全11件 (11件中 1-11件目)
1
![]()
吉本ばなな『とかげ』~新潮文庫~「新婚さん」ある晩、私は会社の帰りに、降りるべき駅で降りず、しばらく電車に乗っていた。ある駅で乗り込んできたホームレス風の老人が、私の隣に腰掛けた。しつこく話しかけてくる彼を無視していると、隣の雰囲気が変わった。見ると、そこには美しい女性がいた。「とかげ」スポーツクラブで知り合ったとかげは、私くらいとしか話をしない。私がプロポーズすると、彼女は、「秘密があるの」と言った。「らせん」彼女は、言葉につまるとき、目を閉じる。そのとき、まつげがくっきりと目立つ。その瞬間に、私は深いものを感じていた。「キムチの夢」二人のなりそめは、不倫だった。不安を感じながらの新婚生活だったが、ある瞬間、私の中で変化が起こった。「血と水」ある宗教を信じる人々で構成された村。両親もその信者で、そこに住んでいた。私はそこを飛び出して東京に向かった。「おまもり」を作る昭と生活を共にするようになった。「大川端奇譚」放蕩な性生活を一時期送っていた私だが、体を壊してからは、OLとなり、普通に生活していた。素敵な男性と出会い、二人は婚約をした。 素敵な人々が描かれている-そう思った。それは、「新婚さん」に登場する女性であり、「とかげ」の二人であり、「血と水」の昭であり、「大川端奇譚」の婚約者である。 いくつかの作品にコメントを(上記の内容紹介よりさらに内容につっこんでいる場合があるので、先入観なく物語を読みたい方はご注意ください)。 「新婚さん」。家に帰りたくないとき、会社に行きたくないとき、学校に行きたくないとき、誰しもそういう瞬間を感じたことがあるのではないだろうか。そこに現れたホームレス。彼は、「私」にあわせて、その姿を「私」が知っている女性に変えた。彼女は、とりわけ「私」の心をうつ言葉をかけたわけではない(あえてこう言おう)。しかし、「私」は考える。そして最後には、彼女を「偉大な人」と思うようになるのだ。 「とかげ」。辛い過去を負った二人。世の中は不条理で、どうにもならないことばかりで、最初は被害者だったのにいつのまにか加害者になってしまったりする。不条理。心療内科・精神科に通うようになってから(というか、そのきっかけとなる出来事があってから)私はこの言葉あるいは概念に深く感じるものがある。使い古された言葉かもしれないが、実体験をふまえた上で、あえて言おう。この世は不条理だ。そしてその不条理が描かれているこの作品には、深く共感した。ただ、「救い」はあるのだ。もしこの作品に「救い」がなければ、もっと違う評価をしていただろう。 「大川端奇譚」。私は、この作品の一人称の女性の婚約者を、すごい人だと思う。もし私が彼だったら、同じような対応ができるだろうか…。もちろん、ある出来事に対する反応は人により千差万別なのだけれど。たとえば-ちょっと脱線気味-、「とかげ」に例示されている、「守ると約束した植木鉢を枯らせたからと首をつった子」。そんなことで首を吊らなくても、という人も多くいらっしゃるだろう。しかし私は、いろんな意味で、そして善悪の価値判断はなしにして、この反応がありうるものだ、と思う。もちろん、実際に誰かが(とりわけ、自分が知った人が)そういう行為をしたら、とても苦しいし、とても悲しいし、とても悔しい気持ちになるだろう(ああ、自傷行為をしていた自分を思いだしてしまった。周囲の方々には本当に多大な心配をかけたのだな、と、いまさらながら、やや客観的に認識できた)。さて、戻ろう。そして、彼のその行動により、とても希望のある物語となっている。 総じて、この短編集の作品は読後感が良い。もちろん、上でつらつらと考え事をしてしまったように、不条理なことや重たいことなども描かれているのだけれど。
2005.01.31
コメント(1)

