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読書案内「鶴見俊輔・黒川創・岡部伊都子・小田実 べ平連・思想の科学あたり」 15
読書案内「BookCoverChallenge」2020・05 19
読書案内「リービ英雄・多和田葉子・カズオイシグロ」国境を越えて 5
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浦沢直樹「あさドラ 8」(小学館) 2024年5月のマンガ便に入っていました。浦沢直樹くんの「あさドラ」(小学館)の第8巻です。 第7巻が2022年の11月の発売でしたが、第8巻は2024年の1月の発売で、ホント、久しぶりですね。浦沢くんも1960年生まれで、還暦を越えていらっしゃるわけで、お身体とか、いろいろあったのかもしれませんが、無事、ご復活のようでメデタシ、メデタシですね(笑) で、表紙を見るとアサちゃんのお顔が変わっていますね。ちょっと、オネーサンになられたようです。読み終えてわかりました。7巻が1964年、東京オリンピックの年が舞台だったのですが、第8巻では、それから4年後、1968年になっていました。 そもそもこのマンガは1958年の伊勢湾台風が始まりで、その時に12歳だった浅田アサちゃんが、1964年には、当然、18歳で、なんと、飛行機乗りになっていて、問題の「アレ」と戦うという展開だったわけですが、みなさん、お忘れでしょうね(笑)。 というわけで、まず、8巻の人物紹介と目次です。 前半、第52話の「オーディション」から第54話「1964年の青春」あたりまでが、高校時代ですね。同級生のヨネちゃんの歌手デビューとか、ミヤコちゃんの女子プロレスの話です。で、55話「潮騒の踊子」くらいから1968年、22歳になったアサちゃんに新しい出会いがありますね。それがこのシーンです。 このシーンに登場してきたのがリバー・エスリッジという脱走したアメリカ兵です。そうです。お話は、東京オリンピックをへて、ベトナム戦争の時代に突入してきたというわけです。 伊勢湾台風、東京オリンピック、和製ポップ歌手、女子プロレス、そしてベトナム戦争です。 浦沢直樹くんは「戦後」の日本を生きた人たちの姿、だから、1946年生まれの少女を主人公に描いているとボクは思っているわけですが、アサちゃんより8歳年下のボクが、このマンガに強く惹かれているのはそのあたりなのですね。 脱走アメリカ兵とくれば、次はべ平連(ベトナムに平和を市民連合)なわけですが、そのあたり、どうなるのでしょうね。「でな、このマンガ、アレはどうなったんかな?」 トラキチ君の言葉ですが、いや、ホント、このマンガのつかみはアレだったはずなんですが、どうなるんでしょうね。 まあ、なにはともあれアサちゃんはどんどん大人になるし、時代は70年代に突入となると、ほんと、目が離せませんね。 追記 ところで、このブログをご覧いただいた皆様で楽天IDをお持ちの方は、まあ、なくても大丈夫かもですが、ページの一番下の、多分、楽天のイイネボタンを押してみてくださいね。ポイントがたまるんだそうです(笑)
2024.05.08
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石塚真一「Blue Giant Momentum 1」(小学館) 2024年、4月、トラキチクンのマンガ便に入っていました。石塚真一「BLUE GIANT MOMENTUM 1」(小学館)です。 今や、映画にもなって、メジャーの道を歩き始めている「ブルージャイアント」ですが、ニューヨーク篇の始まりです。 アメリカを1周して、いろんな出会い、いろんな経験をしてきた宮本大君ですが、いよいよ、ニューヨークです。「ダイ・ミヤモト・モメンタム」、それが、ジャズの聖地ニューヨークに挑戦するバンドの名前です。 このニューヨーク篇が何巻まで続くのかわかりませんが、始まりの第1巻で、一番心に残ったいいシーンはこのシーンでした。 「ダイ・ミヤモト・モメンタム」が、ニューヨークで最初に演奏したのは「セーラー・キャット」というクラブです。客は、音楽なんて聴いていません。ビリヤードやカードゲーム、プロスポーツのテレビ中継に盛り上がってお酒をのんでいる、ライブステージで演奏するミュージシャンにとって最低ランク、最悪のお店です。ギャラも、客の間に回されるチップバケツに投げ込まれる小銭だけです。それが、はじめの1歩 ! の舞台でした。 で、今、ダイたちの演奏の音の大きさにいら立った客の一人が、まわってきた、そのチップバケツをひっくり返したシーンです、 ピアノのアントニオが、その客の態度に激高しかけたのを制止したが宮本大クンです。で、その時の一言と表情が素晴らしい。「Play! 弾け!」 モメンタム、Momentum、高校時代の物理の時間にモーメントという用語がありましたが、運動量とかいう意味でしたっけ?あれの類語ですね。ここでの使われ方は躍動 くらいでいいのでしょうか。「ブルージャイアント・モメンタム」、おもしろくなりそうですね(笑)。 追記 ところで、このブログをご覧いただいた皆様で楽天IDをお持ちの方は、まあ、なくても大丈夫かもですが、ページの一番下の、多分、楽天のイイネボタンを押してみてくださいね。ポイントがたまるんだそうです(笑)
2024.05.03
