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懐かしい映画だ。 「蒲田行進曲」の二年後の作品で、風間杜夫や松坂慶子、平田満など、キャストが重なっている。 1936年、軍国主義が台頭して不自由になった日本から、まだ自由が残っていて、異国でもあり日本でもあるような上海に、クラリネット奏者(風間杜夫)と妻(松坂慶子)が現れる。 現地で活躍していたトランペット奏者(宇崎竜童)と、その恋人の中国娘(志穂美悦子)の四人が中心。 上海は自由ではあるが理想郷ではなく、中国人への差別があり、やがて日本軍が幅をきかせ中国人との間に溝ができてきたりする。 日本軍による残虐な行為も描かれている。 ショーのシーンは華やかで、松坂慶子と志穂美悦子が歌い踊る。 世相的にもハッピーエンドにはならない。 この時期の上海というのは、日本人にとっては舞台にしたくなるもののようだ。 生島治郎の「黄土の奔流」や森川久美の「蘇州夜曲」「南京路に花吹雪」を思い出す。 上海ロケも行われていて、街並みは本物のようだ。
2024.10.09
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ブルース・リーが制作途中でなくなったために未完に終わった映画を、ハン・キンポーがユン・ピョウらを使って完成させた映画。本人が出ているのは、最後の、強敵と戦いつつ上の階に登っていくところだけで、あとは別人が演じている。 ただ、生前の映画「ドラゴンへの道」や「ドラゴン怒りの鉄拳」などの映像も使われている。特に、「ドラゴン怒りの鉄拳」のラストシーンはストーリー展開上意味がある場面になっている。 武術指導をしたハン・キンポーも、武術家役で出演。 クライマックスは、ブルース・リー本人が出ているのだが、生前に撮影されたフィルムはいろいろ事情があって使えず、後ろに倒れている人が写っているのに、その人が何者なのかわからなかったりするはずなのだが、ぼんやり見ていたのでよくわからなかった。 ブルース・リーを直接知っている人たちの、愛情、憧れが結集した映画だ。
2024.07.17
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ブルース・リーの監督作品。どんな映画を作りたいと思っていたのか、その一端を知ることができる。 中国を舞台にしていないのは、中国が舞台ではそれまでの映画の域を出ることができないと考えたからだろう。ただ、ローマで撮影されたのはほんの一部らしく、スタジオ撮影がほとんど。それでも、よくある香港映画とは一線を画している。 不思議なのは、レストランの従業員たちのアクションがあまりうまくないこと。アシスタントとして、出演もしている小麒麟が指導したようだが、みな素人なのだろうか。ジャッキー・チェンらが敵の門下生を演じた「ドラゴン怒りの鉄拳」に比べると見劣りする。 何度も現れる敵の部下は女風の仕草をしているのだが、テレビで放送された日本語吹き替え版ではそれが理解できていないらしく、ただのヤクザのような吹き替えになっていたのを覚えている。 チャック・ノリスとの一騎打ちは見応えがある。立てなくなっても立ち向かう姿は、立派でさえある。 スターが自ら理想とする映画を作る、というのは、ブルース・リーの独奏ではないのかもしれないが、サモ・ハンやジャッキー・チェンらに受け継がれていき、開花した。
2024.07.12
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本当に久しぶりに見た。 主題歌があったことに驚いた。 テレビ放送で見たが、放送されたのは英語版だった。 日本人が悪役。 霍元甲の死から始まり、霍元甲が日本人に毒殺されたという伝承に基づいている。この、日本人による毒殺説は、周囲の証言で否定されているのだが、当時の中国の状況を象徴する話として広まっているのだろう。 公園に、「中国人と犬は入ってはいけない」という掲示があるが、上海を研究している人の話では、実際には、「中国人は入ってはいけない」「犬を連れて入ってはいけない」という注意書きが併記されていたのだそうだ。 犯人が腹巻きをしていることで日本人だとわかる場面がある。これは覚えていた。日本人独特の習慣で、中国人は腹巻きをしないのだ。 ソーラン節に乗せたお座敷ストリップは全く覚えていなかった。 ヒロインのノラ・ミャオは可憐で美しい。 前編、拍子木を思わせる音が使われ、日本的なものを取り入れている。 中国人の日本人間、中国文化を知る面でも勉強になる映画だ。
2024.07.08
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オープニングの口上の声がなんだか違うなと思っていると、歌になって桑田佳祐だとわかり、桑田佳祐が主題歌を歌う姿が映し出される。 渥美清の死後20年以上たって制作された「男はつらいよ」。主人公は満男(吉岡秀隆)。 実質的に「男はつらいよ」の終盤は満男が主人公だった。 作家となり、妻に先立たれ、一人で思春期の娘を育てている。親子の関係は良好。 博とさくらはくるまやを継いでいる様子。満男の亡妻の法事から思い出話につながっていく。 久しぶりに登場の御前様は何度もちょい役で出ていた笹野高史。 思い出話の中のおいちゃんは、森川信だったり松村達雄だったり下條正巳だったりする。それも懐かしい。 回想シーンもあるが、満男と泉(後藤久美子)との再会から現代の泉の状況が明らかになる。 もともと家族関係には苦しんでいたが、入院中の父親(橋爪功)と、離婚した母親(夏木マリ)との関係も苦しい。 見舞いとして顔を出した満男に、父親がとんでもないねだりものをするところが見ていてつらい。 それぞれ結婚し、別々の家庭を持ったものの、満男と泉は互いに思い合っていたということで、家族が知ったらどう思うだろうと心配になる。 結局幸せなのは、さくらなのだ。夫婦仲はよく、孫娘にも好かれている。 思えば、「男はつらいよ」は、最初から、さくらの幸せを願う話なのだった。
2024.07.03
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吃音の主人公・志乃(南沙良)は、高校入学早々の自己紹介がうまくできずに苦しみ、同級生から奇異の目で見られるが、加代(蒔田彩珠)はからかったりせず、親しくなる。加代は音楽が好きで、ギターの練習をしているのだが、歌が下手なので人前で歌えない。 なぜか志乃は歌うことはできるので、二人でストリートミュージシャンのようなことを始める。 ここからの、二人のシーンが美しい。海辺の街が舞台なので、海沿いを走り、小舟の中で横になり、二人だけの時間の中に生きる。 歌うのは「あの素晴らしい愛をもう一度」。ギターは本人が弾いているのか、きちんと練習はしているがうまいというほどではない。あるいはプロがわざとそう聞こえるように弾いているのか。 この歌を歌いたくなるのはわかるのだが、3番で転調するので、実は初心者には難しい。 二人だけの時間は続かず、お調子者の同級生(萩原利久)の乱入などがあり、世界は壊れてしまう。 二人で目指していたはずの文化祭がクライマックス。 ここは私の好みではなかった。しかし、原作者の、吃音者としての願望の発露なのだろう。 主演の二人が自然で好感が持てる。非常に爽やかな青春映画だ。
2024.06.20
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ジャッキー・チェンとジェット・リーの夢の共演が実現した映画。 「西遊記」の世界をベースに、アメリカの高校生が、如意棒を手に入れたことをきっかけに、古代中国のような異世界に入ってしまい、如意棒を、本来の持ち主である孫悟空に渡すべく、酒を飲んでばかりいる拳法の達人(ジャッキー・チェン)と、謎の少女ゴールデン・スパロー(リウ・イーフェイ)、途中で一緒になる道士(ジェット・リー)と五行山を目指して旅をすることになる。 主人公はカンフー映画が大好きだったが、自分では経験はなく、二人の師に鍛えられることになるが、そこは香港映画そのままの、若者が修行で痛めつけられるエピソードになる。 少年の成長物語にもなっている。 ジェット・リーは孫悟空と道士の二役で、孫悟空が復活したときに道士の正体が明らかになる。道士役の時は年齢を感じさせるが、動きには安定感があり、さすがだ。 異世界で冒険し、現実世界に戻ったときには成長しているというのは、ファンタジーの常道ではあるが、「こうなるのだろう」と予測させておいてその通りになるからこそ安心してみていられるのだろう。