アマゾンで注文していたCarolyn Muessig(ed.), Precher, Sermon and Audience in the Middle Agesが届く。論文集だけれど、これは自分の研究にとってかなり有益なものになりそう。ミシェル・パストゥロー『ヨーロッパの色彩』(パピルス)読了。原著のタイトルはDictionnaire des couleurs de notre tempsで、これを忠実に翻訳すれば『現代色彩事典』となる(訳はあとがきより)。青、赤など、色そのものに関する記事もあれば、カメレオンなどの動物、トイレット・ペーパーやシーツなど身近なもの、ストッキングや下着などの衣類、サッカーやオリンピックなどのスポーツ、などなど、多くの記事がある。全部で76の記事。「はじめに」で著者自身述べているように、個人の好みが書かれている。でもそれは書かない方が良かったのでは、と思ってしまう。ああ、そのおかげで面白い記述はあった。「かわいそうなクマちゃん」というのがそれだ(102頁)。パストゥローといえばとても面白いことをしたらしいのだけれど、それは後述するとして、もう一点本書に関する指摘をば(学問的な指摘ではないけれど)。「青の色階に含まれる食物はまったくといっていいくらい存在しないのである」(115頁)。で、いろいろ考えてみたけれど、たしかに青い食べ物って思い浮かばない。かき氷のブルーハワイくらいかな。で、パストゥローがした面白いこと。彼の著作に、『悪魔の布-縞模様の歴史』(白水社)というのがある。邦訳がでている。中世では、縞模様は否定的な意味合いをもっていた。図像表現において縞模様の服を着せられた人々は、なんらかの意味で疎外されたかあるいは排斥された人々であった(8頁)。ところが、現代では否定的な意味ばかりではない。現代の縞模様という章で、パストゥローはシニャル社の歯磨きに言及している。これは、「白い歯磨きの周囲に赤い縞をつけているのだが、チューブから出てくるときの見栄えは見事である」(106頁)とのこと。ちなみに、私が愛用しているOra2もストライプになっている。日本には三色ストライプの歯磨きがあるけど、ちょっと名前を忘れてしまった…。それはともかく。パストゥローは、なぜ歯磨きが縞模様で出てくるのか知りたかった。そこで、「シニャル社の歯磨きチューブを分解し、解体しさえした(「めちゃめちゃにした」というべきだろうか)」のだ。結局その謎は「わからなかったと告白せざるをえない」とのこと(139頁)。シニャル社に聞いてみればよいのに、と思ったけれど、企業秘密で教えてもらえないのかな。ミシェル・パストゥローは、紋章学、色彩学、図像学の歴史の権威といえるだろう(彼の邦語になっている著作は全て持っているので、興味がある方は所有作品一覧を参照してください)。でも、『悪魔の布』のこのくだりを読んで、とても親しみやすいものを感じた。歯磨きチューブがめちゃくちゃになって、片づけている姿を想像すると笑ってしまった。さて、今日の日記のタイトルにした『ヨーロッパの色彩』は、とても手に入りにくい。どうも絶版になっている様子。必死で検索していたらジュンク堂に一冊在庫が残っていたので注文、購入できたという経緯。手に入ったときは、とても嬉しかった。やっぱり本は、コピーじゃなくて本の形で手元においておきたい。
2005.01.30
コメント(0)
![]()
