘綺談』作者のシャーリィ・ジャクスンも実生活では夫の浮気に悩まされ、アルコールと薬物依存に陥っていました。シャーリィ・ジャクスンが結婚生活を送ったノースベニントンでは反ユダヤ主義と反知性主義に遭遇し、「人々から迫害を受ける」彼女の作品に影響を与えたと言われています。マットとシェルビーは本当に「地元の農夫(マットはホワイトトラッシュと発言)」から迫害されているのか。アメリカには「ゴーストマウンテンの人食い族(Ghost Mountain Cannibals)」という伝説があって、ゴーストマウンテンとはペンシルバニア州バックスカウンティにあるヘイコックマウンテンのことで、スプリングハウスレインにあるガラス張りの家に人食い族が住んでいて、面白がって自分たちを探しに来る軽はずみな人間を待ち構えている、という話です。これは植民地時代からの都会と田舎の対立が背景にあり、僻地はあまり文明的でない、という考えが元になっているとされています。人食いについてはアメリカだけでなく世界中に伝説があり、代表的なものは16世紀スコットランドのKin Killing Cannibalsで、これはソニー・ビーン一家の話。スコットランド対イングランドの数世紀続く対立の歴史の中で、「見かけは同じでも中身は違う」と人々に信じ込ませるために食人族ソニー・ビーン一家の話は度々持ち出され、今日でも辞書で「ソニー」を調べると「愚か者」「間抜け」「スコットランド人」と出ます。シャーリィ・ジャクスンについてもう少しいうと、アメリカンホラーストーリー:シーズン1のコンスタンス(ジェシカ・ラング)は『ずっとお城で暮らしてる』のメリキャットの成長した姿なんじゃないか、と私は考えています。悪意の塊なんです、コンスタンスは。ダウン症の娘を持って「私の時代に羊水検査があればね」と初対面の妊婦に話したりするし、なぜ自分が他人から怪訝な顔を向けられるのかわかっていないところがある。シーズン3のマートル・スノーの火刑の場所が採石場だったのも『くじ』から来ているのでは。魔女の仲間が禁を犯したら火刑に処す、というルールと、毎年くじを引いて村人の中から一人を石打ちの刑にすればトウモロコシの豊作が約束される、という因習は似ている。どちらも形骸化しているのにやめられない。『山荘綺談』の訳者小倉多加志さんはこう書いています。「今日のアメリカではゴシック・ノーヴェルは嘘のように広い読者層を持ち、古典の流れを汲んで恐怖を前面に押し出したもの、いわゆるニュー・ゴシックと呼ばれるものなど、まことに盛観である。現代風な解釈をすれば、古城や古い館は閉鎖、森への逃避は権威や束縛からの脱出と解放、回想は動機の解明の象徴と見ることができる。しかし閉鎖の解放はかならずしも自由とは限らず、死を意味することもある」シェルビーが語る「闘争か逃走か」のその先にあるものとは。シーズン4(怪奇劇場/フリークショー)の元になった(と思います)小説、長らく日本では絶版だったキャサリン・ダン「異形の愛」が今年発売になっています。見世物巡業サーカスを営むフリークス一家の話。異形の愛 [ キャサリン・ダン ]「美しいのはヴァラエティ」「あたしたちは傑作なんだよ。どうして大量生産品の仲間にならなくちゃいけないの? あんたたちなんか、服の違いでしかお互いの見分けがつかないじゃない」「おまえ自身、群れに背中を向けて来たんだろう?」傑作です。
July 25, 2017
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American Horror Story (Hotel)アメリカンホラーストーリー シーズン5第12話「血の歴史、再開」(原題:Be Our Guest)あらすじバトル・ロワイヤル事件から一年後。リズとアイリスは客室を清潔で近代的な雰囲気の内装に変えコルテスのイメージチェンジを図る。改装後初の客が旅行ブロガーだと気づいたふたりはシャンパンを出してもてなすが、コルテスの住人がゲストを殺してしまう。リズとアイリスに嘆願されても、自身の惨めな人生と向き合いたくないサリー、殺しの快楽を知ったウィルに殺人をやめる気は無い。そこでアイリスはサリーにWiFiコネクションの付いた携帯情報端末を贈った。SNSに居場所を見出したサリーは注射器を窓から投げ捨てた。デザインの仕事に誰も関わらせなかったウィル亡き後、彼のファッション帝国は崩壊寸前の危機に陥っている。香水とサングラスだけでかろうじて生き延びているブランドの取締役会に姿を現したのはリズだった。ウィルから全権委任された彼女は、世間に姿を表さないミステリアスなウィルのイメージを利用しファッションショーを成功させた。ショーの光景に死んだ恋人との思い出が蘇ったリズのためにアイリスはコルテスに霊媒師ビリー・ディーン・ハワード(サラ・ポールソン)を招く。ビリーを通じてドノヴァンは母に愛情を伝えたが、トリスタンからの応答はない。孫娘の誕生に立ち会い家族と喜びを分かち合ったリズは末期の前立腺癌を患っていることを知る。ラモーナから、吸血鬼に転化する道も示されたがリズの希望はコルテスで死ぬことだった。伯爵夫人に喉を切られ泉下の客となったリズはトリスタンとの再会を果たした。2022年10月30日 デビルズ・ナイト7年前の訪問でコルテスに死者の気配を感じ取ったビリーはその後も度々撮影クルーを引き連れ、切れ目なく心霊特番を中継するようになる。それは、リズの目標とする「孤独な人が心慰められるような家族的なホテル」とはかけ離れた客層を呼び寄せ、アイリスは発端となった自分を責めていた。幽霊目当ての客を追い払いたい彼女にジョンも同意し、殺人鬼たちとの晩餐の席でビリーを脅かし、二度とコルテスの名を口にしないことを約束させた。ジョンは、吸血鬼となった妻と子のため、住居となったコルテスに生き血を運ぶ途中警察に撃たれて死んだ。家族と一緒にいたいと願ったジョンは懸命に走ったが、ホテルの一歩手前で息絶えたのだった。それ以来、大人になったスカーレットや妻子と数時間過ごすためジョンは毎年デビルズ・ナイトを訪れている。ハロウィンの夜コルテスに幽霊が出ると聞いて来た若者の隣にエリザベスが座った。「明日友達と楽しむ」のは無理だと微笑む彼女は彼の首筋を撫でた。(終わり)感想第1話の挿入歌『ホテル・カリフォルニア』 イーグルスようこそ ホテル・カリフォルニアへ素晴らしい場所 ステキな場所大いに楽しんで ホテル・カリフォルニアをなんてサプライズ 好きなだけ言い訳を天井にある鏡 冷えたピンクのシャンパン誰もが自ら捕らわれると彼女が言うんだ大広間では 皆が祝宴に集まる冷たいナイフを刺すが 獣は殺せない最後に覚えてるのは 扉に向かって逃げたこと戻る道を見つけなきゃ 前にいたあの場所へ夜警が言った 落ち着け 歓迎するよチェックアウトは自由だ だが二度と出られない最後の「チェックアウト」はスラングで「自殺する」という意味があり、ジョンもホテル内で自殺を試みたことがあるけれどマーチに助けられ、結局ホテルの外で死んだのでした。それ以外にもこの曲は「かわいい男の子たち」に囲まれた「ティファニーのよう(に洗練されていて)、メルセデスベンツのよう(に大胆で美しいボディラインのゴージャス)な彼女」が君臨しているホテルを舞台にしており、おそらくこの曲にインスパイアされて選ばれたところもあるんだと思うけれど、この「彼女」のイメージにレディ・ガガはぴったりでした。「1969年以来スピリット(酒・魂)は置いていません」のところもバーテンダーのリズのセリフとしていかにもありそう。登場人物のほとんどが最新の機器を使いこなす中、リズだけは「新しいものは色あせるのよ」と言って本を読んでいたのも良かった。リズのドレスやメイクは20年代ハリウッドへの愛情に溢れていて、生き方にもブレがない。ダーティハリー症候群に陥ったジョンの勤務先の警察署、映画『ダーティハリー』に出てくる庁舎と同じでした。第1話から、この人クリント・イーストウッドなんですよ、というヒントが出ていた。サリーのモデルは映画『ミスター・グッドバーを探して』(1977年)のテレサ・ダン(ダイアン・キートン)だと思います。DVD化されていないので内容を私なりに説明すると、「暴力・セックス・芸術、アンチハッピーエンド」のアメリカン・ニューシネマ。アンチヒーローたちが大統領候補を撃とうとしたり麻薬ディーラーになったり花嫁を奪って逃げたりするように、主人公の(アンチヒロインである)テレサは常にタバコを吸い、バーで男を漁り、麻薬に溺れます。ポストポリオ症候群による痛みの緩和のために鎮痛剤は手放せない。初めて恋した相手とのひどい恋愛経験、厳格で保守的・好戦的な父親との価値観の断絶から、テレサにとって男性とはセックスの相手でしかなく、goodbarであればあとはどうでもいい、というような相手の人格を無視した考え方になっていきます。テレサの欠点も含めて愛してくれる真面目な青年ジェームズが現れますが、テレサには彼の保守的なところが父親を想起させ、どうしても好きになれない。セックスしようと試みたこともあるが、ジェームズがコンドームを取り出した途端テレサは笑い出してしまう。「今更どっちの何をプロテクトしようっていうの?」と。テレサにしてみれば余命いくばくもない(と彼女が思い込んでいるだけなのだが)自分に対する自嘲の笑いであったのかもしれないがジェームズにそれが伝わるはずもなく、彼は深く傷つく。テレサはジェームズを避けるため、ある男性を家に入れる。自分がゲイであることをカミングアウトできないコンプレックスを抱えた彼はテレサの何気ない一言に激情し彼女を殺してしまう。という話です。実話を元にした映画なのですが、ホラーに分類してもいいくらい恐ろしいシーンの連続で、リチャード・ギアの履いているパンツまでもが恐ろしく見えた。テレサの全てが嫌な女だったらこんなにハラハラしないのだろうけれど、昼間彼女は小学校教師をしていて、聾唖の子どもたちから慕われる熱心な良い先生なんです。生活保護家庭の子どもがなんとか教育の機会を得られるようスラム街に足を運んだりもする。だから、この映画を単なる教訓話とするのはあまりに惜しい。人間とは複雑で弱いものである。テレサとよく似たサリーは、テレサのようにタバコを吸い、バーで男漁りし、麻薬に溺れ、常に痛みを訴えるけれども、愛情を求めていたという一点においてテレサとは違っていました。サリーとジョンがエレベーターで降りるシーン、かすかに照明が明滅していたのも『ミスター・グッドバーを探して』のオマージュだと思う。改装後初のゲストがフロントを訪れた際、香りについて訊かれてアイリスが「セージです。除霊の効果がある」と答えるシーンがありました。これはシーズン1でコンスタンスが妊娠中のヴィヴィアンに手渡すお守りと一緒です。これの元ネタは『ローズマリーの赤ちゃん』。あと、霊媒師のビリー・ディーン・ハワードもシーズン1に出てくる人。ビリー・ディーン役のサラ・ポールソンはシーズン2ではジャーナリスト役を演じているのですが、シーズン2のときは宗教組織の不正を暴くため活躍していましたが、今回のビリー・ディーンは胡散臭くて怪しい感じだった。本物なのに嘘くさい。守護霊も全然守ってくれないし。昔心霊特番でヨーロッパの古城を訪れた新倉イワオが「こわいこわい!!」と騒ぎ出し、宜保愛子を押しのけて自分だけ助かろうとしていたことを思い出しました。ジェームズ・パトリック・マーチが殺人をやめるよう亡霊たちに呼びかけ、「ホテルがなくなったらどうなる?」と言うシーンがありました。あれには理由があって、マーチのモデルになった殺人鬼ヘンリー・ホワード・ホームズ(H・H・ホームズ)の家が絞首刑の前年、火事で跡形も無くなっているためです。ホームズの3階建ての「マーダー・キャッスル」の内部は入り組んだ迷路のようになっており、行き止まりの階段、外側からのみ開けられるドア、レンガに覆われた出入り口・窓、窒息させるためのガスラインを取り付けた防音ベッドルーム、「吊り下げ容器」と呼ばれる絞首刑ができるよう作られた部屋などがあり、27名を殺害したと自供しています。その内、警察が確認できたのが9件、実際の数は200名に及ぶのではないかと推察されている。(ホームズは遺体を焼却できる炉が2基持っていて、そこから遺髪や靴など見つかっています)名前についてエリザベスはハンガリーのエリザベス・バトリー(バートリ・エルジェーベト)から。吸血鬼伝説のモデルになった人。ホールデンは『ライ麦畑でつかまえて』の主人公から。作者のサリンジャーは人嫌いで公の場に一切出なかった(ウィルのように)ため、ファンはせっせとファンレターを書いたと言うことですが中でも日本からのファンレターが一番多かったそうです。スカーレットは『風と共に去りぬ』の主人公から。ドラマのスカーレットは父親が殺人鬼で母親と弟は吸血鬼。育児放棄までされて......過酷な運命すぎる。強く生きて欲しい。「明日は明日の風が吹く」のだから......これでシーズン5はおしまい。シーズン6はすでにアメリカで放送が始まっていますが、「アサイラム(シーズン2)以来の良作」という声もあり期待できそうです。
September 25, 2016
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American Horror Story (Hotel)アメリカンホラーストーリー シーズン5第11話「バトル・ロワイヤル」(原題:Battle Royale)あらすじリズとアイリスが放った銃弾はドノヴァンを貫いた。倉皇として姿を消したエリザベスはサリーの手当てを受ける。1993年、音楽プロデューサーだったサリーはコルテスでミュージシャンカップルにヘロインを注射し淫蕩にふけっていた。もっと親密になりたいと願った彼女は3人の皮膚を針と糸で縫い合わせ、その間ミュージシャンカップルは薬物の過剰摂取で苦しみだしたが身動きが取れず死亡した。サリーは依存の悪魔の拷問に3日間苦しむことになる。5日後、糸に繋がれた皮膚を引きちぎり自由になったサリーにとってコルテスは特別な場所だ。「繋がり」を求める彼女はヴァンパイアチルドレンの血を与えてエリザベスの命を救った。路上で死んだドノヴァンはリズによって火葬され遺灰はアイリスの元へ戻った。リズとアイリスによって解放されたラモーナ・ロワイヤルは麻疹の子供以外の新鮮な血を求め、旅行で訪れていた64号室のクイニー(ガボレイ・シディベ)を襲った。ヒューマン・ブードゥードールで魔女のクイニーに攻撃は通じず苦戦したが死霊のマーチが手を貸した。クイニーの血を飲み力を得たラモーナはエリザベスの復讐に向かったものの、伯爵夫人の甘言に戦意を削がれてしまう。帰宅したジョンは家族が消え、代わりにコルテスのルームキーが残されているのに気づく。荷物をパックしコルテスを出ようとしていたエリザベスは、エレベーターから現れたジョンの銃弾に倒れた。エリザベスは死に、ジョンの十戒殺人の最後の作品「汝、殺すなかれ」が完成した。切断されたエリザベスの頭部はトロフィーケースの最上段に飾られた。マーチのスイートルームでエリザベスの亡霊は、90年前警察に連絡したのは自分ではないと言う。伯爵夫人の驕慢ぶりに我慢ならないエバースはマーチと添い遂げるために自分が証拠の品を現場に残したことを告白。憤激したマーチは彼女を放逐したが、エバースは解放された気分に驚いていた。エリザベスは愛していない男と永遠に過ごさなければならない。感想クイニーはシーズン3の登場人物で、「ヒューマン・ブードゥードール」は自分が受けた傷と同等のダメージを相手に与える能力。この力は生きている人間にしか効かないので、すでに死んでいるマーチには無効だったわけです。シーズン3でも頭部が牛のバスティアンには通じずクイニーは一度死に、スプリームだったフィオナの力で生き返っています。今回「スプリームがチケットに魔法をかけてくれた」と言っていましたが、2015年のスプリームは2013年のまま、コーデリアでしょう。次回、最終回。リズとアイリスの銃乱射シーンの曲
September 18, 2016
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American Horror Story (Hotel)アメリカンホラーストーリー シーズン5第10話「溢れる憎悪」(原題:She Gets Revenge)あらすじ客室で心中した老夫婦に影響を受け、自ら命を絶とうとしたリズはアイリスに止められ、エバースの仲介で息子ダグラスと久闊を叙した。韜晦する父をダグラスは理解し受け入れた。モーテルでジョンがバレンティノを撃ち殺したのと時を同じくして、コルテスではエリザベスがナターシャを射殺していた。結婚式直後に新郎が失踪しエリザベスは警察の尋問を受ける。ウィルの霊が現れたことで事件性はないと判断され、死んだウィルは財産目当ての結婚かとエリザベスをなじった。しかしエリザベスの奸計はウィルの瞋恚を上回っていた。ラクランの法定後見人はエリザベスであり、彼女が望めばラクランを永遠に未成年にしておくことができる。ジョンは十戒殺人の9件目の作品として、主以外の神を崇拝していた者の耳をケースに陳列した。グループ内で麻疹が猖獗を極め、仲間が一人死んだことでマックスらはアレックスの勧めに応じコルテスに移動。ラモーナの待ち受ける廊下でウィルの死体を見つけ戦慄した。自信を身につけたジョンの姿はアレックスに好ましく映り、彼女は夫が殺人鬼であることを知らぬまま離婚を取りやめ、ホールデンと親子3人でコルテスを出た。サリーの怨嗟の声が後を追った。ドノヴァンからバレンティノ殺害を聞いたエリザベスは懊悩する。そこへ、コルテス乗っ取りを企んだリズとアイリスが飛び込み発砲を始めた。感想ミス・エバースがだんだんいい人に見えてきました......厳しいことを言っているようで、リズのことをセダ・バラに例えてみたり「ナイルの女神様!」と呼んでみたり、可愛い人。父のいない人生から優しさを学んだダグラスは「ゲイが死ぬテレビ」を見て父と会おうと思ったとか。リズはゲイじゃない(トランスジェンダーの女だ)けど、なんだかしみじみと良いシーンだった。リズのエピソードは映画『プリシラ』を見ているよう。リズとアイリスの友情も素敵。『テルマ&ルイーズ』みたい。
September 11, 2016
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American Horror Story (Hotel)アメリカンホラーストーリー シーズン5第9話「復讐と陰謀」(原題:She Wants Revenge)あらすじ女の老い方は男とは違う。男は加齢とともに左心室が肥大するが、女の場合は縮む。1世紀以上生きているエリザベスのハートに詰まっているのはかつての恋人バレンティノへの想いだけだ。新しくて永続するものを築きたいエリザベスはコルテスを強固な要塞にしようとしている。コルテスにはポルノスターの男女とディレクターの “ストームコック” がチェックインし、アイリスが応対していた。70年代と違って現代のポルノには脚本も何もない。有害な作品が生み出され興味本位で見た男女が普通のセックスを取り違えて世の中に広めて行く。変異を遂げたアイリスは悪を黙って見過ごせず、ディレクターの喉を切り裂き女優の心臓を刺し貫いた。ドノヴァンは浴室に隠れていた男優を手土産にラモーナの元へ向かった。エバースはウィルにエリザベスとの結婚をやめるよう進言したがウィルはこれを拒否。1992年ロサンゼルス。恋人を殺されたラモーナは両親の家に身を寄せ、母亡きあと父の世話をして暮らした。エリザベスから譲り受けたウィルスが皮膚の修復や骨折に効果があったことを思い出したラモーナは父にそれを感染させたが、認知症の進行を止めただけで、娘の名前もわからない状態が続く。抜け殻のような状態で生きながらえさせることに疑問を感じたラモーナは20年の介護の末、父を浴槽に沈めて殺した。長年の介護生活はラモーナをも抜け殻にしていた。気がつくと世の中は変化しており、自身の出演した映画は無料で配信されている。怒りによってラモーナは感覚を取り戻し、復讐を誓った。マックスはクラスメイトを率いて家々を襲撃し生き血を啜っていた。4日間血を飲まずにいると麻疹の症状が出現する。手始めに親と教師を殺した彼らはホームレスを襲い、ピザの配達員に狙いを定めたところでアレックスが現場に踏み込んだ。コルテスに避難するよう説得するアレックスを振り切ってマックスたちは夜の闇に紛れて消えた。エリザベスを襲ったラモーナはドノヴァンに裏切られネオン管のケージに拘束された。ドノヴァンとエリザベスは関係を修復したが、彼は彼女がバレンティノと密会する現場を見ていた。ウィルは新婦の希望通り身内だけのささやかな結婚式を挙げた。結婚に異議のある者は、と呼びかけられリズが挙手するも冗談だと受け流される。トリスタンを奪われ傷心のリズにエリザベスはブーケを渡した。マーチはウィルを33号室に誘いバーソロミューを見せた。人間の形を成していない赤ん坊を見て怯えるウィル。我が子を侮辱され怒ったエリザベスはウィルを殴って気絶させ放擲した。出口の存在しない廊下の内側でラモーナはウィルの血を飲み、その様子をエバースが満足気に見ている。一部始終をエリザベスは監視カメラで確認していた。感想原題の「シー・ウォンツ・リベンジ」は、第1話の挿入歌「Tear You Apart」を歌っているアーティスト名でもあります。コルテスと同じロサンゼルスで活躍するユニットで、「Tear You Apart」は2005年のセカンドシングル。シーズン3で女版ゴッドファーザーを演じたキャシー・ベイツは今作では女版ダーティハリーに。バレンティノとナターシャが閉じ込められていた廊下を保管庫に改修する話で出てきた「不可能には無謀な覚悟で挑め」はセルバンテス(『ドン・キホーテ』)の言葉。「死んだ者は同じ日々を繰り返す」というテーマはこのドラマによく出てくるけれど、ラモーナと彼女の認知症の父親は生きながらにしてその状況になってしまっていて、見ていて切なかった。本作はホラーですが、「同じ日を繰り返す」テーマをSFにすると「オール・ユー・ニード・イズ・キル」(2014年)で、ラブコメにすると「恋はデジャ・ブ」(1993年)。「恋はデジャ・ブ」って邦題はなんかバカみたいなんだけど、内容は素晴らしいので未見の方は機会があったら是非観てみてください。哲学(永劫回帰)的な話。
September 4, 2016
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American Horror Story (Hotel)アメリカンホラーストーリー シーズン5第8話「十戒事件の殺人魔」(原題:The Ten Commandments Killer)あらすじ十戒事件の犯人を守ってレンは死んだ。リズに詰め寄るジョンを見かけたサリーは、彼を64号室に案内する。衣装箪笥の裏の隠し扉を開けるとそこには被害者の遺体の一部が並べられていた。ジョンは病院へ行き、相棒のハーン刑事(リチャード・T・ジョーンズ)に自分が事件の犯人であることを告白する。2010年、一家全員死亡の現場を見たジョンは、帰宅する前に酒で気を紛らわそうとコルテスへ寄った。バーへ居合わせたサリーとドノヴァンはジョンをマーチのディナーパーティへ導く。ジョンの可能性を感じ取ったマーチはエリザベスにホールデン誘拐を持ちかけた。ホールデン失踪によって夫婦間の亀裂が決定的なものになったジョンは頻繁にコルテスへ足を運ぶようになる。マーチと「法の無意味さ」を議論し、サリーと肉体関係を持ったジョンは二重生活にのめり込んでいった。コルテスで10歳の男の子にわいせつ行為を働いていたマーティン・ガンボアの話を聞いたジョンは、ガンボアの自宅を訪ね、オスカー像で彼を殺した。次のターゲットは不倫カップルだった。話し終えたジョンはハーンにナイフを突き立てた。妻を奪われる妄想に支配されたジョンはハーンの性器を切断し、64号室のトロフィーケースの中に陳列した。感想十戒殺人の犯人は、マーチにそそのかされてジキルとハイド状態となったジョンだった。一家心中(と当初思われたが、実際は家族が窒息死しているのを発見した男が自殺した現場)を見た日から禁酒している、とジョンはサリーに以前語っていましたが、本当はその日からアルコールに溺れて記憶がなくなる回数が多くなっていったのでした。サリーとの関係も忘れるほどに。というか、サリーとの関係の最中に「ハーンはアレックスをコーヒーに誘った。不倫だ!」と叫んでましたね。ジョンが全然家に帰らないからハーンはフォローしてくれていたというのに。そしてアシュレイ・マディソン利用者殺害へ。マーティン・ガンボアって、本当に小児性愛者だったのかな。あの写真は、子供を狙った事件で怒りをあらわにするジョンを連続殺人へ駆りたてるためにマーチが用意した小道具としてのポラロイドだったのでは。十戒とホラーについて、スティーヴン・キングが興味深い内容を記しているので紹介します。「ホラーの目的は、タブーの世界に足を踏み入れた人間が恐ろしい目にあうところを見せて、われわれにふつうの状態のありがたみを再確認させるところにある。たいていのホラーの根底には、お堅い清教徒さえ口もとをほころばせるような厳しい道徳規範が隠されている。(中略)十戒を強力に支持するだけでなく、戒律をタブロイド・サイズにまで拡大しさえする」(『死の舞踏』スティーヴン・キング/安野玲 訳)レン(wren)はミソサザイという意味ですが、マクベスには第4幕 第2場でマクダフ夫人が「鳥の中でも一番小さな、あのミソサザイすら、巣の中の雛を守るためにはフクロウに立ち向かってゆく」と言うセリフがあります。レンを始めコルテスの住人は皆ジョンを守るために動いていた。ジョンがホテルの外で死んで自分たちの仲間から外れないように。
August 28, 2016
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American Horror Story (Hotel)アメリカンホラーストーリー シーズン5第7話「奪われた時間」(原題:Flicker)あらすじジョンは西ロサンゼルス医療センターで検査を受けている。十戒殺人の容疑者の収容先がここだと知っての計画的な入院だった。エリザベスとの結婚を決意したウィルはコルテスの改修に着手した際、鋼鉄で密封された廊下を発見する。ウィルの指示で壁を取り壊した作業員は奥に潜む老夫婦に喉を食いちぎられる。続いて不動産業者のマーシーを襲い血を飲んだ夫婦は少しずつ若返り始める。1925年ハリウッド。女優のエリザベスは俳優ルドルフ・ヴァレンティノ(フィン・ウィトロック)を賞賛する。ルドルフはエリザベスを夕食に招待し、妻ナターシャ・ランボヴァ(アレクサンドラ・ダダリオ)と3人でロマンチックな関係を結んだ。コルテス創業パーティで、エリザベスはルドルフ死亡のニュースを知り自殺しようとするもマーチに助けられ彼と愛のない結婚をする。墓参するエリザベスの前にナターシャとルドルフが現れる。吸血鬼映画の監督であるF・W・ムルナウが公共の死を条件にルドルフに不死を提供したのだった。エリザベスを奪われまいと、マーチはナターシャとルドルフをホテルの壁に閉じ込めた。月に一度の夕食の席で、エリザベスはウィルとの結婚をマーチに伝えた。ジョンは制限区域の警備員を倒し、153号室へ侵入。十戒殺人の容疑者を想像して身構えていたジョンを待っていたのはお下げ髪の少女レン(ジェシカ・ベルキン)だった。レンは十戒殺人を近くで見ていたが犯人が誰であるかは言うことができない。レンは父親から性的虐待を受けていた。1986年、蒸し暑い車内に置き去りにされたレンを助け出したのはエリザベスだった。不死となったレンは生きるのが辛いと言い、もしジョンがここから出してくれたら犯人の居場所を教えると言う。男性ストリッパー3人の血を得たナターシャとルドルフは元の姿を取り戻してコルテスを出た。その頃ジョンとレンも医療センターを抜け出したが、道路に飛び出したレンは車にひかれてしまう。感想ルドルフ・ヴァレンティノはその早すぎる死のためにスターだった期間は5年間と短かったものの、人気は絶大で、映画を見に行く女性ファンは念入りに化粧し(彼がスクリーンの向こうから見つめている気がするから)、31歳で死んだ時の葬儀には10万人のファンが詰めかけ、後追い自殺も出たそうです。映画『サンセット大通り』の往年の大女優のボールルームの床も「ヴァレンティノの助言でタイルに張り替えた」というセリフが出てくるし(ヴァレンティノはアルゼンチンタンゴの名手で、渡米してすぐの無名だった時代、女性の顧客にダンスを教える仕事をしていた)時代を象徴するスターだったことがうかがえます。
August 21, 2016