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ハロルド作石「ゴリラーマン40 第4巻」(講談社) 2024年4月のマンガ便の1冊です。ハロルド作石の「ゴリラーマン40」(講談社)の第4巻です。 40歳、不惑を迎えたゴリラーマン、1990年代に高校生ゴリラーマンとして活躍した池戸定治君が中年男になって帰って来たという設定で2022年から始まっている作品の第4巻です。 表紙の、顔はゴリラーマンで服装は女子高校生の女性は池戸芽衣ちゃんといいます。たぶん、ゴリラーマンシリーズでは初めて登場するキャラクターですが、ゴリラーマン、池戸定治さんの姪っ子で、定治さんのお姉さん、まあ、これまたゴリラーマン・ウーマンの池戸美穂さんのお嬢さんです。 実はこのシリーズの正式な題が「ゴリラーマン40 ファミリー編」というのです。池戸定治さんのご一家総出演編というわけですね。 で、本巻の前半は、まず、姪っ子のスーパー女子高生池戸芽衣ちゃんの日々が描かれていました。 身体能力は、ダンスから格闘技まで、超絶スパー・ガールですが、顔はゴリラーマン、友達からはゴリッチとあだ名されている女の子の高校生活を描いたお話でした。 顔がゴリラーマンで、あとはみんな今時の女子高校生なわけですから、笑っていいのか、同情していいのか??? ちょっと困りましたが、でも、まあ、可愛らいい同級生の男の子が、彼女のファンだったりもして、まあ、笑って読んでいていいんでしょうね(笑)。 後半は、今現在のゴリラーマン一族全員集合! で草野球というお話です。ハロルド作石さんは「ストッパー毒島」の作者ですからね、野球系の世界は、きっと余裕なのでしょうね。 正面のお二人が、41歳の美穂さんと女子高生の芽衣ちゃんです。 あとは弟さんとか、お父さん、甥御さんとか姪っ子さんのようです。ゴリラーマン、ご本人の定治さんはここには描かれていませんが、当然、登場します。 まあ、そういうマンガです。面白いと思ったのは、理屈で考えれば同じ顔ではありえないゴリラーマンのお母さんとか、芽衣ちゃんのお父さんが登場しないことですね。 ( ̄∇ ̄;)ハッハッハ、どうでもいいっちゃあ、まあ、どうでもいいんですが。じゃあまたね(笑) 追記 ところで、このブログをご覧いただいた皆様で楽天IDをお持ちの方は、まあ、なくても大丈夫かもですが、ページの一番下の、多分、楽天のイイネボタンを押してみてくださいね。ポイントがたまるんだそうです(笑)
2024.04.28
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石塚真一「BlueGiant Explorer 9」(小学館) 「ブルージャイアント」のアメリカ武者修行編「Explorer」の第9巻です。トラキチクンの2024年、4月のマンガ便に入っていました。 アメリカ西海岸のシアトルだったかで、たった一人で始めた武者修行も、ピアノのアントニオ・ソト、ドラムスのゾッド、ベースのジョーの4人組のバンド「DAI MIYAMOTO MOMENTUM」へと成長してきた宮本大君ですが、この、第9巻ではフロリダを経由してボストンへたどり着きます。 いよいよ、夢のニュー・ヨークへ、あと一歩というところですが、本巻のエピソードは、フロリダでのシェリルという女性との出会いと別れと、ボストンでの沢辺 雪祈くんとの再会ですね。 大が日本でバンドを組んでいたピアニストで、今ではバークレー音楽院で作曲を学んでいるということなのですが、まあ、あれこれいうのはやめます。読んでください(笑)。 彼については、スピンオフというのでしょうか、南波永人という方が、彼を主人公にして「ピアノマン」という小説を書いていて、小学館から、すでに発売されているそうです。ちなみに、マンガの作者の石塚真一はその小説の挿絵とか表紙を描いているそうです。 これですね。 ウーン、映画もかなりよかったのですが、今度は小説ですか。気に入ったマンガに付き合うのも大変ですね。まあ、そのうち読んでみようかなという感じです。 というわけで、BlueGiantExplorerは第9巻で完結です。次号からはいよいよニュー・ヨークの宮本大です。 作者の石塚真一は、ここのところのコロナ蔓延の影響で、現地、アメリカでの取材もままならないままの展開で苦労していらっしゃるようですが、マンガは快調ですよ(笑)。 追記 ところで、このブログをご覧いただいた皆様で楽天IDをお持ちの方は、まあ、なくても大丈夫かもですが、ページの一番下の、多分、楽天のイイネボタンを押してみてくださいね。ポイントがたまるんだそうです(笑)
2024.04.27
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立川譲「BLUE GIANT」OSシネマズハーバーランド このブログの「週刊マンガ便」で、何度かご案内している石塚真一のマンガ「BLUE GIANT(ブルージャイアント)」(小学館)がアニメ映画になりました。せっかくマンガでええ気持ちになってんのに、ジャズとかいうてチンケな音になっとったら台無しやん。 いつもマンガ便を届けてくれるヤサイクンが、そんなふうに言うので、躊躇しましたが、意を決して、あまり行かないOSシネマズ・ハーバーランドにやってきました。 館内には、他の映画の広告はたくさんあるのですが、この映画のポスターや看板は一枚もありません。ようやく見つけたのが上映ホール入り口の電光掲示ポスターでした。あんまり流行っていないのでしょうかね?100人ほどの小さめのホールで客はまばらだったのでほっとして最上階に座ると始まりました。 立川譲監督のアニメ映画「BLUE GIANT」です。 空から雪が降っていて、雪片が大写しされ、マンガでよく知っている宮本大くんがサックスを吹きならす音が天井から聞こえてきて、涙がこぼれてきました。そこから、彼が演奏するたびに涙が止まらない映画でした。 原作は全部で10巻、仙台のバスケ中学生がジャズと出会い、ただ、ただ、ひたすらテナーサックスを練習し、高校を卒業して東京に出て、偶然出会った天才ピアノ少年沢辺くんと、東京で大学生になっていた同級生の素人ドラマー玉田くんでトリオを組み、まあ、宮本大くん当人は世界一のジャズプレイヤーになることを夢見て、やっぱり、ただ、ただ、練習して、やがてヨーロッパに旅立つというお話です。 