楽天フリマで注文した、エマニュエル・ル=ロワ=ラデュリの『気候の歴史』が届く。今日は英語文献のレジュメに仏語訳と、勉強がんばっている。昨日遊んだから。でも晩には小説読もう。吉本ばなな『哀しい予感』~角川文庫~ 弥生はときどき家出をしていた。優しい両親、弟は、帰ると暖かく迎えてくれた。でも、今回の家出は、今までとは違う-。 弥生は、音楽の教師をしている姉、ゆきのの家を訪れた。 いつまでもいていいよ、と言ってくれたゆきの。ある朝、ゆきのは家を出た。そして、そのまま帰ってこなかった。 弥生は、弟の哲生とともに、ゆきのを捜しに、軽井沢の別荘へ向かう。 いつも内容紹介としてあらすじを書いているので、今回も踏襲。でも、こんなあらすじ紹介なんてどうでもいいような気もしている。あらすじじゃないのだ、大切なのは。 ネタばれにしたくないので、あたりさわりないことしか内容紹介に書かなかったし。 いくつか、思いつくキーワードをあげてみよう。失われた幼い頃の記憶。家族。恋。 * 大学生の頃に一度読んでいる。そのとき、かなり泣いた覚えがある。今回も泣いたけれど。 哀しく、切なくなる。そして、同時にとても暖かい。弥生の両親の存在。とても善良な、人たち。 私は入院中から、ほとんどニュースを見ないようにしている。嫌な事件の報道を聞くと、具合が悪くなるから。 ニュースで取り上げられる、殺人、傷害、強盗、汚職……。性悪説を信じてしまいそうになるニュース。 でも、善良な人も、間違いなく存在する。 小説の中にしかいないなんて、切なすぎるから。 性善説も性悪説も、どうだってよいこと。 世の中には良い人もいっぱいいる。それを信じて、生きよう。 そう、極楽浜が描かれるシーンが、とても素敵だった。 うーん、なんかもっと感想を推敲したいな。とにかく、私はこの作品はとても好き。エンタの神様を見た。昨年から好きになったもので。インパルス面白かった。昨日、入院中に録ってもらっていたビデオを見たのだけど、「東京タワーから札をまく」のネタもとても面白かったし。今週から、しっかりエンタはチェックしよう。
2005.01.29
コメント(0)
![]()
Christoph T. Maier, Crusade Propaganda and Ideology第一部読了。卒論で一部使ったけれど、今回ざーっと通読。あらためてレジュメも作ろう。法月綸太郎『雪密室』~講談社文庫~ 沢渡冬規が経営するペンション『月蝕荘』に招待された法月警視。「上」からの圧力によりやむなく赴いた警視だった。 悪名高い篠塚真棹のある記念日のパーティーということで招かれた人々。彼らは真棹に弱みを握られていた。 パーティー二日目の朝、事件が発覚した。鍵がかかっていた離れで、真棹が首を吊って死んでいたのだ。雪の上の足跡の問題もあり、現場はいわば「二重の密室」になっていた。そのため、所轄の警部は自殺を主張したが、警視は殺人だと確信する。二重密室の謎を、警視の息子である推理作家、法月綸太郎が解く。 オーソドックスな本格ミステリ。「上」からの圧力に屈さない警視はかっこいい。でも、警部が苦悩していたように、社会に出るとああいう上下関係が横行しているのだろうな。いやだ。みにくい。 「読者への挑戦」も挿入されている。
2005.01.22
コメント(0)

森博嗣『奥様はネットワーカ』~講談社ノベルス~ 某大学工学部化学工学科で、アルバイトで秘書として勤めているスージィこと内野智佳。彼女は研究室のパソコンに日記をつけていた。 彼女に関心を寄せる堀助教授が、ある日、何者かに殴られて倒れた。そこに呼び出された図書館司書のルナも何者かに殴られてしまう。 化学工学科の女子学生が殺され、さらに家田教授の妻も殺されてしまう。 講談社ノベルス版で再読。単行本の感想は作品紹介のページにあるけれど、あらためて感想をば。 なんとなく覚えていたんよね。だから犯人は薄々思っていた人物だった。 でも、楽しめた。やっぱり森さんの作品はどこか詩的。 物語は化学工学科の四人、司書のルナ、情報工学科助教授の三枝の六人を中心に語られていく。ときおり、「白い」や、「記憶」などといった節も挿入されていて、それが詩的な雰囲気を高めている。 ラストは独特。小説っぽくない印象。 あ、単行本と見比べたのだけれど、終わりのページは221頁で一緒。 表紙は、講談社ノベルスっぽく仕上がっている。ピンクがかわいい。