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American Horror Story (Hotel)アメリカンホラーストーリー シーズン5第6話「33号室」(原題:Room 33)あらすじ1926年エリザベスは中絶手術のためチャールズ・モンゴメリー医師(マット・ロス)を訪問する。妊娠3週のエリザベスから取り出された男児は看護師を食い殺した。2015年ジョンは地下のプールでアレックスとホールデンが眠っている棺を発見し気絶する。アレックスはリズの協力を得て棺を破壊し、目を覚ましたジョンに目にした光景は幻想であると告げる。リズとトリスタンは愛し合っていた。その頃エリザベスとウィルもセックスしたがうまくいかず、エリザベスはトリスタンを呼び出しウィルのため奉仕しろと命じる。エリザベスはパリに出発する前に33号室のベビーベッドに眠る息子バーソロミューを抱きしめた。ドノヴァンとラモーナは結託してコルテスへ乗り込んだ。怖気づいたドノヴァンを置いてラモーナは地下のプールへ向かったが棺ごとなくなっている。33号室でバーソロミューから攻撃を受けたラモーナはバーへ退却し、そこでリズから相談を受け、エリザベスにトリスタンとの関係を伝えるのは危険だと忠告する。ドノヴァンはアグネタとヴェンデラから出口はどこかと訊かれ、目的を見つけるまでホテル内をさまようことになると助言した。現状を打開するためアグネタとヴェンデラは宿泊客を殺害するも変化はなく失望する。通りかかったアレックスはジョンに近づくよう二人に促した。リズはバーソロミューの姿がないことに気づき、世話係のアレックスに、エリザベスが帰国するまでに見つけないとトラブルになると言う。ジョンは新たな十戒殺人の現場に赴き、そこでテレビ宣教師の死体を見た。口にコインを詰め込まれ、内臓を引き出されている。神の名をみだりに唱えるなというメッセージだと力説するも、解雇されたジョンには何の権限もなく、すでに容疑者は拘束されていると聞かされた。自信を失ったジョンにアグネタとヴェンデラが近づく。セックスの間3人は血まみれになっていた。リズを伴って部屋へ戻ったジョンはそこでミス・エバースとマーチを見る。ホテルを出ることに決めたジョンのシャワー中、彼のスーツケースの中にバーソロミューが入り込んだ。帰宅したジョンは台所でバーソロミューを発見し、娘の目の前でそれを撃った。エリザベスがウィル、ラクランとパリから戻ってきた。リズからトリスタンとの関係を聞いたエリザベスは、彼を譲ると言い、振り向きざまにトリスタンの喉を切った。ジョンの様子を見に来たアレックスは、自宅の茂みの中に傷ついたバーソロミューを発見し、33号室に連れ帰った。エリザベスはアレックスに感謝し、アレックスもまた、エリザベスに救われている。感想チャールズ・モンゴメリー医師は、シーズン1のマーダーハウスを建てた人。地下で当時違法とされていた堕胎手術を請け負い、麻酔用エーテルを吸いながらおぞましい研究に没頭し、バラバラにされて殺された息子に再生手術を施して結果的にモンスターを作り上げてしまったことで妻に撃ち殺され、その後妻も同じ銃で自殺を遂げています。シーズン3のマディソン・モンゴメリーとも何か関係あるかもしれません。バーソロミューを探すラモーナに赤いボールが転がってきてましたが、これもシーズン1を思い出させる仕掛けでした。ボールは、ハーモン家の奇妙な隣人コンスタンスの息子ボーレガードの好きな遊び道具です。屋根裏部屋で育てられた奇形のボーはコンスタンスを慕うラリーに窒息死させられています。5階の女性教師のエピソードは、2013年にセシルホテルで亡くなったエリサ・ラムさんがモデル。ドラマでは(シャイニングのように)浴槽で腐敗していた、ということでしたが、実際の事件では貯水タンクに長い間遺体が放置されていて、宿泊客が変な味の水を飲んだという話。スカーレット、母親は愛情のかけらも示さないわ、親父は耳元で銃ブッ放すわで、大変である。彼女のケアは誰がするのか。エイリアン2のシガニー・ウィーバーを派遣してあげたい。生まれてくる赤ちゃんが邪悪なものではないかという妄想は妊婦によくある強迫観念だと言われていて、その心理を描いたのが「ローズマリーの赤ちゃん」だが、エリザベスとバーソロミューの関係もそれに似ている。シーズン1から続く、(身体的にせよ精神的にせよ)奇妙に変形した息子を母親が溺愛するというエピソード、好きです。ホラーストーリーの正統な後継者という感じがする。
August 14, 2016
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American Horror Story (Hotel)アメリカンホラーストーリー シーズン5第5話「血塗れのルームサービス」(原題:Room Service)あらすじエリザベスの血を飲み吸血鬼に転化したアレックスは、マックス・エリソンの治療に当たっている。マックスは麻疹の合併症で呼吸不全を起こしており、意識はない。DNR(蘇生処置拒否)の確認票を見て動揺しているマックスの母の首筋に噛み付きたい衝動に駆られたアレックスは、輸血用の血液バッグから血をすすり、自身の血液を患児の点滴に混入させた。アレックスの血によって驚異的な回復を遂げたマックスは自宅で両親を刃物で刺して殺害し、二人の血を飲んで登校した。彼の保持していた麻疹ウイルスはクラス中に広がり、苦しむクラスメイトにマックスは「力を得るために先生を殺そう」と提案。担任の女教師と偶然通りかかった校長をハロウィーンの小道具で刺し、血を吸った。発疹の消えた子供たちの元にスワットチームが到着。マックスの友人であるマデリンは、マスク姿の男が小学校に侵入したと作り話を始め、残りの子供たちもこれに従った。ドノヴァンは転化中のアイリスを伴ってラモーナに会いに行き、エリザベスへの復讐計画について話した。警察署で、ジョンは上司にデビルズナイトについて訴えた。情緒不安定であることを理由にジョンは解雇される。ホテルの部屋で目覚めたジョンは、隣にサリーが寝ていることに気づいた。サリーによれば、ジョンは彼女をバーから部屋に引きずり込み、セックスしたのだと言うがジョンにその記憶はない。ソーシャルメディアパーソナリティのジャスティン(ダレン・クリス)とその彼女(ジェシカ・ルー)がコルテスにチェックインし、応対したアイリスに有名雑誌の名前を出して割引を迫り、特別扱いを求めた。高級ホテル並みのサービスを要求するカップルに、疲れ果てたアイリスはリズの前で泣き出してしまう。レストランからパテを取り寄せろと命じたジャスティン用に、リズは猫缶を盛り付ける。「まあまあの味だな」と食べ出したのも束の間、次々に要求をエスカレートさせるカップルに、アイリスはリズの身の上話を思い出していた。1984年、カンザス州トピーカで既婚男性ニック・プライアとして暮らしていたリズは、勤めていた製薬会社の出張の際コルテスに宿泊する。一人の部屋で女装を楽しむニックの前に美貌のエリザベスが現れ、「私は醜いから」と頽れる彼をリズ・テイラーに変身させた。「本来の姿になるのよ。女神に」エリザベスはミック・ジャガーのパーティにリズを誘ったが、人前に出るのはまだ怖い。それなら、と氷を取りに行くよう促されたリズは、勇気を出してそれをやり遂げた。作業中のメイドはちらっとこちらを見ただけで気にした様子もない。リズが自由を感じた瞬間、ストリップクラブ帰りの同僚と鉢合わせてしまう。「ニッキー、お前はニューハーフか? HIVは? なぜ黙ってた? くそ、飛行機でこいつの飲み物に口をつけちまった」私はゲイじゃない、と消え入るように答えたリズの声は届かない。「もう会社はクビだぞ」「エイズじゃないのか」「私はゲイじゃない。お前らなんか地獄に落ちろ!」リズが叫んだ瞬間エリザベスが現れ同僚たちの頸を切り裂いた。「人間は二面性がある。影の自分を無視すれば一生苦しむ」それきりリズは家には戻っていない。ホテルで働き、子供たちが18歳になるまで送金を続けた。「他人が侮辱するのを許しちゃダメよ。堂々と立ち向かいなさい」アイリスはカップルに礼儀を教えることにした。絶望した者の気持ちなどわからないだろう。必死で這い上がろうとしてるのに。アイリスが切り裂いたカップルの死体を片付けながら、リズは彼女を褒め称えた。アイリスとリズが乾杯したワインはカップルが注文した品だ。アイリスはなんとか頑張れそうな気がしてきていた。皮肉だけど、とアイリスは思う。死んで生き方がわかった。子供たちの世話係としてエリザベスに雇われたアレックスは、ホールデンと同じ棺で眠った。エリザベスから「もし負担が大きすぎるなら...」と問われたアレックスは即座に否定した。アレックスはエリザベスに刃向かう気はない。感想私もエリザベスに刃向かう気はない。
August 7, 2016
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American Horror Story (Hotel)アメリカンホラーストーリー シーズン5第4話「悪魔の晩餐会」(原題:Devil's Night)あらすじ2013年に死んだリチャード・ラミレス(アンソニー・ルイヴィヴァー)がホテル・コルテスにチェックインした。リズが案内した部屋には一組の夫婦が眠っている。ラミレスは夫を撲殺。逃げ出した妻はジェームズ・パトリック・マーチに捕まり、ラミレスによって殺された。ジョンはスカーレットとの通話中、ある異変に気付く。天井と壁の一角が血で濡れている。上の階ではミス・エバースが血に染まったシーツのシミ抜きを行っていたが、今日ばかりは作業がはかどらず、大量の水を浴室から溢れ出させていた。毎年ハロウィーンが来ると死んだ子供のことを思い出さずにはいられない。1925年、彼女の息子は誘拐された。目を離した隙に連れ去られ、牧場で監禁され、殺されていた。犯人が溶かしたため遺体はなく、ハロウィーン当日身につけさせていた古いシーツだけが彼女の元に戻ってきた。それ以来エバースは子供から目を離した自分を責め続けている。ハロウィーンの日に血の付いたシーツを見ると息子を思い出してたまらなくなる。赤い水の出所を探って76号室を訪問したジョンに、自らの過去を語ることで気分が落ち着いたエバースは、今夜開催される晩餐会の準備に取り掛かることにした。アレックスはホールデンを連れて帰宅する。飼い犬が異様に吼え、体温が異常なほど低く、5年前と全く変わりのない姿であることを訝りながらも、彼女は息子との再会を喜んだ。喉の渇きを訴えるホールデンのためにジュースを用意したアレックスが見たものは、死んだ飼い犬と、犬の血を吸う我が子の姿であった。勤務中のジョンに「ガブリエルには別人の血が付着していた」という鑑識の結果が届いた。エバースから聞いたワインヴィルの鶏舎で20人の子供が殺された事件は85年前のことだった。現場の写真の中にあった「アルバート・エバース」はジョンが直接会って話したエバースその人と驚くほど似ていた。アレックスはホールデンとともにホテル・コルテスへ戻り、ホールデンは太陽の光から逃れるように棺の中へと逃げ込んだ。水のないプールやガラスの棺は、今まで自分を苦しめるために長女が嘘を言っているのだと聞き流してきたが、それらは実際に存在した。呆然と立ちすくむアレックスをエリザベスはペントハウスへ案内する。ホールデンを誘拐したのはエリザベスだった。エリザベスはネグレクトから子供たちを救っているのだという。あの日、メリーゴーランドに息子を乗せ、携帯電話に夢中になっていたジョンの姿をエリザベスは見ていた。ホールデンは永遠の命をもたらす古いウイルスに感染しており、元には戻せない。一緒にいたければエリザベスに忠誠を誓い、同化する以外方法はない。2002年に死んだアイリーン・ウォーノス(リリー・レーブ)がバーに現れ、ジョンを誘って部屋までの移動中、彼を殴りつけて気絶させた。目を覚ましアイリーンを手錠で拘束して受付に駆け込んだジョンはリズからデビルズ・ナイトの話を聞く。ジェームズ・マーチが毎年開催するデビルズ・ナイトには本物の幽霊が来る。マーチの招待リストにはジョンの名前も記載されていた。夜会出席のために78号室へ到着したジョンはそこで過去の殺人鬼たちを見た。アイリーン・ウォーノス、リチャード・ラミレス、ジョン・ゲイシー(ジョン・キャロル・リンチ)、ジェフリー・ダーマー(セス・ガベル)、そして主催者であるジェームズ・パトリック・マーチ。ゾディアックは遅れて到着した。ジョンは自分がゲイシーによって手錠をかけられていることに気づく。手錠はゲイシーが殺人に取り掛かるときの手口だ。気づいたジョンは戦慄した。動けない彼にアイリーンは「自分に敬意を払った男はマーチだけだ」と語った。エバースが料理を運び、ラミレスが音楽をかける。長髪の美しい青年が運び込まれ、ゲイであるダーマーは顔を輝かせた。ジョンは殺人を食い止めようと発砲したが幽霊に銃は効かない。ダーマーによって頭蓋骨にドリルで穴を開けられた青年は歩く屍となった。デザートの用意を! マーチがベルを鳴らすと歓声があがった。「デザート」にサリーが連れてきたのは、彼女の元にドラッグを買いに来たエリートビジネスマンで、ハロウィーンは敗者のイベントだと嗤った男だ。マーチに生贄を捧げることで今後一年間サリーは自由でいられる。刃物を手にした亡霊たちは一斉に生贄に食らいついた。「やめろ」と叫んでジョンは我に返った。78号室の暗闇にいる。アブサンのせいで夢を見たのだと言い聞かせ、サリーは彼を部屋の外に連れ出した。亡霊たちの宴は続いている。立ち去るジョンの背中を見てマーチは鼻を鳴らした。エリザベスの胸元から滴る血を飲み、アレックスは同化した。感想リリー・レーブのアイリーン素晴らしかったです。見てて涙出てきた。ジョニー・デップはゲイシーの絵を買ったせいで悪魔に魅入られ今大変なことになっている可能性がある。シーズン4で「ゲイシーっぽいピエロ」役だったジョン・キャロル・リンチが今回ジョン・ゲイシー本人役で再び登場し嬉しい。ジョン・キャロル・リンチは私の大好きな映画「ファーゴ」(ドラマのファーゴも最高。続きが気になって夜眠れなくなった)でノーム・ガンダーソン(女性署長マージの夫)を演じていた俳優さんです。アメリカンホラーストーリーのレギュラーになってほしい。映画もドラマも、ファーゴは最初に「この作品は実話で...」と但し書きが入るんだけど、それ自体が嘘だということを私はインターネットで知りました。小説だと「実話という設定」だと理解できるんだけど、映像でそれをやられるとコロッと信じてしまう。活動写真を見てパニックになってた昔の人を笑えない。別人(クラウディア)の血がガブリエルの遺体に付着していたことが判明したけれど、ナオミ・キャンベルはもう登場しないのかな。ナオミ・キャンベルがもし刑事をやるとしたらあだ名は「ラブソング」になると思う。それか「写真集」。ISSAのステージの前に座っているタレントはなぜか皆今年何らかの形で謝罪に追い込まれている。春日の踊りが不思議な気流を巻き起こし、それが関根さんのダンスと共鳴して魔界の門を開いてしまった。次々に謝罪地獄に落ちてゆく芸能人たち。このままいくと中村雅俊が危ない。年末、「『笑ってはいけない』に大物俳優が出てダウンタウンが義理で笑うくだりは一つも面白くないというのに出しゃばっちゃってすみません」と謝罪する可能性が。(タモリはいいともを終了させたことで難を逃れている)
July 31, 2016
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American Horror Story (Hotel)アメリカンホラーストーリー シーズン5第3話「溺愛する母」(原題:Mommy)あらすじサスペンダー男殺害時、頭脳に快美の閃光が走ったトリスタンは、Googleでジェームズ・マーチについて調べ、彼の仕事を賞賛した。1895年生まれのマーチに「ググる」の意味はわからなかったが、トリスタンにホテル内の秘密の場所を案内する。ちょうどその頃、ウィル・ドレイクはクラウディア・バンクソンとラクランを連れ、マーチのスイートルームでトリスタンと遭遇する。この部屋は改築してウィルのアトリエにするつもりだ。改築に反対するマーチと洗濯係のミス・エバースに、トリスタンはこのままの状態を保つ事を約束する。親がワクチン接種を拒否したせいで麻疹に感染、発症したマックスは病状が悪化し、入院が決まった。合併症で肺炎の恐れありとアレックスが診断したためだ。元々子供に興味のないアレックス・ロウが小児科医を選択した理由は、自身の不幸な子供時代に端を発している。子を救う事で自分も救われる。ホールデン誕生はアレックスを変える出来事だった。ソウルメイトが見つかった気がした。幼いホールデンの頭からは眠気を誘うラベンダーの香りがしたものだ。アレックスはこの匂いが大好きだった。夫ジョンへの愛、長女スカーレットへの愛をも凌ぐ愛情と絆をホールデンには感じている。しかしある日、ホールデンは消え、それから1年後アレックスは浴槽で自殺未遂を起こす。家族でセラピーを受けるようになったのもその頃からだ。スカーレットはホテルでホールデンを見た時のことを話した。「部屋にはゲーム機とゼリービーンズがいっぱい。ホールデンはガラスの棺で寝てて......ラベンダーの香りがした」クラウディアがホテルの部屋に入ると電波が途切れ、電話が切れた。彼女は部屋のノイズや気味の悪い光景に気を取られたままベッドに横になった途端、マットレスからガブリエルが起き上がり、クラウディアの掴んだ刃物を奪い取って彼女の腹部を何度も刺した。ジョンは相棒のアダムと、ゴシップサイトのライター全員が惨殺された現場へ向かった。被害者は舌を釘でテーブルに固定されている。犯人は噂話を封じた。十戒の「偽証を禁ずる」だ。トリスタンはウィルに自らの行動を謝罪し、誘惑した。そのままウィルを殺害するつもりだったが、エリザベスが制止した。「行かないでくれ」と懇願するウィルの頬を軽く叩いてトリスタンは部屋を出た。ガブリエルは生きており、発見したジョンの手配で病院に運ばれるも「娼婦と間違えて殺してしまった、あの女に騙された」と叫んで痙攣し、やがて死んだ。ホテルに戻ったジョンはサリーから「十戒の『殺すなかれ』は間違いで、正しくは『罪深い殺しは禁ずる』。正義の殺人もある」と聞く。サリーが十戒殺人の犯人だと思ったジョンは彼女に手錠をかけ、エレベーターに乗り込んだ。一階に到着するとサリーは消えていた。アイリスとドノヴァンはロビーで口論を始める。アイリスは息子のためを思ってシングルマザーになったが、ドノヴァンには父親が必要だった。さらにドノヴァンは、アイリスが菜食主義やブリザリアンに傾倒していたせいで学校で恥をかいたことを告白する。(ブリザリアンとは、水や食物なしで生きられる、とするカルト。空気と太陽のエネルギーによって、瞑想を通じて全ての糧を入手できるという信念で活動しており、信者の中には飢餓と脱水で死んだ者もいる)ドノヴァンは母親から逃れるためにクスリに手を出したのだし、ずっと死にたかったと言う。「母親をやめたら生きていけない」と涙ながらに訴えるアイリスにドノヴァンは「死を選べ」と言い放ち夜の街に出た。ホームレスたちのテントを抜けると、車のトラブルで困っている女性が目に飛び込んできた。ナイフを構え舌舐めずりしながら近づくと突然ラモーナ・ロワイヤル(アンジェラ・バセット)が振り返りスタンガンでドノヴァンを気絶させた。アレックスはジョンに離婚届を書くよう迫った。家を空けたことを詫びるジョンにアレックスは「あなたがいないのは逆に助かる。皆が辛くなるから帰ってこないでほしい」と言う。耐えられず泣き出してしまったジョンをアレックスは部屋まで送った。ジョンの部屋から出たアレックスは廊下で血まみれのクラウディアを見た。別方向にはホールデンがおり、アレックスが近づくと「ママ」と答えた。エリザベスは、バーニー・マドフのピラミッド方式で投資し、全てを失ったことをトリスタンに認めた。(バーナード・ローレンス・メイドフは、1960年、バーナード・メイドフ証券投資会社を設立。元NASDAQ会長で、史上最大級の巨額詐欺事件の犯人。2008年逮捕。150年の禁固刑を言い渡され今も服役中。彼の逮捕から2年後の2010年、長男が自宅で首を吊って死んでいるところが発見されている)エリザベスはゲイであるウィルを口説いて愛撫した。ウィルは「初めて男とキスした時と同じ気分だ」とうっとりしている。エリザベスの目的は彼の金だ。息子に拒絶され、生き続ける理由がなくなったアイリスはサリーに自殺の手助けを頼んだ。1977年、ハリウッドのB級映画で女優として活躍していたラモーナはエリザベスと出会う。二人は恋人同士となり、エリザベスはラモーナに永遠を約束した。1997年、ラッパー志望の美青年プロフィット・モーセにラモーナは惹かれていった。ラモーナが他の者を変身させたことが許せなかったエリザベスはモーセを射殺。この世で最も大切な人を奪われたラモーナはエリザベスへの復讐を誓った。火曜日に自分は捨てられたのだとドノヴァンが明かすと、ラモーナは彼を放擲した。行く当てもなくコルテスに戻ってきたドノヴァンをリズが迎えた。リズはドノヴァンがアイリスを罵倒したことを怒っているのだ。どんな人にも欠点はある。この先どんな女と出会おうとも、アイリスほどあんたを愛してくれる女はいない。ドノヴァンは瀕死のアイリスの部屋に駆けつけた。アイリスの頭部に被せられたビニール袋を剥がし、手首を切って母に永遠の命を与えた。感想アイリスが入信していたブリザリアン・カルト(breatharian cult)のことですが、セレブでは、ミシェル・ファイファーが20代前半に信者で、現在は菜食主義者になっているとのことです。セレブが情報発信すると気軽に試してみようとする人が現れて、危ない。マックスの母親のような事例も、女優のジェニー・マッカーシーが著書に書いた(& 当時の恋人のジム・キャリーが広めた)ことがきっかけでアメリカに反ワクチン派の人が増えたという背景がある。医師や政府の言うことは陰謀論として片付け、好きなタレントの体験談は命がけで信じてしまう人が後を絶たない。それを理不尽だと笑うことは簡単だけど、社会から孤立し追い詰められたように感じて生きるアイリスみたいな人はたくさんいて、自分を受け入れてくれるところはそこしかないとなれば、どんな極端な思想であっても人は染まってしまうのだろうなあと思う。
July 23, 2016
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American Horror Story (Hotel)アメリカンホラーストーリー シーズン5第2話「明かされる秘密」(原題:Chutes and Ladders)あらすじサリーは死んだガブリエルをマットレスに縫い込もうとしていたが、エアーダクトからの叫び声で作業を中断する。見に行くとそこにはアグネタの手首から血を吸うヴァンパイアチルドレンがいた。血の味に文句を言う子供たちにアイリスは「アグネタは死んだ」と言う。死体をガベージシュートへ放り込むのはリズの役目だ。転がる死体の腐敗臭を消すためにアイリスは石灰を撒き、子供たちから採取したクリーンな血液はデカンタに入れられてエリザベスに供された。アレックスの患児であるマックス・エリソン(アントン・リー・スタークマン)は麻疹の症状が出ていた。2015年だというのに百日咳や麻疹が後を絶たないのは、マックスの母親のようにワクチンを拒否する親が増えているせいだ。彼らはワクチンは自閉症の原因になると本気で信じている。「ネットを信じないで」アレックスは嘆声まじりに言った。二児の母であり小児科医であるアレックスには、我が子の命を危険にさらしてニセ医学にすがる親たちの行動が理解できない。ジョンは64号室で悪夢にうなされ目覚めた。ホールデンを見た気がしてジョンはホテルのバーまで走ったがそこにホールデンはおらず、バーテンダーのリズと客のサリーがいるだけだった。サリーはミュージシャンで詩人のパティ・スミスと喧嘩別れしていると言う。ジョンは禁酒を決意した日のことを話し始める。深夜勤務で二日間家を空けた次の日、妻への罪滅ぼしに子供たちを連れてビーチへ行った。ジョンが携帯電話に気を取られていたわずかな時間でホールデンは姿を消した。警察署のジョンにホテル・コルテスから小包が届いた。爆弾かと思われたそれの中身は、マーティン・ガンボアの血液が付着したオスカー像だった。ホテル・コルテスではウィル主催のファッションショーが開かれた。ヴォーグ誌の記者クラウディア・バンクソン(ナオミ・キャンベル)も招かれジョンと知り合う。トリスタン・ダフィー(フィン・ウィトロック)はコカイン依存のファッションモデルで、行く先々に ‘刺激’ をもたらすことで知られていた。今回もランウェイを囲む客とトラブルを起こした彼はウィルから叱責を受けるが、顔を傷つけ「モデルをやめてやる」と宣言。ショーを混乱に陥れた彼にエリザベスは釘付けになった。ジョンがクラウディアとショーを見ている間、ラクランはスカーレットを誘ってホテルの隠し通路を通り、ガラスの棺を見せた。棺の中にホールデンが眠っていた。トリスタンはコカインを探してホテル内をうろつき、ペントハウスに侵入したところをドノヴァンに取り押さえられる。エリザベスはドノヴァンを制止し、トリスタンは7階へ。7階は一種異様な空気に包まれ、トリスタンが手に取ったサンドイッチは一口齧った瞬間蛆虫が湧いた。偶然入った部屋でトリスタンはジェームズ・マーチ(エヴァン・ピーターズ)と出会う。ジェームズはメイドのミス・エバースに娼婦を連れてこさせ、「女を撃ってみろ」とトリスタンに銃を手渡す。トリスタンがこれを断ると、ジェームズはすぐさま娼婦を撃ち殺した。あまりの異常な状況にトリスタンは逃げ出す。エレベーターで待っていたのはエリザベスだった。ホールデンに会うため、スカーレットは一人でバスに乗り、ホテル・コルテスへ向かう。ファッションショーを終えたホテルは閑散としており、子供一人でも易々と忍び込めた。4つあるガラスの棺はどれも空で、途方にくれたスカーレットはホテルの廊下を彷徨う。隠し扉の先にあるゲームルームでホールデンを見つけた彼女は家に帰るよう説得するが、ホールデンはここにいたいと言う。首筋を噛まれそうになり逃げ出したスカーレットをサリーが捕まえた。サリーはスカーレットに、ファッションショーに入れず醜態をさらしたところを見られている。憐れまれるくらいなら、怖がられた方がまし。サリーの歯はボロボロに抜け落ち、出血した。サリーは悲鳴をあげて逃げる子供を満足気に見送った。スカーレットが5時間姿を消したことで警察が動き始めていた。スカーレットが帰宅しホールデンを見たことを伝えるも、大人たちは誰も信じない。ホテルでのホールデンを収めた写真は画像が歪んで表示された。エリザベスの保有するウィルスによってトリスタンは永遠の命を与えられ、コカインと自傷でボロボロになった体が再生するのを実感する。エリザベスは1904年に生まれたという。新たな愛人を手に入れたエリザベスはドノヴァンにここから出て行くよう促した。ジョンはアイリスを手錠にかけ、殺人と児童誘拐について知っていることを話せと詰め寄った。アイリスはバーでホテルの秘密を語り始める。1925年、石油と石炭で財を成したジェームズ・パトリック・マーチは富の証として、また己の欲望を満たすためホテル・コルテスを建設した。壁は防音加工され、叫び声は外に漏れない。マーチは被害者が逃げられないよう設計されたこのホテルで週に3回、酔った時はさらに多くの殺人を犯した。マーチの妻も殺人に協力的だった。洗濯係のミス・エバースはマーチの忠実なる僕で、彼のためならどんなシミも落とした。エバースはマーチを愛していた。マーチの父親は熱心なキリスト教徒だったが、マーチは父を憎んでいた。この世で何よりも宗教を憎む彼の前にある信心深い男が現れる。男は死の瞬間まで神への希望を捨てなかった。心を掻き乱されたマーチはホテル中の聖書を集めて遺体の周りに並べた。「JPM」のモノグラムの入ったハンカチと両腕を切断された遺体を手がかりに警察がホテルに踏み込んだ時、エバースとマーチはすでに自死した後だった。ジョンが宿泊している64号室はマーチのオフィスだったという。このホテルの闇の中心部だ。ジョンはアイリスの話を全て信じたわけではなかったが、マーチの時代の殺人事件と今回の連続殺人に似通った要素を見出した。「手を切られた泥棒」は十戒の「盗むべからず」だ。日曜の不法労働は「安息日を守るべし」。不倫カップル殺害は「姦淫を禁ずる」。オスカー像で殺されたブロガーの事件の意味するところは「偶像崇拝を禁ずる」。プロブロガーのマーティンはオスカー受賞予想サイトに記事を書いていた。腹部を切り裂かれて死んだ双子の両親は事故死だとされているが、双子が両親を殺したという噂もある。だとすれば「父母を敬え」というメッセージではないか。誰かがマーチの後を引き継いでいる。ホテルのロビーでトリスタンは Grindr(ゲイ・バイセクシャルの男性向けSNS)を操作し、素肌にサスペンダー姿の男性の写真に目を留めた。男性はすぐにやってきた。待ちきれずエレベーター内でサスペンダーを弾きそのままベッドになだれ込んだ。エリザベスの乱入に「勘弁してくれ」と言いかけた男の頸を切り裂く。鮮血が迸ってトリスタンの顔を濡らした。「男を吸うけど俺はゲイじゃないぜ」男の遺体を挟んで二人は口づけを交わした。感想ジェームズ・パトリック・マーチは第1話のガブリエルの背後に一瞬映っていました。自殺した時の服装(ゴムのエプロン)で、64号室に入っていく彼を見送っています。アレックスが嘆いていた反ワクチン派の母親ですが、アメリカではアンチ・ヴァクサー(Anti-Vaxxer)と呼ばれているそうです。きっかけは1998年にイギリスの医師が発表した論文中の「ワクチン接種が始まってから自閉症が増えた」というもので、現在はワクチンと自閉症関係説に科学的な根拠なしとされています。しかしこの論文が引き金となってワクチン接種を拒否する人が増えた結果、英国ウェールズ地方での2012年の感染者数は1219名、アメリカでの2014年の感染者数は644名にのぼっています(米で強まるはしかワクチン懐疑論)。ホテル・コルテスが作られた1925年というと、チャップリンの「黄金狂時代」が公開された年。1920年〜1933年の禁酒法の真っ只中です。禁じられたことによって飲酒がますます魅力的になってしまう。人々、特に若者は飲酒することが何か破天荒でスリルのあることにように考え始め、「スピークイージー」というもぐりの酒場が繁盛しました。客の中には若い女性が多く見られ、これは、ほとんどのバーが男性しか入れなかった第一次世界大戦前には考えられなかった光景でした。楽しいことが好きで気ままな女性たちは「フラッパー」と呼ばれ、それまでは娼婦しかしなかった濃い化粧をし、酒を飲み、タバコを吸うようになりました。政治、経済、芸術、文学、スポーツのどれを取っても20世紀アメリカの飛躍的な成長はこの時代に端を発しており、1920年代の異称としては、the Roaring 20sthe Golden 20sthe Prohibition Erathe Dry Decadethe Jazz Ageなど。破壊と創造が一つのエネルギーとなって渦巻いていた時代で、20年代はアメリカ史上というより世界史上初めての「若者の時代」と言われています。子供と大人の中間の世代という曖昧な位置付けではなく、固有の趣味と行動パターンを持つ若者として社会に認知されたのはこの頃から。エリザベスは1970年代末期のディスコ・クイーンだった時代が一番楽しかったと語っていましたが、狂乱の20年代なくして70年代の若者文化はなかったということです。
