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紫陽花の葉の上で雫が光っていた。 庭の片隅には母が好きだった小さな桜の木がある。 夏を越え、秋の休息を経て、厳しい冬に耐える。 ほんの一時ふわふわと花びらを揺らし、誇らしげに春の主役を演じる桜が僕も好きだ。 靴職人の父は浅草の工場へ、妹の和奏(わかな)は三人分の弁当を拵えて学校へ行った。 多くを訊かない二人にすまないと思いながら、僕は庭を眺めていた。 梅雨明け間もないある日、置き去りにされたの自転車のサドル拭いているうちに、ふと街に出たくなった。 心療内科で処方された薬が効いてきたのか、僕はそのまま自転車に跨がり路地を抜けた。 表通りに出るとペダルを漕ぐ足がとても軽いことに気づいた。「空がこんなに青い! 」 僕は感動した。 風から感じる季節と心地よく調合して、見えなかった「明日」がこの青に溶けている。 そしてこの日、こころの薬箱に新しい風が入り込んだ。 photo by しば桜さん
2008/05/29
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雑草の隙間で小花が揺れている。 毎年今頃になると顔を出す花の名前を僕は知らない。 黄色い帽子を被り、大きなランドセルを背負った少女達が花を摘む姿がとても眩しい。 僕はこの日も無駄足を踏んだ。 凝りもせず・・・絞り込んだ地元の福祉施設で、尖った顎を上向きにした面接官から、雇う側が裏手でヒッソリ対処すればいいことを、僕は直に浴びた。 汚水が入ったバケツごと・・・ 「はっきり言わせてもらうけど、君、吃音があるね。 利用者さん・・・つまり高齢者とのコミニケーションが取れるのかい?」 僕はその白い建物で暮ら多くの高齢者を、気の毒と思う事で自分を励ますしかなかった。雨上がりの路面を見つめながら、僕はひたすら歩いた。 それから一週間、僕は誰とも口を利かずに過ごした。 空がとても青い朝だった。 その日、開き直って向かった病院の面接が思いがけず通ってしまった。 仲間達と再会する日を描いて心浮かれる一方で、もう後はない!という緊張感が僕のエネルギーとなった。 院内介護病棟で二本線が入ったナースキャップを見つけると、陽だまりに入り込むような心地になった。 採用を決めてくれた松浦婦長は僕のコンプレックスを弁え、汚物処理をする僕に優しい言葉をかけてくれた。 自分にも息子がいて、眉の濃い所がよく似ていると、目じりを下げて微笑んだ。 死んだ母のように穏やかな人だった。「柴田君、そういう事、嫌な顔しないで黙々とやってくれる」「・・・仕事・・・ですから」 ところが数日後、介護の現場でそれは起きた。日頃から低賃金重労働をぼやく先輩数人から、僕は予期せぬ罵倒を浴びリンチを受けた。「婦長が目をかけてるからっていい気になるなよ、ん?」 一過性だと思っていた何時かの発作が襲った。 汗で濡れたユニフォームをロッカーに入れ、鼻血を拭きながら裏口から病院を去った。「 松浦婦長様 いろいろお世話になりました。 とても感謝しております。 申し訳ありません。 五月二十日 柴田利春 」
2008/05/28
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電車が荒川の鉄橋に差し掛かかると、足元から突き上げる振動と金属音が僕の体を縦断し、 耳の奥にメンタルな響きを残していた。「じゃあね!」「また会おうぜ!」 気心知れた仲間の笑顔が、まどろみの向こうに去っていく。 耳元で囁いた朋子の声も浮遊しながら夜空に消える。「桜の蕾はね、好きって言えない少女なの。 フェルメールの絵のように・・・」僕はもう彼等と会えない気がする。 朋子の異質に心揺れ、好意を抱く未来も描けない。 疲れた・・・机には書きかけの履歴書と数冊の求人雑誌が、侘しげに僕を待っていた。僕は水道の蛇口に直接口を付け、拾うように水を飲んだ後、洗面台に両手を置いてゆっくり顔をあげた。 窪んだ目が光の中で潤んでいく訳を辿った。それは腐れたプライドだった。 