2005.01.19
コメント(0)

高田崇史『QED 鬼の城伝説』~講談社ノベルス~ 岡山、吉備津神社には鳴釜神事という占卜がある。地中に埋められた温羅の首が釜を鳴らし、それにより吉凶を占うという。 鬼野辺家にある釜も鳴るという。こちらが鳴ると、鬼野辺家の主が死ぬという。 春に釜が鳴り、長男の健爾が密室と化した土蔵の中で殺されていた。首が切り取られ、土蔵の中心に置かれていた。 健爾のフィアンセの友人に呼ばれ、小松崎、奈々・沙織姉妹は岡山に向かった。しかしそこで、新たな事件が起こる。 高田さんのQEDシリーズではいつも思うのだけれど、歴史の謎の解明が本当に鮮やか。 しかもこの作品、岡山県が舞台ですよ。私の地元ですよ。ということもあり、私自身桃太郎伝説の源とされる吉備津彦尊と温羅の戦いについて少し調べたことがあるし、吉備津神社、吉備津彦神社、鬼の城にも行ったことがある。身近なところが舞台というだけで嬉しいのに、その解明の鮮やかなこと! 猿、雉、犬って誰? なぜ団子? なぜ桃太郎は鬼退治に行ったの? 鬼は何をしたの?これら(もっと多い)の謎が、見事に明らかにされます(厳密にいうと、理解の仕方の一つが提示されるというべきかも)。 正直、いつも殺人事件はあってもなくてもよいような気がするのだけれど、今回は殺人事件を解明する中で読者に伝わってくるメッセージがあり、良かった。 ところで、奈々さん本当にかわいい。いろんな女性キャラクタ知っているけれど、一位二位を争うかわいさではなかろうか。真っ赤になって照れる姿のかわいいこと。タタルさんもかっこいい。既成の価値観を覆してくれる。そのシーンでは涙。 珍しく紹介に書いてしまいますが、この作品はオススメ!
2005.01.16
コメント(1)
有栖川有栖『月光ゲーム-Yの悲劇'88』~創元推理文庫~ 英都大学、推理小説研究会(EMC)に入会した僕、有栖川有栖。 夏休みに、矢吹山にキャンプに出かけた。道中のバスの中で、同じく矢吹山にキャンプに向かっていた大学生たちと知り合いになる。キャンプ先では、先に到着していた大学生たちのグループがいた。みんなで一緒にキャンプを楽しむことになった。総勢17人。 キャンプファイヤー、EMCが提案したマーダー・ゲームで楽しんでいた有栖たちだが…。 メンバーの一人、小百合の突然の失踪。休火山であった矢吹山の突然の噴火。 そして、殺人。被害者が残した、Yのようなかたちをしたダイイング・メッセージ。 事件の謎を、EMCの会長江神が解く。 数年ぶりに再読(初読は高校生の頃)。 なんて悲しい物語なのだろう-と思った。ミステリを何百冊と読んでいて、ミステリが好きな私がいうのも変だけれど、こういうミステリは悲しいよ。 第一章が、楽しさに満ちあふれていて。なんでみんなこんな仲良くしてるのに、殺人事件なんか起こるの?楽しくキャンプしようよ。って思って。 これは一般論なのだけれど、殺人が起こる際、その大部分には動機があると思う。遺産目的、金品強奪目的…など、自分勝手なものもあるけれど(殺人は全て自分勝手という意見があるかも知れないが、人を殺したくなるほど追いつめられることがあるということは痛いほど知っているし、だから情状酌量という制度があるんでしょう?)、かっこ内に書いたような、どうしようもなく追いつめられて、っていうのもある。後者の方を考えたい。ある人物は、殺人の被害者となるけれど、その人物は殺人の加害者になんらかの形で苦痛を与えたわけ。殺したいと思うほどの。だからそもそも、動機を作る人間にも(殺されても仕方ないと思う人間だって、正直いる。児童虐待、性的虐待、人権侵害etc)問題はあるのだ。 