July 16, 2016
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American Horror Story (Hotel)アメリカンホラーストーリー シーズン5第1話「危険なチェックイン」(原題: Checking In)あらすじロサンゼルス中心部に聳え立つホテル『コルテス』。この歴史ある瀟洒な建物の前に一台のタクシーが止まり、二人の美しい娘たちが降車した。スウェーデンからの観光客ヴェンデラ(カミラ・アルネス)とアグネタ(ヘレナ・マットソン)である。二人は、受付係アイリス(キャシー・ベイツ)の案内で通された部屋に不満を抱く。Wi-Fi どころか携帯電話も使えず、通信手段は備え付けの固定電話しかない。どこか不気味な雰囲気を感じながら二階まで氷を取りに出たアグネタは奇妙な光景を目にする。メイド(メア・ウィニンガム)が血液の付着したシーツをクリーニングしており、二人の子供がじっとこちらを観察しているのだ。ヴェンデラとアグネタは部屋に充満する死臭がベッドから漂ってきていることに気づき、恐る恐るマットレスを切り裂くと、そこから異相の男が飛び出し彼女らを攻撃した。逃げ出した二人はアイリスの計らいで64号室に避難する。一時間後、短い眠りから目覚めたアグネタはバスルームで、口から血を滴らせた頑是ない子供二人が友人を襲っているのを見た。殺人課の刑事ジョン・ロウ(ウェス・ベントリー)は、妻アレックス(クロエ・セヴィニー)との関係が破綻しかけていることに悩んでいた。5年前、遊園地でジョンが目を離した隙に息子ホールデン(レノン・ヘンリー)が何者かに連れ去られたのがきっかけだ。妻はジョンの顔にホールデンの面影を見てしまい、それが辛いのだと言う。早朝ジョンが現場に出向くと、全裸の不倫カップルの遺体が彼を迎えた。女性は両手をヘッドボードに打ち付けられ心臓を刺し貫かれて絶命していた。男性の眼球はくり抜かれて舌と一緒に灰皿に入れられていたがまだ生きている。精力剤を飲まされたらしく、挿入したままになっている性器は接着剤で固定され、簡単には外れないよう細工されていた。周囲には両目を黒く塗りつぶされた家族写真が飾ってあり、ジョンはこの事件は不倫の報復などではなく、第三者による犯行ではないかと考える。先月はプロブロガーが殺害された。被害者はマーティン・ガンボア47歳。シルバーレイクの自宅で、鈍器で頭部の形がなくなるほど殴られていた。腕や肩に刺し傷があるほか、防御創もある。両腕骨折、特に左腕の骨は折られた上皮膚から飛び出していた。直腸内と頭骨左部分から金属片が見つかっている。性的暴行もされたらしい。不倫カップル殺害とブロガー殺害に何か共通点が見出せそうだと考えていたジョンに、匿名の人物から電話が入った。「私があの男女をやった。ホテル・コルテス64号室でまた同じことをやる」ホテル・コルテスでは、ヘロイン中毒の若者ガブリエル(マックス・グリーンフィールド)が横柄な態度でチェックインし、アイリスから64号室の鍵を渡されていた。ガブリエルが廊下を通るとき、女装したホテル従業員リズ・テイラー(デニス・オヘア)と一瞬目が合った。リズの艶然たる微笑みは正気のガブリエルがこの世で見た最後の光景となった。ガブリエルが静脈への注射を済ませると程なくして室内の壁が揺らめき、メイドが現れたかと思うと、突然実存のベールが剥がれ落ちた。ホテルの壁は、抽象的な範疇としての無害な見かけをなくしていた。物の多様性、物の個別性といったものは、単なる見かけ、上辺のニスに過ぎなかった。そのニスは溶けてしまい、後には、奇怪なぶよぶよの無秩序の塊だけが残っていた。そのむき出しの魂、ぞっとする卑猥な裸体の魂はあっという間にガブリエルに接近し、円錐型の金属ディルドで彼を犯した。その一部始終を見ていたサリー(サラ・ポールソン)はガブリエルに自分を愛しているか尋ね、苦痛から逃れたいガブリエルは、この見知らぬ女性の質問に答えながら息絶えた。匿名の電話を受けたジョンはホテル・コルテスに向かい、リズに案内されて64号室へ入る。怪しい者はどこにも隠れていないことを確認したジョンはベッドで寝入ってしまう。ベッドの下にはガブリエルの遺体が隠されていた。2時25分、ジョンは誘拐された息子ホールデンの姿を見たような気がして目を覚ました。ホールデンはどこにもいなかった。医師である妻アレックスが出勤した晩、ジョンは娘のスカーレット(シュリー・クルックス)と和食店で夕食をとっていた。スカーレットも夢でホールデンを見るのだと言う。アレックスの携帯端末から呼び出され、ジョンは娘を連れて指定の住所へ急行した。そこには内臓を引き出された二人の男性の遺体が吊るされていた。妻になりすましていたのは64号室に呼び出した匿名の人物だった。エリザベス(レディ・ガガ)とドノヴァン(マット・ボマー)は、偶然知り合ったカップルにアプローチし、ホテル・コルテスのペントハウスでグループセックスを行う。その後エリザベスとドノヴァンはカップルの頸静脈を切り血の味を楽しんだ。ヴェンデラとアグネタは、アイリスに捕らえられネオン管のケージに入れられていた。薬物を嫌悪するアイリスは、エリザベスに捧げる血液はクレンジングしなければならないとして、独自の配合の飲み物を作り始める。アグネタの口に入れたチューブに繋がる漏斗に特製のドリンクを流し入れようとしたその時、サリーが気まぐれにこれを阻止した。ケージから脱出したヴェンデラは必死に走ったが、あと一歩のところでエリザベスに捕まり咽喉を掻き切られた。新しいオーナーのウィル・ドレイク(シャイアン・ジャクソン)が息子ラクラン(リリック・レイン)を伴ってホテル・コルテスに到着した。不動産業者マーシー(クリスティーン・エスタブリック)による説明を受けて、ファッション業界に身を置くウィルは、ここを自宅兼職場にしようと考えていた。眠りを邪魔され不機嫌なドノヴァンとは対照的に、エリザベスはウィル一行を歓迎する。ウィルが大統領夫人のドレスを手がけたことをエリザベスは知っており、ウィルの次作品を心待ちにしていたのだ。エリザベスは隠し扉の奥に存在するゲームルームにラクランを誘い、ラクランはそこで2010年の姿のホールデンを見た。1994年、アイリスは彼女の息子ドノヴァンとサリーがホテル・コルテスにチェックインするのを見張っていた。薬物依存の我が子を助けたい一心で64号室に踏み込むも、アイリスはすでに遺体となったドノヴァンと対面する。ヘロインでハイになったサリーを追いかけ、アイリスは彼女を突き飛ばした。転落したサリーはアスファルトにぶつかって断裂した。エリザベスはうっとりとドノヴァンの遺骸を撫でていた。娘を危険な目に遭わせたことが決定打となった。家を出ることに同意したジョンは荷物をまとめホテル・コルテスの64号室に再びチェックインした。 "Tear You Apart" 思い切ってやってみるか今夜あたりがいいかも囁きと握手で合図しいちゃついてキスしたい深夜 彼女の親友につい言ってしまったんだ失言は恐怖と恋に変わりその場で動けなかった君は黙っちまって震える足でタバコを取りにうなづき 手を振りお別れ二日間 頭から離れない一時の恋心だろいつものように消えるさじゃなきゃヤバい想いは膨らむばかり君を抱きしめたい肌を強く寄せ合いたい横になって目を閉じて素敵だよ これでいい君を抱きしめたい優しい吐息 高鳴る胸俺は耳に囁く「君を切り裂きたい」彼女に歩み寄り何度も目をそらして踊る彼女が俺の手を撫で二人は見つめ合うどうすればいいんだ?きっとまずいことになるだが重なり合う唇一夜限りか 永遠かどっちにしても危ないでもそれが夢中にさせる恋がマジになるのさ彼女をつかんで言うのさ君を抱きしめたい肌を強く寄せ合いたい横になって目を閉じて素敵だよ これでいい君を抱きしめたい優しい吐息 高鳴る胸俺は耳に囁く「君を切り裂きたい」感想後半チラッと出てきた不動産業者マーシーは、シーズン1で惨劇の家をハーモン一家に売った人。マーシーの紹介する不動産、今のところ全部事故物件です。全体的に映画版「シャイニング」(キューブリック)へのオマージュで溢れていました。ラクランがボールを弾ませて怪物を呼び寄せてしまったり、ジョンがホテルの廊下を曲がる際のカメラワークもそうだし、ホテルに住み着いた悪霊が人間を襲うところもそう。とは言ってもシャイニングは美しい全裸女性(腐乱死体)がジャック・トランスを誘惑する程度だが、ホテル・コルテスは股間に金属ドリルを装着した悪魔が有無を言わさず男性客をレイプし殺してしまう。シャイニングの舞台であるリゾートホテルの名前は「景観荘(overlook)」。overlookの意味はWeblio辞書によると【 (…を)見晴らす、より高い所にある、(…を)見渡す、見おろす、大目に見る、見逃す、(…を)見落とす、見過ごす、監督する】ジャック・トランスはその地が元々先住民の墓地で、そこを埋め立ててホテルが建設されたことを知らず、家族を伴って管理人の仕事を引き受けてしまうのですが、いわくつきのホテルという意味ではコルテスも負けていない。コルテスのモデルとなったホテルがロサンゼルスにあり、つい最近の2013年にも観光客の遺体が貯水タンクから見つかったことで「殺人鬼が住む」と噂されるホテルの名が再び脚光を浴びることとなった。ホテルの名前はセシルホテル。セシルホテルの歴史1920年代、アメリカは未曾有の好景気に沸いており、セシルホテルもアールデコ調の優美なエントランスを備えたビジネスホテルとしてスタート。第一次世界大戦終後、新興国アメリカを資本主義大国に押し上げた繁栄はやがて終焉を迎える。20年代最後の年、アメリカを大恐慌が襲った。セシルホテルも例外ではなく、宿泊料金を大幅に下げて対応した結果、ホテルを住居として使用する客や薬物依存の客、コールガールを連れ込む客を呼び寄せることになる。1920年代、30年代、ホテル内での死亡事件が多発。そして1947年、ブラックダリア事件が起こる。セシルホテルのバーの常連だった女優の死体がホテルから8ブロック離れた草むらから発見された。遺体は真っ二つに切断されていた。(ブラックダリア事件についてはシーズン1でも描かれている)1964年にも未解決殺人事件がホテルで発生。1991年、オーストリアの連続殺人鬼ジャック・ウンターヴェーゲルがホテルに宿泊。ジャックは売春婦の母の元に生まれ(オーストリアで売春は合法)、1974年、18歳の売春婦を絞殺して逮捕される。被害者を殴った時母を思い描いたと供述した。その後自伝がベストセラーとなり、文学賞を受賞。雑誌の依頼でアメリカの売春事情を取材するためセシルホテルへ来たのだが、取材中3人を殺害し自殺した。ジャックはアメリカの殺人鬼リチャード・ラミレスに憧れていたという。2013年、21歳のカナダ人女子大生エリサ・ラムさんがホテルの貯水タンクで溺死しているのを発見される。亡くなる直前の様子がネットに公開されると、「セシルホテルに住む殺人鬼を彼女は見てしまったのではないか」と世界中で話題となった。ジョンの夕食が寿司だったり、舞台が消費社会を象徴するようなホテルだったり、レディ・ガガ演じる伯爵夫人エリザベスの享楽的な生活、セックスと凄惨な殺人、薬物......シーズン5となる今作は、どことなく「アメリカン・サイコ」(ブレット・イーストン・エリス)を想起させるところがある。裸電球の黄色い照明で見世物小屋と ‘異形の愛’ (キャサリン・ダン)を描き出したシーズン4とは対照的に、今回のホテルではネオンと青白い蛍光灯の光を多用しているところも面白かった。ホテル・コルテスの奢侈と頽廃に出口はあるか。
July 9, 2016
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カズオ・イシグロ著土屋政雄訳ハヤカワ epi 文庫あらすじ「私生活やその他のことを犠牲にしてまで完全無欠な執事になりたがっている男の話」(著者による説明)作品の生まれた背景カズオ・イシグロは5歳のとき日本人の両親と共に渡英。小学校から大学までイギリス人と同じ教育を受けて育つ。28歳でイギリスに帰化している。デビュー作『遠い山なみの光』(王立文学協会賞)、二作目『浮世の画家』(ウィットブレッド賞)はイギリスとアメリカで主に読まれたが、「日本人はこのように考えるのか」という読者の反響がイシグロを辟易させた。『浮世の画家』は、日本人を主人公とした日本が舞台の作品であるが異国情緒を狙ったわけではなく、作者としては人間の普遍的な感情を表現したつもりであった。そこで三作目は舞台をイギリスに移し、世界的にも「厳格で礼儀正しい」イメージのある英国執事を主人公に据えて『浮世の画家』でイシグロが描きたかったことを『日の名残り』の中で表現した。この作品はブッカー賞を受賞し、41歳時に大英帝国勲章(オフィサー)、44歳時にフランス芸術文化勲章を受章している。2008年には『タイムズ』紙上で、「1945年以降の英文学で最も重要な50人の作家」の一人に選ばれた。感想......という上記の情報を知って、『日の名残り』ってものすごく格調高い小説なんじゃないか、とっつきにくそう、などと思っていたのですが、全然大丈夫どころかこれ、ダメ人間小説なんでありました。ダメ人間小説は好きだ! 主人公である執事スティーブンスがなかなかのポンコツなんです。過去を思い返しちゃあ自己欺瞞、自己弁護の嵐。著者であるカズオ・イシグロはファンから「小説の表面だけ読んで理解する読者、執事が嘘を言っているかもと考えない読者についてどう思いますか」と質問されたことがあって、その時の講演でイシグロは「『離婚してよかった、人生が上向いたよ』と語る友人の言葉を聞いても、よほどの馬鹿でない限り『ああそうなんだ、離婚してよかったね』とは思わないでしょう。『離婚してよかった』なんて言うのは方便であって本心ではないということは誰でもわかることだ」と答えています。イシグロにとって、スティーブンスの言葉を真に受ける読者はいないことになっているので、執事の述懐をそのまま信じる解釈の仕方は間違いということになります。スティーブンスは「執事なんだから仕方なかった」って言い訳で人生のあらゆることから逃げてきた。ミス・ケントンとの恋愛がうまくいかなかったのはしょうがないとしても(「品格」という衣服を脱げないと語るスティーブンスに愛の告白は到底無理です。恋愛小説読んでるところを彼女に見られただけで時が止まってしまう程、自分の感情と向き合うのを嫌い、傷つくのを恐れる人なのだ)、お父さんの臨終に際してもその場から逃げてしまうし、「車輪の中心」にいるという自覚はあるものの、外交への影響力絶大なダーリントン卿が誤った道を進もうとしていることを知りながらそれを止められず(これについても「執事たる者は」の言い訳を用意している)最終的に卿を死なせてしまう。ダーリントンだけでなく彼の名付け子カーディナルも戦死してしまう。ダーリントンは夫人もいないし、スティーブンス自身が言っていた通り執事は女房役も兼ねるのだから、主人の名声と生命を守るのが仕えるものとしての真の務めではないか。死なせてどうする。木を見て森を見ずとはこのことだ。最初こそ、このスティーブンスの頓珍漢ぶりを笑って見ていられるのだが、だんだんスティーブンスの語りくちも変わってきて「信用できない語り手」ではなくなってくる。取り繕わなくなってきて後悔をにじませつつラストでは海を見ながら、なんと泣いてしまうのである! あの感情を表に出さないスティーブンスが! 私は悲しくなりました。新しい御主人であるアメリカ人のファラディを楽しませようとジョークの練習を決意する老執事の姿に。ジョークなんて、練習してどうにかなるものでもないし、そもそもスティーブンスはユーモアのセンスゼロだしさ。やめちまえ、そんなもんは!!なぜ私が今更急にこの小説のことを言おうと思ったのか。それは、先月NHKで70歳の女性(半澤さん)が茶事に人生をかけ全国行脚するドキュメンタリーを見たから。番組の最初は見逃したのだけれど、この老婦人、スタッフにはやたら愚痴っぽいし、お客さんに対しては過剰なまでに謙遜するのだ(というふうに私には見えた)。場の設定をしたのは自分なのに石段を上がっては「はぁ〜、しんど。重いわ〜」とカメラクルーを見る。荷物持てってこと? 水辺に野宿を決めたはいいけれど足を虫に食われまくって「お〜、カユカユ。蚊取り線香がなければ(スタッフを見る)」買ってこいってこと?? 茶事の用意を漁港の用水路の上でやるもんだからお茶の道具をドブに落としてしまう。「どないしよ〜」通りかかった地元の漁師さんが拾ってくれたのだが、その晩半澤さんは高熱を出してしまう。ドブに落ちたやつ使ったからじゃないかな......。来てくれたお客様にも「大したもんがありませんで」「雑草ばっかり食べさせてしもうて〜」「今日は盛り付けが見すぼらしくて〜」文字だと伝わりにくいな。お客さんが感想言う暇がないくらい自分の料理の至らなさをどんどん言っていくんです。せっかくの料理がまずくなっちゃうよ。あと、あまりにへりくだられると、こっちも「私のようなゴミみたいな者がこんな素敵なお料理いただいてしまってすみません」て言わなきゃこの人の基準ではマナー違反なのかとか色々考えちゃって気を遣うと思う。一事が万事この調子で進むので、なかなかスリリングな視聴体験でした。それで思ったのが、半澤さんて日の名残りのスティーブンスみたいだなあっていうこと。半澤さん自身これまでの人生色々と苦労されてきたそうで、あの過剰な謙遜も過去の反省から来ているのかもしれない。他の人はどうかわからないが、私だったらあの茶事はちょっと嫌だな。客のためにというより、自分の理想とする高みへどんどん突っ走っていくところが、あの老執事と重なるのだ。怒られないように非難されないようにあらかじめ予防線を張っておくところも。でもさ、サービスする側がストイックじゃなかったからといって誰も怒らないし、たとえ怒られたとしてもいいじゃない、と私は思う。執事の仕事もその他のあらゆる職業も、きちんと真面目にやろうとしてたらいつの間にか時間が経っていて、人によっては婚期を逃したり親の死に目に会えなかったり、思い返したとき後悔や罪悪感を伴った苦い記憶になっていることは珍しい話ではないわけです。それでも人は前を向いて歩こうとするから、ジョークの練習をしてみようかなんて見当違いの方向を目指してみたり、過去の自分を正当化してみたりする。そんな人間のポンコツさが、私は好きである。
June 2, 2016
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あけましておめでとうございます。アメリカン・ホラー・ストーリー シーズン3(coven:魔女団)とマクベスの共通点※アメリカン・ホラー・ストーリー(魔女団)のネタバレを含みますので、未見の方はFOXチャンネルでの放送(6/2から6/20まで月~金14:55~ 全13回)をご覧ください......この「アメリカン・ホラー・ストーリー」シリーズはストーリー構成だけでなく、その映像美が高く評価されています。プロットだけでは見えてこない物語があり、ドラマ全体を支配する大きなメタファーに満ちているのです。3人の魔女シーズン3には「3人の魔女」のモチーフが頻出します。荒れ地に打ち立てられた杭に吊るされ、火刑に処される3人の女オープニング怒れる3人の女たちタイッサ・ファーミガ演じる10代の少女ゾーイは、親許を離れてニューオーリンズにある寄宿学校「ミス・ロビショーズ・アカデミー」に身を寄せ、学友である3人の魔女(エマ・ロバーツ、ガボレイ・シディベ、ジェイミー・ブリューワー)と共に生活を始める。ハリー・ポッター(魔法は使えるけれども自分の視力を治す気はないメガネ小僧の話)のような貴種流離譚の形をとって始まるのだが、実はゾーイは主人公ではありません。「3人の魔女」の出てくる物語、つまり、「マクベス」がシーズン3の主題です。シェイクスピアといえばオクシモロン(oxymoron:パラドックスの一形態。「凍れる炎」「永遠の一瞬」など)ですが、マクベスの魔女は「きれいは穢い、穢いはきれい」というセリフで第一幕 第一場を後にします。ゾーイがミス・ロビショーズ・アカデミーで3人の魔女に襲われた瞬間から、視聴者はゾーイと共に「きれいは穢い、穢いはきれい」の魔法にかかるのです。魔女団の世界でのオクシモロンその1:「男は女、女は男」になるドラマ内で男女の役割は逆転します。女性の人物造形はバラエティに富んでいるのと対照的に、男性の登場人物は見目麗しい被害者か、醜い加害者、その二種類しかありません。そして美男子は自分の意見を言わず、女性の行動に従い、「立場をわきまえた」振る舞いしかしない。そうしなければ生きていけない。ライアン・マーフィーはシーズン3の着想をシスター・メアリー・ユーニス(シーズン2)から得たと語っていました。メアリー・ユーニスもまた、聖女か魔女か、紋切り型の枠に押し込められたキャラクターであると言えます。オクシモロンその2:「生者は死者、死者は生者」魔女団の世界では一度死んだとしても、必ずしもそれは永遠の死を意味しません。魔女たちは友人や敵、恋する相手を生き返らせ、殺します。ブードゥー教のクィーン、マリー・ラヴォーの策略でニューオーリンズの墓から死者たちがゾンビとなって復活し、ミス・ロビショーズ・アカデミーを襲うシーンがある。この時マダム・ラローリーの娘たちも生き返り、虐待を続けた母に復讐するかのようにドアをノックします。(マクベスでは門を叩く音によって「悪魔の世界へ人間の世界が逆流し、生命が再び鼓動を始めるのだ。そして、人間の世界が蘇生したということこそ、これまでの中絶期間、恐るべき暗黒の世界をひしひしと痛感させるものなのである」と批評家ド・クインシーによって解説されている)オクシモロンその3:「失明することで見えるようになる」スプリームであり毒親のフィオナに苦しめられてきたコーデリア・フォックスは、失明することで魔女としての能力を開花させ、夫の正体を知り、新スプリームの座を手に入れます。シーズン3をマクベスであるとする、もう一つの根拠があります。それはジェシカ・ラング演じるフィオナ・グードの生き方があまりにマクベス的であるという点です。ドーヴァ・ウィルソンによると、ハムレットとマクベスは表裏をなしており「一方は決して始めることのできぬ男であり、他は決して打ち切ることのできぬ男である」。生きるべきか死ぬべきか、悩み続けるハムレットとは逆に、マクベスは殺しを止めることができない。フィオナ・グードも、前任のスプリームであるアンナ・リーレイトンを殺して権力を奪い取り、その力を誰にも渡すまいとマディソン・モンゴメリの首を切って殺害します。「血の流れにここまで踏み込んでしまった以上、今さら引き返せるものではない、思い切って渡ってしまうのだ」と決心するマクベスと似ていませんか? 娘や殺人鬼に甘言を弄し夢を見せ絶望させるという意味では、フィオナはマクベスであると同時にマクベス夫人であり、3人の魔女でもあるのです。終わりシーズン3(Coven:魔女団)は6/2から6/20まで月~金14:55~の放送です。再放送は翌朝6時シーズン4(Freak Show:怪奇劇場)の放送は6/14(木)放送スタート、月~金深夜27:00~シーズン5(Hotel)の放送は7月頃のようです。
May 16, 2016
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原題:As Above, So Below2014年 アメリカ映画監督:ジョン・エリック・ドゥードル脚本:ドリュー・ドゥードルあらすじパリの地下(カタコンブ・ド・パリ)で、錬金術学者スカーレットが賢者の石を探して右往左往、上下左右する話感想(ネタバレあり)アマゾンのレビューに「ヒロインのウザい歴女が云々...」とあったので、見てみたが、スカーレット別にウザくないし、逆にいい女なんじゃないの、これ......と感じた。仲間を助けるため自分の間違いを認めて異形の者をブッ飛ばしながら賢者の石を取るべく引き返す決断ができるし、カメラマンの友人が人骨の隙間でパニックに陥ったら意識を失わないように励まし続けるし、「知識が得られれば金目の物はいらない」と言うし、こんないい人いる!? まぁ、元はと言えばこいつのせいでガイドやらガイドの恋人やらが死ぬわけだし、これから危険なところに行くというのに薄手のニットみたいなの着てくるし「岩だらけの場所行くのにそんな肌露出させてたら怪我するだろ!」とは思いますけど。実際パピヨンの彼女は腕を怪我する(そして賢者の石ではないニセの石でなぜかその傷は治ってしまう)。けれど全体的には、暗いインディジョーンズというか、絶望的なグーニーズというか、そうしたキャラクターをダンテの神曲をモチーフとしたストーリーにうまく組み込んでおり、面白かった(最後、「逆に降りてみる」ことで地下から脱出できてしまうところなんて、魔王ルチフェロに掴まり足を上に頭を下に体を一回転させることで地獄から抜け出たダンテとウェルギリウスのよう)。神曲では、生前の自分の罪を悔い改めた者たちは地獄行きを免れるのですが、この映画でも「罪の告白」シーンはあって、その中に「ガールフレンドに妊娠を告げられた際『俺の子じゃない』と嘘をついた」者がおり、その者をもスカーレットは「そう」とかなんとか言って赦すのです。聖女のようではないですか。私だったら目の前でそんなこと告白されたらゲンコツだ。神曲のダンテとウェルギリウスはエルサレムの地下にある地獄をどんどん下り、南半球に出た(北を見ても北斗七星は見えず、南に南十字星が輝いていた)のですが、スカーレット一行はどこに出たのだろう。パリのようでパリではない、別の場所ではないか。過去の罪を悔い改めることでカタコンベに幽閉されるという地獄を免れただけで、彼女たちは今も煉獄のなかにいるのでは。
September 4, 2015
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原題:Backcountry2014年 カナダ映画監督・脚本:アダム・マクドナルド感想ここへ引っ越してきた数年前から、私は「外出先で、もしクマと鉢合わせしたらどうするか」ということばかり考えている。考えに考え抜いた結果、一番良いのは猟銃のライセンスを取得することだが、適性検査(銃を扱うには視力0.7以上必要)の要件を満たしていないため、私は銃以外の方法でクマと戦わなければならない。クマは視覚・聴覚ともに優れており、嗅覚など警察犬以上だと言われている。鋭い爪で地面に穴を掘ることもできるし、木登りなど人より早いスピードで可能。時速40〜60キロで移動できるという、およそ弱点が思いつかない動物なのだ。そこで、銃刀法違反にならない武器として私が考えた方法がある。名付けて「クマポックリ」(何なのかは後述)。あなたが森の中を散策していると、前方にクマの姿を見かけた。どうするか。20m以上離れている場合(子連れ熊の場合はそれ以上)であれば、そのまま静かにやりすごせば良い。しかし気づいたとき既に近距離におり、しかも空腹のクマだったら? 日本熊森協会で推奨されている「やさしく話しかけつつあとずさりする」ことなどできるだろうか。人間の言葉のわからないクマに対してチャレンジ精神を発揮しすぎである。そこでクマポックリの出番。事前に用意したクマポックリをゆっくりした動作で取り出し、リモコンで操作してクマの近くまで移動させる。そこでリモコンのボタンを押すことでクマポックリの蓋がパカッと開くので(瞬時に良い香りが広がる)、中に入った液体クマポックリをクマが食べている間にあなたは後ずさりしつつゆっくり逃げれば良い。液体クマポックリはハチミツでできており、カプセル化した人間の歯周病菌も混ぜてある。これを食べたクマは徐々に歯と歯グキにダメージを受け、やがてポックリ死ぬ。クマも人間と無駄な死闘を繰り広げることなく、その後は(歯がボロボロであるため)鹿や人間などの大物を狙わず魚や木の実を摂取して天寿を全うできるのだから良い方法なのではないだろうか。しかしクマポックリにも弱点がある。それは、「ハチミツに興味のないクマには効かない」という点である。そうなったら私がリモコンを握りしめたままポックリ逝くしかない。映画は面白かったです!
