のんびり幸兵衛夢日記

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2006.01.29
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カテゴリ: 読書
これはトリックを楽しむという性質の小説ではありません。


なぜ、社会全体を揺るがすような凶悪な犯罪を犯すのか、犯罪の動機、犯罪が進むひとつひとつの過程での心の動き、また、犯罪者の生い立ちといったものまでを含めて、おもに精神性にスポットを当てて、話が展開しています。


さらに、立場を変えて、被害者側の心理の描写にも、力を注いでいるもの大きな特徴です。

ひとくちに「被害者」といっても、見方によってさまざまな被害者がいます。その、それぞれの立場を具体的に描写するために、各々が出会って対立したり、そこからの葛藤を描いたりして、心情を表現しています。

この中のさまざまなエピソードが、いろんな立場を考慮して書かれていて、説得力があり、この小説を奥行きのあるものにしていると感じました。

私が個人的に、その気持ちよく分かるなぁと思ったのは、次の箇所。

ひとつめは、被害者に少しでもかかわりを持った人は、自分を責めるような気持ち、罪悪感を持ってしまう、それがたとえ責められるべき非がなくても、というところ。

ふたつめは、被害者の親族など近しい人は、「もし~だったら、~でなかったら」といったことを、ずっと考え続けてしまう、というところです。




今までにない新しい形の犯罪が起こると、それを見本にした犯罪が、その後起こるようになる。これは、世のならいです。
残忍な事件が起こるたび、その後の影響について考えることも、もはや当たり前となりました。

物語のオリジナリティが求められる小説家は、その小説の中にこれまで誰も考え付かなかったものを描き出せば、小説家としては成功するけれども、それを見本とした犯罪が発生する危険性を考えると、発表は慎重にならざるを得ないことも、多いのでは。

現実に起こるはずがないと思われていたことが、次々に起こってしまう世の中。
もうミステリー小説は書けない、といった人も確かいたような気がしますが、そこで敢えて、「模倣犯」をタイトルに据えて、既存の小説をなぞった犯罪をやるなんて自尊心が許さない、という人物を描いてみせた・・。

これまで感じていた以上に、タフな小説家だったんだなあ、という感想を持ちました。





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最終更新日  2006.01.29 18:46:04
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