で、この作品に戻るけれど、第一章でみんなとても楽しそうにしているのに、やっぱり殺意を抱かせるようなことをしちゃう人がでてくるわけで。そこが悲しかった。 ミステリとしては、良い作品。十分な伏線。「読者への挑戦」も挿入されている。物語としても、上記のようなことをつらつらと考えさせてくれる、良い物語。でもやっぱり悲しいよ。午後からイオンで本買って、病院に戻る。次の火曜日に帰ってくる予定ので、そのときにあらためてこの日記も更新するつもり。追記。今日のバニラ・ムードの演奏は、「東京ブギウギ」。演奏後、Marikoさんが大学の試験のため会場をあとに。で、後半の俳句にはMarikoさん以外の三人がのぞんでいた。 高田崇史『QED 鬼の城伝説』森博嗣『奥様はネットワーカ』(講談社ノベルス版)ジャック・ル・ゴフほか『世界で一番美しい愛の歴史』購入。
2005.01.14
コメント(4)

Michel Pastoureau, Blue-The history of a color-読了。この日記のタイトルは、本書のタイトルを自分なりに訳したもの。厳密には『青-一つの色の歴史』となるところでしょうが。パストゥローは中世史家と思っていたのだけれど、中世以降の記述の方が興味深かった。音楽のブルースの話、ジーンズの話など。簡単に内容を紹介すると、古代には青色は人気のある色ではなかった。けれど、12世紀頃から貴族、王などの間で青色の人気が高くなり、現在では青色はヨーロッパ人の間で最も人気のある色になっている、という話。もちろん、青以外の色も言及されている。最後の方では、日本での色への好みについて言及されており、興味深かった。本書の記述によると、日本人の色の好みは、白、黒、赤の順だという。パストゥローは、私が大学二年生の頃にそのフランス語テキストが講読の授業で使われていて、興味をもった歴史家。『ヨーロッパの色彩』以外のパストゥローの本は、当時買った。2003年に、『王を殺した豚 王が愛した象』という訳書が出た。近いうちに買おうかと思っているところ。(追記―2007年9月21日)本書(というか、仏語の原著)の邦訳が、2005年に出版されています。その文献についての記事はこちら。邦訳版は、カラー図版がいくつかに絞られ、その他は白黒図版になってしまっているのですが、英訳版は全ての図版がカラーで、きれいです。この英訳書は、当時入院していた頃に読んでいたのですが、ある方が、きれいな本ですね、と言ってくださったことが思い出されます。というんで、邦訳が出たものの、英訳版ももっていて良かったと思っているのでした。本当は、仏語の原著をもっともっと読めるようになるとよいのですけれど…。
2005.01.12
コメント(5)
![]()
森博嗣『ナ・バ・テア』~中央公論新社~ 戦闘機のパイロット、クサナギの物語。チームナンバー1とされるティーチャと組んで飛んだこと、前のチームで乗っていた散香の新型に乗るようになったこと。新しいメンバーとの出会い。哲学的、詩的に語られていく。 内容紹介も感想も書きにくい。内容紹介でも書いたけれど、哲学的で、詩のような感じ。前作『スカイ・クロラ』も同様の印象を受けた。 買ってからずっと読んでいなかった作品。私は印象に残った文章には付箋を貼るようにしているのだけれど、付箋を貼った箇所を読み返してみると、「普通」について書かれているところが多かった。「普通」とは何かということを、以前に日記でも書いたけれど、私にとっては大きなテーマなのであろう。
2005.01.07
コメント(0)