August 29, 2015
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American Horror Story (Freak Show)アメリカンホラーストーリー シーズン4第13話・最終回 「カーテンコール」(原題:Curtain Call)あらすじダンディはチケットが一枚も売れないことに腹を立て、フリークたちを叱責する。自らがスターとなって注目を浴びるためにフリークを利用しようとするダンディの考え方はエルサと同様であった。しかし一方でフリークたちの良き庇護者であろうとしたエルサとは違い、ダンディには組織内の権謀術数をめぐらす算段すらなかった。プライドを傷つけられ憤激した団員は全員その場で辞職を表明した。念入りに舞台用化粧を施したあと「ショータイムだ」とつぶやいたダンディは怪奇劇場の敷地内を逍遥し、フリーク一人一人を銃殺していった。ポール、ペニー、スージー、トゥールーズ、アイマ、イヴ。ダンディに縛られた双子を除く劇団員全員を殲滅したかに思えたが、彼が見逃していた者がいた。警察から身を隠すために敷地外に隔離されていたジミーと、クローゼットに隠れていたデジレである。虐殺を逃れた二人は惨劇の跡を前に抱き合って泣いた。ダンディは自宅で双子との結婚式を開き、その夜の食事で「子供は頭が三つある女の子がいいな」と語った瞬間、意識が遠のいた。混濁する視界のなかに、メイドのデジレと執事のジミーを見た。ジミーが運んできたクロッシュの中身は「ダンディ・モットのデビュー公演」の案内状だった。ステージ上に設置された、脱出芸用巨大水槽の中でダンディは目を覚ました。右手は鎖で水槽の底に繋がれている。客席に座ったジミー、デジレ、双子の前でダンディは溺死した。ハリウッドに到着したエルサはテレビ局でマイケル・ベック(デイビット・バートカ)と出会う。キャスティング担当のマイケルはエルサのマネージャーとなり、彼女と結婚。「エルサ・マーズ・アワー」でエミー賞を3回受賞し、1960年、ハリウッドのウォーク・オブ・フェームにエルサはその名を刻んだ。世間の評判とは裏腹に、エルサは退屈と孤独を感じていた。夫との仲は既に冷え切っており、仕事場で出会う人々も本音をひた隠しにしたイエスマンばかり。「ただ愛されたいだけ」その気持ちは、かつてエセルの用意したバースデイケーキの炎を吹き消した瞬間から変わっていない。命の恩人で恋人でもあったマッシモ・ドルチェフィーノと再会したエルサはローマに逃げようと彼に提案するが、マッシモは末期の肺癌に侵されており余命いくばくもないと言う。意に反して過去に撮影されたスナッフフィルムが出回っていること、フリークショーの団員が全員虐殺されたことを知り、エルサはかねてよりオファーのあったハロウィンのステージに立つことを決意する。派手に消えてやるわ。「エルサ・マーズの怪奇なハロウィーン」のステージで「Heroes」を歌う彼女を、デジレは街角の電器店のブラウン管の中に偶然見かけ、懐かしさのあまり立ち止まった。しかしそれも一瞬のことで、デジレは踵を返し愛する夫アンガスと二人の子供たちのほうに向かった。同じ頃ジミーもまた、自宅のテレビでエルサの姿を見ていたが、身重の妻を気遣い、ドットとくちづけを交わした。ドットと母体を共有しているベットは画面を一瞥し、テレビを消した。エドワード・モルドレイクが現れ、ナイフを一閃させてエルサの胸を刺した。エルサはエドワード一行とは別の場所へ誘われた。エルサがたどり着いた死後の世界は、懐かしい怪奇劇場だった。マ・ペティト、スージー、ポール、ペニー、アイマ、イヴ......フリークショーの面々が彼女に微笑みかける。空疎な追従の言葉とは無縁の仲間たち、その中に、エルサとは長年昵懇の間柄であったエセルがいた。自責の念にかられたエルサに、エセルは「ここでは生前の役を演じるだけ」と告げた。罪などない、何でも許されるのがスターなんだろ、そう言ってエセルは優しく微笑みエルサを抱きしめた。客席は満員だ。エセルの口上でエルサがステージに立つ。「大変長らくお待たせしました。エルサ・マーズの登場です」感想死んで初めて宿願が成就したエルサ。エルサには平凡な男女の結婚生活よりも、エセルのようなパートナーのほうが合ってるなあ、と思っていたのでラストのエセルの笑顔には泣けてしょうがなかったです。舞台の袖からそっと見守る感じの。もし仮にマッシモが健康体で、二人がローマで暮らすことができたとしても、エルサの我儘で関係はすぐに破綻したでしょう。ちなみにエルサの夫役のデイビット・バートカは、第11〜12話で奇術師を演じたニール・パトリック・ハリスの夫だそうです(2014年結婚)。エセルの口上にあった「死んだ星々の輝きが......」という言葉に彩られるように、エルサの人生もああいった幕引きを迎えることで、エルサ・マーズというフリークの遍歴を神話的な枠組みの中に帰結させ、永遠の時間に塗り込められたようで素晴らしい終わり方だったと思える。このドラマ(シーズン4)の時代って、よく考えたらバック・トゥ・ザ・フューチャーでマーティがタイムスリップしたのと同じ年代なんですよね......同じ時代を生きているというのに、マーティの両親から見た世界と、フリークショーの面々から見た世の中では、全く違った様相を呈する。フリークたちが町の人々と同じ店で食事しようとすれば「子供が見ているところに出てこないで」と罵られるし、薬局では販売拒否される。障害者、外国人、自分の意思で人生を決定しようとする娘、その他諸々の「普通ではない人」を排除し見えなくすることで「健全で良識ある市民」の生活が保たれるという歪な構造。これはアメリカじゃなくてもどこの国でもあったことだし、未だ続いている問題でもある。そして。今シーズンでもエヴァン・ピーターズの執事姿が見られて私は幸せでした。シーズン3の執事役が最高だったから。シャワーシーンやベッドシーンはなくていい。尻を出さずとも執事姿でドアさえ開けてもらえれば私はいいんです。余談ですが、エヴァン・ピーターズは、時計仕掛けのオレンジの頃のマルコム・マクダウェルにちょっと似ている気がします。そういう気持ちが心のどこかにあるから、シーズン1のスクールシューター役がこの人を置いて他に演じられる役者はいないってくらい、似合っていたのかも。そして、ダンディ役のフィン・ウィトロックはレオナルド・ディカプリオとマット・デイモンに似ている。次作のシーズン5では、シーズン1からのレギュラー陣・エヴァン・ピーターズ・サラ・ポールソン・デニス・オヘア(この人もすごい俳優さんですよね。毎回毎回、初見でこの人誰だったっけってくらい違う人間になる)・リリー・レーブ(シーズン5ではシリアルキラー役の予定。映画『モンスター』でシャーリーズ・セロンが演じたアイリーンです。楽しみ!!)・エマ・ロバーツシーズン2で登場した・クロエ・セヴィニー(ハイパーセクシュアリティ(ニンフォマニア)のシェリー役でした)シーズン3から登場した・アンジェラ・バセット(今期のデジレ役最高だった)・キャシー・ベイツ(好き)そしてシーズン4から続投で・ウェス・ベントレー(エドワード・モルドレイク良かった〜)・マット・ボマー(男娼アンディ役でした)・フィン・ウィトロック(ダンディ素晴らしかったです)シーズン5で新しく出演する人としては・レディ・ガガ(歌わせないそうです。ライアン・マーフィーの意向で。これまでも歌手は出演してましたけど、歌ってませんでした。シーズン5に関しては、ミュージカルにはしない考えのようです。ひたすらホラーを追求するとのこと)・ナオミ・キャンベルなど。アメリカにお住まいの方は今年10月7日から放送。日本は来年5〜6月くらい? シーズン5からジェシカ・ラングが出ないのは寂しいですが、実際にあったいくつかのホテルで起こった事件をモチーフにした、これまでよりもホラー要素の強い作品にするとのこと。ジェシカ・ラングはファンからの質問で「シーズン1〜4を演じてみて、どの役が気に入っていますか?」と聞かれて「エルサ・マーズ」と答え、会場には大きな拍手が起こっていました。(サラ・ポールソンはシーズン2の「ラナ・ウィンター」と答え、エヴァン・ピーターズはシーズン3の「ジミー・ダーリング」と答えてなぜかエヴァンだけ拍手が起こってなかった。多分「エヴァンはシーズン1のテイトだろう!」と皆期待していたのだと思われる。エヴァン自身も以前どこかの大学に呼ばれて映画研究会向けにインタビューを受けたとき、「今までで一番気に入ってる役はテイト」と答えていたのです)次作 シーズン5 Hotel
August 23, 2015
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American Horror Story (Freak Show)アメリカンホラーストーリー シーズン4第12話「喝采にかき消された悲鳴」(原題:Show Stoppers)あらすじ新興行主チェスターを迎え祝宴を設けた一座は、乾杯を済ませると、仲間だけにしてほしいとオーナーに申し出る。チェスターが席を外したあと残されたスタンレーが見たものは、アメリカ疾病博物館の学芸員の切断された頭部だった。マギーから全てを聞いたエルサと劇団員は、映画「フリークス」さながらにスタンレーを追い詰め、襲った。スタンレーは四肢を切断され、ミープの衣装を着せられて鶏小屋に放り込まれた。ダンディは双子に探偵の集めた情報を伝え、「チェスターは妻殺しの逃亡犯で変質者だ」という言説と投げキッスを残して立ち去った。翌日、双子はチェスターの奇術リハーサルのアシスタントを固辞する。代役として名乗り出たマギーの顔が、チェスターには殺害した妻ルーシーに見えた。観客の皆さん!今夜は特別に足錠を使ってご覧にいれましょう! ルーシーが彼に囁く。「戦死すべきだったわ」妻の恋人アリスが低く呻いた。「彼女と愛し合ってたのに負傷してイカれて戻るなんて」過去の亡霊を断ち切るようにチェスターは鋸を取り出しマギーの腹を切り裂いた。駆けつけたポール、デジレは切断され二つに分けられたマギーの残骸を見た。その夜チェスターはマージョリーにナイフを突き立て、警察に出頭した。「女性を殺しました」若い警官は狼狽した。そこに被害者の姿はなく、一体の人形だけが置かれていた。ジミーの枕元にエルサとマッシモ・ドルチェフィーノが現れ、ジミーの義手を作り始める。「作るのはあくまでも見た目だ。外観と機能は君自身が決めるといい」ジミーは1946年の初舞台で母エセルから言われたことを思い出していた。「堂々とステージに立ってお前の素晴らしさを見せるのよ」ジミーはロブスター・ボーイと呼ばれていた頃と同じ形の義手を選んだ。劇団員たちはスタンレーの言い放った「エセルを殺したのはエルサだ」という一言が忘れられずにいた。自分たちを脅かす存在は始末するしかない。義憤にかられたフリークたちの怒りの声は渦を巻いて瘴気のように立ち昇り、その計画は双子を通じてエルサの知るところとなる。エルサはダンディにフリークショーの権利を売却し、彼の用意したグロリアの車でその地を後にした。次回 Curtain Call感想ニューオーリンズのアックスマンの犯行は1918年のこと。マッシモ・ドルチェフィーノがシーズン3のアックスマンの息子だったら面白いなと思いました。父は斧を使った殺人鬼だったけれど、息子はノミ(?)で義肢を作っていたら良い。エルサのスナッフフィルムを撮影し、マッシモを拷問していた医師はシーズン2のアーデン? ドイツではハンスという名前だったけれど、アーデンはナチスの幹部職員で名前を変えてアメリカに渡ったんですよね。人体実験狂いのマッドサイエンティスト。次回いよいよ最終回。夏も終わりです。
August 16, 2015
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American Horror Story (Freak Show)アメリカンホラーストーリー シーズン4第11話「奇術」(原題: Magical Thinking)あらすじスタンレーは拘置所のジミーに「左手を売れ。ミープのように死んでここを出たいか」と囁き催吐剤を飲ませ、彼を病院へ運ぶ手はずを整えた。救急車の運転はスタンレーのボーイフレンドが、看護はタッパーウエアパーティで殺された主婦の友人が当たった。刑務所の外に出たジミーが麻酔から醒めるとそこには、両手首を切断された自らの姿があった。デルは息子にスタンレーを信じるなと伝えたが、その理由までは語らず、生まれて初めて息子の食事の世話をした。親子は、ハリウッドへ旅立つエルサからフリークショーを買い取ろうと話し合う。病院から刑務所への警察の移送車を男女2人が襲撃した。デルとイヴである。彼らは警官2人を殺害し、ジミーを奪取した。ベットとドットはフリークショーでの生活に満足し、長年の習慣である別々の日記を捨てた。2人の間に秘密はない。セックスを経験してみたいと言うベットの願いを聞き入れることにするドット。そこへ巡回セールスマンのチェスター・クレブ(ニール・パトリック・ハリス)がやってくる。双子は彼の奇術と繊細で紳士的な態度に魅了された。チェスターにはフリークショーの男性にはない魅力がある。チェスターもまた、双子に惹かれていた。双子は美しいばかりでなく、彼の中にある懐かしい感情を呼び起こした。双子をアシスタントに据え、チェスターは人体切断の奇術を披露する。拍手喝采の観客の中に、ダンディに雇われた探偵がいた。兵士だったチェスターはノルマンディーで負傷し、頭蓋骨に金属板を移植している。幼い頃から奇術師になるのが夢だった彼は腹話術の人形のマージョリー(ジェイミー・ブリューワー)を常に傍に置いていた。戦争が終わって帰宅したチェスターは、妻が女性と不倫しているのを目の当たりにしショックを受ける。妻ルーシーとその恋人アリスは、夫の目の前であっても露骨で放恣な関係を隠そうとはしなかった。時には2人のベッドに夫を誘うことすらあった。新生活に慣れることができず軍服を脱ぐことのないまま妻たちとの同居生活を4年間続けた彼は、ある夜2人を殺害するマージョリーの姿を目撃する。マージョリーはチェスターが無視されていることに腹を立て部屋一面を血の海にした。親友マージョリーを守るためチェスターは彼女と逃亡し、エルサのフリークショーにたどり着いたのだった。感情が昂ると激しい頭痛に襲われるチェスターをリラックスさせ、彼の望むようにマージョリーを同席させて、ベットとドットは彼と一夜を共にした。双子の願いは叶い、チェスターも幸せを感じた。その一部始終をカメラに収め、レポートしたものを探偵から受け取ったダンディの声は震えていた。「彼女たちは僕のものなんだ」チェスターはエルサからフリークショーを買い取った。喜びの報告をしようとトランクを開けたチェスターはマージョリーが消えていることに気づき動揺する。ようやく見つけたマージョリーは「双子を真っ二つにしろ」とチェスターに命じた。マギーはマ・ペティトの遺体をエルサに見せた。エルサはデジレの前で罪の告白をするデルを背後から撃った。頭部に穴の空いたデルはトレーラーの壁を朱に染めて転倒した。次回 Show Stoppers感想ニール・パトリック・ハリス(チェスター役)、手品上手だねと思っていたら、彼は俳優だけれど、マジックの賞をいくつも受賞している、ちゃんとした奇術をやる人でもあったのでした(ハリウッドのマジックキャッスル取締役会長であり、他にも、作家、プロデューサー、監督、歌手、コメディアン、テレビ番組司会者の顔を持つ)。所作の一つ一つが綺麗で引き込まれた。人体切断のボックスを左右に引いて見せ、間を通ってお辞儀し、アシスタントの手を取るまでのあの無駄のない一連の動き。観客は魔法にかかったようになりますね。いつまでも見ていたくなる。チェスターがベッドに誘われた際、妻の恋人アリスから「来てもいいけど私に触るなよ。私と絶対に目を合わせるな」とか言われてて、なんかフフッてなりました。どういう仕打ち? チェスター気の毒すぎる。戦争の後遺症はあるわ、奥さん浮気するわで。マージョリーだけが彼の心の支え。
August 9, 2015
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American Horror Story (Freak Show)アメリカンホラーストーリー シーズン4第10話「孤児ペッパー」(原題: Orphans)あらすじペッパーの最愛の夫、ソルティ(クリストファー・ニーマン)が死んだ。突然の心臓発作だった。傷心のペッパーを慰めるべく側についてやり、絵本の読み聞かせをするデジレ。「いい母親になれる」と声をかけたデルに対する妻の反応はそっけないものだった。彼に対する愛情は毫も残っていない。元々夫に対する不信感が募っていたところに加え、あの自殺騒ぎである。あの時デジレが助けなければデルは一人で人生を終わらせる気でいた。デジレにはもう夫を幸せにする自信がない。一方スタンレーは、ソルティの遺体を自分に任せるようエルサを説得。スタンレーはエルサをおだてるような口吻を弄し「金曜夜8時枠のテレビ番組の仕事」を餌に、ソルティの遺体を入手、その頭部をアメリカ疾病博物館に売り飛ばした。1936年ヒトラーのせいでベルリンに居辛くなった芸術家たちの出国ラッシュに乗ってエルサもまたアメリカに渡り、ボストンのサーカス団に所属した。当時英語が不十分だったエルサは最初のうちこそコーラスガールの立場に甘んじていたが、他人を蹴落としすぐにトップの座に上り詰める。やがて興行主の能力の低さに軽侮の念を抱き始め、自分が経営者となる道を選び、スカウトを始める。フリークが芸を見せ最後にスターが登場するという構想だ。エルサはまず児童養護施設に足を運んだ。ペッパーはたった一人の身内である姉に見放され、成人であるにも関わらず18歳未満の児童のための施設で孤独に暮らしていた。ペッパーに見つめられ、生まれて初めて無条件の愛を感じたエルサはすぐさま彼女を引き取った。ペッパーの芸は観客を笑顔にした。ペッパーの内面に母性を感じたエルサは、中東のマハラジャから奴隷のマ・ペティトを買い取る。金銭を介した取引は嫌だと言うマハラジャに、ドクターペッパー3箱を贈り納得させた。ペッパーは欣喜雀躍してマ・ペティトの世話にあたったが、母性本能を満たすだけでは不十分だということにエルサは気づく。彼女には精神的な伴侶が必要だ。エルサは国中の保護施設に打診し、半年後、シンシナティの施設からソルティを迎え入れた。2人は一目で恋に落ちた。エルサは、ペッパーとソルティの結婚式を執り行い、マ・ペティトはフラワーガールを務め、スージーはトランペットを吹いた。誰もが2人を祝福した。デジレを相手に、一息に語ったエルサは最後にこう付け加えた。「彼らは人を傷つけないし罪も犯さない。純粋な魂なの」愛する者を全員失ったペッパーのために実姉の消息を調べるべきよ、とデジレ。ペッパーは大人だ。家に帰すべき時が来たのだとエルサも頷いた。恋人が逮捕され失意のマギーのテントに、アンガスを連れたデジレがやってきた。長年独身主義を貫き通してきたアンガスは、ある晩、舞台上のデジレに恋をした。結婚を誓い合った2人を前に、マギーは「最悪の状態になる」と占う。情熱に水を差された2人は怒ってその場を後にした。夜間、照明が消され動きを止めた回転木馬に座り、一人酒をあおっていたマギーにデジレが近づいた。そこでマギーとスタンレーはペテン師だと明かされる。一部脚色はしたものの全てを吐き出し自分のテントに戻ったマギーを待っていた者がいた。ドットとベットである。ベットは、ある目的があって貯金していたが必要なくなったのでそれをジミーの弁護士費用に当ててほしいと言う。なにかと剣呑な時代、フリークに対する偏見の塊である警察へ双子が出向くわけにはいかない。ジミーの面会に訪れたのはスタンレーだった。殺人があった当日、深酒をしていたジミーには一切の記憶がない。ジミーが覚えているのは主婦の家へ行ったところまで。スタンレーは最高の弁護士を紹介できるが、それには金がかかると言う。「ジミーを含めて皆が助かる方法を知ってる」マギーはデジレを伴ってアメリカ疾病博物館へ向かった。「スタンレーを逮捕させる時私の証人がほしい」そこでデジレはマ・ペティトの遺体とソルティの頭部を発見し言葉を失う。ジミーの手の標本を見たマギーは気を失った。マサチューセッツ サドベリーペッパーの実姉の家でエルサはペッパーを引き渡した。ペッパーには言葉と責任、人を思いやる気持ちを教えた。ペッパーと2人きりになったエルサは彼女の手のひらにキスし「私はずっとあんたの家族。寂しくなったらこのキスを頬に当てるの。そしたら私が来るから」と言い帰って行った。しかしこの邂逅は姉妹の間の軋轢を決定的なものにした。ペッパーにとっては地獄の日々の始まりだった。義兄に疎まれ、実姉からは小間使いのように使われた挙句、子殺しの濡れ衣を着せられ精神病院に放り込まれたのだ。1962年 マサチューセッツ ブライアークリフシスター・メアリーユーニス(リリー・レーブ)はペッパーの瞳の奥に後悔の色を見る。神の救済は近い。シスターはペッパーに図書の整理を頼んだ。ペッパーはある雑誌を目にし、思わず手のひらを頬に当てた。瞑目し想いをこらすペッパーの頬は涙で濡れている。1958年のLIFE誌の表紙にはテレビ界を牽引する自信と誇りに満ちたエルサ・マーズの顔があった。次回 Magical Thinking感想貪婪な権力欲に突き動かされたヒトラーのせいで、結果、危機を感じた数多くの芸術家・科学者が渡米することに。シーズンも後半(アメリカンホラーストーリーは各シーズン全13回です)に入り、徐々にエルサのいい人度が増している。ペッパーとの別れのシーンなんてホロリとさせられた。そしてペッパーはシーズン2の世界へ。シーズン2は1960年代の話ですが、第二次世界大戦の余波を色濃く残した当時の状況が描かれており、興味深い内容です。医学的なエビデンスなどまるで無視した電気ショック療法や鞭での打擲が正当な治療だと信じられていた世界。そこでは同性愛者も治療の対象とされ、精神病患者に仕立て上げられる。もちろん患者の人権などという概念はない。あるのは神への祈りだけ。ドラマに登場する、ユダヤ人の頭蓋骨を使った皿や、ユダヤ人の皮膚を使ったランプシェードは実際に存在していたものとされています。シーズン2の最初のシーンに登場するカップルの男性役を演じたのはアダム・レヴィーンでしたが、彼の所属するバンド、マルーン5の中国公演が中止になったそうですね。バンドのメンバーが「ダライ・ラマ誕生日おめでとう」とツイートしたから。ビョーク、オアシス、リンキン・パークに続き、チベット関連で中国政府に拒否されたアーティストは4組目? 中国のファンはがっかりしていることでしょう。ナチスとヨーロッパの芸術家との関係もそうだし、政治がアートに干渉するとロクなことにならない感じがします。
August 2, 2015
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American Horror Story (Freak Show)アメリカンホラーストーリー シーズン4第9話「神への目覚め」(原題:Tupperware Party Massacre)あらすじ最愛の母グロリアを殺害したダンディは、その後訪れた化粧品販売の女性を燭台で殴り頭部を切断、それをグロリアの首の付け根に縫い合わせる作業を鼻歌交じりに行った。母はドット役、訪問販売の女性はベットの役だ。つなぎ合わされた遺体はピンクのリボンで吊るされ、たった一人の観客ダンディを恨みがましい目でいつまでも見つめていた。「大切な女性を傷つけてしまって」とのダンディの悩みに、占い師エスメラルダとして働くマギーは、「あなたの行いは許される。黒い雲が追ってきて雨になるが通り過ぎる。今まで通り続けられる」と告げる。ダンディは「あなたは救世主だ」と感激し、マギーの手を握った。この美しい占い師のおかげで自分は神であることを改めて感得できたのだから。一方、母を亡くしたばかりのジミーはその欠落を埋め合わせるかのように酒に溺れ、巨体のアイマを名乗るバーバラと人目もはばからず淫らな関係を続けた。マギーのテントを出るダンディ。それを見たジミーは「双子をどこへやった! 殺人鬼め」と詰め寄りパンチを浴びせようとしたが、ダンディがいきなり体を横に反転させて避けたので、酔っていたジミーはバランスを崩して倒れた。地面に横たわるジミーにダンディは「君に双子を奪われたせいで、僕は幸せをつかむ最後のチャンスを失った。僕は神だ。君を苦しめて復讐することに決めたよ」と告げその場から立ち去る。定例の主婦たちによるタッパーウエアパーティに呼ばれたジミーだったが、この日もまっすぐ立つことさえできないほど泥酔していた。ジミーが亡き母だと思って抱きついていたのは客として招かれていた見たこともない主婦だった。とうとうジミーはパーティの主催者から「出て行って」と言い渡される。この仕事でジミーは初めて蹉跌をきたした。ひどいざまだった。ジミーが追い出された直後、パーティが行われている家の玄関がノックされる。恐る恐る扉を開けるとそこにはきちんとした身なりの美青年が、車が壊れて困っている、電話を貸してほしい、料金は払います、と困った様子で佇んでいた。「料金なんて」女主人は喜んで青年を家に迎え入れた。青年はダンディだった。帰宅した夫が見たものは、助けを求めるように窓ガラスにべったりと張り付いた無数の赤い手形と、血の色に染まったプール、そこに浮かぶ妻たちの死体だった。その頃ダンディはタッパーに入れて持ち帰った主婦たちの血液を一つずつ眺め、それを自宅の浴槽に入れていた。「僕こそが神だ。人間の世界で暮らすことを定められた神なんだ」その恐るべき姿を目撃したレジーナは刑事を一人伴ってモット家に戻った。刑事コルクイット(P・J・マーシャル)はダンディの提示した100万ドルという額に目がくらみ、ダンディに向けていた銃口をレジーナに向け、発砲した。レジーナは頭部を撃ち抜かれ仰け反るように倒れた。ドットとベットはエセルの計らいにより、危険を避けるため安全な場所に避難していた。エセルの遺書を読んだスタンレーとエルサは双子を確保、「分離手術が受けられる」と嘘をつき、姉妹を小屋に移動させた。二人きりになった姉妹は話し合う。無事に分離などできるわけがない。助かるのは一人だろう。それでも、ドットは自由がほしい。そんな彼女にベットは言う。愛とは自らを捧げるもの。あなたが誰かと結ばれることで私たち姉妹は報われる。もし手術でどちらかが死なねばならなくなったときは、私が犠牲になる。「私の命を捧げるからあなたは生きて」というベットの言葉に、ドットの目からも涙があふれ出ていた。愛してるわベット。私もよ、ドット。デジレを一人の黒人男性が訪ねてきた。男性の名はアンガス・T・ジェファーソン。「世界一の美女に会いたくて、我慢できなくて来てしまった」と語る彼は、デジレのボーイフレンドだという。それを聞いたデジレもまんざらではない様子。自身が同性愛者であることを隠そうとするあまり、仲間を殺してしまった罪の意識に耐えきれなくなったデルは遺書を書いた。「ジミーへ」と書きかけては破り、「息子へ」と書き直した。......