少しばかり勤勉で、卒業には特別の表彰を受け、早々に資格も取れた僕の・・・ 明日からまた「 僕を必要としてくれる場所 」を、探さなければならない。/////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////// 今日、感じたこと ( 傘の気持ち ) 今のように駅の傍にコンビ二やドラックストアーが無かった頃は、家族や恋人が傘を持たずに出かけた事に気づくと、傘をさして、片方の手に相手の傘を持って迎えに行った。ちょっと優しい気持ちに浸って、うきうきして。 恋人の場合は、傘は結局一本で足りて・・・腕にしがみ付いて、半身濡らして歩いたもの。便利になったけれど、そういう光景が見られないって寂しいね。 かおと
2008/05/25
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繰り返す条件反射の果て、僕には石垣のような習性ができていた。それが自然な行為でも、彼等が陽気に交わす事を僕は直ちに流すことができない。 街はしだいに闇に包まれていった。電車の音、溢れる人、繁華街の赤ちょうちん、焼き鳥の匂い、威勢のいい呼び込み、裏路地の気だるさ。 芸術色がある公園側とアメヤ横町側は、まるで別の顔だった。 黄色に変わった信号で足を止めた僕は、ひんやりした風の中、陽気に笑って走っていく彼等の背中を見つめていた。 ふと侘しさが込み上げた。 人が行き交う上野駅の構内に入ると、駅名掲示板を見上げながら千尋が言った。「上野って凄くない?」「どうして?」「なごってる」「ん?」「古き良き時代の・・・それよ」「おまえ、何気に尊敬するよ。ピカソの次に」「あっ! バカにしてる?」 淡々と流れる時の中で、僕等の夜が終ろうとしていた。「こういうの、もうないね。散るんだもん私達」「咲くんだろ!これから」 髪をツンツン立てた隆夫の言葉が、僕のホールに木霊した。介護の現場に羽ばたく仲間の傍らで、地上の活動から見放された輪郭が揺れていた。
2008/05/22
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風雨で夜中に何度か目がさめた。 この雨は昼過ぎにやんで、明日~気温がぐーんと上がりそう。 今の仕事を始めて、そろそろ一ヶ月。 初日から着ていた制服? ユニフォーム?が,ブルーからピンクに変わった。「ああ、年齢で色分けされてたんじゃないんですね! ホッ!」 「どうなることかと思ったけど、○○さん! 何とかなりそうだね」 と患者さん。何たってこんな私だからこれからも笑顔で頑張ろう うれしかったこと 先日、「奏でる時に」を読んで下さった関西のご婦人(70歳)方から、栞が届いた。栞の裏に 「 文学路の甘菜 2008.4.25」 と書かれていた。 高山植物が大好きな方で、この時期に甘菜が採れるのは珍しいと・・・大切にしよう。この花を撮って下さった方にもとても感謝している。 時は黙っていても過ぎていく。 何がどう変わっても、穏やかな心に戻してくれる。 今日からまた、新たな時を刻もう。 自分史を奏でよう! 「天然なりの・・・」
2008/05/20
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三年前、僕は冬を越えた花芽の膨らみに見惚れながら、ちょうどこの辺りを歩いていた。専門課程を終え、就職が決まった仲間達の目は輝き、声は俄かに弾んでいた。 「フィラデルフィア美術館展」 僕がコースに加えたもので、彼等にとってはオマケのようなものだった。青い矢印を辿って行くと、やわらかな陽射しに包まれたレンガ色の美術館が佇んでいた。 僕は一点のぶれもない絵画の中に入っていく心地だった。「柴田君って前から好きだったっけ? 絵とか、そういうの」 千尋が、にきびを隠す為にカットした前髪を小さな手で触りながら言った。 「動物園よりはね。 だけど・・・」 美術館は初めてだ・・・それは心地よく途切れ、前を歩く数人が歌いはじめた。「さくらーさくらー 今咲きほこれー・・・」「未だ咲いてないじゃん!」 隆夫が照れくさそうに辺りをキョロキョロ見ている。 茂みの向こうの人集りからはラテン系の音楽が流れていた。 「桜はね・・・思わせぶりなの。 さっき見た絵のように」 歌声に紛れた朋子の言葉は、僕の肩越しで程よく戯れていた。 モネの「睡蓮」「日傘の女性」、それともフェルメール? きっと僕に浮かんだものは朋子の言う「思わせぶり」とは違う。 すると僅かなジレンマを見透かしたように、朋子が囁いた。「柴田君、あのね・・・」