2024.06.18
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下村湖人の「次郎物語」第1部の映画化。映画にしたくなる気持ちはわかるのだが、無理がある。と思ったら、この映画の前に三度も映画化されているのだった。 青年になった次郎がナレーションを交えて子供時代を振り返るもの。 乳母(泉ピン子)のところから、両親(加藤剛、高橋恵子)のもとに連れ戻されるところから始まる。 祖母からひどい扱いを受けるのは原作通りだが、母親は優しく接するのが原作とは違う。母親もまたわだかまりがあり、何かとひどい接し方をしていたはずなので、そこがないのは物足りない。 父親も立派すぎる。 ただ、映像は美しい。屋外での撮影がほとんどで、画面が明るく広々としている。 映画についてはあまり語ることがないので「次郎物語」にまつわることを書いておく。 「次郎物語」は、小学生の時に、子供向けの文学全集で第1部を読んだ。心引かれるものがあり、何度か読んだ。最後まで読んだのは高校生の時だ。 成長するにつれて感情移入しにくくなったのは不思議だった。 さらに、全く記憶にはないのだが、テレビドラマを見ていた。 NHKで1964年から放送したもの。 かろうじて記憶がある頃、パジャマではなく寝間着を着て寝ていたのだが、その寝間着を「ジロー」と読んでいた。「次郎物語」で次郎が着物を着ていたためだった。母は主題歌も覚えていて、「次郎、次郎、見てごらん、松の根は岩を砕いて生きていく」と歌ってくれたことがある。 松の根の話は、高校生の時に全部読んだら、次郎がかなり成長してからのこととして出てきたので驚いた。 映画について調べるために検索したら、なんとNHKのアーカイブでオープニングを見ることができるのだった。 たしか、母は、次郎が橋の上に立っていたと言っていたはずだが、確かに橋の上に立っている。 検索したら、下村湖人が、小中学生向けに書き直した「次郎物語」があるのだという。 とんなものなのだろう。私が読んだのは編集者が手を入れたものだったはずだ。作者自身が書き直したというのは興味深い。
2024.03.01
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この映画は遠い昔に映画館で見たし、テレビでも何度か見た。 わかりやすく、面白い。斬新ではない設定なのに面白いのはなぜかというと、キャスティングと取り方がすぐれているからなのだろう。 当時は無名だったというオードリー・ヘップバーンのういういしさ、グレゴリー・ペックの大人らしい対応。 映画の中では「若い」ということになっているが、グレゴリー・ペックは三十代後半で、日本の感覚では若くは思えないのだが、年長者が若い役を演じるのは洋画では珍しくない。アメリカ人は違和感を感じないのだろう。 当時の風俗も興味深い。ヒロインが宿から抜け出して荷台に乗り込むのが、三輪トラック。 カメラマンがライター型のカメラを使うが、これは実在した日本製品なのだそうだ。 スクーターの二人乗りでローマのまちなかを走る場面で、屋台を壊してしまったりする場面は、後世に大きな影響を与えたのではないだろうか。 ストーリーを知っていても飽きることがない。 名画というのはそういうものなのだろう。
2024.02.14
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舞台は昭和初期の宇都宮。 採石場が舞台になることが多く、屋外撮影が多く、珍しく画面が明るい。 ただ、墓石などは屋外で撮影しているのに、墓参の人がいるカットになるとスタジオ撮影になっている。 弟分のために、心ならずも人望のある男を切った主人公(高倉健)。 刑期を終えて出所して帰ってくると、自分の人を切らせた悪辣な男が幅をきかせ、大谷石の利権独占を狙っていた。一方、弟分は幸福な夫婦生活を送っていて、主人公をあつくもてなす。 主人公は、かつて切った男の墓参をするなど、後悔の念を抱いて街の様子を見ているうちに、かつて殺した男の子供と、男の妻と知り合う。その未亡人が三田佳子で、任侠ものでは新鮮。ただし、あくまでも堅気の石材業者。その息子の子役が穂積ぺぺだったので驚いた。 物語は予想通りの展開で、未亡人と息子は主人公に好意を抱くが、主人公は耐えきれず、自分のしたことを告白する。 その一方、自分に男を切らせた悪党の所業を知り、怒りの炎を燃やしている。そんな中、かつては未亡人たちの支えであった男が帰ってくる。 最初は対立するが、最後には力を合わせるという展開が最初からわかっているのだが、それでも面白く見ていられる。 東映映画の任侠道と武士道は同じものなのだ。
2024.02.12
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経歴は全くわからないが腕の立つ子連れの主人公(高倉健)が、金に困って土地のヤクザに身を寄せるが、これはまっとうなヤクザで、その娘(富司純子)は、子供の世話をし、主人公に思いを寄せる。まっとうなヤクザというのは無理があるのだが、それを感じさせない展開で、自然に主人公側に肩入れしてしまう。 すぐに一目置かれ、跡継ぎ候補となるが、実はヤクザには果たせなかった夢があった。 それが、露天商をまとめて、どこの一家の支配も受けない露天商組合を作ることだった。しかし、かつて、対立する一家の妨害で挫折したのだった。 娘と結ばれ、義父の夢を託された主人公は、自らも慣れない露天商となり、なんとか組織化しようとするが、あくどいヤクザ一家の妨害が繰り返される。 ついに主人公の怒りが爆発して、ということでいつもの展開になるのだが、露天商の利権争いというのが、なんだがほのぼのしているようにさえ思える。 最後には、主人公の仲間のヤクザたちが楽しく露天商の仕事にいそしんでいる。 陰惨なのか明るいのかわからない話で、何でもありの突き抜けた発想に感心した。
2024.02.10
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火野葦平の原作小説を映画化した前作に続く作品ではあるが、内容にはつながりはない。 映画そのものはいかにも東映ヤクザ映画という雰囲気。 富司純子と高倉健の純愛ものになるのかと思いきや、主人公の高倉健はちゃんと結婚相手がある。その妻が中村玉緒で、いかにもヤクザ映画の女房らしい行動をする。 肉体労働市場を巡るヤクザ同士の抗争が描かれてはいるのだが、そういう階層の地位向上、生活の安定をめざすヤクザの奮闘もある。 富司純子は博打の才もある刺青師。 舞台は九州から浅草といどうするのだが、スタジオ撮影がほとんどなので、どこが舞台でも同じ気がする。出演者が忙しすぎて、現地ロケを充実させることができなかったのだろうか。これに比べると日活アクションはご当地ロケが多かった。 博打の場面が出てくる。しかし、よくある丁半博打ではなく、袱紗で花札を隠す博打で、これはかなり専門的なものらしい。見ていても何をしているのかわからない。 こういう細部が本格的で、手打ちの場面で、居並ぶ顔役たちが羽織のひもをほどいた状態で手打ちをし、手打ちが終わるとひもを結び出すあたりも、おそらく本格的なヤクザのきまりなのだろう。 片岡千恵蔵、鶴田浩二のほかに若い伊吹吾郎が出ているのだが、伊吹吾郎がどうにもヤクザには見えない。 ヤクザ映画もいろいろ見たが、こういう伝統的な義理人情路線のヤクザ映画というのは、つまるところ「葉隠」と同じ美意識に貫かれているのではないだろうか。 「ヤクザとは死ぬことと見つけたり」というのが根本的なテーマなのだ。