「後悔」......「俺は生きていけない」......。デルに殺されたマ・ペティトの亡霊が彼に命令した。「サインして!」遺書をしたためたノートの、一番下の余白に署名する。エセルの亡霊の横を通って椅子を引きずり、ロープの下に移動した。「俺は臆病者だ。恥を重ねたくない」「フリークだからね」エセルが言う。「私たちは隠すことなく外面に恥をさらしている。でもあんたは内側に恥ずかしい部分をずっと閉じ込めた。それは生き物のようにあんたをむさぼり、くさらせてしまったんだ」吸い込まれるようにデルはロープの輪に首を通した。椅子を蹴って転がす。心臓の音が耳元で大きく脈打つのが聞こえる。苦しさのあまり手は宙をかいた。視界が白くかすみ、薄れゆく意識のなかで、デル、と呼ぶ声を聞いた気がした。何かを切り裂く金属音。床に頭を強く打ち、デルが目にしたものは涙を浮かべて駆け寄る妻デジレの姿だった。「すまない、許してくれ」デルも泣いていた。酒浸りのジミーのトレーラーに双子が現れた。ドットはベットとの分離手術を取りやめることにしたと言う。ドットにとってベットは自分の最も純粋な部分。今後も家族として一緒にいる。「家族だって去る。何も残らない」とつぶやくジミーの手にドットは自分の手を重ねた。「ジミー・ダーリング、一目見たときから愛してた。あなたは優しくて、私を見てもたじろがなかった。その時思った。あなたと一緒なら何もこわくない」ドットはジミーの前で裸になり、彼にキスをした。ジミーは戸惑ったような表情でしばらく黙っていたが、「二人とも大事な人だ。でもごめん」と言い双子に服を着せた。「好きな子がいる」トレーラーを去るとき、ベットはドットの手を握った。怪奇劇場へ警察の車が入ってきた。「ジミー・ダーリング。ミルズ、オースティン、ミラー、シーモアの殺害容疑だ。殺害現場にお前の手袋があったぞ。主婦の家へ行ったのはタッパーを買うためか?」次回予告 第10話 Orphans感想双子に見立ててフランシス・コンロイ(今期グロリア役)と縫い合わされていた女性、アレクサンドラ・ブリッケンリッジかな? と一瞬思ったのですが違いました。アレクサンドラ・ブリッケンリッジはシーズン1で若いほうのメイド役をしていた人です。(フランシス・コンロイ演じる老メイドが、家の主人にだけは若くセクシーなアレクサンドラに見える、という内容)このアメリカンホラーストーリーでは毎シーズン、エヴァン・ピーターズ(今期ジミー役)が尻を出している気がするが、シーズン4では今回、第9話がそれに該当する回となりました。巨体のアイマとの情事をデジレとマギーに目撃され、「大変だけど柔らかい」とアイマの片乳を揉みながら逆ギレしていた。最低。尻といえば、フィン・ウィトロック(今期ダンディ役)も出していた。幼なじみのレジーナを血の風呂に誘い、断られると「君は退屈な人間だな!」と怒り出すシーン。「......そして僕はいま、こうなった」と言いながら全裸になり、嫌がるレジーナに近づいていっていた。ダンディの乗ってる車がかっこよくて、見た瞬間ちょっと息が止まりそうになりました。この車はダンディが頭をハンドルに打ちつけるシーン等で前も出ていたはずですがちゃんと見ていなかった。本当に素敵。50年代のアメリカ車はどれもこれも素晴らしい。昔、「発明将軍ダウンタウン」(→各放送回の内容を記録している方のサイト。すごく参考になる)で、渋滞対策グッドアイデアとして「ごっつい手」が出ていたのですが、このごっつい手さえあれば私が運転する50年代のポンコツ車であってもスムーズに合流できるだろうし、何も問題はない気がする。(「ごっつい手」は、道を譲らないドライバーなんて人を見て態度を変えるような奴だろうから、相手がごっつい男ならば平身低頭で道を譲るであろう。という発明者の世の中に対するシニカルな視点が具現化された究極の発明品だと私は思う)もしダンディの車を運転できるとしたら松風を買いに行きたい。松風をかぶって松風を履き、松風でヤキトリをはさみたい。それができたら、多い日も安心ワンタッチ脱糞スーツ「ダッフンダ1号2号」を着た人を助手席に乗せてやってもいい。
July 26, 2015
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American Horror Story (Freak Show)アメリカンホラーストーリー シーズン4第8話「血の連鎖」(原題:Blood Bath)あらすじフリークショーの面々は夜を徹してマ・ペティトの捜索を行ったが、見つかったのは血まみれの小さなドレスだけだった。「野生動物に食われたんだろう」と言うデルの言葉にショックを受け泣き崩れるエルサ。エルサの涙を単なる演技と切り捨てたのは、彼女の側近として長年仕えてきたエセルだった。エセルはその夜、エルサのテントで初めて彼女に批判の矢を向けた。並外れて虚栄心の強いエルサの近くにいると、不安を感じ、落ち着かない気持ちになる。親友のつもりで14年間彼女に食事を運び、髪を洗ってやってきたが、そうして彼女のテントを出ると、いつも何かを失った気になるのだ。エセルの疑惑はある晩決定的なものとなった。双子を安楽死させようと提案したスタンレーにエルサは同意したのだ。エセルの放った銃弾はエルサの木製の義足を貫通した。エルサは1932年にスナッフフィルムを撮影された後、若い兵士に発見され、マッシモ・ドルチェフィーノ(ダニー・ヒューストン)の元に運ばれた。第一次世界大戦で多くの兵士に補装具を提供していた彼はエルサの新たな脚も難なく作れたという。エセルにとってこの世に純粋なものは二つだけだ。マ・ペティトと、エルサに対する愛情。その両方が消えたいま、エルサを撃って自殺する以外道はない。覚悟を決めたエセルの一瞬の隙を突いてエルサはナイフを投げた。ナイフはエセルの左目に深々と突き刺さった。スタンレーとエルサは自殺に見せかけてエセルの遺体を始末した。エセルの葬儀が終わり男たちが飲みに繰り出したあと、ペニー、スージー、デジレ、イヴはその場にとどまった。男に頼らず女手一つで息子を育て上げたエセル。彼女は誰の助けも得られず死んだ。過酷な人生。フリークで、しかも女である私たちには選択肢がない。現に、自分の生き方と愛する人を自ら決めたペニーは父親によってフリークの姿に変貌させられたではないか。法で裁くことも不可能だろう、なぜなら彼女は父親の所有物だから。デジレは言う。「もう不当な扱いはごめんだわ。私たちを苦しめる男に思い知らせよう。賛同する人は?」その場の全員が手を挙げた。翌日の夜。大テントで一人酒を飲んでいたジミーの酒瓶をエルサは取り上げた。「お母さんが見たら何と言うと思う?」エルサは、マイアミの肥満者用病院からスカウトしてきた巨体の女、バーバラを紹介した。ステージ用の芸名はアイマ・ウイグルス。出て行こうとするジミーを引き止めてエルサは囁いた。「見て。彼女の胸、なんて大きいの。母親に抱かれて得た安らぎをあの胸で感じられる」エルサはエセルの代わりにバーバラをジミーに当てがったのだ。「あなたは異常だ」エルサにそう告げるとジミーはテントを後にした。夜。ペニーの実家の窓の隙間から、スージーが屋内に忍び込み、玄関の鍵を開けた。物音に気付いたペニーの父が見たものは、彼が勘当したはずの娘の姿だった。「家の鍵は取り替えたはずなのにどうやって入った......」突然現れたイヴの姿に言葉を失ったところを、デジレが鈍器を彼の後頭部に向かって力任せに振り下ろした。倒れたペニーの父はイヴが担ぎ上げ、フリークショーのトレーラーに運んだ。女たちの復讐の時が来た。ペニーの父が目をさますと、自分は裸で椅子に縛り付けられ、傍には下半身のないスージー、乳房が三つある黒人のデジレ、それに顔面に醜い刺青を入れた我が娘ペニーがいた。少し離れた調理台では大女のイヴが何やら煮えたぎった鍋をかき混ぜている。「何が狙いだ?」「たくさんあるね」デジレが答えた。「でも今日は仕返しするだけ」ペニーとスージーは枕を用意し、イヴは熱したタールの鍋を持ってきた。「神様!」「神様なんていないよ。あんたが証明したんだろ。あんたが娘にしたのは卑劣な行為だよ。その卑劣さに見合った外見にした後で、ナイフでペニスを切り落として頭を撃つ。その後川に捨ててやるよ」ワニが食べてくれるかしら、とデジレは笑った。イヴがタールの入った鍋を持ち上げる。「お願いだ、やめてくれ」そこへペニーが駆けつけた。「待って!......私にやらせて」ペニーとイヴは高温のタールを彼の体の上からゆっくりとまわしかけた。男の叫びが響き渡った。全身をタールでコーティングした上から、枕の中身の羽を隙間なくまぶす。男の悲鳴を聞いてマギーが駆けつけた。トレーラーの中は女たちの歓声でお祭り騒ぎだった。「なんてことを。お父さんでしょ」マギーの突然の容喙に、デジレは冷ややかだった。「出て行きな。ここはフリークの女だけよ」「捕まって投獄されたらポールはどうするの?」マギーはなおもペニーに語りかける。「自分をおとしめたら父親の勝ちよ」「白人のきれいな女が偉そうに」とデジレ。「世間が許さないせいで、欲しいものをただ窓の外から眺めるしかないの。あんたにわかる?」デジレからナイフを渡されたペニーは少しの間逡巡したのち、話し出した。「私は、驚異のトカゲ女。私の意思で生かしておいてやる。でも、また私や仲間に近づいたりしたら、殺すからね」「イヴ、出口まで運んで、這って帰らせて」デジレが指示した。イヴが彼の顔を押さえていたゴム手袋をはめた手を離すと、タールにくっついた皮膚が剥がれてペニーの父は絶叫した。翌朝。「あなたはここのリーダーでしょ」と励ますマギーに、まだ心の傷の癒えていないジミーはイラついた。「学校の先生かよ」「私はリーダーに恋したのよ! ヒーローはどこなの?」「驚きだな! 俺は悲しみを簡単には忘れられない。パットン将軍とは違うんだ。もしそれが望みなら消えてくれ」傷心のジミーの前にはバーバラがいた。ジミーは彼女の胸で声をあげて泣いた。バーバラは何も言わずに彼を抱きしめた。モット家に新しい客がやってきた。ドーラの娘、レジーナである。彼女は母親と会うまで帰らないつもりだ。「母が戻らなければ警察へ行きます」ダンディは「IQの検査がある」と連れてこられた一室でロールシャッハテストを受ける。「両手を引きちぎられた男、内臓が見えている」「男が女を刺し殺し壁中血だらけになったところ」「......飽きた」ダンディが席を立ったためテストはそこで中断となった。「一回では検査できないから今後は週に二回来なさい」その言葉に、頭を昂然とあげて医師の方を睥睨したダンディは、最近読んだナショナルジオグラフィックの記事について話し出した。「パプアニューギニアの先住民は近隣の部族を征服したら、負けた部族の最強の戦士を食べる。その次に呪術医と首長を食べる。ある人物の肉を食べると能力も奪えると思いますか? またはその人物の血に体を浸せばいい?」帰宅したダンディは母をなじった。だましたね、母さん。知能検査だと思って行ったのに、医者が聞きたがるのは僕の話だった。もう行かない。もし行けというなら、母さんがレジーナを殺してよ。母さんの作り話が下手だったせいでレジーナは気づいてるよ。「入院させたほうがいい。あなたの身の安全を心配してるんだ」病院からの電話に、グロリアは「ありがとうドクター、もう診察の必要はないわ」と受話器を置いた。後ろにダンディが立っていた。「僕は欠陥人間で、情緒不安定で、もろい?......お母様が情緒不安定にした。5歳のときドーラが言ったよ。おじいさまが事故死したあと豪邸に住むために何でもしたと。はとことの結婚もね。罪の結果僕が生まれた。お父様は少女に何をしていた? 近親者と子供をつくるリスクは? ルーズベルトと同じだ。お母様とは一緒にいられないよ。僕を嫌ってる女性とは一緒にいられない」「もう愛情が残ってないの」グロリアの言葉に、ダンディは拳銃を自分のこめかみに当てた。「この苦悩を終わらせる」「そんなことしないで。私が生きていけなくなる」「分かった」ダンディは母親に向けて銃を撃った。ダンディは母の血で満たしたバスタブに体を横たえた。次回予告 第9話 Tupperware Party Massacre感想かわいそうなダンディ。彼の異常性は「血」だよ、ということになっているけれど、というかグロリアがそう言ってたんだけど、果たしてそれだけが理由なのか。環境も大きかったんじゃないかな。特にグロリアの過保護な育児。ダンディは自分自身の力でやり遂げたことがほとんどないまま育っていて、唯一達成感が得られたのが、幼いころからの猫殺しであり、メイドのドーラ殺害、男娼のアンディ殺害だったのだと思う。ダンディがいろいろな経験を通して学ぶ機会をグロリアが奪ってきた結果とも言える。全然関係ないけど、ダンディ、幼少時から髪型一緒だね。真ん中分けで、右と左に前髪が一本ずつクルンッとなってるヘアスタイル。グロリアのカウンセリングをしたり、ダンディをテストしたりしていたのは、もしかしてシーズン2の精神科医? まったく顔を見せないところが怪しい。ペッパーもそこにつながっていくのかな。そう考えるとわくわくする。シーズン3(魔女団)でニューオーリンズのアックスマンを演じていたダニー・ヒューストン、今回出てましたね。エルサの義足をつくる医師役で。あと、前回私が間違って書いたのですが、ペニーのタトゥーはヘビじゃなくてトカゲでした。子供のころからホラー少女漫画を好んで読んでいた影響で、見た瞬間「あ、ヘビ女だ」となってしまったのもあるし、ペニーのお父さんが家から娘を追い出すに当たって、娘はこの家を裏切ったのだからそれにふさわしい姿(楽園追放のヘビ・・・このヘビが這ったあとは、にがよもぎが生えたという)にしたのかな、と考えたためです。でも違っていました。トカゲでした。エセルがいなくなってさみしい。
July 19, 2015
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American Horror Story (Freak Show)アメリカンホラーストーリー シーズン4第7話「腕比べ」(原題:Test of Strength)あらすじジミーはダンディの家から双子を連れ戻した。いつもの君のままで来てくれよ君のままでいてほしい一人の友達のままで昔からの敵のままでゆっくりでいいさ 急いでくれ自分で決めろ 遅れるなよ休んでいけよ 友達のままで古き思い出のままで思い出のままで誓ってもいい 銃なんて持ってないさ銃なんて持ってない双子を売り飛ばしたことでジミーはエルサに詰め寄るが、彼女を擁護したのは他ならぬドットだった。ドットの思惑はただ一つ、ベットとの分離手術を受けることだ。ブロディ兄弟の手術を成功させた、シカゴのオスカー・シュガー医師に依頼できれば、あなたのやったことは秘密にする、とドットはエルサに伝えた。エルサはこのことをスタンレーに相談。「双子を安楽死させてやればいい」とスタンレー。二人の会話を物陰からエセルが聞いていた。エセルとデジレは、マイロン・ボナム医師が自ら命を絶ったことを知り呆然とする。医師の娘によれば、フリークショーの一人が外科医の命とも言える指をハンマーで叩き潰したのだという。スタンレーはデルの弱みを握った。ゲイバー『ハイ・ヌーン』で愛人アンディを探しバーテンダーを殴り飛ばす姿を見ていたのだ。同性愛者であることを隠し通したいデルは、スタンレーとの取引に応じ、仲間を殺害する計画を立てた。皆が寝静まったころ、アマゾン・イヴの枕元に忍び寄り、寝首を掻こうとするもイヴの反撃に遭い、デルは半殺しの状態で彼女のトレイラーから投げ出された。次にデルが狙ったのは息子のジミーである。しかし寸前で思い止まった。デルは有名な ‘ロブスターのトレド一族’ だが、彼だけは例外で障害を持たずに生まれてきたのだった。その血を受け継いだジミーに乞われ、父親であることを公に認めた。ジミーを狙って握りしめたレンガは放り出され、デルの腕は泣き出す息子を抱きしめた。マイロン医師を自殺に追い込んだことに続き、アマゾン・イヴを卑怯な手段で襲ったことで、フリークショーの女性たちは「デルは我々の手で始末するしかない」という結論に達した。ペニーの看病が功を奏し、ポールは回復。荷物を取りに一時的に帰宅したペニーは父親に対し決別宣言をする。父は自分なりの方法でそれを受け入れると言う。この家に恥辱を与える娘なら、身内とわからないようにするまでだ。父の呼んだタトゥーアーティストによってペニーは顔面に蛇の模様を入れられ、舌先を裂かれていた。「俺のせいだ」ポールは、虚ろな表情で帰ってきた恋人を抱擁した。デルはマ・ペティトの首を絞め殺害。マ・ペティトの遺体は新たな展示物『マハーデーヴィ・パテール』として疾病博物館に陳列された。次回予告 第8話 Blood Bath感想「何が人を破滅させると思う? ‘希望’ だ」とジミーに教えるエセル。彼女がその境地に至るまでにどれほどの苦難があったことか。ジミーとデルの関係は『エデンの東』のジェームズ・ディーンとレイモンド・マッセイのようでした。ジミーのモデルがジェームズ・ディーンなら、エルサのモデルはサルバドール・ダリなんじゃないかと思う。前回のエピソードのエルサと、ダリの境遇には似ているところがある。ダリには同じ名前の兄がいたが、2歳でその人生を閉じていること。そのことでダリは両親の目の奥に、自分ではなく死んだ息子への愛情を感じていたそうです。エルサもダリも天才を自称し、自己顕示的で奇妙な言動が多い。『ゴーン・ガール』の犯人と一緒で自己愛が強すぎて自分の人生をも狂わせてしまう。以前アメトーークの『すぐ腹立つ芸人 vs 腹立たない芸人』で狩野英孝が「(基本腹立たない狩野も)これをされたら怒る、ということはある?」と訊かれて「寝てる間にタトゥー彫られてたら怒ります......一生モノだし」と答えていて、ホトちゃんか誰かから「(狩野はエビのアレルギーあるから)エビのタトゥーだったら最悪やね!」と返されていた記憶があるのですが、エビのタトゥーもイヤだけど、ヘビのタトゥーもイヤだな...と今回心底思いました。
July 12, 2015
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American Horror Story (Freak Show)アメリカンホラーストーリー シーズン4第6話「ナイフ投げ」(原題:Bullseye)あらすじもう誰も使わなくなって久しい巨大な回転盤が大テントに運び込まれた。エルサはテレビ番組でナイフ投げを披露すると言う。グロリア・モットに売った双子は勝手に逃げ出したことにすればいい。エルサの手を離れたナイフはスピンしながら回転する的に命中した。夕方、エルサの誕生会が開かれた。団員たちが次々にプレゼントを運んでくる。中でも身長2メートルの美女、アマゾン・イヴが用意した箱には湯たんぽに扮したマ・ペティトが入っており、エルサを大いに喜ばせた。気づくと笑っているのはエルサ一人で、他の者はどこか浮かない顔をしている。皆、理由も言わずに突然姿を消した双子が恋しいのだ。エルサは「暗い顔をするな」と彼らを譴責した。ポールはエルサのベッドを後にすると、本当の恋人の家へ向かった。ポールにとってペニー(グレイス・ガマー)は故郷の庭に咲くバラのように柔らかで美しい。彼女といるとまだ純真だった頃の自分に戻れる気がした。ペニーは一日中父親の監視下に置かれている。自分の意見を聞こうとしない父の高圧的な態度に、ペニーは限界を感じ始めていた。ある夜、ペニーは家を抜け出そうとしていたところを父親に見咎められる。ライフルを突きつけられ、ペニーは「撃ちたいなら撃てばいい。私は意味のある人生を送りたい」と言い残し家を出た。娘が玄関を出るまで、父は銃を構え続けていた。ダンディは新しいメイドに給仕され不満顔だ。ドーラのほうがよかったと言い出した息子にグロリアはあるプレゼントを渡す。ディナーの席でクロッシュの下に半ダースのコンドームを用意させたのだ。「近親婚で苦しんできたのにあの双子の問題まで加わったら......」ダンディの双子に対する気持ちは純粋な愛であって、母の言うようなふしだらなものではない。劇場を貸し切りにした夜、初めて愛を感じた。「フリークだから眉をひそめるの? 僕だって同類だ。彼女たちと結婚する。死ぬまで一緒に暮らすんだ」ベットにとってダンディの愛はそう悪いものではなかった。ダンディは紳士的だし、彼といるとドキドキする。生まれて初めての感情にベットは舞い上がった。運命の人かもしれない。ドットはダンディの態度に懐疑的だ。これから何をさせられるかわかったものではない。しかし将来ベットとの分離手術を受けることを考えれば、費用は莫大なものになるだろうし、その目的のためならダンディと一緒にいるのも我慢できそうだった。手術を終えたらジミーと二人きりになろう。たとえベットが死んだとしても......“レモンがあるならレモネードを作れ”。ポールは薬局で恋人の香水を買い求めようと薬剤師に声をかけたが、外国人であることを理由に販売を拒否される。ポールは薬局でダンディを見た話をジミーに語った。あの金持ちの坊やは女物のブラシや化粧品を二人分買っていた。双子の人気を妬んでいたエルサにしてみれば彼女たちが去ってまたチャンスがきたわけだ。ジミーはポールの横っ面を張り飛ばした。「エルサは俺たち全員を助けてくれたんだぞ」「ジミー、お前は社会に溶け込めるから残酷な現実に気づかないんだな」同じフリークでもポールとジミーでは見える世界が違っていた。いつまでも心を開かないドットにしびれを切らし、ダンディは「秘密の打ち明け合いをしよう」と持ちかけた。しかしドットは話す気はないと言う。双子であっても日記だけはお互いのものを見ない約束だし、ダンディの打ち明け話は嘘だったからだ。ピエロを殺して人質を助けたのはジミーだ。「嘘じゃないぞ!」ダンディは激昂して出て行った。双子がいなくなり当てが外れたスタンレーは、マギーに「ロブスターボーイを捕まえろ」と指示。ジミーに好意を抱き始めていたマギーは彼の身代わりにマ・ペティトを小屋に誘い込んだ。泣き叫び抵抗することを予想していたマギーだったが、人を疑うことを知らないマ・ペティトに良心が痛んだ。マギーはマ・ペティト殺害を取りやめ、翌朝ジミーに「一緒に逃げよう」と打ち明けた。ジミーは嬉しさのあまり彼女にキスをし、マギーもそれを返した。「荷造りしてな」ジミーには一つ終えなければならない仕事がある。ポールが女物の香水の匂いをさせていることに気づいたエルサは、彼を問い詰めた。ポールは恋人の名は明かさぬものの、エルサが双子に残酷なことをしたのではという疑惑を口にする。これに激怒したエルサは団員たちを叩き起こし回転盤の前に集合させた。ペッパーとソルティ、あんたたちは実姉からも疎まれ、私が助け出してやらなけりゃまだあの劣悪な環境の施設にいたのよ! みんな恩知らずばかり! 「何をしたら信用してもらえる?」困り切ったエセルにエルサは、この中の誰かがナイフ投げの的になれと命じた。「自分が」と申し出たジミーを制して「俺のせいだ」とポールが前に出た。エルサの三投目はポールの脇腹に突き刺さった。エルサはポールを自身のトレーラーに運ばせたが、救急車は朝になっても来なかった。すべてエルサの嘘だったからだ。‘ミス’ でポールの体にナイフが当たってしまったところからすべて。さらにエルサはポールの耳に囁く。「ナイフ投げは番組のプログラムから外すわ。だって生々しくて視聴者に受けないでしょう?」ペニーは夜中のタクシーを飛ばして再び怪奇劇場の門をくぐった。彼女が駆けつけた頃には、ポールはすでに虫の息だった。ダンディはドットの日記を盗み読み泣いていた。「豪邸だけど幼稚な男が気持ち悪い。キスするより死んだほうがマシ」もう終わりだ。その時モット家の呼び鈴が鳴った。双子を探しに来たジミーだった。エセルはエルサのためにバースデイケーキを用意した。大テントにエセルとエルサ、それと一切れのケーキがあるだけ。エルサはフリークショーに身寄りのない者を集めたが、彼らはいまポールの元に集まっている。エルサには彼らの気持ちが理解できない。悲劇の時こそみんなで乗り越えねばならないのに。エルサは家族が欲しかった。2歳年上で両親の愛を独り占めして死んだ姉。姉に会いたい。エルサにとってエセルは姉のような存在だ。エセルは言う。「もしあんたの話が嘘で双子を苦しめてたなら、私の手であんたを殺す」願い事をしてロウソクの火を吹き消して。エルサは願った。ただ愛されたいだけ。次回予告 第7話 Test of Strength感想1話目でキャンディストライパーだったペニーが再び登場。キャンディストライパーとは昔の病院ボランティアのことで、彼女たちの制服が赤と白のストライプ柄だったことからそう呼ばれていたそうです。ペニーはボロボロの状態でフリークショーを逃げ出したけれど、そこで本物の愛を見つけてしまったために親を振り切って恋人の元へ戻ります。この先ペニーは、誰よりも愛に飢えたエルサを裏切った代償を払わされるのか、それともモラハラ気質の父親の家へ帰るのか。どちらに転んでもペニーにとっては地獄だ。毎度のことだけど、エルサの、自分以外の人はみんな下に見るって姿勢が徹底してて笑えた。ポールにも「あんた何様だ!」と言われる始末。エルサは、サイコパスというかソシオパスだから自分の何が悪いのかわかっていない。親から愛情をもらわずに育ったから、愛情が何なのかわからないし、もらってない愛情は与えられない。サイコパスの定義を「極端な冷酷さ、無慈悲、エゴイズム、感情の欠如、結果至上主義」(心理専門家ケヴィン・ダットン)とするなら、エルサ以外にも、ダンディやデル、ペニーの父なども当てはまりそうだけれど、では、逆に考えて、彼らから見たら「普通の人」はどう見えているのか? おそらく、「感情的で非論理的(どうせ死ぬポールの近くに寄り添って何が解決するのだ?)、無根拠、周囲に流されがち、弱い人々」というふうに見えてるんじゃないでしょうか。泣いている人を見たら普通の人なら「何かあったのかな、可哀想に」と想像するけれど、サイコパスは自分が結果至上主義者だから他人も「泣いて何かを手に入れようとしている」ように見える。その先に何か目的があるはずだと。他者に冷淡で共感しない。ダンディ、失恋して泣いてたね。よせばいいのにドットの鍵付きの日記壊して読んじゃって。......もうダンディの心は砂漠です。ダンディはピエロと出会う前は常に退屈を訴えていました。「退屈しやすい」「恐怖を感じない(恐怖を訴えている人の感情が理解できない)」というのもサイコパスの特徴だけれど、『レッド・ドラゴン』(トマス・ハリス著・小倉多加志訳)の中でブルーム博士は「恐怖は想像力から生じるものでね......一種のペナルティ、想像力の代償というわけだ」と述べています。また『レベッカ』(デュ・モーリア著・大久保康雄訳)で ‘わたし’ は「退屈は恐怖にたいする快い解毒剤なのだ」と独白します。退屈と恐怖の間には想像力が大きく関わっており、そのバランスが崩れたとき、人の心は砂漠になるのかも。そして、あのペッパーはシーズン2のペッパーと同一人物とみてよさそう。エルサが「あの汚れたマットとネズミだらけの施設から救い出してやった」と語っていたから。ペッパーを演じるナオミ・グロスマンナオミ・・・ダイナマイツ!!