で、映画は10巻の長いお話の、まあ、ほぼ、東京編という場面設定で、うまくまとめられていました。何がうまいかというと、根性の入った大音響で吹く宮本大くんの練習のシーンではなくて、楽曲というか、音楽としてのジャズを見せる、いや、聞かせるのを映画の狙いにしているところで、これが素晴らしいのです。 ぼくはジャズどころか、音楽についてもよくわからない老人ですが、この映画の演奏のシーンで聞こえてくる音、あるいは音楽には、繰り返し涙がこぼれました。 素人ドラマーの玉田くんのリズムが、シーンを追うにしたがって、だんだん様になっていくのを、プロの演奏家が作っていると思うのですが、すごいもんです。 お話は知っているわけですが、音が入って、本物のジャズ・マンガになったと思いました。ピアノのシーンなんて、ただ、ただ、驚きの連続でした。言葉ありません、ただ、ただ、拍手!です。ヤサイクン、見たほうがええと思うで!監督 立川譲原作 石塚真一脚本 NUMBER 8総作画監督 高橋裕一美術監督 平柳悟撮影監督 東郷香澄編集 廣瀬清志音楽 上原ひろみ演奏(サックス) 馬場智章演奏(ピアノ) 上原ひろみ演奏(ドラム) 石若駿アニメーション制作 NUT声優山田裕貴(宮本大)間宮祥太朗(沢辺雪祈)・岡山天音(玉田俊二)2023年・120分・日本2023・02・27-no28・OSシネマズno14
2023.02.28
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浦沢直樹「あさドラ 7」(小学館) 2022年12月のマンガ便に入っていました。12月5日の新刊です。浦沢直樹「あさドラ 7」(小学館)です。 愛機バイパーカブ、セスナですね、で空を飛ぶ女子高生あさチャンの活躍する「あさドラ」も第7巻です。 この巻は、ほぼ全編、1964年10月21日(水)の出来事です。この日付を聴いて「ああ、あれかも?」 とこのシーンを思い浮かべられる人は、間違いなく還暦を通過して、65歳のの交差点も通り過ぎている人だと思います。 前期、および、後期高齢者のみなさん、アベベですよ。円谷ですよ。ヒートリーですよ。そう、懐かしの東京オリンピックのマラソンの日です。 お若い方々のために、ちょっと横道にそれますが、浦沢直樹は1960年生まれですから、このマンガのこのシーンは「ツクリゴト」だとぼくは思います。 1954年生まれのぼくは、このシーンを、実際にテレビで見ました。「学校のある水曜日の午後に、どうしてテレビで見られるのか?」 と、まあ、そんなふうに疑問をお持ちになる方もいらっしゃるかもしれませんね。1964年の東京オリンピックが、豊かな家庭にはカラーテレビ、貧しい家庭には白黒テレビの普及に一役かった事件だったということは、多分、戦後復興史の常識だと思いますが、実は、テレビなどというぜいたく品とは縁遠かった田舎の小学生は学校で「オリンピックの時間」という、まあ、今では当たり前ですが、テレビ授業(?)を初体験した事件でもあったわけす。 で、靴を履いたアベベの快走と、円谷幸吉と、この大会でアベベに破られますが、当時、世界記録保持者だったベンジャミン・ヒートリーとの国立競技場での、文字通りデッド・ヒートを、この目で見た記憶があるのですが、当時、4歳だったはずの浦沢君の記憶には、あの実感があるはずがないわけで、「まあ、ツクリゴトですな(笑)。」 と口走る所以ですね(何、いばってんねん!)。 マンガに戻ります。第7巻では、第1巻の始めから正体不明の、まあ、われわれの世代なら「ゴジラか?」と想像させて、読み手を引っ張ってきた謎の怪獣が、いよいよ正体を現します。で、現したとたんに、もう一体、「なに、これ?ウルトラマン?」が登場して、怪獣対宇宙人のプロレス対決という、なんか、どこかで見たことがあるシーンに、第6巻でもありましたが、あさチャンのセスナによる空中戦が加わって、三つ巴という、ちょっとハチャメチャなは展開なのですが、それがこのシーンですね。 マア、ここ迄のいきさつと、ここからの成り行き、怪獣の全身像は本作を手に取っていただくほかありませんね。 さて、ここから、マンガ家どうするつもりなののだろうという、第8巻を期待させるだけさせて終わるという、浦沢君得意の第7巻でした。 ちょっと付け加えると、怪獣登場のクライマックスへの経緯が、かなり複雑で、正太くんという、貧しいマラソン少年がただのわき役ではない展開が始まりそうですが、さてどうなるのでしょうね。やっぱり浦沢直樹はめんどくさいですね(笑)
2023.01.09
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ハロルド作石「ゴリラーマン40(2・3)」(講談社ヤンマガKC) 2022年9月のマンガ便です。7月に第1巻が届いて驚くというか、喜ぶというか、飽きれるというかだったのですが、ハロルド作石「ゴリラーマン40」(講談社ヤンマガKC)の2巻・3巻が同時に届きました。どうやら、はまっているようですね。 毎月、マンガ便を届けてくれる、ゆかいな仲間のヤサイクンはそろそろ40歳だったと思いますが、髪型はゴリラーマンと同じで、酒もたばこもやらないとことろも同じです。タダ結婚していてチビラ君たちがいるところは違います。 先日、シマクマ君がコロナでひっくり返っていたときには、差し入れ希望品目を尋ねてくれて配達してくれたのですが、コロナの老夫婦が「たばこ」とか「プッチン・プリン」とか書いて送ると「たばこの買い方は知りません。餓死しなさい!」と返事してくるいい人です。 ゴリラーマンが理想なのでしょうかねえ。マンガはあいかわらずで、感想言う気にはなりませんが、総合格闘技とか出てくるところを見ると、ハロルド作石さん、書き始めたはいいのですが、書くことに困っているのかもしれません。 まあ、そうはいいながら、届いたマンガは一気読みで、ゴリラーマンの一族とか登場させて、全員が格闘家とか言う笑いのとり方に、ちょっと照れてしまいました。一瞬異形の相のように見えますが、主人公ゴリラーマンの顔立ちって、案外そこらにある気もするのですが、笑っていていいのですかね(笑) 続く限り読むと思いますが、どこまで続けられるのか、興味津々です。