2024.01.17
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「日本侠客伝」シリーズの最終作。「刃」と書いて「ドス」と読む。 明治二十年の金沢が舞台。九州から流れてきた主人公が、空腹で倒れそうになっていたところを、育ちの良っそうな娘(十朱幸代)に救われ、一方的に恋心をいだくが、そんなことはおくびにも出さない。 郵便物の輸送を生業とする会社で働くのが面白い。冒頭で、輸送のための馬車が出てくる。 郵便事業は国営なのだが、江戸時代に発達した飛脚制度と補完し合う面があった。 書簡類は国営の郵便が請け負い、荷物の運送は民間が担当していた。 強盗対策として拳銃を所持していたこともあった。 そういうことが背景にあり、さらに民権運動もからんで、話は複雑になっている。 池部良が非常にいい役で出ているのだが、この人の困るのは、どうしてもヤクザには見えないこと。 物語は迷走気味という印象を受けた。
2024.01.10
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この映画を見るのは三度目だ。 最初は、高校生の時。「いちご白書をもう一度」がヒットしたのをきっかけに、テレビで放送された。当時、新任だった教師が、この映画が大好きで毎日のように見に行ったと言っていた。 最後のストップモーションは強烈な印象を残した。 2度目は10年以上前に、レンタル落ちのビデオテープの安売りで見つけて見直した。 その時もこのブログに感想を書いたはずなのだが、見つからない。検索しても出てこない。 その時検索して、「リンダ」を演じた女優が、ゼナ・ヘンダースンの「ピープル」シリーズをテレビドラマ化した「不思議な村」に出ていたのを知って驚いたことを書いたはず。 今回は、年を経た分、大分中身が理解できた。 斬新な手法がとられており、心象風景と現実が入り混じっている。 最初の方の、白塗りの若者が、周りを取り囲む大人たちからああしろこうしろと言われるところは「時計じかけのオレンジ」のようだと思ったが、この映画の方が先。 固い思想を持って純粋に学生運動に参加したわけではないのだが、だんだん、世の中と自分のかかわりについて考えるようになり、のめり込んでいく。しかし、運動の指導者の意見をそのまま鵜呑みにすることはなく、現実との乖離にも気づくし、自分なりに解決策を探る。 自分たちのしていることが周囲には全く影響を与えていない、と考えることもあるのだが、立てこもった時に、柵の外で、ロウソクで賛同の意を表す人々もいる 描かれているのは、サイモンとリンダの恋愛ではなく、ある「時代」なのだ。 「いちご白書をもう一度」で、就職が決まって髪を切るという歌詞について、歌で描かれているのは高校生の話ではないか、と書いたことがある。 それは見つかった。ここ。 それに対して、当時を知るという方から、当時は就職が決まってから髪を切ることは珍しくなかった、というコメントを頂いたことがある。 それはここ。
2024.01.09
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浜辺美波主演の映画。 原作のマンガのこともアニメ化されたものがあることも全く知らずに見た。 なかなか面白い。 理想郷のような施設で暮らす孤児たち。しかし、その施設は、子供を育てて「鬼」の食料とするための飼育場だった。 真実を知った主人公たちは、施設の外の世界への脱出をめざすことになる。 全員日本語で話すが、舞台は日本ではない。孤児も多種多様で、主人公は金髪。 施設で触接子供たちを管理しているママ(北川景子)との心理戦、敵なのか味方なのかわからないシスター(渡辺直美)の登場、敵のようにも見える孤児仲間など、物語は充実している。 「鬼」が何者なのか、誰が施設を作ったのか、ということについては説明はない それがかえっていい。 観客層としては中学生・高校生を意識して作ったのだろうが、脱出ものとしてよくできている。 主人公が金髪なのが、「キイハンター」で、金髪のカツラをかぶって某国の大使になっていたのを思い出させて懐かしかったが、若い人にはわからないよね。 いわばジュブナイル小説の佳作である。
2024.01.06
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舞台は千葉県銚子。時は昭和の初め。 病弱な妻(富司純子)を連れた主人公(高倉健)が、運送会社で働くことになる。 その運送会社は、もとはヤクザ一家だったのが足を洗い、堅気になって経営しているもの。 何台もトラックを所有し、経営は安定している。しかし、その会社を合併して乗っ取ろうというこれももとは同じ稼業の男がいて、あれこれ嫌がらせをしてくる。 若い連中は、「軽便食堂」という看板を掲げたところで飲み食いしているが、そこはこれももとはヤクザの伴淳三郎が娘と切り盛りしている。伴淳三郎は、主人公を見ただけで、ただ者ではないと見抜く。 とにかく、義理人情をわきまえている者は悪党に殺され、直接の利害関係はない主人公が単身乗り込んでいくことになる。 妻の富司純子はほとんど入院しているので、あまり出番がないが、病弱な役もなかなか可憐である。 興味深いのは、悪党の運送会社は、馬車が中心でトラックが少ない、というところ。馬車からトラックに移行していく時期なのだ。また、悪党は軍とも結びついているというのがお約束らしい。
2024.01.05
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「網走番外地」はずいぶん見たのだが、このシリーズは見たことがなかった。テレビで放送されたので初めて見た。 シリーズとは言っても、内容につながりはないらしい。 時は昭和初期。関東大震災からの復興三周年記念興行というのが出てくる。 元はヤクザだったが、今は足を洗って浅草六区で興行会社を営む男(内田朝雄)の息子(高倉健)が久しぶりに帰って来るというところから始まる。 息子は船に乗っていて、久しぶりの帰郷。 浅草では、老いたもと侠客(島田正吾)の娘(富司純子)が待っている。 しかし、お約束通り、悪い連中が興行権のっとりを企んでいろいろ嫌がらせをしてくる。 父を殺され、素人ながら二代目を継いだ主人公は耐えに耐える。 心配して戻ってきたかつて父の世話になった男(長門裕之)と島田正吾はなんとか敵を倒そうと二人きりで殴り込むが、目的は果たせない。 一方、主人公は高名な浪曲師(村田英雄)の力を借りて興行を成功させようとするのだが、妨害は止まらない。 というように、若い俳優も、老優も見せ場があり、村田英雄は浪曲をたっぷり聴かせる。 見所満載で充実感がある。 最後は、祝言を挙げた上で、手下の藤山寛美と二人で切り込んでいく。 藤山寛美は本来は松竹の人なのだが、の時期は松竹を首になっていて、東映を頼っていた時期らしい。 映画としても面白く、芸能史の面でも興味深い映画だった。
2023.12.27
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懐かしい。 森田芳光の映画は、「の・ようなもの」が斬新で驚いたが、この映画も凄かった。 久しぶりに見たのだが、ATG映画だったのだ。忘れていた。ATGの映画の中では最大のヒット作ではなかろうか。 飲食の音など、身近な音が強調されているのに、音楽を聴く場面になると音がしない。さらには、エンドロールでも音楽は全く流れない。 松田優作はそれまでの印象を一変させていて驚きがあり、中学生役の宮川一朗太はこれがデビュー作で、ういういしい。 高校受験のために家庭教師を雇った一家。息子は親の望む高校に合格して、表面上はめでたしめでたしなのだが、実際には、それぞれバラバラだったのがさらにバラバラになり、実質的には崩壊しているようなのだが、クライマックスの後、家族で一緒に片付けているのを見ると、再生への一歩を踏み出したようにも見える。 誰でも思いつくだろうが、この映画が、伊丹十三の映画監督生活に大きな影響を与えたことは間違いない。