ウィリアム・シェイクスピア『ヴェニスの商人』William Shakespeare, The Merchant of Venice, 福田恆存訳~新潮文庫~ ポーシャに、三人の求婚者が現れる。父の遺言により、求婚者に、金、銀、鉛の三種類の箱のうち一つを選ばせ、ポーシャの絵が入っているものを選んだ者と結婚するということになっていた。この選択に挑むのは、モロッコ王、アラゴン王、バサーニオーの三人。 このバサーニオーにはアントーニオーという友人がいた。彼は、アントーニオーに、借金の保証人になってくれるように頼む。そして、ユダヤ人金融業者シャイロックのもとへ行く。シャイロックは、借金が返せなかった場合には、アントーニオーの肉一ポンドを要求するといい、証文にサインをさせた。 返済の期日になるが、悲報が届く。アントーニオーの貿易が、全て失敗したというのだ。 私はいわゆる古典については詳細な内容紹介をつけておきたいので、以下はネタばれ気味になります。嫌な方はこの部分は読み飛ばしてください。 鉛の箱を選び、無事ポーシャと結婚できることになったバサーニオー。彼の友人のグラシャーノーはポーシャの小間使のネリサと結ばれる。 バサーニオーは、アントーニオーが返済不可能となり、肉を要求されていることを嘆き、なんとか助けようとする。ポーシャが、借金の二倍、三倍の金を払うのも辞さないというので、それだけ払うと法廷で述べるが、シャイロックはかたくなにアントーニオーの肉を要求する。そこで、アントーニオーとバサーニオーを救うために現れるのが、裁判官に扮したポーシャと、その書記に扮したネリサ。ポーシャの巧みな話術により、アントーニオーは救われることになる。 さて、感想。 西洋中世史を勉強していると、しばしばユダヤ人についての言及を目にする。そこでしばしば出会うのが、ここに登場するシャイロック。貪欲というなら、二倍、三倍の金をもらうということでオーケーにすればよいのに、あくまでもアントーニオーの肉を欲するシャイロック。んー、貪欲よりも恨みの方が強い、という感じだな。 よく分からなかったのが、ポーシャとネリサの指輪をめぐる態度。あれって、恋人の愛を試しているわけ?どういう意図があったのか、分からないです。国語の問題で出たら答えられないな(笑)。どなたか分かる方は教えてください。 あと、シャイロックは結局貸した金さえ返してもらってないよね。そこはなんだか可哀想。ユダヤ人というだけでさげすまれて、あげくの果てには貸した金さえ返ってこない。しかもそれが正統化される。納得できないけれど、当時の心性を反映しているのだろうか。もっとも、私にはこの作品を読んだだけで当時のユダヤ人に対する心性を述べることはできないけれど。今年初のバニラ・ムードの演奏は、「春一番」。もうすぐは~るですねえ☆ ステキ。これから病院に帰ります。日記の更新は一週間後になりそうです。最近は精神的にも安定していて、そろそろ退院したいな、とも思っています。任意入院ですからいつでも退院できるのです。でももうちょっと療養したいな、とも思ったり。病院でも良い人間関係が築けたので、大学院行くまではその関係を大切にしたいな、と思っている私です。
2005.01.04
コメント(6)
![]()
竹本健治『匣の中の失落』~講談社ノベルス~ ファミリーの実名小説『いかにして密室はつくられたか』を書くというナイルズ。 * 倉野のアパートで、曳間が死んでいた。現場には不審な点が多く、倉野は「密室ならぬ密室」と感じた。この事件をめぐり、ファミリーのメンバーは集い、互いにアリバイを証言しあった後、推理合戦をすることになる。推理、犯人に関する十戒まで決めて。 * そこまで書かれた『いかにして密室はつくられたか』をナイルズのそばで読んでいた曳間。そこに、甲斐から電話がかかってくる。布瀬の家で、事件が起こったという。真沼が密室から消えたのだ。 * 曳間の死をめぐる推理合戦が繰り広げられる。そんな中で、新たな事件が起こる。ホランドの死。 * 以上の『いかにして密室はつくられたか』を読んだメンバーたちは、真沼の消失についてさらなる検討をしていた。そこに、事件の報せが入る。