2022.09.27
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ハロルド作石「ゴリラーマン40(1)」(講談社ヤンマガKC) ヤサイクンの2022年、7月のマンガ便の1冊を見て、思わず声をあげました。「ええー、古いマンガ読み直し?」「いや、新しい。新連載。」「ゴリラーマン知ってるの?」「いや、知らん。」 表紙をよく見ると「ゴリラーマン40」でした。ハロルド作石の90年代の代名詞は「ゴリラーマン」(全19巻)と「ストッパー毒島」(全12巻)の人だと思うのですが、ちょっと内容を捕捉すると、「ゴリラーマン」は、まあ、主人公の顔立ちとか見ていると、とても、その年齢とは思えないのですが、沈黙の不良(?)高校生池戸定治(いけどさだはる)君の無双のヴァイオレンスに目を瞠り、やがて哀しいペーソスが笑える学園マンガ(?)で、「ストッパー毒島」は、シマクマくんは千葉ロッテだと思い込んでいましたが、京浜アスレチックスという架空の球団でムーヴィング・ファストボールを操り、無敵のストッパーへと成長していく金髪の天才プレイヤー毒島 大広(ぶすじま たいこう)君が主人公のプロ野球マンガでした。たしか、我が家にもあったはずなのですが、・・・。 マンガ便のヤサイクンがハロルド作石と出会うのは、1999年から10年近く連載されていた「BECK」(全34巻)だったはずで、ヤサイクンをはじめ、我が家のゆかいな仲間たちが夢中になっていたのを覚えています。 ま、そういうわけで、「ゴリラーマン40」は、純粋に新連載なのですが、ぼくたちの世代にとっては、90年代に高校生だった池戸定治君がアラフィフのおっさんとして再登場したわけで、最近評判ですが、かつて青年将校だったトム・クルーズが、超絶技巧のおっさんパイロットとして再登場した「トップガン・マーベリック」と設定は同じです。 映画が大評判なのと同じで、当時の「ゴリラーマン」を知っている読者には、ひたすら懐かしいのですが、相変わらず男前のトム・クルーズと違って、まあ、こういうお顔立ちなので「笑い」の方向性が強調されるのかと思いきや、独身で沈黙のアラフィフ男池戸定治が、若い奴には負けない活躍をするところなんて、マーベリック大佐と遜色ないわけで、なかなかうれしいのですが、やっぱり、読み終えると少し哀しいですね(笑)。 「ヤングマガジン」誌に連載が始まったのが、今年の2月くらいのようで、当分、続きそうです。雑誌はヤング向けなのでしょうが、中年男の哀しい頑張りは、ちょっと秋風のおっさんたちに受けそうですね(笑)。 ちなみに、まあ、蛇足ですが、1990年代の「ゴリラーマン」と2000年代の「BECK」はそれぞれ講談社漫画賞の作品で、たぶん今読んでも面白いです。
2022.07.10
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石塚真一「Blue Giant Explorer 5」(小学館) 2022年3月のマンガ便に入っていました。石塚真一の「Blue Giant Explorer 5」(小学館)、第5巻です。「アニメ映画化!!2022年公開ッ!!」という腰巻が派手についていました。「これ、アニメになんねんて。」「まあ、な。単行本で売っててもたいしたことないというか、それなりに人気あるから、いろんなとこに仕事増やしてというかんじかな。」「ええねんけどな、アニメにしたら音入るやんな。」「うん。」「演奏の音どうすんのかなって思うねん。ヘタしたら、ドッチラケにならへんか。」 ヤサイクンのいうことは一理ありますね。宮本大って実在のミュージシャンじゃないわけで、石塚真一の夢(?)の産物なのですが、だからこそ演奏シーンが面白いのですよね。いやはや、どういう手を使うのでしょうね。 で、第5巻です。第4巻で予告されていたジェイソン君との別れから始まります。笑ってさえすれば、もう一回、いや・・・・何度だってチャレンジできるんだ。HAHAHAHA. 一人になった宮本大くんはアリゾナ、有名なモニュメント・バレーとか通過してニュー・メキシコ州のアルバカーキ―にやってきます。ホンダのアコードの一人旅です。カリフォルニヤ州の南端サン・ディエゴから二泊も三泊も野営しての旅です。アメリカは広いですねえ。 アルバカーキ―に到着し大くんはオケラです。何とか稼がなければ旅をつづけることはできません。で、見つけたのがジャズ・クラブの皿洗いでした。 今回の人との出会いは一味ちがいます。このジャズ・クラブのマネージャーのこんな一言で、その仕事は始まりました。あ、そうだ、君・・・・。レッスンできる?レッスン?うちのステージの常連のスティーブっていう老テナープレーヤーがいて、彼はサックスの先生でもあるんだが、先週から体調が悪くて入院。退院までステージにも立てず、レッスンにも行けなくなってしまった。誰かかわりにレッスンに行ってくれたらってボヤいてたんだけど・・・・君できないか?Yes I can!! というわけ、今回は家庭教師で稼ぎます。サックスとかの個人レッスンです。生徒は、とにかくでかい音を出したい小学生ハリー、チャーリー・パーカーやレスター・ヤングのように優しく、軽やかに吹きたい老女キャロル、ゆっくりうまくなりたい、めんどくさがりの中年男アクセル、そして、もう一人が「数学的に速く」吹きたい高校生くらいの少女ニーラでした。 このマンガには毎号、巻末に宮本大がアメリカで出会った人たちの「今、現在」のコメントが載っています。付録ですね。第5巻はハリーとニーラのコメントです。ニーラの分はこうです。 ニーラは、今、東海岸のボストンにいるようです。あれから何年たったのかはわかりませんが、語っているのはあの時の思い出です。そうだ、「Honeycomb(ハニカム)」には取材に行きましたか?あ、でしたらぜひ行ってみてください。あのバーで先生は伝説的なライブをしたそうです。すごく盛り上がったって聞いてます。きっと、私達のアルバカーキ―の発表会くらいね!! アルバカーキ―の発表会の様子は、第6巻のお楽しみです。そうそう、4巻に登場したアントニオ君、やってきましたよ。5巻ではニーラとハリー、キャロルおばさん、アクセルおじさんの発表会の伴奏で演奏デビューするはずです。こちらもこうご期待ですね。じゃあね。