July 5, 2015
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American Horror Story (Freak Show)アメリカンホラーストーリー シーズン4第5話「甘い罠」(原題:Pink Cupcakes)あらすじアメリカ疾病博物館では、ジェームズ・マルトーネ氏を筆頭とする大口の寄付者を対象に新作発表会が催されていた。臨席していたスタンレーとマギーの前で、ひとつの水槽を覆っていた布が取り払われた。現代の突然変異、四肢障害、平たく言えばアザラシ男......学芸員はよどみなくポールの特徴を説明する。カクテルを片手に、正装した紳士淑女たちは拍手と感嘆の声をあげた。ホルマリンに沈むポールの胸には、腹部にかけてY字型に切開された痕跡があった。博物館に「納品」したスタンレーは誇らしげな表情だ。滞在先のホテルにて、スタンレーはマギーに自らの計画を話してきかせた。エルサの珍品だらけの戸棚はこれから大きな災難に遭う。午前7:15グロリアはメイドのドーラの他殺体を発見し真っ先に息子を疑った。またママに尻拭いさせるの!ドーラの遺体はモット家の裏庭3メートルの深さに埋められた。ダンディは父親と同じ病気だ。財産を守るためにいとこ同士で結婚し、近親婚を繰り返してきた結果、富豪は精神疾患になりやすい。切り裂きジャックも王族だった。「役者になれていたら、こうはならなかったのに。自分を表現したいんだ」母に詰め寄るダンディ。「今は1952年よ。ママが何か考えてあげるわ」エルサのテントでスタンレーは自分はテレビ局関係者だと告げた。いまや国民の4割以上がテレビを持つ時代。テレビの未来は明るい。「銀幕の美と魅力を白黒画面の箱の中に詰め込めると思う?」テレビに出るなら死んだほうがマシだと言うエルサに、テントで田舎の客を前に演技する方が「エルサ・マーズ・アワー」よりいいのか?とスタンレー。その夜のショーで「Life on Mars?」を歌うエルサは客のアクビや話し声が気になり集中できなくなる。気づいたときには客から罵声とポップコーンが投げつけられ、慌てたジミーが事態収拾のため彼女をかばって舞台袖にはけた。エルサはテレビの話を考え直すことにした。マ・ペティト(ジョティ・アムギー)にマニキュアを塗らせ、念入りに化粧したエルサが見たものは、自分の代わりにドット・ベット姉妹を連れ発車するスタンレーだった。疾病博物館の学芸員の前で水槽を披露するスタンレー。中にはドット・ベット姉妹が浮かんでいる。姉妹を連れ出した先で、毒入りのピンクカップケーキを姉妹に勧めるスタンレー。しかしスタンレーの目論見は外れた。「テレビに出るなら太れない」ドットがカップケーキを拒否したのだ。その夜。ドットとベットのテントにエルサが現れる。「私も彼にテレビの仕事を誘われてるの。明朝、町一番に洋裁店に行きましょう」エルサが鏡の中で微笑んだ。リハーサル中のジミーにマギーが近づき、彼の手をとって占う。「男の影が近づいてきて何か約束するけど、彼は嘘つきだから関わらないで。すぐにニューヨークへ行くべきだわ。あなたは賢くてハンサムだからなんでもできる。すぐ発って」それを聞いてキスをしようと身をかがめるジミー。マギーは顔を背けた。出番になっても姿を現さないデルを迎えに、彼のトレーラーへ向かったジミーはデジレと二人きりになる。デジレはすでに酔っており、ジミーは傷ついていた。デジレにキスし、彼女の下腹部に手を伸ばしたジミーは自分の手が赤く染まっているのに気がついた。デジレはエセルに連れられて、マイロン・ボナム医師の診療所へ。そこでデジレは自分が100パーセントの女性であることを知った。男性ホルモンと女性ホルモンの分泌が多く、体が混乱し副乳が膨らんだ。長年デジレがペニスだと思っていたのは、陰核肥大と呼ばれるものだった。しかしそれも手術で小さくできる。今回の出血は流産が原因だった。妊娠12週だったという。役者志望だったダンディのライフワークは連続殺人に変わった。殺人という甘い蜜の味を教えてくれたのはあのピエロだ。手始めにダンディはゲイバーへ向かい、そこで知り合ったアンディ(マット・ボマー)をピエロのバスに誘い出し、彼の体にナイフを突き立てた。アンディはデルの愛人だった。絵の得意なアンディは、ロスで旅行者の似顔絵を描いて暮らしていこうとしていたが、その話はデルの強烈な嫉妬心を刺激した。「他の男の話はするな! 君は俺と一緒にここを出るんだ」男娼の仕事を辞めさせたいデル。アンディはここでの仕事が気に入っていたし、デルが度々口にする「女房とは別れる」という話にももううんざりだった。それに、デルとは知り合ってたったの1ヶ月しか経ってない。「ここが僕のオフィスで、これが僕の仕事だ」それが、アンディがデルと最後に交わしたセリフだった。帰宅したデルに、デジレは子供ができていたことを告げた。ロブスター・ボーイの父親が誰であるか知ったことも。デジレの母は彼女を「汚らわしい」と蔑んで育てた。デジレ自身も自分はフリークなのだと思って生きてきた。しかし、本当に汚らわしいのは、あんたよ、デル。体にフリークの血が流れてるんだからね......この見せかけの結婚生活も仕方ないと思って受け入れてきたのは、自分がフリークだと思い込まされてきたせいだ。これから普通の人生を探すつもり。あんたとはお別れよ、デル。ドーラの娘レジーナ・ロス(ガボレイ・シディベ)からグロリアに電話がかかってきた。レジーナはニューヨークにある秘書の学校で学んでいる。母親からの連絡が途絶えたことを心配してのものだったが、突如グロリアがダンディの幼少期の思い出を語り始めたため、「とにかく、母に電話するよう伝えてください」と言い残しレジーナは受話器を置いた。グロリアの背後には返り血を全身に浴びた息子が立っていた。デルはマイロン・ボナム医師の診療所に来ていた。デルは老医師の指を関節の向きとは反対に折り曲げ、デジレに手術をするな、と脅した。このことをデジレや警察にもらしたら、あんたの孫の指もこうしてやる。エルサは双子を連れてモット家の呼び鈴を押した。「欲しがってたものを持ってきたの」次回予告 第6話 Bullseye感想前回のエピソードでポールに親近感が...と思っていたら、今回いきなりホルマリン漬けになっていてびっくりしました。あれはスタンレーの願望だったのですね。エドワード・モルドレイクの回を見ていて思ったことだけれど、ジミーが何度も「俺たちフリークは普通の人と一緒なんだ!」と叫ぶよりも、フリークと呼ばれる人それぞれの人生を語ったほうが、根強い差別解消には何倍も有効だということ。彼らにも愛する人がいて、子供を可愛いと思う気持ちがあり、人生の挫折を体験し、罪悪感に眠れない夜もあるということを聞けば、マジョリティの側にいる人たちも「ああ、私と似ているな」と感じ始めるし、そこが出発点になる。そういう意味でエドワード・モルドレイクが次々に人々に罪を告白させるエピソードは良かった。エドワードのもう一つの顔は、カルヴァン派の厳しい人かってくらい罪を自覚しているかどうか詰問していた。そんな中で、自分には何の落ち度もないといった態度で、ひたすら他者を責める一方のエルサなどはエドワードの言うとおり、ただの無知な愚か者に見える。それだけ年齢と経験を重ねていたら間違いの一つや二つはあるはずなのに、まるで聖人君子のようにふるまうエルサにはもう憐れみしか感じない。中村うさぎは著書のなかで「幸せになる条件って『主観』という醒めない夢の楽園にどれだけ安住していられるかってことだと思う。それこそが『エデンの園』よ」と述べていました。エルサも醒めない夢の楽園の住人なんだろう。共依存関係にあるダンディとグロリアを見ていると、ユトリロとヴァラドンの関係に似ているなあと思える。ユトリロはお母さん(ヴァラドン)が大好きな人であったそうですが、精神病やアルコール依存症を患い、しかも町中の人に嫌われていたため路上で絵を描くこともできず(外で絵を描いていると石をぶつけられるほど)、部屋の中に閉じこもって絵画を仕上げていたそうです。ダンディも殺人以外の自己表現手段を持っていたら、また違っていたかもしれないなと思えるのです。
June 27, 2015
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American Horror Story (Freak Show)アメリカンホラーストーリー シーズン4第4話「ハロウィーンの呪い 後編」(原題: Edward Mordrake, Pt. 2)あらすじ次にエドワード・モルドレイクが姿を現したのは、スージーとポールのテントだった。2歳の時、脊椎の問題で両脚を失ったスージーは、絶望した両親に施設の玄関に捨てられ、物乞いとなる。ある晩、彼女は嫉妬心から罪を犯した。長い脚でタップダンスを披露していた仲間の大腿動脈をナイフで刺したのだ。脚が体の一部だという認識がなかったせいで人を殺めた彼女は、その後改心し芸の道に生きることを決めた。生まれつき両腕の短いポールは映画館だけが唯一安心できる場所だった。暗闇の中でアメリカ映画を観ていると現実を忘れられる。豊かな国に憧れて渡米したポールだったが、ここでも絶望の日々を過ごすこととなる。笑われ殴られて、アザラシ男と呼ばれたのだ。自己嫌悪に陥ったポールは、愛されるのが無理なら怖がらせようと、顔を除く全身に刺青を入れさせ自ら見世物になった。顔だけ残した理由は、ハンサムだったからだ。この顔に並の肉体さえあったらなんでも叶ったはずだ......彼らの過去を聞いたエドワード・モルドレイクはエルサのテントへ向かった。エドワードから「他人を見下して満足する愚か者」と言い当てられエルサは怒り狂った。亡霊たちに義足をもぎ取られたエルサは促されて自身の過去を語り始める。1932年 ワイマール共和国第一次世界大戦降伏によって苦痛と屈辱を感じていたドイツ・ベルリンでは当時あらゆる性の娯楽が少額で買えたという。ヒトラーが別の戦争を始めるまでのわずかな期間、性の混沌状態の最下層で、エルサはサディストの女王として君臨していた。「フランス猫」と呼ばれ重宝がられたエルサは客をとっても売春行為はせず、体には決して触らせない。ある夜、ブランデンブルグのオリンピアホテルにポルノ女優の仕事があると呼び出されたエルサは、突然カメラの前で両脚を切断された。撮影されたスナッフフィルムはベルリンとミュンヘン周辺にばら撒かれ、ウィーンにもコピーが回ったという。脚線美を売りにしていたエルサのキャリアはそこで終わった。エドワードが求めるのは堕落して病的で心身ともに醜い者だ。「この女だ」エドワードのもう一つの顔が告げたが、「そうよ、お願いだから連れて行って」と懇願するエルサの姿が彼を躊躇させた。夜間出歩いている姿を警察に見つからぬよう移動していたジミーとマギーは、森の中でピエロに監禁されている3人を発見する。隙を見て人質を助け出したジミーはバスの窓から奇妙な光景を目にした。エドワード・モルドレイクが現れたのだ。1943年移動式遊園地の子供専用ピエロにある噂が流れた。ピエロはペドフィリアで、子供を膝に乗せて喜んでいる、そう言いだしたのは同じ遊園地で働くフリークの2人である。ピエロの人気に嫉妬したのが始まりだった。子供たちを心から愛していたピエロは中傷に耐え切れず、「逮捕される」と脅されて遊園地から逃げ出した。サーカス業界に嘘の噂を広められ働けなくなった彼はジュピターの実家に戻ったが、すでに母は死亡していた。そこで自作のおもちゃを売り込みに行ったが、そこでもピエロは拒否され、子供好きの異常者として扱われた。絶望したピエロは散弾銃で自殺を試みるも失敗し、歯と下顎を失うこととなる。口元をカバーするマスクを作ったピエロにある考えが浮かんだ。手伝いを命じる意地悪な親やフリークから子供たちを救い出そう。美人の子守りも必要だ。湖のほとりでピクニックしていたカップルの男の方を殺して調達した。なぜなら俺はいいピエロなんだ。エドワードは決断した。ピエロの遺体を発見したダンディはそのマスクを手に取った。彼はそれをそっと装着すると何かを感じ、パトカーのサイレンを遠くに聞いて走り去った。警察に事情を尋ねられ、謙虚だと言われたジミーは「真のヒーローはミープだ」と答えた。ジミーが犯人を捕まえて人質を救ったおかげでジュピターの夜間外出禁止令は解除された。町の人々が怪奇劇場に大挙して押し寄せる。ジミーにお礼を言い握手するためだ。ジェシーから手作りのブラウニーを差し出され、劇団員たちは皆笑顔で応じた。チケット完売の夜の部の準備をしている怪奇劇場に一人の男がやってきた。ハリウッドのスカウトマン、リチャード・スペンサーと名乗るその男は、マギーと手を組み詐欺を働いていたスタンレーだった。ピエロのマスクを身につけたダンディは自宅で黒人メイドのドーラの喉元を切り裂いた。ドーラの喉元から鼓動に合わせて血液が湧き上がっている。ダンディは嬉しさのあまり笑い出していた。次回予告 第5話 Pink Cupcakes感想エドワード・モルドレイク、面白かったですね。彼自身も、もう一つの顔さえなければ公爵の地位をあたえられていたという悲劇の人だから、その行動に興味がわくし、スージーやポール、エルサの過去も知れてよかった。こっちのエルサはありのままに生きすぎだろうとも思ったけど。マレーネ・ディートリッヒに嫉妬心を燃やし続けているから、一体どんなビッグスターだったのかと見ていたら、経歴はSM嬢とポルノ女優。余計かなしい。エルサのあまりの自分本位な考え方に、エドワード・モルドレイクも呆れ顔でした。でもそんな身の程をわきまえない野心的な女の話は大好きなので、今後も楽しみ。性格の悪い人が集まったほうがドラマは盛り上がる。性格が悪い人の中にも同情すべき部分があって、私の心は嵐の大海に浮かぶ小舟のように揺れています。毎回そんな感じ。特にジェシカ・ラングの演じるキャラクターは総じてそんな生い立ちを背負っている。今回は嫉妬心がテーマかなと思った。脚のないスージーは長い脚でタップを踏む物乞いの仲間に嫉妬するし、ペッパーは特に何も考えてないようだったけど(本当に? 彼女がシーズン2のペッパーと同一人物だとすると、悲しい宿命を背負った賢い女性だということになる)、エルサはマレーネからドット&ベット姉妹まであらゆる人気者に嫉妬し、今回は双子の垂れ幕まで下げさせてしまった。エドワード・モルドレイクに魂を連れて行かれたピエロはかつての仲間に嫉妬されて人生の歯車が狂い出した。あのピエロも考え方と行動が短絡的で幼かったというだけで、もともとは高潔な精神の持ち主だったわけです。環境が悪すぎた。あの小人たちを見ていて、ペドフィリアの人の中には当たり前のように他人も小児性愛者だろうと推測する人も多いんだろうな、と思った。自他の区別がつけられず、他人の成功が喜べないという点ではエルサと一緒だ。嫉妬心は他人のレベルが自分と同じ場所にある、と認識したところから始まるものだけれど、相手の考え方や外見・生い立ちを自分とは異なる個性として、その違いを尊重できていたらこんな悲劇は起こらなかっただろうに。ピエロがたまに見せる芸、バルーンアート作ったりするやつ......「私はこわくないよ」みたいなジェスチャーしつつやる、お辞儀から始めるあの一連の動き......あれがいちばんこわいんだよな...勝手に失敗してブチ切れたりするし......あれ、こわかったですね。もう死んじゃいましたけど。間違ってこのドラマを見た子供の夢に出ると思う。ダンディって、日本の冬彦(92年のTBSドラマ『ずっとあなたが好きだった』でマザコン夫として国中を震撼させた)と似てますね。単にマザコンだっていうだけじゃなく、ダンデイの「アイヘイトユー!」って何回も叫ぶシーンは冬彦の「美和〜!」に通じるものがある。どちらも物事が自分の思い通りにならなかった時あげられる雄叫びだ。冬彦がSMで開眼したように、ダンディもピエロの遺品のマスクで覚醒してしまった感がある。冬彦はプロデューサーが「世間では3高(高身長、高学歴、高収入)の男がちやほやされていますけれども、条件を満たしてあなたの前に現れるのは冬彦かもしれない。あなたはそれでもいいですか?」と世の若い女性に問うつもりで、そこまでヒットするとは思わずに作り出したモンスターでした。ダンディも、学歴はわからないが高身長で裕福な家庭の御曹司、顔形は整っている。今後の活躍が気になる。ジミーを演じるエヴァン・ピーターズと、マギーを演じるエマ・ロバーツ、婚約解消したらしいですね。二人が昨年婚約した時は、過去にDV事件もあったことだし(2013年、エマからエヴァンに対する暴力で警察沙汰になるも、エヴァンが告発しなかったため、エマは翌日釈放)部外者の私が勝手にショックを受けていたりしましたが、こうなってみて感じる事だけれど、二人が幸せになる道を歩んでほしい。本当に。二人とも若いし。今回なんて、エマはピエロの格好したダンディに捕らえられて汚い箱に入れられ口に布切れ詰められて、「アシスタントのペチャパイです!」とか言われてさぁ、しかも婚約解消って......かわいそうです!!!こうなったらもう川内康範の霊を呼び出すしかないね。お盆の夜、オリジナルのセリフを付け加えてステージでおふくろさんを歌うと、激怒した老人の霊が現れるという......(森昌子が説得すると帰る)
June 20, 2015
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American Horror Story (Freak Show)アメリカンホラーストーリー シーズン4第3話「ハロウィーンの呪い 前編」(原題: Edward Mordrake, Pt. 1)あらすじアメリカ疾病博物館では『人体の不思議』と称して結合双生児の臓器のホルマリン漬けや、奇形児の骨格標本を一般公開していた。学芸員(セリア・ウェストン)の説明で、「フリークの体の一部を売れば金になる」ことを知った詐欺師のスタンレー(デニス・オヘア)とマギー(エマ・ロバーツ)はその足でフロリダへ向かう。1952年 ハロウィーン 午後4時夜間外出禁止令の出されていたジュピターの子供たちは、ジュピター中心部から南へ約30Km離れたウェストパームビーチまで出向いて仮装し、お菓子をもらう年に一度のイベントを楽しんでいた。殺人ピエロが後ろを付いてきていることに気づいたのは小さな女の子、ジェシーだけだった。エセルは肝硬変が悪化。医師マイロン·ボナム(ジェリー・レジオ)から余命半年〜1年の命だと聞かされ、エセルは泣いた。死の宣告のせいではない。見た目が常人とは異なる彼女をまともに診察してくれた医師は、彼が初めてだったからである。ミープが殺されたばかりだというのに、フリークショーのメンバーは浮かれ騒いでいた。腰から下がないスージーは腕で体を支え、アップルボビングをしてみせた。その頃ジミーはミープの墓を掘っており、自分はリーダー失格だと自責の念にかられていた。ハロウィーンにフリークショーは禁止されていた。古くからの言い伝えによると、ハロウィーンの日にフリークショーを開催すると、1800年代中期に実在したと言われる貴族、エドワード・モルドレイクの霊が現れるという。エドワード・モルドレイクはイギリスの名家に生まれ才能にも恵まれていたが、後頭部に邪悪なもうひとつの顔があり、その顔は他人には聞こえない声でエドワードにささやき続けたという。後頭部の顔を殺そうと試みるも、何をしても死なず、ついにエドワードは精神を病み、家族は彼を精神科病院に入れた。入院中エドワードはオペラを書いて気を紛らわそうとしたが、後頭部の顔が彼に邪悪な命令をしてくる。ある晩エドワードは病院を脱走し、フリークショーにたどり着いた。『二つの顔の王子』として名家の御曹司らしい洗練されたスキルを披露した。あるハロウィーンの夜、突然彼はフリークを全員殺し、自殺した。その時も邪悪な顔は微笑んでいたという。ハロウィーンにフリークが演技をするとエドワードと邪悪な顔の魂がやってくる。そして一度現れたら一人では帰らない。禁酒の誓いを破り、また飲み始めたエセルに「デルがいるからイライラするのか?」とジミーは詰め寄る。「デルがいるから用心棒はもう不要。お前は自由だ」と強がるエセル。フリークはハロウィンの日だけ「普通の人」になることができた......ミープの思い出を語り合いながら、ジミーを中心に仲間内でひっそりとミープの埋葬をしているところに一台のタクシーが止まった。詐欺師の片割れマギーである。彼女はミスティック・ミス・エスメラルダと名乗った。占いができるので仲間に入れて欲しいと言う。エルサのテントでエスメラルダは巨大な水晶玉を取り出し、深呼吸しながら素早く周囲を見渡した。『透視』のヒントになるものがたくさんある。それらを適当に組み合わせてエルサの希望通りの未来を言えばいい。「...あなたは不当な扱いに苦しんだ。すべては強欲と妬みが原因...マレーネ?」エルサからすべてを奪った女の名前を口にした。「彼女は消える。未来は...あなたの歌よ。すごい歓声。拍手が鳴りやまない...上品で洗練された男性が突然現れる。黒髪で鋭い目。興行主ね。あなたをスターにしてくれる」そこまで言うとエスメラルダは力尽きたように倒れて見せた。「エスメラルダ、あなたを雇うわ」デジレは夫デルとの性生活に不満を抱いていた。「あんたよりドアノブのほうがマシ」それを聞いたデルは逆上して妻に掴みかかり、「俺に世話になってるだろ、敬意を払え」と迫った。「その手をどけなきゃ、さよならよ」デジレの目は冷ややかだった。テントから少し離れたところで酒を飲んでいたエセルはデルに声をかけた。エセルの「ジミーを妊娠したときも私を愛してなかったの?」との問いかけに、デルは「男は手近な女に食いつくもんさ」と答えた。エセルは自分の命が残りわずかであること、ジミーが我々の世界と外の世界との間で苦しんでいることを伝え、外の世界でやっていけるようにあの子を導いて、とデルに託した。ハロウィーンのときのジミーの仮装はいつも決まって兵隊だったという。ドットとベットは同じ夢を見ていた。今まさに外科手術が始まろうとしており、二人を切り離そうとしている。才能を人前で認められ、ゆくゆくは結婚・出産もしたいと願っているドットは晴れ晴れとした面持ちだが、ベットは「やめて」と懇願し嗚咽していた。ハロウィーンの夜夕方過ぎに起きてきたダンディは母が一ヶ月かけて作ったハロウィンのコスチュームが気に入らず、癇癪を起こした。母の用意したハウディ・ドゥーディの代わりに、自分で衣装を作ったダンディはその夜、ピエロの扮装で食事用ナイフを手に、メイドのドーラ(パティ·ラブレ)を脅すが彼女は動じず、ダンディは「お前なんか大嫌いだ」と言い残し家を出た。ホテルで待機しているスタンレーの元へ、マギーから電話が入った。「フリークだらけで、もうやめたい」と訴える彼女に「結合双生児? 大儲けできるじゃないか!」と喜ぶスタンレー。マギーは「殺しはやめて」と釘を刺した。スタンレーは部屋にセクシーなバイキングの仮装をした男性を呼んでいた。ジェシーはピエロの恐怖に打ち勝って昼間集めたキャンデーを、意地悪な兄マイクに取られそうになっていた。マイクの後ろから、口元に指を立て「シー」というジェスチャーをしたピエロが近づいてきた。ピエロはマイクを連れて窓から消えた。エルサ・マーズはハロウィンの夜、ステージに立った。エルサの歌声に誘われるように、エドワード・モルドレイクが地獄から現れた。神々と化け物たちの地で私は天使だった邪悪な庭に住んでいる戸惑い 怯えながら 必要ならなんでもするわかがり火のように赤々と輝く私に必要な薬を持ってるのね名声 お酒 愛情 ゆっくりと私に渡して腰に優しく手を回して神とは仲良くできないの だから歌うわ誰も私の魂を奪えないジム・モリソンのように生きるのめちゃくちゃな休暇へ突き進むモーテルで浮かれ私は歌うさあ 渡してちょうだい これが私が求める天国汚れなき心は失われたエルサが頭を上げたとき、ただ一人の客、エドワード・モルドレイクは消えていた。エセルの元に、緑色の冷気と共に3人の亡霊を伴ってエドワード・モルドレイクが現れた。彼が現れたからには怪奇な者を仲間に加えるまでこの地を去れない。エセルはエドワードの問いに答えなければならない。嘘をつけばエドワードのもう一つの顔がそれを見破る。エセルは自分の過去について話し始めた。彼女はかつてボードビルで活躍していた。美人ばかりを揃えることで観客の注目を自分に集め、人気者だった。その頃出会ったのが怪力男で売り出していたデルだった。彼はマネージャーになり、エセルにいろいろな仕事をさせた。劇団をパリに移動させ、エセルは「ヒゲのベルナール」としてデビューしたが、ヒゲ女の古典劇など誰も見たくなかった。笑いはとれたが、それは芸ではなく、彼女自身が笑い者になっただけのことだった。アメリカに戻ってから、デルの子を身ごもったエセルは仕事もできず、お金に困っていた。芝居ができる状態ではない。そこでデルが考えたのが、『フリークの出産ショー』だった。妻を屋外の木につかまらせ、出産する様子を見物人から金をとって見せたのだ。ジミーが生まれた瞬間彼の手が奇形だとわかると、デルは「25セントで化け物が抱けますよ」と我が子を客に勧めた。エセルに抱かせる前に。「奥さん、フリークですよ!」「ひどいことをした......忘れたことはないわ。いいわ、連れて行って。当然の報いよ」エセルが顔を上げるとエドワード・モルドレイクは消えていた。エドワードのもう一つの顔が「彼女ではない」と言ったのだ。エセルの全身から力が抜けた。ピエロのバスに監禁されている二人のところに、ダンディと殺人ピエロが現れた。ジェシーの兄マイク(ダルトン・グレー)を連れてきていた。感想毎シーズン、ハロウィン回は面白いので楽しみにしているのですけど、今回も良かったですね。エセルの過去がわかった。パッと見リンカーン似の紳士エドワード・モルドレイクの亡霊が人の過去を探っていくところが興味深い。シーズン3の魔女団のときのハロウィン回は、ブードゥーの秘法により蘇った大量のゾンビが現れて、ゾーイが大活躍する内容でした。シーズン2の精神科病棟では、アーデン医師が自宅に娼婦を招いて修道女のコスプレをさせようとするも、娼婦がアーデンの秘密の写真をみてしまう回。アーデンはシスター・メアリーユーニスのことが好きだったんです。あと、病院にオーメンのダミアンみたいな奴が来たがために、シスター・メアリーユーニスに悪魔が乗り移った(とシスターが錯覚したかもしれない)オカルト的要素も入っていました。シーズン1では、ゲイカップルがハロウィン風の飾り付けを施した呪われた家にラバースーツの男が現れて襲いかかり、アップルボビングの樽の中に顔をつけて窒息させようとするシーンがあった。全身ゴム人間が現れても「ああ、今年はそういう仮装ね」ってみんな警戒しないんですよね、自分のボーイフレンドとか夫だと思い込んで。ハロウィンで蘇った殺された学生たちに、スクールシューターだったテイトが追いかけられるシーンもあった。テイトの妹アディーは「かわいい女の子」のコスプレをさせられて車に撥ねられていた。仮装が「かわいい女の子」って残酷。今回の怪奇劇場のジミーも、仮装ではいつも兵隊さんだったってエセルが話していました。仮装の夜だけ普通の人になれるって、切ないし悲しい。「ハロウィーンの呪い 後編」次回予告