2023.12.18
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アメリカで製作された映画だが、東映の製作なのだそうだ。 ユリアを鷲尾いさ子が演じている以外は、現地の俳優が出演している。 ケンシロウとシンの戦いが中心で、シンに捉えられたユリアを救い出す話。 世界は荒廃した近未来ということで、「マッドマックス」の影響は感じるが、どちらかというと「ブレードランナー」のようなゴミゴミした世界になっている。 アクションシーンはブルース・リーの影響が強い。秘孔を突くことはあまりなく、蹴り技の応酬が多かった。 低予算映画ではあるが、それなりに努力したという印象は受ける。
2023.10.24
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この映画を見るのは二度目だ。 一度目の感想はここ。 感想は変わらない。子役が長門裕之であることも忘れていた。 当局の検閲によって大分削除されてしまっているので、最後は突然死んでしまったように見える。 無法松の未亡人への恋慕は表だっては描かれない。 息子を、なんとかして強い男に育てようという一途な思いばかりが描かれる。そこがいいのだ。それでも、軍人の未亡人への恋慕など、当時としてはとんでもないことだったのだろうか。 惜しい、なんとも惜しい。 回想シーンの、いくつもの映像が重なる場面は、当時としては斬新な撮影方法だったのではないだろうか。 無法松が、人力車の客をほったらかして、子供の凧の世話に夢中になる場面で、客のイライラする様子をコミカルに描いているのも、よくできている。 前回は、社会的な状況までは考えが回らなかったが、子供の頃から、社会的な規範からは外れた生活をしていた人は多かったろうし、読み書きができない人も多かったろう。 しかし、そういう生活をしていても、自分を頼ってくれるもののために、必死に努力する姿が心を打つのだ。頼られることが心の支えになる、というのは、思い当たることがある人が多いだろう。
2023.09.07
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ずいぶn前に放送されたものをやっと見た。 マンガは読んでいた記憶があるのだが、実写映画があったとは知らなかった。 物語はほぼ原作通り。 主人公の両親は筧利夫と宮崎美子。中学校の教師役で小林麻央が出ていた。 主人公の奮闘と、父親が、無理な注文を受けて奮闘するのが、重なって描かれるが、こういうのってわかりやすいけれど、長く生きてきた身としてはありきたりすぎる。でも、中学生や高校生が見たら新鮮なのかもしれない。 どうしても映像化すると女の子が出てくることになるわけだが、別段特に親しくなるわけでもなく、新聞部の活動の一環として野球部に関わるだけ。当時の中学生の割には眉を細くしていたのがきになったが、好感の持てる女の子だった。 野球部員が、いかにもリアルな中学生という感じで、素人っぽく、なんだか、昔よくあった教育映画のようだった。 読売ジャイアンツの宮本が解説者の役でゲスト出演していたが、試合会場にはいないで解説席の映像だけ別取りしているのが、あまりにもはっきりしていて不自然だった。試合後、選手たちの健闘をたたえて握手するような演出にすればよかったのに。
2023.09.05
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俳優・殿山泰司の後半生を描いた映画。 竹中直人が殿山泰司を演じている。 何度も一緒に仕事をした新藤兼人が、自分の作品を中心に、白黒映画時代の殿山泰司から、その最期をまで描いている。昔の映画はその映画をそのまま使っている場面もある。共演の多かった乙羽信子が、証言者として思い出を語っている。 癖のある俳優だと思っていたが、豪放磊落というか自由人というか妻(吉田日出子)がありながら他の女性(荻野目慶子)と一緒に暮らしている。まさに個性派で、「愛のコリーダ 」では下半身を露出している。 新藤兼人の映画制作は、スタッフもキャストも一緒に合宿生活で行われていた。出演者の中に、それに批判的なことをいう者がいる場面もある。 竹中直人は、できるだけ殿山泰司に近づけようと、声を作って演じている。 なかなか面白かったが、殿山泰司を知らない人が見ても面白いと思うかどうかはわからない。 松竹は、昔の松竹を描いた映画を時々作るが、だれか、松竹で活躍した脇役俳優を主人公にして、その人の映画を通じて松竹映画史を描いてみたらどうだろう。
2023.05.12
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就職活動がうまくいかず、たまたま内定をもらえた会社に、興味も知識もないままに入社してしまった若者・青山(工藤阿須加)。 職場はブラック企業の見本のような会社で、パワハラ以外能がないような上司(吉田鋼太郎)にいびられる。唯一の救いは先輩の女子社員(黒木華)。 こんな会社があるのかとは思うが、おそらくあるだろう。 民間企業が、ハローワークに出す求人票に嘘を書くのは珍しくない。ハローワークを通さない、大学の紹介での修飾だとすると、企業はやりたい放題だ。公務員ならこんなことはないのかというと、そういうわけではなく、パワハラ上司のために退職したり自殺したりする人がいるというのは、報道で目にする。 主人公は好青年の見本のような真面目な若者で、仕事のストレスに耐えきれず、自殺しようとしたところを助けられる。助けてくれたのは、小学校で同級生だったことがあるという山本(福士蒼汰)。 やがて、同級生だったことがあるというのは間違いだったと言うことになるが、二人は友人として付き合うようになり、山本は青山の状態を心配し、いろいろアドバイスする。 青山がやっと取った取引が、ミスでだめになるが、そのからくりは見ていればわかる。 もう一つの謎は、山本の正体。青山は幽霊なのかとも思うが、最後に種明かしがされる。 物語は淡々と進み、恋愛関係の話は一切ない。 主人公は精神的に救われるが、社会全体は何も変わらない。会社に残っている人たちは以前と同じ状況の中で仕事を続けていくことになるのだろう。
2023.05.01
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志村けん急逝のため、急遽、沢田研二主演で撮影された映画。 松竹100周年記念作品ということだが、「キネマの天地」を連想してしまう。 こういう作品を記念作として作りたくなるんだね。小林稔侍は東映育ちだが、そんなことには拘泥していない。 かつて希望を持って映画界に身を置いていた男(沢田研二)。今ではギャンブルとアルコールへの依存のため、家族からも見放されている。 しかし、若い頃にはこんなことがあった、と、過去の話が中心になる。 過去のロマンス、偶然の再会などを経て、リアルな現在に戻るが、奇跡的に希望を感じさせる。 映画を愛し、映画の中に生きようとした男の話になっている。 スクリーンから登場人物が出てくるところは、「今夜、ロマンス劇場で」を思わせるが、バスター・キートンの映画」が元になっていることがセリフで語られている。 パーティーで、東村山音頭を歌い出すところに、志村けんへの追悼の意が込められている。 丁寧に作られた映画なのだが、「松竹だなあ」と思わされる映画だった。
2023.04.03