2022.03.27
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石塚真一「BlueGiantExplorer 4」(小学館) 2021年11月のマンガ便に入っていました。石塚真一「BlueGiantExplorer 4」(小学館)です。「ブルージャイアント アメリカ編」第4巻です。 アメリカ西海岸、シアトル・マリーナーズの町に上陸した宮本大くんは、中古のホンダ・アコードで南下しています。第3巻ではサンフランシスコ、第4巻ではロサンジェルス、相方はローラー・ボード乗りのジェイソン君です。英語が苦手な大くんに代わってのマネージャー役です。旅を続けるさすらいのスケーターです。アメリカ大陸をさすらう青年たちについて、確か、ホーボーといういい方があったと思いますが、まあ、そんな感じの青年です。 マンガは大くんの出会いの物語です。で、ロサンジェルスで出会ったのはコロンビアからやって来たダンサーのカルロス・エスカンドン君です。 偶然のように、人と人の出会いを描いていくのは石塚真一の得意技です。まあ、シマクマ君が、そういうのが好きってこともありますが、なかなかいいシーンでした。出会って別れて、別れてまた出会って、最高じゃんか。 旅は続きます。西海岸最南端の町サン・ディエゴ、そしてメキシコのティファーナ。サン・ディエゴもティファーナも、名前は聞いたことがありますが、ああ、こんなところにある町だったんだという感じです。西海岸から、東部のニュー・ヨークを目指すと、こういうふうなコースをいくのかと思わずアメリカの地図を探したりしてしまいます。マンガの筋立ての都合もあるのでしょうが、ロッキーの山岳地帯を迂回するのですね。 で、別れが待っていました。3巻・4巻でダイ君を支えて来たジェイソン君が去ります。でも新しい出会いもあります。メキシコ人のピアニスト、アントニオ・ソト君です。おれがいれば、食事に宿に、なにかと金がかかる。ダイは身銭を切り崩しているが、そろそろ限界だ。オレは抜けなきゃいけない。かわりにはいるのは、あんたみたいなミュージシャンだ。一個だけ良い条件がある。オレみたいなヤツが、アイツを信じている。 ジェイソン君がアントニオ君に残した言葉です。やっぱりジェイソン君はいいやつでした。で、アントニオ君、どうするのでしょうね。 再び一人旅になる宮本大君の苦闘、おそらくそれに絡むのが、かなり個性的なピアニスト、アントニオ・ソトだと思うのですが、どんな絡みになるのか、楽しみですね。じゃあ、また第5巻で。
2022.02.09
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浦沢直樹「あさドラ 6」(小学館) 2022年1月のマンガ便に入っていた、浦沢直樹の「あさドラ 6」最新号です。ヒロインのあさチャンが、少しづつ大人びてきていますが、素敵ですね。 マンガが描いているのは、もう、ご存知の通り1964年10月の出来事です。1964年といえば、先の東京オリンピックですが、その開会式前後に東京湾に出没したらしい「怪獣出現事件」というメイン・ストーリーが、「タレント」、「マラソンランナー」、「女子プロレスラー」という、いかにもといえば、いかにもな1964年当時の高校生の夢と重ねられて、1964年の10月が描かれています。 読者のゴジラ老人は、当時、小学校の4年生でした。10歳です。主人公のアサちゃんやマラソン少年の早田正太君たちが高校生くらいで、5歳くらい年上ですが、いわゆる団塊の世代の人たちです。大学に進むとゲバ棒青年になるはずですが、登場人物の中に大学に進む人なんて誰もいない雰囲気がいかにも1964年のリアルです。そういう時代があったことを60代後半の老人に思い出させるマンガが、2022年の今、リアルに書かれていることが、ぼくには懐かしくもあり、不思議でもあるのです。 いや、それにしても、「この展開で、どうやって結末にたどり着けるのだろう?」というふうに、しっかり引っ張り込まれている自分も自分ですが、浦沢直樹君もなかなかやるものですね。 今回の次号待ちの話題は、もちろん、東京湾で尻尾を振り上げている怪獣もですが、30キロあたりから独走態勢に入った、あのアベベと甲州街道を走ろうとしている、あさチャンの同郷の先輩、新聞配達の早田正太君や如何に?ですね。いやはや、上手に引っ張るものです。 やっぱり次号がのお話が楽しみですというわけですが、もう一つ、ご覧の通り今回は高校生風の「あさチャン」でしたが、次号の表紙の「あさチャン」がどんなポートレイトになるのか、そこも興味津々ですね。
2022.01.10
