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筒井康隆『ダンシング・ヴァニティ』~新潮文庫、2011年~ 筒井康隆さんによる長編作品です。 美術評論家の「おれ」が主人公です。自分の家で執筆活動をしているとき、家の周囲で誰かがケンカしている…というところから物語が始まります。そして、同じ場面が何度も繰り返され、あるいは少しずつ形を変えながら、物語は進んでいきます。 背表紙の紹介に、「コピー&ペーストによって執拗に反復され、奇妙に捻れていく記述」とあり、どんな感じなのかとわくわくしながら読み始めたのですが、こういうことかと納得しつつ、また不思議な感覚に捕らわれながら読み進めました。 物語の終盤、一気に本作の持つ意味が分かり、332頁では涙が出てきました。 これは面白かったです。
2015.07.25
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佐藤彰一/池上俊一/高山博編『西洋中世史研究入門 増補改訂版』~名古屋大学出版会、2005年~ 本書は、西洋中世を学ぶための、研究テーマや主要文献の手引き書です。 本書の構成は次のとおりです。―――増補改訂にあたってはじめに第I部 テーマ別の諸問題 第1章 中世初期の世界 第2章 封建社会 第3章 中世国家論 第4章 家族と血縁の紐帯 第5章 都市社会の諸相 第6章 教会と修道院 第7章 宗教運動と想像界 第8章 文化の位相 第9章 市場と交換 第10章 中世後期の社会と文化第II部 国・地域別の諸問題 第11章 イングランド他 第12章 フランス(含ベルギー) 第13章 ドイツ他 第14章 スペインとポルトガル 第15章 イタリア 第16章 スカンディナヴィア(含アイスランド) 第17章 東ヨーロッパ 第18章 ビザンツ帝国文献一覧執筆者一覧――― 本書は、構成に掲げたような様々なテーマについて、どのような研究が行われてきたか、今後どのような論点が掘り下げられていくべきかを示しています。もちろん、そうした先行研究を紹介するために、多少通史的な概説にふれていますが、いわゆる概説書とは異なる文献です。 日本語で読める文献を中心として、意義深い文献が紹介されています。必読に値する文献についてははっきりとその旨が示されます。ある文献の研究史上の位置づけが示されたり、意見を異にする諸文献についてはそれぞれの立場や意見が紹介されたりと、ある分野についてどのような研究がなされてきたのかについて、わかりやすい見取り図を与えてくれます。多少の批判とともに紹介される文献もあります。 恥ずかしながら、私は卒業後何年(?)もしてから本書を手に取ったわけですが、西洋中世史を勉強したいと考えている方は早いうちに本書を手にすることをおすすめします。誰がどういう研究を(あるいは自分の関心のある研究を)しているのかは、巻末の文献目録を眺めるだけでも見えてきますし、また繰り返し紹介される文献については、やはりその重要度が高いということも見えてくると思います。 こんなタイミングになってしまいましたが、それでも本書を手にとって良かったです。
2015.07.18
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米澤穂信『儚い羊たちの祝宴』~新潮文庫、2011年~ 米澤穂信さんによる、ノンシリーズの短編集です。 大学の読書サークル「バベルの会」の関係者に起こる出来事を描きます。 簡単に内容紹介と感想を。―――「身内に不幸がありまして」孤児院を出て、ある邸宅に奉公することになった夕日は、お嬢様の吹子と一つの秘密を共有していた。それは、吹子が書斎に作らせた秘密の書棚にある本を共有すること……。本好きの吹子は、大学生になり、「バベルの会」という読書サークルに所属することになる。その合宿が近づいてきた頃、大きな事件が起こる。「北の館の罪人」母親を亡くし、言われた邸宅を訪ねたあまりは、「北の館」と呼ばれる館に半ば幽閉される。その館に住む早太郎を、決して外に出さないという任務とともに。ある日から、早太郎から買い物を依頼されるようになる。依頼されるものは、なんとも意味不明なものばかりだが…。「山荘秘聞」家政婦としての能力に自信をもつ屋島は、富裕者の別荘の管理を一任することになった。毎日毎日、きれいに手入れをしていたが、彼女は奇妙なことに気づく。丸一年、一切誰も別荘を利用しなかったのだ。そんな中、一人の遭難者を発見し……。「玉野五十鈴の誉れ」厳しい祖母に育てられている純香が15歳になったとき、一人の使用人を与えられた。それが、玉野五十鈴だった。祖母の呪縛から逃れ、彼女と過ごしているときに幸せを感じていた純香だが、家を出た大学時代に、事態は暗転し…。「儚い羊たちの晩餐」贅を尽くす料理人を雇った成金の父だが、しかし料理人の様子はあまりにもおかしかった。わずかな料理しか作っていないはずなのに、請求書に記された材料は膨大だった。そしてわたし自身は、父のせいもあり、所属している「バベルの会」を脱会せざるをえない事態になり…。――― ブラックな味わいの短編集です。背表紙の紹介をみてみると、「米澤流暗黒ミステリの真骨頂」とありますが、納得です。 特に「玉野五十鈴の誉れ」は、主人公の祖母のあり方に気持ち悪くなりました。 とはいえ、面白いです。どれも、ラストに衝撃が待つ、というコンセプトですが、特に面白かったのは「北の館の罪人」です。「北の罪人」が何をしようとしていたのか、そして最後に待つ真相は、後味はよくありませんが、大好きな趣向です。
2015.07.11
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筒井康隆『天狗の落し文』~新潮文庫、2004年~ 筒井康隆さんの、自作からの部分的抜粋も含むショートショート集です。 ダジャレのようなものから、不思議な読後感の作品、印象深い作品など、それはヴァリエーション豊かな作品集となっています。 面白かったのは、ゴジラ、ガメラに、いろんなものが怪獣風に並んでいく作品。これは笑いました。 国民学校入学前から江戸川乱歩などを読んでいた筒井さんが、最初の教科書で受けた衝撃も面白いです。 僧侶の幽霊の話は、一部コメディかと思いましたが、最後には独特の不思議な印象を受けました。 特に印象に残っているのは、空き地で友達たちとなにかが憑いたかのように遊びまくった数日間の思い出です。最後の一文を見て涙しそうになりました。 筒井さんのエッセンスがふんだんにつまった一冊です。
2015.07.04
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