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前に見たことがあるはずのだが、例によって何も覚えていない。 突然失踪した夫の行方を捜すうちに、夫が隠していた過去、夫に関わりのある人たちの過去が明らかになる。 なぜこうならなくてはならなかったのか。 戦後日本を生き抜いた女たちのさけびがある。女性議員が誕生するか、という選挙が背景にある。 悲劇的な結末を迎えることになるのだが、真実に気づいた主人公(広末涼子)は、犯人に対する怒りを表に出すものの、真実を公表はしない。 実は真実に気づいていたらしい男(鹿賀丈史)も哀れだ。 主人公の手助けをする、夫の同僚が野間口徹で、誠実な役柄をよく演じている。なかなかいい。 屋外ロケが多く、時代を表す小道具もちゃんとしていて、非常に丁寧に作られた映画である。
2023.03.18
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映画を見ている場面で始まるのだが、その映画がなんと高倉健の任侠映画。 誰が見ているのかというと、網走刑務所の入所者たち。所内の娯楽としてみているらしい。 主人公は、「兄貴に似てる」と言われてまんざらでもなさそう。 ここまで来ると、何でもありだ。遊び心が突き抜けている。 宍戸錠も出ているのだが、なんと、あっという間に死んでしまう。しかし、後に残される妻のことを頼まれたことから物語が始まる。 出所した主人公たちが訪ねていくのは生田悦子。おお、若い。欽ちゃんの番組に出ていた時とは違う。運送会社を営んでいて、主人公たちはダンプの運転手として働くことになる。 男勝りの女運転手もいて、目先は新鮮。 弟分の田中邦衛が、一番の弟分ということでかなり出番が多い。 そして、なんとなんと、第1作では保護司だった丹波哲郎が受刑者の中にいて、所内でも大物ぶりを見せるが、最後の最後に見せ場がある。丹波哲郎のヤクザ姿というのは記憶にない。これは意外なキャスティング。 しかし、マンネリ感は否めないよね。
2023.03.11
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時は昭和22年。主人公は対立する組の組長を襲撃して裁判を受けるのだが、言い渡されたの罪状が、自分のしたことよりも軽いので、「履歴に関わる」と異議を申し立てる。 傍聴席の弟分たちからは「出てきたら二代目だ」とおだてられ、網走刑務所に入所するが、実は出所したばかりで舞い戻ったのだった。入所してからも、所内での弟分の田中邦衛や玉川良一らに「出たら親分だ」とおだてられてまんざらでもない。 ところが、わずかの間に、刑務所は、悪徳刑務官と、それと手を組む悪党受刑者に支配される世界になっていた。 食事の量が明らかに不公平で、そのことを巡って、弟分の田中邦衛と調理人の由利徹が、調理場で調理道具や食材を使って立ち回りを演じるが、ここは「Mr.BOO! ミスター・ブー」を思わせる。もちろん、こちらが先。「Mr.BOO! ミスター・ブー」は1976年制作。 彼らの悪事というのが、受刑者の切り出した木材や官給品の横流しというのがちょっとみみっちい。 主人公は、自分が母親の死に目に会えなかったことを悔い、若い受刑者(谷隼人)Ga母親に会おうとしないのを知って無理に面会させる。 若い受刑者として黒沢年雄も出ていて、重要な役を演じている。出演者のところでは(東宝)となっていた。 前作では大立ち回りを見せた藤田進が、今回は、主人公を戒める医者の役。 刑務官も悪党ばかりではなく、真面目な堅物ながら主人公たちに同調する刑務官もいる。 しかし、悪党連中はやりたい放題で、雪の森林に作業に行く途中、敵の策略で仲間を失い、主人公の怒りが爆発する。 「吹雪の大脱走」というタイトルだが、「大脱走」などしない。重傷を負った刑務官を助けるために町に向かうだけ。 部隊の移動があまりなく、こぢんまりした印象を受けた。
2023.03.09
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主人公の出所から始まる。 妹から送られた流行の洋服が真っ赤なジャケットだったりして全く似合わないというコメディタッチがあり、珍しく人情味のある刑務官がいて、酔うと虎になるから酒を飲まないように忠告してくれたりする人情話的な面もある。 東京へ向かう途中、静内駅で、男と見込まれてだまされて下ろされ、駅前の食堂に行くと、なんと、高倉健の映っているアサヒビールのポスターが貼ってある。 それをまじまじと見て飲みたくなるが、刑務官の戒めを思い出し、ビールを飲むかカツ丼を食べるかで迷うのだが、誘惑に負けてビールを飲んでしまう。 スポンサーの意向をくんで楽しく飲むのかと思ったら、無関係のけんかに巻き込まれて大暴れ。その結果、ある牧場に連れて行かれることになり、そこで働くことになる。 あれあれ。 刑務所を出て久しぶりにビールを飲むところ、カツ丼が出てくるところは山田洋次の「幸福の黄色いハンカチ」みたいだ。 牧場は町の悪い連中に狙われている。おいおい、これは「遙かなる山の呼び声」みたいだ。 山田洋次と高倉健の組み合わせの原型はここにあったのだろうか。 特筆すべきは藤田進。 主人公を牧場に連れて行く男なのだが、実はかつて侠客だったことが、観客にはわかるようになっている。 藤田進と言えば「姿三四郎」。独特の風格があり、ウルトラシリーズでは地球防衛組織の幹部として何度も登場している。 この映画でも、体格も姿勢もよく、しっかりした牧場の支え手に見える。 町を牛耳ろうとする悪党一派は、競走馬を巡っていろいろ嫌がらせをしてくる。 主人公たちはじっと耐えているが、最後の最後に爆発して単身乗り込む、というお約束の展開のなる。 ところが、その堪忍袋の緒が切れるきっかけとなるところで、藤田進が諸肌脱いで大立ち回りをみせる。これが一番の見せ場だった。
2023.03.07
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シリーズ第5作。 雪の北海道が舞台。 刑務所での不正に気づいたために襲撃された主人公。救い出したのは神父(岡田真澄)というのは新発想。 主人公は教会に連れて行かれるが、キリスト教や教会のことが理解できず、ヤクザの世界になぞらえてなんとか納得し、神父と親子の杯を交わす。 教会で心を入れ替え、不良の更生の手伝いをしようとするが、なかなかうまくいかない。 腕っ節は強いので、ボクシングで一目置かれるようになり、兄貴分として慕われ、修道女に思いを寄せたりするが、そういいことばかりではない。 チャンピオン候補の若いボクサーが、悪党連中に八百長を迫られ、悲劇的な結末を迎えることになる。 若山富三郎がゲスト出演ということなのだろうが、あまり出番がない。 目先を変えてはいるが、なんだか特に見るべきところがない感じだった。
2023.03.04
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これは冬の北海道ではなく、雪のない北海道が舞台。 監督は長くコンビを組むことになる降旗康男。ほかの作品とは雰囲気が違っていて、なぜ主人公が刑務所に入ることになったか、というところを、回想シーンと、由利徹や南利明らのコントで説明する。 見ていると、途中で流れる音楽ウェスタン調で、これもちょっとほかの作品と雰囲気が違う。 刑務所外の問題が刑務所にも影響しており、悪徳刑務官とグルになった連中が幅をきかせている。 なんと言っても最大の注目点は、宍戸錠との共演。宍戸錠は「(日活)」とクレジットされている。まだ日活所属だったわけだ。 最後は二人が協力して殴り込むのかと思ったら、そういう展開にはならなかった。 単身殴り込んでいく場所が、いかにもヤクザの事務所というようなビルではなく、日本家屋。 殴り込みの場面が、何かに似ていると思ったら、ブルース・リーの「ドラゴン怒りの鉄拳」に似ている。 単身乗り込むというのは、日本では伝統的な設定だ。そういうところが、影響を与えたのかもしれない。
2023.03.02