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浦沢直樹「あさドラ!(5)」(小学館) 2021年の5月のマンガ便に入っていました。浦沢直樹「あさドラ!」第5巻です。2021年5月5日新発売です。 表紙の女子高生ですが、向かって左のメガネがヨネちゃん、右がミヤコちゃん、で、真ん中が浅田アサちゃんですね。 ヨネちゃんとミヤコちゃんは芸能界を夢見ていますが、第5巻ではヨネちゃんが大活躍でした。 第4巻で始まった「アレ」との戦いが第5巻のメイン・ストーリーです。稲村ケ崎沖の海上が舞台で、時は1064年10月9日の夜です。もう、何度も繰り返していますが、先の東京オリンピックの開会式の前日です。 今、フト思いましたが、このマンガで「アサちゃん」が戦っているのは、ひょっとして「コロナ」の隠喩ですかね。いや、そんなことはあり得ませんね。マンガが始まったのは2018年ですからね。それにしても、現実がマンガをなぞっているのかもしれませんね。 まあ、そのうち見えてくるのでしょうが、これが第5巻の目次と登場人物のページです。「おっちゃん」、春日晴夫さんと「きぬよさん」のコンビが、ぼくのひいきです。 で、ページを開くとカラーで「アレ」が猛っています。このちいさなセスナで戦っているのが「あさちゃん」と「中井戸慶一君」です。中井戸君は「アレ」の謎を追っている研究者ですが頼りにはなりません。 この後、戦いは5巻のほぼ最後まで続きますが、「アレ」の正体というか、全貌は、結局明らかにはならないまま5巻も終わりました。 巻末では夜が明けたので、1964年10月10日の朝というわけで、第6巻では物語の流れというか、ストーリーというかが少しは見えてくるのでしょうか。 ところで、この巻で、もう一つ描き込まれているエピソードがあります。あさチャンの同級生のヨネちゃんの芸能界デビューの顛末、いや「末」はまだですが、です。 この女性がヨネちゃんですが、彼女がこの格好をしてカメラの前に立っているのと、あさチャンが「アレ」と戦っているのが同時進行なのです。その重ね方の意図がよくわからないままなのですが、この衣装を見てなんか思い浮かびませんか? そうですね、マリリン・モンローです。で、モンローを思い浮かべるのは、結構、普通かなと思いますが、1960年代、テレビの始まりの、あのころといえば、小川ローザという名前が浮かんでくる人が、もしもいらっしゃれば、ちょっと嬉しいのですが、もう、いい年の人でしょうね。「オー・モーレツ!」というCMが流行ったのは1969年ころだそうですが、ヨネちゃんは、なんか関係あるのでしょうかね。 まあ、そういうわけで、6巻を読まないとしようがないなあという結論の第5巻でした。ヤッパリ、ヤレヤレ、トホホ…でしたね。 ところで余談なのですが、5巻の表紙の三人娘の構図についてです。戦後の歌謡界で「三人娘」といえば、美空ひばり、江利チエミ、雪村いずみですよね。この、いわば第1次「三人娘」というのは、1950年代の後半で、ぼくは知りません。 次の三人娘が伊東ゆかり、中尾ミエ、園まりだったんじゃないかと思います。「シャボン玉ホリデー」という、石鹸屋さんがスポンサーの人気歌謡番組での企画ですが、マンガの時代と重なるのがその方たちですが、この表紙は関係あるのでしょうかね。関係あるとして、この構図はどっちのイメージなんでしょうかね。 まあ、そういうことも気になるのですが、今のところよくわかりませんね。いやはや、なんとも、気にあることを次々と繰り出してきますね。 まあ、のんびり6巻を待つことにしましょう。
2021.07.06
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石塚真一「BlueGiantExplorer 3」(小学館) 2021年7月のヤサイクン・マンガ便です。石塚真一「BlueGiantExplorer 3 」(小学館)です。 シアトルからスタートしたアメリカ武者修行の旅を続けている宮本大君、まずは大陸を南下しサンフランシスコにやってきました。 アメリカの町から町へと、慣れない自動車の旅を続けていく「大くん」です。途上で出会う様々な人との間に生まれるエピソードが、映画でいえばロード・ムービーの手法で描かれていくわけですが、出会った人の何十年後かの回想として描くことで、今、目の前で繰り広げられている出来事が、何10年後かの「今」にいたるまでの時間が埋め込まれています。「ロード・ムービー」にビルドゥングス・ロマンを仕込むための石塚真一の工夫ですが、うまいものですね。 今回の出会いは二人です。一人はスケート・ボーダーというのでしょうか、スケボーを抱えて「大くん」の車に、ヒッチハイカーとして乗り込んできた「ジェイソン・フィリップスくん」ですね。第2巻のポートランド編でも登場した人ですが、ここから本格的に登場です。 大くんの練習風景に感動したジェイソンくんですが、実際の演奏を聴くのはこの時が初めてです。この次のページには、ジェイソンくんが大くんの音楽に目覚める感動が描かれてています。 結果的に、音楽に全く素人である彼が、アメリカ人から見ると「内気」なジャズプレイヤー「宮本大」の、サンフランシスコでのエージェント役として活躍しますが、サンフランシスコ以後も、その役割が続くのかどうか、今のところ分かりません。 サンフランシスコでの出会いの、もう一人はチャイナタウンのドラマ―、アレックス・リュウくんでした。 彼はアメリカという人種のるつぼと呼ばれる社会の、特にアジア系の人間に対する固定観念や偏見にいら立つ青年ですが、大くんとの出会いで、何かから解き放たれる「自由」を発見します。 リュウ君が「自由」に目覚め、音楽を発見した瞬間です。石塚真一のマンガの良さがあふれている出会いでした。 さて、サンフランシスコをを出発した大くんとジェイソンくんの二人連れですが、次はどこの町にたどり着くのでしょうね。 ああ、今から新刊が楽しみですが、この第3巻が7月5日発売ですから、まあ、半年後の12月くらいですよね。のんびり待つほかなさそうですね。追記2022・03・31第4巻・第5巻の感想書きました。よろしければ覗いてみてください。
