のんびり幸兵衛夢日記

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2012.05.31
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カテゴリ: 読書
寒い国から帰ってきたスパイ 」(ジョン・ル・カレ)を読みました。
以前読んだ「ナイロビの蜂」がとても面白かったので、この人のほかの本も読んでみたいと思っていました。
少し前に古本で「影の巡礼者」というのを見つけて買ったのですが、これがスマイリーという人物が活躍するシリーズだったので、シリーズのはじめの方から読んだ方がいいだろうと、これから読むことに。
が、読んでみると、この作品ではスマイリーは時々チラッと気配を感じさせるだけでした。

この作品の主人公はイギリスのスパイであるリーマス。
60年代、ドイツをベルリンの壁が東西で二分する時代。
冒頭では、壁の東から西に逃れようとする味方のスパイを、壁の西側から見守っていたリーマス自身が、最後のシーンでは壁をよじ登り東から西へ辿り着こうとします。

西も東もすべてにおいて互いに徹底的に敵視していて、瑣末な情報を得るために危険を冒し大きな犠牲を払って、憎しみと報復が繰り返されるゲームの世界。

スパイはプライバシーも何もなく、すべてをかけてやっているが、国家から見れば所詮、駒のひとつ。
その、徹底的に非情なスパイの世界と、その優秀なプロであるリーマスの中にある、人間的な部分との対比が、何とも言えずいいと思いました。

これが書かれた時代と今とでは、世界の情勢が大きく変わりましたが、描かれているものはまったく色あせて感じられません。
中ほどの、リーマスを尋問する東ドイツの人の言葉が特に印象に残りました。
「…あるローマ人の言葉に、ひとりの男を多数の利益のために死なすのは、適宜の処理というべきだ、とある」

この小説は、スリリングなスパイの世界をわくわくして読む娯楽小説ですが、同時に全体主義への批判が描かれていると思いました。





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最終更新日  2012.05.31 18:48:20コメント(0) | コメントを書く
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