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雪原の中を馬に車を引かせて現れる主人公。 高倉健は九州出身なのに、雪の北海道が似合う。 男は子供を連れているのだが、この子役が下沢広之。のちの真田広之である。 親子かと思えばそうとは思えないところもある。 たまたま入った食堂兼居酒屋の女が星由里子で、クレジットで「東宝」と書いてあった。かろうじて五社協定が残っていて、俳優が映画会社に所属していた時代だったn お嬢様という役ではなく、いろいろなことを経験してきた大人の女。高倉健も過去のある男で、大人同士の心の交流が描かれる。 舞台は小さな漁港のある町で、登場するのは、漁港を牛耳るあくどい網元と、それにひどい目に遭わされている男たち。この男たちは悪人ではないのだが、頼りなく力には勝てないと諦めて生きている。 主人公は金のために乗組員になり、あくどい網元の船を助けたりして、その心意気に打たれて考え方を変える男も現れるのだが、悲劇的な展開になり、主人公が怒りを爆発させる。 網走刑務所はあまり関係なく、ヤクザものになっている。高倉健と同等の敵もいない。 それはまあ、そういう映画が主流だったからなのだろう。 子役の真田広之には、「ああ、あの頃の子役はこうだった」と思わされた。どういうわけか、昔の子役は判で押したような同じ演技をするものだった。 今の子役は個性が感じられるし、セリフも自然だ。 こういうのは歌舞伎の影響なのかなあ。舞台に原因があるとすると新劇のせいなのだろうか。だったのだろう。
2023.02.25
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もう30年も前の映画なのだ。 東南アジアの発展途上国タルキスタン(とは言ってもどう見てもタイ)に出張に行った若いサラリーマン(真田広之)が、支店長(山崎努)とともに、軍事政権に自社製品の採用を働きかけているなら、ゲリラ軍によるグーデターが起こる。 激戦地の市街地から、ライバル商社の二人(岸部一徳、嶋田久作)とともに、空港を目指してジャングル横断を試みる。 ゲリラばかりでなく、日本人に自社が出たりして、陰惨な場面もあるのだが、全体に明るくコミカルに作ってある。 4人の内一人が実は密命を帯びていたことが明らかになり、急展開になるかと思ったら、それほどの急展開でもない。 現地人を見下していた主人公も、いくらかは考えを改めるのだが、そういう湿っぽい場面はあまり重くは描かない。 日本人ビジネスマンであることを強調して市街地を脱出することは伏線になっていて、あくまでも日本人商社マンらしい方法で仲間を救出する。 明るく描いているところに救いがある。
2023.02.01
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「新」シリーズを見るのは初めて。 それまでのシリーズとは全く異なる世界。主人公の復員から始まる。 MPから女性を助けようとして網走収容所送りになる、という無理矢理なこじつけぶり。(最後にも出てくる) 出所してからは、新橋を地元とするヤクザの世界の話になる。それまでのような、地方を舞台にしたダイナミックさはない。 妹との再会、仲間の死など、物語はセオリー通りに進む。 最後は主人公があくどい組織に単独殴り込みをかけるという任侠もの。 対立する暴力団の頭脳派の組長が志村喬というのが、やや新鮮な配役だった。 映画の中に「三国人」という言葉が出てくる。差別があったことも描かれている。 むしろそういう点では正直でいいと思う。映画の中では、「差別する時代ではない」と騙られ、妹も結婚相手に華僑の男を選んでいる。むしろ差別反対を訴えかける映画になっている。
2023.01.24
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シリーズ第4作。 網走刑務所内の話から始まる。 千葉真一が体の弱い受刑者なのが意外。嵐寛寿郎は相変わらず存在感たっぷり。 仮出所した主人公が、行きがかりでトラックを運転して北海道の雪道を走ることになる。 トラックには気の強い娘(大原麗子)やギャングが勝手に乗り込み、先行きの見えない道中が続く。途中で正体不明の男が乗り込んだり、骨折した娘と母親を隣町まで連れて行くことになったり、心中し損なった女を拾ったりと、先の読めない展開が続く。 大原麗子が若くて元気で、エネルギー一杯の映画にふさわしい。 最後に絶体絶命のピンチに陥ると、偶然現れた嵐寛寿郎に助けられる。シリーズを通してアラカンはかっこいいところを見せている。 見直したら、嵐寛寿郎は主人公より先に出所していること、出所後は山にこもるつもりでいることがセリフで語られており、ちゃんと伏線が張ってあった。 最後はヘリコプターまで出てくる。第1作は白黒だったが、客が入ることがわかったので、東映としても思い切って金を使ったのだろう。
2023.01.21
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シリーズ第3作。舞台は北海道ではなく、長崎。 「望郷篇」とはいっても、とくに故郷がどうこうというわけではなく、かつて世話になった親分のために一肌脱ぐ話。 第1作のような斬新な映画ではなく、東映の伝統的な時代劇やヤクザ映画の路線を踏襲している。 最後に、親しくなった子供が船の上から「おじちゃーん」と叫ぶ場面など、既視感たっぷり。 嵐寛寿郎は網走仲間ではなく、かつて世話になった親分。由利徹はヤクザではあるが、コミカルな出番が用意されている。
2023.01.06
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錦戸亮が主演の同じ原作のドラマを見た記憶がある。結構面白かった。 これはその後に作られた映画で、ドラマとは趣が異なる。 主役が市原隼人というのがいい。いかにもサムライらしい面構えだ。 ただ、どうしても映画では時間が短い。 なぜか現代にタイムスリップしてきていた坂本龍馬のエピソードなど、わかりにくくなってしまっている。 また、山の中で迷った子供たちを助けに行くところなど、ありがちな教師が主人公のドラマのようで物足りない。 武士なら人に頼らず自力で帰ってこい、と、突き放す方がサムライらしいのではないか。
2022.12.03
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石原裕次郎版と近藤真彦版は見たことがあったが、渡哲也版は初めて見た。脚本は井上梅次となっているが、オリジナルそのままのリメイクではなく、設定が少し変えてある。 弟は音楽家ではなくレーサー志望になっていて、その弟が見覚えのある顔なのだが誰だかわからない。やっと藤竜也だとわかってびっくり。こんな好青年顔だったのだ。 当然ことだが、出演者がみな若い。由美かおるなどまだ小娘だ。 驚いたのが、バンドマンの中に日野皓正の名があったこと。ジャズの演奏シーンは本物のミュージシャンを使っていたのだ。 ただ、石原裕次郎版でも思ったことなのだが、ジャズはそんなに人気があったのだろうか。 小林旭の映画を見ているとジャズとは全く無縁の世界で、同じ日本でこんなに違うものかと思う。 芦川いづみはなかなか魅力的。 梶芽衣子(この映画の時はまだ太田雅子)も若い。 特筆すべきは、父親(宇野重吉)が存命で、母親(山岡久乃)とは相容れない生き方をしていること。 最後はいくらか救いのある終わり方。ただ、オリジナルでもそうなのだが、主人公の未来を奪う悪党連中がその報いを受けないのが納得できない。
2022.11.21
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日活アクションではあるが、鈴木清順の演出が斬新すぎて、「渡り鳥」シリーズなどに慣れた目には理解しにくい映画になっている。特に室内のセットの、あえて舞台セットのようにしているところや色遣いなど、独自路線が際立っている。 物語は、解散した暴力団の組員だった主人公(渡哲也)が、一般人として生きようとしても周囲が放っておかず、もと親分の所有ビルの乗っ取り事件に巻き込まれ、罪をかぶって地方へ行っても抗争に巻き込まれ、裏切りによって自分の命を狙われ、否応なしに暴力の世界に連れ戻される。 ヒロインは松原智恵子。兄貴分として二谷英明がいい役で出ている。 日活時代の鈴木清順といえば、高橋英樹主演の「けんかえれじい」が印象に残る。大傑作である。続編の話があったそうだが中止になってしまったそうで、残念だ。