2021.07.04
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浦沢直樹「20世紀少年(全22巻)」・「21世紀少年(上・下)」(小学館) 15年ほども昔のことですが、高校の教室で配っていた「読書案内」の復刻です。時間がズレています。浦沢直樹の傑作マンガ「20世紀少年」が完結したころのおしゃべりです。※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ 二学期の教室で浦沢直樹の「20世紀少年」(小学館全22巻)が廻し読みされていましたが、この秋(2008年)、「21世紀少年」(小学館上・下)が出版されて完結しました。僕は浪人していた一昨年の卒業生さんに譲ってもらって、いっき読みしました。 浦沢直樹といえば「YAWARA」(小学館全29巻)で登場したのが20年以上も前のコトだったと思います。女子柔道の柔ちゃんのニックネームはこの漫画の主人公から取ったものですね。僕自身は「モンスター」(小学館全18巻)で気に入って、「20世紀少年」、「PLUTO」(小学館、只今5巻発売中)と読み続けています。この学校の図書館にも「MASTERキートン」・「モンスター」はそろっています。 この高校の図書館のいいところは漫画もれっきとした文化として閲覧している所ですね。もっとも、新しい作品が「のだめカンタービレ」(二の宮知子)、「リアル」(井上雄彦)くらいしか置いてないことや、渋めの作者は見当たらない所が残念なのですが。 ところで、「20世紀少年完結編」は、よくわかりませんでした。まぁ話が長くなりすぎて、最初の頃、子どもだった登場人物が大人になったどの人なのか、それから子どもの頃にあったどの事件が今の事件と関連しているのか、ごちゃごちゃしてくるんですね。 読んでいない人にちょっと説明すると、「オールウェイズ・三丁目の夕日」という映画が流行した事は知っていると思います。職員室でも観てきた人が話題にしていました。映画を見もしないでいうのも変ですが、西岸良平という1947年生まれの漫画家がビッグコミックというマンガ週刊誌に今も連載している「夕焼けの詩-三丁目の夕日」(小学館)という漫画の映画化です。1950年代から60年代のいわゆる昭和の戦後社会が舞台です。というわけで「団塊の世代」、ああ、これ「だんかい」って読みます、まあ、そのあたりの人びとが映画館に押し寄せたんじゃないかというのが勝手な推測です。 漫画のほうは「ほのぼの」としたタッチが貧乏臭いノスタルジーをくすぐって、地味に人気があります。ほっぺの赤いあどけない少女とか、鼻を垂らした少年がのんびりと昭和30年代を暮らしています。 現在の高校生には、わかりにくいかも知れないけれど、1964年、昭和38年にこの国では誰もが覚えているような歴史的イベントが二つありました。一つは東海道新幹線の開通、もうひとつは東京オリンピックの開催。この二つのエポック・メイキングな出来事を境にして、ある時代が終わったといわれているのですが、ぼくは小学校4年生でした。 「三丁目の夕日」には、この時に下ろされた幕の向こう側の世界が描かれています。この国の戦後社会の世相を「活写」した作品と言われています。 そういう受け取り方で「20世紀少年」を読むと、こっちは世紀末世相史と読めないこともないわけです。題名がT・レックス―グラム・ロックなんて知らないよな?!―という1970年代に爆発的に流行したロック・バンドの「TwentyCenturyBoys」という曲名をそのままつかっているのですが、「三丁目の夕日」のほぼ10年後くらいの世界からはじまっています。 アポロ11号が月面、「静かの海」に着陸したのが1969年。アームストロング船長という名前が、"That's one small step for a man, one giant leap for mankind."という名言と共に記憶され、1970年の大阪万国博覧会にアメリカが「月の石」を出展して大行列の騒ぎになり、科学者や宇宙飛行士が子どもたちの「将来の夢」の上位にランクされた時代に育った小学生達の物語です。ちなみに浦沢直樹は1960年生まれですね。 ぼくは1970年に高校一年生でした。「三丁目の夕日」の子ども達より年下で、「20世紀少年」の子ども達より年上です。どっちを面白がってもいいようなものですが、ぼくには「20世紀少年」が断然面白かったですね。 理由ははっきりしていて、「三丁目の夕日」の世界の時間は止まっているのですが、「20世紀少年」たちは現実の時間の中に生きて登場してしまう感じがあるからだと思います。 漫画の描き方にはいろいろあります。例えば朝日新聞の朝刊の「ののちゃん」(いしいひさいち)や「サザエさん」(長谷川町子)、傑作の誉れ高い「じゃりン子チエ」(ハルキ悦巳)や「天才バカボン」(赤塚不二夫)の主人公達は誰も年を取りません。「三丁目の夕日」の人たちもそんな感じですね。漫画には時間を止めることで描ける「笑い」や「哀しみ」があるのかもしれません。 しかし「20世紀少年」の登場人物たちは21世紀に向けて同時代を生きているように感じるのです。その結果、読者の中で、描かれている出来事がフィクションであるにもかかわらず、現実の事件とシンクロしはじめます。なかでも、宇宙旅行を夢見たり正義の味方を信じていた少年達が、あの「オーム真理教」事件を思い起こさずにいられない「ともだち教」事件に巻き込まれていくストーリーが、妙にリアルで面白かったですね。 マア、そのあたり、浦沢直樹が、この国の世紀末世相史を描こうとしているんじゃないかと勘ぐる所以です。 21世紀の平和が、主人公ケンヂの歌う「スーダラ♪スーダラ♪」で始るのも悪くないですね。これは歴史の書ではなく予言の書かもしれないと、ふと思わせてくれます。はははは。大げさすぎますかね?