倉野が殺されたというのだ。 数年ぶりに再読。最初に読んだときは混乱したが、今回は整理しながら読んだので、それほどでもなかった。 どこに記されていた記述であるか忘れてしまっており、私の怠慢のため調べてもいないが、日本四大ミステリと称される作品群がある。小栗虫太郎『黒死館殺人事件』中井英夫『虚無への供物』夢野久作『ドクラ・マグラ』、そして本書、竹本健治『匣の中の失落』である。 小説とは、虚構である。読者はそれを前提として読んでいる。しかし、読者はリアリティを求める。虚構である小説を読みながら、小説の中ではそこで描かれた出来事、心情などは事実であると考えて読む。しかし本書は、いわば虚構中の現実と虚構中の虚構が交互に描かれており、どちらが虚構中の現実であるのか、分からなくなっていく。作中作がさらに作中作になっているというか。 密室、密室、密室。清涼院流水の『コズミック』ではないが、この作品も実に密室に彩られているといってよいだろう。登場人物はみなミステリ好き。それぞれが探偵役を果たし、探偵たちの中に犯人がいるという構図。 第一章を読み終えたとき、私は「完全に殺人事件の解明をゲームのように考えている人間たち」とメモをとった。現実の事件に、十戒もなにもないだろう、と。「ミステリに対するアンチ・テーゼだろうか」ともメモをしている。だから、登場人物たちが感情的な行動をとるとき、少し安心した、というか。 これだけすごい作品がデビュー作というからすごい。竹本さん自身あとがきでおっしゃっているように、若いからこそこれだけの作品が書けた、ともいえるのかも知れないけど。 それにしても、魔術や理系の知識には圧倒される。第二章に、鬼についての民俗学的な話、物理の話(ブラックホール、不確定性原理、トンネル効果など)が記されているが、とても興味深かった。光子の話、プルキニエ現象、カタストロフィー理論も章は違うが興味深い。もっとも、文系肌の私には理系の話は難しすぎたけど…。 四大ミステリと称されるだけはある作品だと思う。 なんか解説的な感想になっちゃった。ちょっと不本意。 なお、私は未読だけれど、乾くるみさんがこの作品へのオマージュとして書いた『匣の中』という作品があることも付け加えておこう。 大学二年生から四年生まで、正月には帰省していないので、今年は久々におせちが食べられた。昔は嫌いだったけど、数年食べずにいると懐かしいもので、いいもんだな、って思った。 専門書は、『愛と結婚とセクシュアリテの歴史』を読了。多岐に渡るテーマについて、いろんな時代について述べられていて、とても有益な書物だった。ジャック・ル・ゴフの論文が収録されているのが嬉しかった。私はル・ゴフの研究大好きなので。ちょっと(かなり?)マニアック。てへ。 講談社のメーリス「ミステリーの館」が届く。一月のノベルスは高田さんは絶対買うとして、『奥様はネットワーカ』を買おうかどうか迷い中。ハードカバー持ってるし、節約するか、森さんの講談社ノベルスは制覇してるから、欠落を作りたくないし買うか。ところで高田さんの新作は岡山が舞台。地元っ子としては嬉しいゾ。 二月に西尾維新さんの『ネコソギラジカル(上)十三階段』が発売されるそうな。戯言シリーズ最終回という。残念!でも楽しみなのだ。 あと、「挑戦者2005」というフェアをするそうなのだけど、ラインナップがすごい。浦賀和宏さん、舞城王太郎さん、佐藤友哉さん、西尾維新さん、北山猛邦さんというのだ。好きな作家ばかり!特に嬉しいのは佐藤さん。『クリスマス・テロル』が最終作とばかり思っていたから。佐藤さんの世界観は好きなのです。西尾さんの世界観も好きだけど。そんなこと言ってたら森さんのも好きだし、いくらでもあげられるのでこのあたりで。
2005.01.03
コメント(0)
全11件 (11件中 1-11件目)
1