June 13, 2015
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American Horror Story (Freak Show)アメリカンホラーストーリー シーズン4第2話「殺人事件」(原題: Massacres and Matinees)あらすじおもちゃ店の店主ハンリー(トニー・ベントレー)の首をハロウィン用品の棚に陳列したピエロ(ジョン・キャロル・リンチ)は、店の従業員(デビット・シンプソン)を殺害し、彼の首を持ち去った。バンチ刑事失踪から二日後、ジュピターでは夜間外出禁止令が発令され、エルサの劇団への捜査の目は一層厳しくなる。深夜、一座のリーダー的存在であるジミー(エヴァン・ピーターズ)は警官殺害の証拠隠滅のため、仲間二人と共に遺体を掘り起こしていた。「彼には子供がいたかもしれない」父親不在の環境で育ったジミーは、仲間を救うためとはいえ初めて人を殺してしまったこと・誰かから家族を奪ってしまったかもしれないことに贖罪の念を感じ始めていた。怪奇劇場を一夜貸切にしてダンディ(フィン・ウィットロック)を楽しませた母親グロリア(フランシス・コンロイ)だったが、三日と経たないうちに息子の癇癪に手を焼くこととなる。自分の名前の刻まれたガラス細工の哺乳瓶でコニャックを飲んでいたダンディは、夕食の途中、役者になる夢を阻んだ母親に反抗し部屋を出て行った。ダンディが怒っていなくなるといつも残酷なことが起こる。現にいま、物置小屋の裏から動物の毛と歯がみつかり、隣人はいなくなった猫を探し回っていた。グロリアは、息子の退屈しのぎにと道端で見つけたピエロを雇い連れ帰る。怪奇劇場のキャンプ地に、トレーラーに乗った一組のカップルが現れた。男はエセル(キャシー・ベイツ)の元夫デル(マイケル・チクリス)で、ジミーの父である。ジミーがまだ赤ん坊の頃、「お前のような(奇形の)子は将来苦労する」と息子を絞め殺そうとした過去がある。エセルは夫に銃口を向け、二度と戻るなと警告した。エセルはこのことを誰にも話しておらず、ジミーも自分の父親が誰なのかは知らない。デルの新しい妻デジレ(アンジェラ・バセット)は三つの乳房を持つ両性具有の人間である。以前シカゴの一座に在籍していたとき、デジレの不倫現場を見たデルが間男を殺したことで、二人は逃げるようにそこを離れエルサの劇団に入団したのだった。エルサに現場監督を任された怪力デル・トレドは、怒りのコントロールができない男だった。芸能の世界に興味津々で歌唱力に自信を覗かせていたベットの歌は、客前では披露できない代物だった。一方ベットから「全く才能がない」と言われていたドットは、実際の歌声は素晴らしく、その見た目以上に客を沸かせた。自分こそがスターになるという夢を諦めきれないエルサはドットへの嫉妬心からベットをそそのかし、枕元にナイフを置いて立ち去った。おもちゃ店店員の首を発見し、ピエロの殺人行為に心酔したダンディは、ピエロの所有する朽ちかけた古いバスへと向かう。無実の罪で警察に捕らえられた怪奇劇場の一員・奇人ミープは拘置所内でリンチにより殺され、その遺体はボロ布に包まれ劇場の入り口に投げ捨てられていた。ミープの無惨な姿に、彼を助け出し罪を償おうとしていたジミーは慟哭した。感想役柄を演じているとわかっていながらも、ジェシカ・ラングのエルサ・マーズ、憎たらしいわ〜〜〜。これは私がジェシカ・ラングについて毎シーズン感じていることなので、いかに彼女の演技がすごいかってことでもあると思うんだけど、なんなの〜あの憎たらしさ。殺人鬼とかじゃなく、身近に普通にいるタイプのちょっとしたサイコパスなんですよね......今回のエルサの場合は承認欲求が満たされないことによる他者への嫉妬心が引き金だけど、ナイフを枕の下に忍び込ませるまでのことはしなくとも、こういう人は結構存在するし、ちょっと間違った状況に置かれたら自分ももしかしたらこうなってしまうかもしれない、というところが怖い。良い人の仮面で近づいて、心配する口振りで仲の良い者同士を仲違いさせることが趣味みたいになっている人。彼ら・彼女らの目的はさまざまで、エルサのように自分が目立ちたい(他人がチヤホヤされているのが許せない)人から、自分がイジメのターゲットにならないように立ち回った結果そうなる人もいる。全員に共通しているのは、自分を守るために行動しているということ。誰かが目立ってたり、仲良しグループが存在すること自体が、彼らのなんらかのコンプレックスを刺激するのでしょう。女性同士で仲が良いと、わざわざその中の若い女性「だけ」褒めて、反応を見るおじさんもいたなぁ。その頃私は若い女性側だったので、そのおじさん上司が姿をあらわすたびにイヤ〜な気持ちになったものでした。「女は若い女が嫌いだろう」と考えているであろうところも、「男である自分がジャッジしてやる」という上から目線もすべてが下世話で下品な彼の精神性が生んだ怪物であり、したり顔でそうしたものを見せつけてくるたび、吐き気に襲われたものです。現実の人言関係「だけ」に価値を見出しすぎると、もしかしたら誰しもが陥る病気なのかもしれません。アニメやアイドルなど、夢中になれる趣味があった方が健全な社会生活を送れる気がする。だって自分の思い通りに現実をコントロールできるわけがないのだから。今回の原題: Massacres and Matinees 、「虐殺とマチネ」。何かの演劇のタイトルのもじりなのかもしれないけれど、言葉通りとらえるとしたら、マチネはフランス語で、朝、昼興行。作品の中でもフリークショーは夜やるものだ、というエルサのポリシーに逆らい、デルは昼の公演スケジュールを決めてしまいます。警察の夜間外出禁止令をかいくぐって商売ができたというメリットもあるが、このことで劇団内のパワーバランスが少しずつ揺らいでゆく。そして虐殺の方なんですけど、ピエロ、怖すぎないですか?? 昼間殺しまくるっていうのが心底怖いです。私が一度見てトラウマになった映画「テキサス・チェーンソー・ビギニング」みたい。そもそもピエロの顔を見て楽しい気分になったことがない。大きくて赤い鼻、大きな目、大げさに描かれた口、白く塗った肌...おもしろ要素を全部一つにまとめてしまうと、逆に怖い人になる。エヴァン・ピーターズ演じるジミーですが、彼はリアル版シザーハンズ? と思うところもあった。仲間想いの心やさしき青年。シザーハンズにしてはダイナーのウェイトレスをナンパしまくってたところは「?」と感じるけど、ジミーは今後恋愛するのか、するとしたら相手を傷つけずに愛することはできるのか。前回ジミーは殺した警官の遺体を前にして「マイノリティである我々より、マジョリティとして暮らしてる奴らの方がよっぽど怪物だ」という内容のスピーチをしていましたが、これはアメリカンホラーストーリーのシリーズにはよく出てくるフレーズでもあるのですが、この考え方って危険な面も孕んでいると私は思っていて、それは、「世間の奴らの方がよっぽど化け物じゃないか」って部分が一人歩きしてしまうと、「フリークとして堂々と生きている自分たちの方が優れている」という選民思想につながりはしないかということ。正義である我々を攻撃するもの(警官)は殺して当然だ、我々を迫害する危険性があるものは絶滅させなければ、という人類の歴史上何度も繰り返されてきた過ちをそのままたどることにつながりかねないから。そして「世間が怪物と呼ぶならそうなってやる」とシュプレヒコールをあげていた通り、周囲の人が怪物扱いすれば、その人はだんだん怪物になってゆくのですよね。人として尊重され、敬意を払われれば、それにふさわしい人間になろうとするもの。何か物でも扱うように仲間の遺体を放り出されたら、俺たちはこういう扱いを受けて当然の人間なんだ、と思ってしまう。前回の、ヒゲのエセルが自分の子供に性的奉仕の仕事をさせている、というエピソード。これは、人気ドラマgleeなどを長年手がけてきたライアン・マーフィが数多く出会ってきたであろう、とある種類の人々(非常に礼儀正しいが、こどもを商売の道具とすることに何の良心の呵責も感じていないような人々)のアレゴリーなのでは、と思った。
June 6, 2015
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American Horror Story (Freak Show)アメリカンホラーストーリー シーズン4第1話「双子の姉妹」(原題: Monsters Among Us)あらすじ1952年 フロリダ州 ジュピター朝靄のなか、スペイン苔の垂れ下がる樫の木の間をゆっくりと一台のライトバンがやってきた。「デリシャスミルクデリバリー」のビル・パーマーである。彼はいつものようにタトラー夫人の邸宅へ牛乳を届けに来たのだが、どうも様子がおかしい。前に届けた牛乳が放置され、分離して転がっている。室内に入ったビルはそこで夫人の他殺体を発見する。恐る恐る二階へ上がるとそこには結合体双生児の女性が胸から血を流し倒れていた。彼女たちはタトラー夫人が世間の目に触れぬよう育てていた奇形の娘、ベットとドット(サラ・ポールソン)であった。運び込まれた病院では、初めて目にする患者のその異様な姿に、医師は逃げ出し、看護婦は廊下で吐いた。結合した姉妹は一つの膀胱と三つの腎臓、四つの肺、そして二つの心臓を共有していた。頭部はそれぞれ独立しており別個の人格を有している。パイプス巡査の監視をくぐり抜け、病院職員ペニー(グレイス・ガマー)の制服を奪って病室に入り込んだエルサ・マーズ(ジェシカ・ラング)は、ベットとドットの姿を見て確信する。「怪物がいる」と新聞で知り危険を冒してまでもここへ来た甲斐があったというものだ。一方その頃ジュピターの外れ、オキチョービ湖では一組のカップルがピクニックを楽しんでいた。そこへ突然口が耳まで裂け、継ぎ接ぎだらけの皮膚を持つピエロ、ツイスティ(ジョン・キャロル・リンチ)が現れる。棍棒で二人を殴り倒すツイスティ。一瞬意識を失ったボニー(スカイラー・サミュエルズ)が次に目覚めた時目にしたのは、ピエロに滅多刺しにされるボーイフレンド、トロイの姿だった。必死に逃げるボニーだったが、すぐに追いつかれ、両親を殺害された8歳の少年コーリー(メジャー・ドッドソン)と共に古いバスの中に閉じ込められる。エルサは地元の食堂で、彼女の劇団員であるジミー・ダーリング(エヴァン・ピーターズ)を見つけ近づいた。「普通に生きたい」と望むジミーはエルサと反目し合っていた。「ショーをもっと大きくしたい」と主張するエルサは地主のハドンフィールドを自室に招き入れ、自尊心をくすぐって呼び寄せたペニーにアヘンを吸わせた。最後に勝利を勝ち取るためなら手段は選ばない。アヘンを吸わされ、8ミリフィルムでフリークショーの面々と情事にふけっているさまを撮影されたペニーには、もはやどうすることもできない。病院に運び込まれた結合双生児の姿を見て「私なら怪物を生んだ瞬間その子を殺すわ」と言い放ったペニーだったが、今やその怪物と同じ場所で生きるしかないのだ。有閑マダムたちの集う昼下がりのサロンは、ある話題で持ちきりだった。欲求不満の主婦マーナの前を、頰を上気させ満足気な表情を浮かべた太った女が横切った。女の出てきた部屋に呼び込まれるマーナ。秘密の部屋でマーナを待ち受けていたのはベッドに横たわるジミーであった。「アメリカの主婦を救う新商品」と持て囃されていたのは、密封された機械と、フリークショーでロブスターボーイと呼ばれるジミー・ダーリングの奇妙に癒着し発達した指のことだった。母親を殺したのは強盗だと主張していた姉妹だったが、その殺害方法が映画『ガス燈』のセリフと一緒であることをエルサに看破される。姉妹が襲われたのは母親が死んで二日後だった。好奇心旺盛で映画好きなベットはその日、母親にヒット中の映画『雨に唄えば』が見たいと切り出した。世間の目を恐れる年老いた母親は、アラバマから真夜中に逃げ出したことを思い出せと言う。綺麗だと噂のテクニカラーが見たい、閉じこめられるのはもう沢山......ベットは平手打ちをくらったショックと自分を否定された怒りにまかせナイフを母の心臓に振り下ろした。何度も。常に冷静沈着でベットをたしなめる役割を担ってきたドットだったが、ベットの凶行を止めることはできなかった。夜中、思い詰めたようにハサミをベットの胸に突き立てたドット。それは自分自身を戒めるためでもある。9月3日は二人にとって特別な日となった。エルサに招かれ、双子は病院から抜け出し、フリークショーの一員になったのだ。怪奇劇場の入り口、それは華やかなショービジネスに興味津々のベットにとっては明るい未来そのもののように感じられたが、農村での静かな暮らしを望むドットにとっては闇への転落であり、地獄の門を意味していた。しかしベットとドット、二人に共通している感情が一つだけあった。ジミー・ダーリングに話しかけられ、ウィンクされると、彼と甘美な秘密を共有したような気分になる。ジミーの母エセル(キャシー・ベイツ)はあご髭を生やした中年女性で、エルサの側近とも言える存在である。息子に、主婦を相手にした性的なサービスを始めさせたのもエルサの発案であった。「ここを出て普通に暮らしたい」と訴えるジミーを「私たちに普通はない」と叱責するエセル。彼女には辛い過去があり、酒浸りになって留置場にいたところをエルサに助け出された恩がある。そのお陰で息子と再会できたしステージにも復帰できた。エセルはエルサに対する感謝の念を忘れたことはない。自己憐憫にひたるような姿は誰にも見せないエルサも、エセルの前では弱音が吐けるのだった。フリークショーを取り仕切るエルサもまた、膝から下を欠損しており、普段は義足で過ごしている。結合双生児の姉妹を見せると書かれた垂れ幕の効果は、劇場を貸切にしたいと申し出る客を呼んだが、同時に、タトラー夫人殺害犯の行方を追う警察をも呼び寄せた。姉妹を強引に逮捕しようとする場を偶然目撃したジミー。「見ろよ、相手は化け物だぞ」刑事のその一言がジミーの胸の内に、ある感情をうねりのように湧き上がらせた。化け物呼ばわりされ、若者集団にビール瓶を投げつけられた日の記憶が蘇る。ジミーは口笛で仲間を呼んだ。刑事の発した「フリーク」という言葉が呼び水となり、ジミーは刑事の喉をナイフで切り裂いた。ジミーは姉妹を助け、姉妹はテレビの登場で客足の遠のいた劇場を救った。刑事の遺体を中心にしてフリークショーの仲間が集った。ジミーは言う。「俺たちは仲間だ。家族だ。善良な者が虐げられるのはおかしい。俺たちだって善悪は分かる。俺たちをクソみたいに扱う奴らは《悪》だ。化け物と呼ぶならそうなってやる。こいつのような目にあわせてやる」刑事を取り囲んだ者たちが手に持った刃物を一斉に振り下ろした。警官の屍体が切り刻まれてゆく様子を暗闇から見ている者がいた。トロイとコーリーの両親を殺害した、あのピエロだった。感想あらすじには書ききれなかったのですが、出演者としては他に、フランシス・コンロイ(劇場を貸切にして息子を溺愛する母親役)と、ナオミ・グロスマン(ペッパー役。シーズン2の精神病棟のときと同じ役名、ヘアメイク)がいました。あと、世界最小の女性、Jyoti Amge が今回アメリカでのテレビデビューを果たしていた。あの人可愛いですね。何もかもが小さくて、サリーを着こなしててね。インド風のお化粧して。素敵。まだ登場していないエマ・ロバーツ、アンジェラ・バセット、ガボレイ・シディベ、リリー・レーブ、ジェイミー・ブリューワーがこれからどんな役で出てくるのか楽しみ。アメリカンホラーストーリーが始まる前の一年はなるべくネット上でネタバレを見ないよう見ないようにしてて、内容に触れるような記述を読みそうになったらサッと視線をそらすという有効なのかなんだかわからないテクニックを駆使して生きておりました。まあ〜、見たら見たで別にいいんですけどね。オチがわかってても面白いから。余談中の余談ですが、例えば、スターウォーズを見たことのない子供がいて、これから見ようって心に決めていて、ふとした時にテレビ等でダース・ベイダーのモノマネの人が「アイムユアファーザー」って言ったら、これって見てる子供にとってネタバレになるんでしょうか? 結構あるよ、ダースベイダーの扮装した者が登場するシーン。でも何か言わなきゃってなったら、そのセリフしかなくない?? そしたら、ネタバレかそうじゃないかって誰が判断すべきことなんだろう......ってたまに思います。映画公開から何年経過したらOKというものでもなさそう。ダース・ベイダーがお父さんだって知っちゃったじゃないかー!! ってブチ切れているこどもを見たことがないので、意外とネタバレなんて大した問題じゃないのかも?とも思う。もし私のブログでネタバレを知ってしまって怒っている人がいるとしたら、すみませんとしかいいようがないです。しかも主観で書いてるのでちょっと間違ってるしな! 役者さんの名前の読み方とかは特に間違ってる可能性が高いので、何か記録しておきたい人などは、ちゃんとしたところ(FOXチャンネルのサイトとか)を見た方がいいです。これは日記です。ジェシカ・ラングは今期でアメリカンホラーストーリーは最後。今回エルサ・マーズ役で Life on Mars? を歌っていた。シーズン5となる、Hotel ではレディ・ガガが出演するということで話題ですが、こうなってくると、なんかこう、モーニング娘。みたいっていうか、好きなアイドルが卒業して新しいメンバーが加入するような感じで、さみしいもんですね。貫禄でいうと「やめるのをやめて〜」と言われていた大橋巨泉風というか。セミリタイアという形でたまーに「出てやるよ」と巨泉っぽい登場の仕方でもいいんじゃないかと思いますけど、ジェシカ・ラングくらいの毎回主演女優ってことになってくると、急に出なくなった時点で「干された?」とか「ライアン・マーフィーと揉めた?」とか勝手な憶測を呼んで迷惑かかっちゃうからスパッと「やめる」宣言したんでしょうね。キャシー・ベイツには出続けてほしいものです。キャシー・ベイツにしか出来ない役がこれまたたくさんあるから。よくホラーに戻ってきてくれましたねって気持ちでいっぱい。本当に好き。アメリカのあき竹城ですよ(私はあき竹城の大ファンです)。日本のマイケルジャクソンは森進一。
May 30, 2015
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『2001年宇宙の旅』を彷彿とさせるラストシーンでした。かぐや姫が月へ帰り、赤子の姿になって終わる。2001年宇宙の旅のテーマ曲は『ツァラトゥストラはかく語りき』。フリードリヒ・ニーチェの同名書でツァラトゥストラは人間には三段階の変化があると説いた。最初はラクダ。ひたすら神を畏怖しモラルを背負わされた状態。次はライオン。自我に目覚め、自由意志で神に立ち向かう状態。最終段階は幼子。神を倒したあと、それに代わる新しい価値を自分で生み出さなければならない。2001年宇宙の旅の主人公ボーマンが最後に赤子の姿になる理由はこれだと言われている。「幼子は無垢だ。ひとつの新しい始まりだ」とツァラトゥストラは言う。かぐや姫が作中で何度も歌う歌も、季節の移り変わり・自然の植物や生き物たちの輪廻転生を表現している。かぐや姫が唯一愛した男性も「捨てられていた子」だから職人の夫婦が捨丸と名付けたようでいて、実はドイツ語の sterben(ステルベン:死)から来ているのでは。捨丸もかぐや姫も元々この世の人間ではないから、世間に違和感を感じた二人は惹かれあったんじゃないか、二人が空を飛んだりするシーンもセックスのメタファーのようでいて実は本当に飛んでたんじゃないか......などと思いながら観てました。「捨丸=ステルベン説」まで読んで「あーあ、この人は...」と思った人はもう読んでないと思うから書くけど、私がかぐや姫を見てて一番思ったのは、雅子様のことです。小和田雅子さま、独身時代は自由に生きていられたのに、皇太子さまから熱烈な求婚(雅子以外の人とは結婚しない、と言われて宮内庁はてんやわんや...と当時報道されていた)を受けて、これまでの人生とは全くの別世界に嫁いだわけですよね。ご病気をされるのも仕方がないと思う。雅子さまの周りに媼や女童のような人がいて、彼女を支えてくれますように。
March 13, 2015
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今日の「笑ってコラえて」は、ピースの2人がダーツの旅で石川県穴水町中居へ。そこで偶然又吉の大ファンのおばちゃんに遭遇。綾部の計らいで又吉とおばちゃんとの2ショットを撮るなどし、おばちゃんに喜ばれていた。今はどうなのか知らないが、少し前までピースのファン同士は仲が悪い場合が多かったように思う(綾部のファンは又吉ファンを『文学少女気取り』『サブカル女』等と罵り、又吉ファンは綾部のファンをただただ気色悪がる......といった不毛な争いがネット上で繰り広げられていた。普通お笑いファンは同じコンビなりトリオなりを応援している場合、協力してチケットを取り合ったり情報交換したりして仲が良くなる場合がほとんどであるため、ピースってちょっと違うよな、と思っていた。ちなみにこの争いを自身のブログで煽り、コメント欄を炎上させニヤニヤと楽しんでいたのはよしもとの先輩、東野です)。今回の又吉ファンのおばちゃんは「又吉さんは天才だから好き!」「俳句の、見てます」と始終又吉先生を褒めちぎっていたが、やはりと言うべきか、綾部に対して特に言及はなかった。おばちゃんが読んでたのは、この本か、これの第二弾の『まさかジープで来るとは』だと思う。せきしろさんと又吉の共著の自由律俳句の世界。私は今『まさかジープで来るとは』を読んでいるが、素晴らしいです。せきしろさんの「なんでも溶かしてしまう液体だったらどうする」は自意識過剰な青年のドギマギが、読む者を「わざわざ休日を使ってまで大の大人が何やってんだ...」って気にさせて、良い。又吉の「味噌汁の椀がツーと動くのを父と見た」も、沖縄出身の父の珍妙な言動の数々が、最初から最後までフルスロットルで畳み掛けてくる。人前で読んだらダメな本だ。絶対笑う。笑ってコラえてのおばちゃんは最後に「漬物たべる?」とピースの2人に問いかけていた。あ、これは芸能人が民家におじゃまして地元の料理を頂きつつトークするやつだな......と視聴者が思っていると、なんとそこには玄関の細く開けた隙間から漬物の袋を又吉に渡そうと腕だけ伸ばしたおばちゃんの姿が。玄関の磨りガラスごしに恥ずかしがるおばちゃんの姿が可愛らしかった。日本人の四人に一人が食べた野沢菜本漬本場・信州で大行列!3,600万人ご来店!!お中元などのギ...価格:1,499円(税込、送料込)爆笑問題の「世界の日本人妻」の番組、録画してあるやつを新しいものから少しずつ順番に見ているのですが、やっと2013年まで来た。あの番組面白いねぇ〜。世界各地に住んでいる女の人の苦労話が興味深い。フランスの日本人レズビアンカップル、ゲイカップルの回も良かった。モンゴルの遊牧民に嫁いだ久子さんの回は最後号泣でした。ご主人が宵越しの金は持たねえ、みたいなタイプでお金が手元にあるとすぐ使っちゃって子供の教育も奥さんに任せきりなんだけど、生まれて初めて息子の参観日に新調したスーツ姿でやってくるのです。子供は大好きなお父さんが来てくれたから嬉しくて嬉しくて、お父さんの方ばっかり見てるわけ。その7歳の心を思うと......ねえ。泣けちゃうよ。ゲストで来たジャニーズの男の子がスタジオで、お母さんの作るお弁当に文句を言ってて、それを聞いてた外国人妻が後ろからバシッと叩いて「お母さん、泣いてるよ!」と叱るところも良かった。
February 25, 2015
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今日のNHKのSONGSは「中森明菜〜歌姫伝説〜」でした。ミ・アモーレの時流れてた映像がこれ。明菜のドレス素敵だね〜ていうか、ちょっと、バックダンサー「ダンシング・スペシャル(振付:小井戸秀宅)」の踊り、すごくない!??仮面というかマスクというか、レインボー&金色の衣装もだけど、あの踊りは「祭りの喧騒の中に漂うほんの少しの寂しさ」を表現してるんだと思う。当時私は小学生で幼かったため「明菜、よく笑わずに歌えるな〜」とか思ってました。家族は全員大爆笑でした。つられて私も笑ってた。当時の歌番組は(明菜に限らず)、挑戦的・実験的な舞台装置や演出が多かった気がします。大川栄策がタンス担いでさざんかの宿歌ったり。歌詞の意味はわからないながらも子供なりにワクワクしながら毎週見ていた思い出。