2022.11.14
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シリーズ第8作。この頃になると作りが大分荒くなってきている。由利徹の出番など話の枕でしかない。 出所後、汽車の中で一人で父親のところへ行くという少女と出会い、連れて行ってやると、父親は窮地の田中邦衛。 しかし父親のいる飯場《はんば》は、悪党の牛耳る炭鉱で、いろいろ災難が降りかかる。 一面の雪原で、移動は馬ぞり。自動車などというものは走っていない。 悪党が山林に入り込むと、何の伏線もなく嵐寛寿郎が現れて追い払う。理屈を言わせない説得力。 殴り合いあり、銃撃戦あり。 見所はあるのだが、二本立て用なので、尺が88分と短く、登場人物がどういう人間なのかややわかりにくい。 大原麗子は若くてかわいらしかった。
2022.10.29
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ずいぶん前に放送されたものを見た。 三浦春馬も出ていたのか。 筋ジストロフィーで、体が動かなくなる男(大泉洋)と、その男の身の回りの世話をするボランティアたちの物語。 一見すると、主人公のわがままが目立つが、ボランティアによる介護を受けることを当然の権利として主張しなくてはならない立場であることを意識しての行動だということもわかる。 三浦春馬と高畑充希の関係はフィクションなのだろう。障害者が周囲の人を幸せにするという安易な図式になってしまっているのは残念だが、現実にこういうことがあったのではないかと思わせる。
2022.07.09
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サモ・ハンの出世作であり、ブルース・リーへの敬意に満ちた映画である。 農村で、養豚の仕事をしていた主人公が、叔父を頼って香港に出てくる。叔父は食道と言うよりも屋台の飲食店を経営をしていて、その手伝いをすることになるのだが、卓越した武術の腕前で悪党を懲らしめたことがかえってあだになって職探しをする羽目になる。 というようなストーリーはどうでもよくて、とにかくブルース・リーの動きを忠実に再現して見せている。間近で見ていただけに、特徴を良く理解している。有名な話だが、「燃えよドラゴン」の冒頭でブルース・リーの相手をしているのはサモ・ハンだ。 この映画が公開された1978年は、ジャッキー・チェンの「蛇拳」と「酔拳」が公開された年でもあり、ただアクションを見せるカンフー映画にコメディの要素を取り入れるという新しい試みが成功し、香港映画復興の年でもあったわけだ。 クライマックスは、疲れ切っているはずの主人公が、頭を使って、三人の強敵と一人ずつ戦い、苦戦するも勝利する。悪の親玉はどうなったのかはわからないまま。警察を呼んだはずだから、捕まったのだろう。 主人公がヒーローになるわけではなく、故郷へ帰って豚の相手をする道を選ぶ、というのもいい。 そもそも、主人公がブルース・リーに憧れているということはわかるのだが、一体どんな修行をしてあんなに強くなったのかは全く説明がないのだが、全く不自然さを感じさせない。 まだ二十代半ばでこれだけの才能を開花させているのだから、体だけではなく頭もよく動くのだろう。 名作である。ソフトが出ていないのが残念。
2022.06.09
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この映画の存在を全く知らなかった。 深作欣二監督のぶっ壊し満載の映画。 主人公の萩原健一は銀行強盗のために生まれてきたような男で、金目当てではあるが、現金強奪を成功させることが生きがい。 彼がボスとなって、千葉真一、石橋蓮司とともに、木村一八の持ち込んだ、ホテルからの現金輸送車を襲撃する。 ところが、それぞれの思惑から仲間割れが起こり、荻野目慶子もからんで警察の目を逃れることと、一度は組んだ相手を殺してでも金を自分のものにすること、木村一八の抱えていた借金が元で八名信夫が組長の暴力団にも追われるという、敵味方入り乱れる展開になるのだが、話はスッキリしていてわかりにくいということがない。 暴力団の仲間として、原田芳雄演じる殺し屋も登場する。 千葉真一が体を張ったアクションを見せるというわけではなく、銃撃戦とカーチェイスがてんこ盛り。とにかくいくらでも銃器が手に入る世界で、ほとんどアメリカ映画のノリ。 次々に命を落としていくが、一人も警察には捕まらない。 多岐川裕美が、萩原健一の女として登場するが、このキャラクターだけは落ち着いている。 最後は、この後にまた波乱が起こることを予感させて終わるが、多岐川裕美はそれを受け入れている様子。 この映画がヒットしなかったのは不思議だ。
2022.05.28
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黒木華演じる大学生が、いとこの多部未華子と茶道を習い始める。支障は樹木希林。 最初は何が何だかわからないまま指導を受けているが、なんとなく茶道の世界になじんでいく。 主人公は、自分の将来に関して堅実な将来像があるわけではない。大学を卒業してもなんとなく非正規の仕事をしながら茶道を学んでいる。 多部未華子の方は、海外旅行をしたり、就職したり、進みたい道に迷わず進んでいく。 物語は淡々と進み、はっきりした結末があるわけではないが、主人公が自立していく様子が茶道の修行を通して描かれている。 師匠は、茶に関しては厳しいが、人間としては穏やかで温かみがある。 黒木華と多部未華子という、対照的に見えるキャスティングがきいている。 底意地の悪い人間は出てこない。他人に不快な思いをさせて楽しむような人もいない。 家族関係も良好。 実際にこういう環境で生活している人もいるのだろうが、こんなに円満な家庭というのは、現実にそんなにあるものなのだろうか。 そういうところが引っかかってしまう。 さて、題名の「日々是好日」だが、映画では「にちにちこれこうじつ」と読んでいる。私は「ひびこれこうじつ」と読んでしまうのだが、音読みで読んだ方がいいだろう。 しかし、「にちにちこれこうじつ」では、「日」を呉音で「にち」と読んだり漢音で「じつ」と読んだりしている。 もとは禅語だということなので、「にちにちこれこうにち」と呉音で統一して読むのがよいのだろう。公式サイト
2022.05.19
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日活の白黒映画。吉永小百合と渡哲也という珍しい組み合わせ。なぜこうなったかは、Wikipediaに詳しい。 舞台は戦後21年たった広島で、途中までは偶然の出会いから恋人同士になった二人の青春物語なのだが、結婚を意識し始めたあたりから暗い影がさしてくる。 台詞が広島弁なので、やや聞き取りにくく、細部がよくわからないのが残念。 渡哲也は実は子ども時代に被爆していて、その影響が体にあらわれてくる。ヒロインの方は、遺伝を恐れる周囲から結婚を反対される。 結局後、男の方は、後遺症によって亡くなってしまう。 ヒロインは悲しみに打ちひしがれるが、それを乗り越えて明るく生きていこうとするように見える。 しかし、あまりにも救いのない結末を迎えてしまう。 救いがない。しかし、悲劇として心には残る。 声高に核兵器反対や戦争反対を訴えるのではなく、一人一人の人生にもたらす苦悩を描くことで原爆への怒りを描いている。 ことさら主義主張するわけではなく、若者の愛と死の記録を描いた映画である。
2022.04.11