2008/05/17
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それは一枚の美しい絵だった。公園の木々から、淡雪のような花びらが舞いはじめた。甘い静寂に迷い込んだ僕は、両手をあげてはしゃぐ彼女を見つめていた。「ね、花吹雪?」 僕がほほえむと、彼女は満足そうに空を見上げ、スカートの裾を少し摘まんで舞いはじめた。 すらりと伸びた白い足や、戸惑いのない仕草から目を背け、僕はベンチに腰かけた。そしてお気に入りのモネの絵葉書をリュックにしまい、再び桜の木を見上げた。 すると木々の間から、太陽をさえぎる雲がみるみる引いて行くのが見えた。 陽だまりの天使はいつの間にかしゃがみ込んでいる。「こんな日がくるなんて・・・」 僕は裕介を想った。 想うほどに胸は熱く、瞼が僅かに痛む。それは時々、僕を優しく苦しめた。 「ほら・・」 得意げに差し出した帽子を覗き込むと、繊細な指の感触で集った花びらが健気に身を寄せ、甘い香りを放っていた。 photo by しば桜さん
2008/05/14
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今朝から四時起き。 家族のリズムが変わると母(一応)はね~肉体労働者に朝食を!ってことになる。夕方から学校に行き始めた息子。 新たな目標をめっけた様子。私はPM2時半出勤。 当然昼寝などできないわけで、早寝になる。 淡々と同じリズムを繰り返すパートナー(サラリーマン)は至ってマイペース。 ゴミ出しと風呂掃除をやってくれるから、感謝。 この春減った体重(マイナス6キロ)でジーンズがゆるゆる!不経済だよね。 太るのも痩せるのも・・・逆ダイエットを試みよう。 この夏、猛暑で干からびてミイラになっちゃう 週末は東京へ。 ルンルン! 都内に出た夜は実家に泊まって、母と長っ話をしてくる。 それもまた親孝行。 さあ、今日もまた笑顔で仕事を! 楽しみはたま~にあるから「楽しみ」なんだよね。
2008/05/12
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昨年挿し木した薔薇が、蕾をつけていた。 ミニ薔薇も地面に根を張り、健気に顔を出している。力をいれずに、ちょっと試みたことは案外良い結果がでるような気がする。 力尽きて心歪むより、ゆとりや隙間を・・・要は歳。 学習能力?最近、心もそれををちゃんとわきまえていて、注ぐ、抜く、引くのバランスを保とうとしてくれる。 そしてありがたいことに温かいアドバイスも頂いた。「出たとこ勝負!」も下町育ちのガサツな私を形成した素材の一つに違いない。裏腹に潜む「壊れ易さや不安」 これも私のDNA。 昨夜からダンスに復帰。 秋のステージの振り付けに、休息していた細胞が作動するのがわかった。 「わっ! まだ踊れる! 」この春体調を崩し、6キロ落ちた体重。 体力より精神力に正直不安があった。 休診日の今日、半月で出会った患者さんの顔を浮かべながら思う。たぶん私にとって最後の仕事場。 ぜひそうでありたい仕事。 事故後のリハビリに通う若者、同世代の方、大好きなおじいちゃん、おばあちゃん。十年以上お世話になった病院で仕事をする因果。根を張った挿し木のように、新たな場所で自分の色を生かせたら・・・ photo by yuu yuuさん
2008/05/10