November 15, 2014
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X-MEN:フューチャー&パストの感想っていうか、X-MEN:フューチャー&パストに出てくるクイックシルバーの感想です。クイックシルバーとは超音速での移動能力を持つミュータントで、演じたのはエヴァン・ピーターズ。エヴァン・ピーターズなんて日頃からただでさえかっこいいというのに、本作では滅茶苦茶速く走れる人って役柄を演じてて、十代のファンにはたまらない姿だったと思う。余談だがトワイライトシリーズでのエドワード人気は、彼の足が速いからなんじゃ?と個人的に思っています。クイックシルバーが白髪なのはなぜか。私はこれも「足が速い」ってことに関係していると思う。超音速で移動できる能力。演じたエヴァン・ピーターズは20代後半ですけど、クイックシルバーは高校生くらいに見える。なのに総白髪。双子のパラドックスの話を知っていますか。光速に近いスピードを出すロケットに乗って旅をしたとして、そのロケットで例えば10年旅をした宇宙飛行士が地球に帰ると、地球ではすでに何百年何千年も経っているという話。双子のパラドックスとはこのことを説明するのに、双子がいたとして、その一方を光速に近い速度で移動させ、もう一方をそうでなくすると、双子なのに年が違ってしまう、という言い方をするから。速度の違うところでは時間の経過の仕方が違う。地球から約200万光年離れているアンドロメダ星雲へ、光速に近い速度が出せるロケットで行くとする。その距離の半分のところまでどんどん加速していって光速ギリギリまで出し、あと半分は減速するという行き方をすることにする。そうすると計算上、そのロケットに乗っている人にとっては28年しか経っていないことになるそうです。地球で観察すると光の速度で200万年かかるところでも、その速度で動いている人にとってはたったの28年。ということは、クイックシルバーはなんらかの形で自分の髪を頭皮ごとどこかに置いておき、身体だけを高速で移動させているのではないか。そうでなければ「髪だけ白髪で、その他の部分は若いまま」の説明がつかない。ただ単にクイックシルバーのおしゃれ心で白髪に染めてるってだけかもしれませんけど。
November 9, 2014
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10月24日の久保ミツロウ・能町みね子のオールナイトニッポンGOLDにて「SMバーに行く大臣をキラキラ変換すると?」「永田町サディスティック」って投稿してた人がいて、なんてトンチの効いた答えか!! と思った。SMバーとかSMクラブって90年代、主にインテリ層の間で爆発的に流行していた印象がある。思えば私が高校生の頃、オーケンもラジオやエッセイで「オレ今SMにハマってるんだ〜」的なことをサラッとカミングアウトしており、当時ケンヂのことが真剣に好きだった私はラジオの前で「そ、そうなんだ...」と震えたものです。ラジオといえば、9月14日の爆笑問題の日曜サンデーに、銀行を定年退職後マンションの一室で保育所を開設する予定の男性が出演していたのですが、あの人は今大丈夫なんだろうか。「子どもたちを外で遊ばせる時は近くの公園を使います」と言い切ってて、これには爆問の二人も「え?」って反応だったと思うんだけど、それで法的な認可がとれたとしても、近隣の住民の理解は得られないんじゃなかろうか。というのも、昨日NHKのクローズアップ現代で「急増する保育園と住民のトラブル」を見たから。放送内容を簡単にまとめると、・いま、全国で「子供の声がうるさい」と住民から保育園への苦情が相次いでおり、裁判に発展したケースもある・その背景には急激な保育園の建設ラッシュがあると考えられる(東京都では今後4年で4万人分つくる予定)★中野区の某保育園(ダメな例)・元々老人の多い閑静な住宅街・「桃源郷のようだ」と地域住民が昔から愛していた静かで緑の多い公園に、住民の許可を得ぬまま強引に保育園を建設してしまった(区による説明会はあったものの、「待機児童をゼロにしなければならないので、とにかく作らせてもらう」という一方的なものであった)・これが住民の反発を招き、住民にとって「保育園=自分たちの生活環境を破壊する異物」として認識されるようになる・園側は苦情回避のため園庭で遊ぶ時間を制限したり、子供の姿が見えないよう窓を目隠しシートで覆うなど工夫しているが、住民との間に一度できた溝は埋まりそうもない☆世田谷区の太子堂地区保育園(良い例)・老人の多い住宅密集地域・5年前に建設を計画した際、騒音問題や送迎自転車による交通事故多発を懸念した住民から反対の声が上がった・長年まちづくりメンバーとして活躍していた梅津さんが、区と住民に対して話し合いの場を持つよう粘り強く呼びかけた 梅津さんが区に求めたこと:計画の詳しい説明、住民の要望をできる限り聞いてほしい 梅津さんが住民に求めたこと:不安や不信感を素直にぶつけること・その結果、一年間に渡る話し合いが実現 「子供の声がうるさいのでは」という意見に対して→声が直接外に響かないよう園庭の場所を内側に変更 「日当たりが悪くなるのでは」という意見に対して→保育園の敷地を掘り下げ建物の高さを抑えることで、住民宅の日当たりを確保・合計7箇所の変更がなされ、自分たちの意見が聞き入れられたことで住民は好感を持ちはじめた・栗田園長(当時)は、保育園を建てたいという思いだけではなく、建てたあとも地域の仲間として迎え入れて欲しかったため、話し合いの場には保育士を伴って積極的に参加した。「絶対いい保育園にしたいので、近隣のあたたかい応援も欲しいのですとお願いしました」・園長や保育士の考えを聞くことで、反対住民も地域の将来像を思い描くようになっていった・保育園は住民の合意を得て3年前に開園・今では地元の祭りに参加するなど、地域の重要なメンバーになっている問題解決のヒントは、話し合い。対話から将来のビジョンが生まれる、という内容でした。すごく良い内容だなあと思ったのですが、ツイッターには最初の部分(老人が文句を言う図)だけ見た人の書き込みが多く、勘違いが勘違いを呼ぶ...みたいなことになっている部分もあった。保育園建設に反対する人々が一方的に悪者ってわけではないんですよ、反対理由を一つ一つ吟味することで見えてくることもあるし、トップダウン方式で進めると反発を生むだけですよという話なのに。高齢者になれば誰だって病気の一つや二つは抱えているものだし、自分の孫でもない赤の他人の保育園児が100人単位で隣に越してくると聞いて「これ以上血圧が上がったら命取りだと医者からは言われているのに...持病のめまいや耳鳴りがひどくなったらどうしよう」とまずは自分の健康を心配するのがそんなに異常なことかな。反対派にも反対派の言い分があり、それぞれ生活があるのだから「保育園を受け入れないのは狭量」と決めつけて進めるのも乱暴な話だと思う。第一、大人同士のやりとりの過程に問題があってこうなっているというのに、一番被害を受けているのは子供たちなわけで、このことを各自のモラルの問題として片付けてていいのかな、とも思う。世田谷の太子堂地区のような保育園が増えると良いけれど。
October 30, 2014
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サンドウィッチマンのカレンダー、超面白くないですか!?全部の写真が力士の扮装って。力士のオフ風のショット満載。表紙も大相撲カレンダーっぽい。2015年版が欲しいです。カレンダー以外にも、お土産の仙台四郎を出した瞬間のさんまの「気持ち悪!」とか、伊達のオナベ疑惑とか、鍋をコーヒーカップに例える伊達とか、セリの根の味の謎とか、すべてが面白かった。この日(10月18日)の放送後、仙台市泉区のfmいずみに、さんまのまんま視聴者からの抗議が殺到したそうです。「サンドウィッチマンにギャラを払え」と、サンドの二人を思いやってのクレーム(?)だったらしいのですが、これに対して二人は「自分たちの言い方が悪くて誤解を生んだけれども(さんまから『俺よりレギュラー多いやないか』と言われて、つい言った事だけれども)、地元でコミュニティラジオをやりたいと話を持ちかけたのはこっちですから。M-1出場前で売れてない時期にこちらから、ノーギャラでラジオやらせてもらえませんか、とfmいずみにお願いして始まったわけですから」と、ラジオ番組の中で説明していました。その辺の事情はさんまのまんまの中でも放送していた事だけれど、その後のトークが強烈でみんな忘れちゃったんだろうな。ちなみにfmいずみのラジオ番組《サンドウィッチマンのラジオやらせろ!》は、やたら外部の音声(救急車等)が入る、ステキな番組です。マミとマイケルのバイリンガルニュース並みにサイレンの音とか入ってくる所が良い。第一線で活躍するお笑い芸人の番組なのに! ハロウィンの時など、お祭り騒ぎしている若者集団があまりに騒がしすぎてラジオ収録に支障をきたし、「あいつらに水ぶっかけてやりてえな」と発言したのはラジオ史に残る名言だと思う。馬油のハンドクリームを買いました。効くといいけど〜
October 18, 2014
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牧場のヤギと馬たちこの日偶然襲って来た軽い地震にも動じず、彼らはユラユラとたくましく生きていました。観光客の小さな女の子がピョンピョンジャンプすると、放し飼いの子ヤギはそれに合わせて前脚をついたり後脚をついたりして飛び上がって喜ぶんです。すごくかわいい。甘えるように女の子の服に顔を寄せたりするし、ヤギと女の子の間に絆が生まれる瞬間を見た。↓押さなくていいです自分で使うやつ。中身はいいんだけどスプレーがポンコツなのでスムーザーの容器に詰め替えて使っています……詰め替えタイプ出ないかな……値段一緒でいいから。
October 12, 2014
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著者:下村敦史感想:今年一番面白かった本。寝食を忘れて一気に読んだ。「目の前のことに集中しているとき人は最も幸せを感じる」と言ったのはマット・キリングワースだけれど、この本を読んでいる間私は間違いなく幸せであった。『闇に香る嘘』の内容を一言でいうと、腎臓をもらう、みたいな話なのだけれど、私はこの一作で下村敦史さんにハートを奪われました。アツシストになりそう。まず主人公が盲目だという設定が良い。人の顔や書面を見て確認することができないから、誰を信用したら良いのかわからなくなる。来週から日米でシーズン5が放送される人気ドラマ「ウォーキング・デッド」にも通じるスリルと面白さ。(あのドラマも生き残り同士だからと安心できない、ハラハラさせるストーリー展開が魅力である)全盲の主人公の実家にいるのは本当の兄ではないかもしれないという疑惑、中国残留孤児の置かれた状況、戦時下における満州の人々の暮らし……視覚障害を持った人が普段どのように生活しているのか、その一端が垣間見えたのも興味深かった。液体プローブなんて道具も知らなかったし、点字に隠されたミステリーもワクワクして読んだ。ただ一カ所だけ違和感を感じた部分を挙げるとすれば、主人公が冬の北海道で猛吹雪にさらされるシーン。「逆巻く雪嵐のせいで方向がわからない。複雑なジェットコースターのレールさながらに音は曲がりくねり、上昇し、下降し、また曲がり、そして私の耳に届く。右か左か、前か後ろか…」は確かにその通りでリアリティがあるけれど、歩き続けている人間が寒さのせいで「全身の血管を冷水が駆け巡っているように感じ」ることはないです。雪の降らない地域、特に盆地のような地形の場所であれば、冬は骨の髄から冷え込むような寒気を感じるものだけれど、積雪地域であれば降雪がある時点で湿度は高いわけで、身体の熱は外気にそれほど奪われず、結果、感覚は寒いというより「皮膚の表面が痛い」に近くなります。吹雪いているなら寒さより呼吸のし辛さが先に来ると思う。こんな重箱の隅をつつくようなことを言ってもいけませんね。凍死寸前になったら全身を冷水が駆け巡るような寒さを感じるのかもしれない。読み終えてつくづく思ったのは、中国残留孤児という「日本人」が出した嘆願書が何度も廃案になってきた現状で、外国人の、しかも女性が戦時中日本兵に人権を蹂躙されたと訴えたところで日本政府にそのまま取り合ってもらえる可能性は限りなく低いのだな、という諦念にも似た気持ちです。水木しげる先生の話や美輪明宏さんの歌を聴くと、彼女たちに同情してしまうし可哀想だとは思うのですが。日本の原爆被害者、空襲被害者、シベリア抑留者が国家による賠償を受けていないところを見ると、「日本の軍人」ではなかった彼女たちの訴えが尊重されるかと言ったら、それはやはり難しいだろうなと思うのです。戦後何十年も経て彼女たち自身の記憶の書き換えもあるだろうし。強制連行は捏造だという報道もあった。最後に。主人公の娘・由香里がルームシェアしていた女性看護師は、由香里と恋人関係にあったのでは? いくら友人といえども腎臓に疾患を持つ子供の世話をするという、看護師の仕事の延長とも言える負担を彼女は喜んで引き受けているし、独りで十分暮らしていけるだけの収入もあるにも関わらずシングルマザーの友人と生活を共にしている。「強い友情で結ばれていたからだ」とも考えられるけれど、親の面倒を子が看るのは当然とする父親のせいで何度も交際相手に愛想を尽かされてきた由香里に優しく接してくれた唯一の人である女性看護師との間に愛情が芽生えたとしても何の不思議もない。しかしそうだったとしても由香里は女性の恋人がいるという事実は、盲目で昔ながらの考え方を捨てきれない老人である父親には一生言わないままでいると思う。由香里は優しいから。
October 11, 2014
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ロビン・ウィリアムズ死去。アルコール依存症更生のためリハビリセンターに入所、重度のうつとも戦っていたそう。アフレコ時の彼のアドリブが面白過ぎて、ディズニーに「ジーニーはハイテンションキャラに変更しよう」と決断させたアラジン(1992)での演技、今も大好き。
August 12, 2014
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American Horror Story (Coven)アメリカンホラーストーリー シーズン3最終話 「新たなスプリーム」あらすじスプリーム選出前日の夜。スプリーム候補4人(ゾーイ、マディソン、クイニー、ミスティ)とマートル、コーデリアは夕食を共にする。マートルは言う。「スプリームを継ぐ者にとっては最後の気ままな時間。他の者にとっては最後の晩餐かも」日曜の夜明け。現代の魔女スティービー・ニックスは今日スプリーム試験に臨む4人に Seven Wonders を歌いエールを送った。スプリームの条件である“7つの奇跡”をテストする順番はマートルが決めた。まずはテレキネシス(念力)。これは4人全員が合格。次に試されるのはコンシリアム(意思操作)。相手の心をコントロールする能力が試される。ミスティ・クイニーのペアは両者とも成功。クイニーは自分自身を平手打ちし、ミスティは痛みを感じるまで自身の髪を引っ張った。一方、ゾーイ・マディソンペアは、マディソンの力でゾーイ自身を平手打ちさせたあと、自分の元にカイルを寄せ彼に口づけさせてから自分の靴を嘗めさせた。ゾーイはカイルをマディソンから引きはがし、彼とキスしたが、ここでコーデリアが生徒同士の醜い争いを止めた。「もういいわ。次」夜になってからの試験はディセンサム(冥界を訪れること)。日の出までに魂が体に戻らなければ死ぬ。4人で呪文を唱えた次の瞬間、クイニーは再びチキンを売る仕事をしていた。並んでいる客も同じ。クイニーは一番乗りで元の体に戻った。2番目に戻ったのはマディソン。彼女は女優の仕事でテレビの『サウンドオブミュージック』に主役以外で出ていたと言う。3番目はゾーイ。カイルと自分が別れる世界だった。「僕はここにいる、大丈夫」ゾーイに駆け寄るカイル。ミスティだけは彼女の人生の中で最悪だった時期から戻って来られないでいた。小学生のミスティはカエルの解剖をしている。死んだカエルがあまりに可哀想ですぐに蘇生してしまうミスティ。それを見ていた男子が教師に告げ口をした。教師から、生きたカエルを持って来てイタズラしている疑惑をかけられ、ついには教師の見守る中生きたカエルの腹を裂くよう命じられる。生き物を殺したくないミスティは泣き叫びすぐさまカエルに命を与えた。生き返らせる度に殺さなければならない。何度も何度も。永遠に続く地獄からミスティは逃れられない。時間切れだ。アカデミーではミスティを心配したコーデリアが彼女の身体を抱きしめ呪文を唱えたが、ディセンサムは本人にその能力がなければ戻れない。ミスティの身体は朝の光を浴び、コーデリアの胸の中で灰になった。次に行われたのはトランスミューテーション(瞬間移動)。コーデリアが注意を促すも聞かず、ゾーイ、クイニー、マディソンはゲーム感覚で瞬間移動を楽しんでいたが、途中、一人が欠けた。ゾーイだ。彼女はアカデミーの門扉の鉄の柵に胴体を貫かれて死んでいた。彼女の不注意が招いた事故だった。すぐさまアカデミーの温室にゾーイの遺体を寝かせ、ヴィタラム・ヴィタリス(他者に生命力を分け与えること)を行うよう指示するコーデリア。クイニーが挑戦したが、今回は無理だった。マディソンはかつて自分を生き返らせたゾーイの蘇生を拒否し、近くを飛んでいたハエを殺した後、手の中で蘇生してみせた。マディソンは一人でもライバルを減らしたいのだ。しかもゾーイはカイルの心を独り占めしている。マディソンにとってゾーイを生かすメリットはなかった。力ある者がスプリームよ。フィオナの気持ちがわかるわ。その夜。歴代のスプリームの肖像画に囲まれ、コーデリアとマートルは話し合った。「私の力不足で……。もしマディソンがスプリームになるなら、魔女団は滅びたほうがマシかも」コーデリアの言葉に頷くマートル。「私も同じ事を考えていた」続けてマートルは言う。「母親のせいで自分を卑下してるけど、あなたには力があるわ。7つの奇跡の試験を受けて」その頃温室ではカイルがゾーイの遺体に寄り添っていた。彼は「一人で逝くな」とゾーイのために涙を流した。翌日。スプリーム試験のテーブルにコーデリアが加わった。「バカみたい」と言うマディソンに「あなたがね」とクイニー。コーデリアは消えたロウソクに火をつけ、さらにアカデミーの暖炉を燃え上がらせた。パイロキネシス(発火能力)は文句無しに合格だった。その後、コンシリアム(意思操作)でクイニーをダンスさせ、テレキネシス(念力)でアカデミーの巨大なピアノを宙に浮かせた。ディセンサム(冥界を訪れる)でコーデリアが見た地獄は母に許可を得ようとしたら平手打ちされる記憶だった。トランスミューテーション(瞬間移動)したコーデリアは続けて言う。「昔よくあったわ」。6つ目の試験はディビネーション(予知)。亡きスプリームの遺品の隠し場所を当てるというもの。コーデリアは正確にブローチの在処を当てた。予知能力のないマディソンはフィオナの前のスプリーム、アナ・リー・レイトンの遺品の隠し場所を当てるよう指示されるも2度外し、ここで落第した。マディソンは魔女団のことをゴシップサイトに全部バラしてやると捨て台詞を吐き、ハリウッドへ戻る荷造りを始めた。そこへカイルが現れ、マディソンの首をしめた。「なぜ助けなかった? お前もあの真っ暗な場所を知っているだろう!」カイルとマディソンのたった一つの共通点である死。それが2人を結びつけた時期もあったが、両者は全く性質の異なる人間だった。マディソンはカイルの手で殺害された。死んだマディソンの金髪をなでようと小さな白い手が伸びてきた。それは天使ではなく、陶器人形の手を動かすスポルディングだった。冥界へ旅立とうと準備していたスポルディングは再び死んだマディソンを手に入れた。マディソンが息を引き取ったちょうどその頃、コーデリアはゾーイの蘇生に成功した。花開いたスプリームは輝き活力をもたらす。コーデリアは自分の目で温室の花々の美しさを見た。マートルたちは新スプリームの誕生を祝福した。スプリームとなったコーデリアはアカデミー内にマスコミを招き入れた。「カルトではありません。改宗を迫ったり、儀式や入会の強要はしない。魔女として産まれた人は特別な力を持っています。DNAによって受け継がれた力。魔女は努力してなれるものではない。若い魔女の中には、襲われるのを恐れて連絡しない人もいる。でもそれでは強くなれない。無知な人は我々を標的にするでしょう。でも我々には力がある。自分が魔女かもと思っている少女たちは、電話やEメール、直接来てもいいわ。家族があなたを待っています」この報道後、生徒数4人だったミス・ロビショーズ・アカデミーに全米から入学の申し込みが殺到した。クイニーとゾーイに委員会を任せることにしたコーデリア。マートルはコーデリアに上に立つ者の心構えを語った。「上品な慎ましさは時代遅れだからやめなさい。新しい時代の幕開けよ」そして、新しくまいた種の成長を妨げる腐った古い根は取り除くべき、とも。マートルは仲間であるペンブルクとクエンティンを殺めてしまった。そのせいでコーデリアの評判に傷がつくのは避けたい。マートルには火あぶりになる覚悟がある。『本当の母』になってくれたマートルにそんなことを出来るはずもないコーデリア。しかしマートルは偽善は決して許されない、自分は意味のある死を迎えたいと言う。コーデリア、ゾーイ、クイニー立ち会いのもと、魔女を殺した罪により、新スプリームの権限でマートル・スノーは火あぶりの刑に処された。マートルの最後の言葉は「コーデリア、私の可愛い娘。心から誇りに思うわ」。バレンシアガと叫んでマートルは死んだ。アカデミーの周囲には子供から大人まで、黒ずくめの女たちで溢れていた。皆それぞれの事情を抱え、抑圧されてきた者たちだ。そんな中、コーデリアはある部屋に向かった。コーデリアが話しかけたのは、髪の毛が抜け生気を失ったフィオナだった。フィオナは古いスプリームは死んだと思わせる計画をアックスマンに語っていた。新スプリームが誰かを探るために嘘の情報を流すのだ。唾液の魔術でフィオナはアックスマンの意思を操作しアカデミーに突入させていた。フィオナは出産した瞬間からコーデリアに能力が吸い取られていくのを感じていた。娘の顔を見る度自分の死を見ていた。そんなフィオナを見てコーデリアは母から嫌われていると思って生きて来た。「心から愛していたわ」とフィオナ。「私なりのやり方で。あなたの理想の母親像とは違っただけ」。能力は母から娘へ流れ込み、受け継がれる。フィオナの死がコーデリアを輝かせる。早く殺してくれと差し出すフィオナのナイフをテーブルに置き、コーデリアは母を抱きしめた。「力も魔術も失って、あなたはやっと人間らしい経験ができてるの。誰も救ってあげられない。独りで向き合うの、最後まで。経験するしかない。恐れと痛みを感じるしかないの。受け入れて、自由になって。初めて抱きしめた」コーデリアの腕の中でフィオナは眠るように死を迎えた。埃の充満した空気のせいで咳き込みながら目覚めたフィオナは、見慣れない室内に戸惑った。田舎の家だ。あまりの眩しさに汚れたカーテンを閉め、曇った鏡を見た。髪がある。そこへフィオナの嫌いなナマズを持ったアックスマンが入って来た。ここはアックスマンの言っていたコビントンの農場だ。こんな田舎も、こんな下品な男もイヤよ! 「毎朝そんな調子だな」アックスマンは言う。「起きるなり『ここはどこ?』って感じで怒るだろ」いつからここにいたのか。それはアックスマンにもわからない。永遠だから。ずっと俺と一緒だよ。魚と猫のおしっこのにおいの家の中で笑う男がいた。パパ・レグバだった。スプリームであるコーデリアの指示で執事のカイルがドアを開けた。たくさんの若い魔女たちが入って来る。コーデリアは彼女たちに言う。「私たちは生き残るだけで精一杯だった。でも皆さんは助け合えば生き残る以上のことができる。我々の時代が来るわ」アジア系の魔女が質問を投げかけた。「スプリームって? 目の前にいる?」クイニーとゾーイが目配せし合う。コーデリアは静かに微笑んだ。感想最高の最終回。特に、コーデリアがフィオナに語ったシーンは号泣でした。どれほどの思いでコーデリアは今まで生きて来たのか。この台詞を言うためにどれほどの時間を要したか。フィオナが生きているうちに自分の気持ちを伝えられて本当に良かった。スピーチでコーデリアは魔女団の活動をSurviveと表現していましたけど、彼女は魔女であると同時に虐待家庭におけるSurvivorです。毒親の元に産まれてしまった子供。最初の頃のコーデリアはアカデミーでの教育方針も「能力を抑制する方法を学ばせる」としていました。しかしマートルの愛情に支えられてようやく自尊心を持つ事ができるようになったコーデリアは、最終回でマスコミやアカデミーでのスピーチを通して若い学生たちに自信と勇気を与えます。これまでは生き残るだけで精一杯だったけれど、助け合えばそれ以上のことができる。すべての被虐待児(ドラマの中では、コーデリア、カイル、ルーク、マディソン)、マイノリティに属する人々へのメッセージだったと思います。
July 27, 2014
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