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久しぶりに見た。やはり面白い。 大作映画で、2時間半あるのだが、その長さを感じさせない。 犯人の高倉健、国鉄司令部の宇津井健、新幹線運転士の千葉真一の三人が主役。ただし、この三人はそれぞれことなる場所にいて、顔を合わせることは全くない。 犯人グループの元メンバー(郷鍈治)が懐かしい。宍戸錠の弟なのだが、全く異なるオーラの持ち主で独特の味がある。たまたま新幹線に乗り合わせるのだが、終盤になってその役柄の意味が明らかになる。 兄弟と言えば、千葉真一と千葉治郎の兄弟共演は少しだけある。 出演者も豪華で、警察関係のトップは丹波哲郎、国鉄総裁は志村喬。 志穂美悦子も出ているが、ほんの数秒。ちゃんと出演料がもらえたのかなあ。 ストーリーの点では、喫茶店の火事が突然すぎて何が起こったのかわかりにくい。妊婦のエピソードもなくて良かったのではないかと思う。 映画撮影に国鉄の協力が得られなかったのはつくづく残念だ。失態を繰り返す警察に比べ、国鉄職員は、乗客の安全ために必死になって知恵を絞り、事故を回避する話だ。 司令部に対して運転士が怒りの言葉を吐く場面があるが、それがかえってリアリティを生んでいる。国鉄は、全面協力して、「我々国鉄職員は、このように、なんとしてでもお客様を守ります」と宣伝すれば良かったのに。 黒澤明の「天国と地獄」のように模倣犯が現れることを危惧したようだが、この手口は模倣できないだろう。 難点というわけではないのだが、なにしろ運転士が千葉真一なので、「なにがあっても千葉真一が助けてくれるはずだ」という妙な安心感が生まれてしまうのが困ったところ。
2022.03.16
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いかにも東映らしい映画。 殺人は犯していないのに死刑判決を受けた受刑囚の主人公(高倉健)が、ほかの死刑囚たちに誘われ、復讐のために脱獄する。 珍しいと思ったのは加藤嘉が死刑囚を演じていること。 雪の中を逃げ、分裂したり協力したり、一時の平安を得たりそれを失ったり。 復讐はするが、誤審で死刑判決を受けたという根本的な問題については、解決しない。 全体に既視感が感じられる映画だった。 「網走番外地」と「君よ憤怒の河を渉れ」を合わせたような話だった。(「君よ憤怒の河を渉れ」よりはこの映画が先) 出演者を生かし切れていないのが残念。 この映画作成の事情については、Wikipediaに詳しい。
2022.03.14
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物語は三重構造になっていて、主人公となるタキの死後、遺品の整理をしているところから始まり、老婆となっているタキ(倍賞千恵子)が、自叙伝を孫(妻夫木聡)のすすめもあってノートに書いており、時々それを孫が読んで感想を言う、という回想があり、さらにその自叙伝の中の話として、タキの少女時代の体験が描かれる。 山形出身の少女タキ(黒木華)が、縁あってある家に女中奉公することになる。 その一家は会社役員の主人(片岡孝太郎)と妻(松たか子)、まだ幼い長男の三人。 妻の人柄は良く、タキに優しく接し、タキもよく働き、長男が小児麻痺にかかると毎日医師の元へ連れて行き、マッサージ法を覚えて懸命に長男の世話をする。 その甲斐あって長男は元気に育ち、幸福な一家のように見えるのだが、主人の会社の若者(吉岡秀隆)の登場が波紋を起こす。 タキだけが秘密に気づき、煩悶するのだが、主人は全く無頓着でなにも気づかない。 日中戦争は始まっており、太平洋戦争へと突き進んでいく時代なのだが、タキの記憶では、社会全体に明るい高揚感があり、闇物資でトンカツの材料が手に入ったりしている。 孫は、そんなはずはない、と言うのだが、タキの記憶の方が実情に近いだろう。 タキの死後、孫はタキが生涯隠し続けていた秘密を知ることになる。 その過程で、絵本の「小さいおうち」が登場する。これは子どもが小さい頃見た記憶がある。 直接映画の内容とリンクしているわけではないが、これを持ってきたのはなかなか良かった。 少女の目を通した昭和史、というよりも、いつの時代、どこででも起こりうるような小さな事件が「小さいおうち」で起こり、そのことが少女の人生に大きな影を落としていた、という物語。
2022.02.13
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久しぶりに見た。 内容についてはもう語るまでもない。 ストーリーもよくできているが、とにかく音楽がいい。名曲だ。 年をとったせいか、イーストウッドよりもリー・バン・クリーフの方がかっこよく見える。賞金稼ぎでありながら、実は賞金のためではなく悪党を追っている。頭も働き、若いイーストウッドに策を授ける。 まだ五十歳前という台詞があったが、かなり髪は薄い。確認したら、この映画の時はまだ四十歳だった。 やはり志村喬を意識しているのではないか、という印象を受ける。 意外にも、顔がABC-Zの河合郁人に似ていて驚いた。 腕の立つ流れ者、という設定は日本の時代劇の影響なのだろう。 その他今回気になった細かい点。 野宿した朝、コーヒーを飲もうとするが、夜間からカップに注いでいた。フィルターを使うわけではなく、煮出すようにしていたのだろう。 銃を持たない者は白い服を着ている。汚れが目立ちそうなものだが、メキシコとの国境近くでは染めていない生地が安価だったのだろうか。 あるいは、日本の忍者や盗賊の装束のように、観客にその人の立場を理解させるためのものなのだろうか。
2022.02.07
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実在した棋士の物語。 子どもの時にネフローゼであることがわかり、入院中に将棋と出会ってその道に進むことになる。 将棋界のことはよく知らない。主人公の村山聖(松山ケンイチ)のことも知らなかった。 ただ、いくつものタイトル戦があり、並外れた気力と体力がなければやっていけない世界だということはわかる。 長くは生きられないことを知りながら将棋に打ち込み、羽生善治(東出昌大)のライバルと目されるほどになる。 主役の松山ケンイチが、この役のためにかなり無理な増量を行ったことは覚えている。 映画はドキュメンタリー風になっていて、物語とは直接関係のない風景が映し出されることも多い。心象風景ということなのだろうか。 一番わからないのが、冒頭。道ばたに倒れていた主人公を、たまたま通りかかった男(中本賢)が、主人公を将棋会館まで送り届ける場面。 受付も何もなく、聖のいうがままに大勢が対局している会場に連れて行く。将棋のことを知らない者が、将棋会館の中を見て驚くという演出なのだろうが、ここはあまりにも不自然だ。 あくまでも、主人公の主観ではこうなっている、ということなのだろうか。
2022.02.06
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テレビで放送されたので久しぶりに見た。 言うまでもなく、黒澤明の「用心棒」のリメイクなので、話はよくできている。 ストーリーについては特に言うことはない。 今回気づいたことが幾つかある。 例えば、アメリカとメキシコの国境地帯が舞台だということで、アメリカの騎兵隊とメキシコの軍隊がどちらも手出しできるところだからこそ治安上の問題がある、ということになっている。こういうことは、幕末の日本が舞台の時代劇のようなもので、背景がわかる人にはすぐにわかることなのだろう。 他の映画でも見て意外に思っていたことなのだが、ラクダの股引のような下着を着ていること。上も厚手の下着を着ている。 寝るときは、上着を脱いで、その下着でベッドに入っている。 砂漠地帯で厚そうなのだが、空気が乾燥しているのと、夜はかなり冷えるようなのであの下着が必要なのだろう。 主人公も敵たちもあまり清潔感がないのがリアルだ。 めったに入浴などしなかったのだろう。
2022.01.28
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