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変える所(見直す)は思い切って変え、変えてはならないものは頑なに守る。ある文面から飛び込んだ言葉。結構気に入っている。 人に当てはめたらどうか? 分析に頭が働かないけれど( 仕事で脳細胞使用中 )とにかく単純に 潔くよくて私は好き。 「白黒はっきり! グレーがない」 「0か100って感じ」私は時々こう言われる。歳を重ね、様々な場面を経て、最近緩やかになってきたと思う。でも心の癖や傾向性は、なかなかしぶとい。じっくり考えてから行動する派行動してから考える派私はどちらかというと後者。 大胆な反面、いつまでも錆びたオモリを引きずっていたり・・・許容量ギリギリまで我慢し、溢れた汚水をせっせと拭いたり・・・ 家族や友達、趣味、移り行く自然、素知らぬ顔した時間、そしてこうして書く事が、オモリを軽くしたり、溢れる前に器をデカクしてくれる。そう思う昨今。 さて、私は何を言いたかったんだろう忘れちゃった! かおと
2008/05/08
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「 .com 」 いいな~ こんな小説のタイトル。 シナリオは浮かぶんだけどね・・・書けないんだよね今。 熟して発酵後かな。 内容を家族に話すと、「よく、そういう事考えるねぇ・・・妄想力?」 ドットコム ~ 実はこれ、競走馬の名前。 昨日は映画を観に行った。 どっと混む! さすが、噂の映画。 行列に加わり、時計を見ながらポップコーンとコーラを買い・・・ 館内は張りつめた静寂? 「みんな息してるのかな~? 」そういう映画だった。 となりの相棒は時々、涙。 この作品、脚本は何時見ても粋だけど、中半でわかっちゃうんだよね、結末が 私の心に残る映画は 「レオン」 「海の上のピアニスト」 「卒業」 「アース」 気になる上映予定のポスターを振り返りながら映画館を後に 帰りに、一目ぼれした花をいっぱい買って帰宅。 明日から再起動 毎・金曜ダンス♪、月一・ライブ(お姉さん!と呼んでくれる可愛い妹Bass) 職場で旅行の積み立てをしてるのもワクワク! 佐渡、福島、青森? ん~楽しみ・・・ そうだ! 数週間吸った止めよう!っと ドットコム ~ 「けじめる」 私的イメージ。
2008/05/06
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昨日はぼへら~っ!とした一日だった。家事を済ませ、ブログ徘徊。 友達の日記の下部から一年前をクリック。 おう! こんなコメント書いていたんだ、私。 こういう仲間が来ていたんだ、ここ。なんてタイムスリップして、あちらこちらのあの頃を。 懐かしい! シャワーのような雨が振ったり、時々太陽が雲を掻き分けて覗いたり・・・空は時々悪戯っ子。 昨日は26回目の結婚記念日で、夕飯はでリクエストした赤と黄色の薔薇を、何処に植えようか? そんな小さな楽しみが心をわくわくさせた。 おっと! もうこんな時間一番忙しい日曜AM. では、仕事行ってきますぅー kaoto
2008/05/04
コメント(16)
暮らしに新しいリズムができて、体調も良く、今日も仕事に行けます!これって、当たり前のことじゃないんだよね。 今,元気なことに感謝しないと 様々な病気を抱えた方がたに申し訳ない。「松葉杖を使わなくても良くなった! ほら、ゆっくりだけど・・・歩けるだろ?」「来月娘が出産なんでね。 早く治して孫を抱きたいんだよ」 新米の私に「頑張って下さいね!」と振り返って声かけてくれる方も。新しい小説は病院舞台? だったりして・・・ 先日ようやく念願の車がきた。 初めてのトヨタ車。 う~!ギアとサイドブレーキが~? (汗) 早くドライブしたい リズム ~ ダンス、ドラムだけじゃなく、暮らしにも大切。宇宙にリズムがあるように、人の心にも身体にもあるんだよね。 不思議な周波数。 人との波長。 テンポ。時の仕業で歪む時も、軌道修正して新たなリズムを そう! 自分のペースで「奏で」られればいいよね。 か お と
2008/05/02
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