2021.05.30
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石塚真一「BlueGiantExplorer 2」(小学館) 石塚真一の「BlueGiantExplorer」(小学館)、第2巻が「ゆかいな仲間」ヤサイクンの3月のマンガ便で届きました。 「BlueGiantExplorer」は宮本大君のジャズ修業アメリカ編ですが、第1巻でシアトルに上陸した宮本大君が、第2巻では、ホンダの中古車を手入れ、大陸横断の旅をスタートします。 オハイオ州ポートランドがアメリカ編の二つ目の舞台です。下の場面は、シアトルを出発した宮本大君が、ヒッチハイカーのジェイソン君を載せてポートランドに到着したシーンです。 ここまで、石塚真一の「BlueGiant」を読んできましたが、何となく気づいたことがあります。 このマンガは確かにジャズ・ミュージシャンとして、世界の頂点に立ちたいという少年の夢を描く、実に素朴な「ビルドゥングス・ロマン」なのですが、ここまで読者であるぼくを引っ張り続けてきたのは、宮本大自身のキャラクターや、音楽演奏の感動的な描き方も大切な要素なのですが、どうも、このマンガのいちばんの肝は、宮本大君が出会う脇役たちの描き方なのではないかということに思い当たったのです。 少年マンガには、ある意味、常道ですが、主人公を成長させていく、他者として登場するライヴァルたちがいます。たとえば、「初めの一歩」にしろ、「あしたのジョー」にしろ、ボクシング・マンガがおもしろいのは戦う「相手」がいるからだということはすぐにわかるわけです。しかし、ミュージシャンの演奏の成長に「敵」はいるのでしょうか。 かつて、石塚真一が描いた「岳」では、山が相手でした。技術的な成長以上に、山という「自然の厳しさ」が、ライヴァルとして立ちはだかり、それに向き合う主人公の「内面」の描き方がマンガを支えていたと思います。 「BlueGiant」でも、ここまで、「最高の音楽性」という高みを目指す主人公の描き方を「岳」とよく似ています。 しかし、音楽の「高み」は物差しで測ることが出来る「山」ではありません。新しく創り出し、新しく生まれるものです。人それぞれの「好き好き」を超えた「高み」はどうすれば描けるのでしょうか。 で、石塚は「人」を描くことにしたのだというのが、ぼくが、ふと、気付いたことでした。そう思って読み進めると、音楽関係者ではない、印象的な登場人物が何人か登場します。 上のシーンで登場したジェイソン君もその一人です。彼はスケート・ボードを楽しみ長旅を続ける、アメリカ文学でいう「ホーボー」と呼ぶべき流れ者ですが、彼との偶然の出会いは、宮本大に音楽の「外の世界」の広さを教えます。 この巻に出てくる、もう一人の、印象的な脇役は、ひょっとしたらヒロインになったかもと思わせるコーヒーショップの女性シェリル・ハントです。 毎朝一杯のコーヒーを飲むために立ち寄ったお店で出会った女性ですが、彼女の最後の言葉が素晴らしいのです。「私とアナタは、凄く違うんだね。」 シェリルがいった言葉ですが、人と人の遠さを、互いの存在に対する敬意として描いた石塚真一をぼくは信用します。 表紙の宮本大の眼差しも、厳しさを加えつつありますね。彼が、どこまで「少年」であり続けられるのか、ますます楽しみですね。追記2022・03・31第3巻・第4巻・第5巻の感想書きました。よろしけれは覗いてみてください。
2021.03.19
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石塚真一「BlueGiant Explorer 1」(小学館) 10月のマンガ便です。「ブルー・ジャイアント・アメリカ編」が「BLUEGIANT EXPLORER(1)」(小学館)と銘打って始まりました。 表紙の宮本大君、顏が変わりましたね。彼は何年ヨーロッパにいたのでしょう。マンガ家の石塚真一は、彼に、明らかに成長した「新しい顔」を与えたようです。 「ブルー・ジャイアント・ヨーロッパ編」では130回余りのライヴ演奏をカルテット「Dai・Miyamoto NUMBAR FIVE」でやり遂げ、様々な葛藤や壁を乗り越え、有名なジャズ・フェスティヴァルでの賞賛を勝ち得る結果を手に入れました。 が、それが、たどり着いた栄光は、どこまでも前に進もうとする主人公にとっては、別れと新たな出発のときでした。で、アメリカ西海岸の街、シアトルに、またもや、一人でやって来ました。 一人でやって来て、とても超えられそうにない「山」に挑み続ける「青年」が石塚真一の描くマンガの共通した主人公のようです。まあ、だからこそ、同じ読者が読み続けるのだと思うのですが。 シアトル郊外のレーニア国立公園のキャンプ場です。この大木こそが、宮本大君が新しく出会ったアメリカの象徴ですね。 彼はこの町で、アメリカを横断するための自動車を手に入れるために、修理工場でアルバイトしますが、そこで出会ったのが、ロック・ギタリストのエディ・ドブソンでした。 エディは、みずからのギタリストとしての将来をかけて、宮本大をゲストとして舞台にあげ、リード・ギターとテナー・サックスで共演し、宮本大に最初に敗れるアメリカのミュージシャンになります。 シアトルの宮本大が、アメリカで最初に挑んだのは、ジャズのプレイヤーではなくロックのギターでした。それが、アメリカだということでしょうが、臆することなく挑んだDai・Miyamotoは、自動車修理工場のメカニックとして、今もシアトルで生活するエディ・ドブソンの心の中に生き続けます。 マンガは、宮本大がアメリカで出会い、音楽を通じて友達になった人々の回想として綴られているようです。 シアトルを出発する主人公ですが、次はどの町で、どんな出会いが待っているのでしょうね。追記2020・12・01「ブルージャイアント」(第1部)・(第2部)8巻・10巻・11巻の感想はここをクリックして、覗いてみてください。ボタン押してね!ボタン押してね!
2020.12.02
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石塚真一「BlueGiant Supreme 11」(小学館) 10月のマンガ便で届きました。「ブルージャイアント ヨーロッパ編」、最終巻です。 仙台の広瀬川の堤防で、初めて手にしたテナー・サックスの練習に夢中だった、高校生宮本大くんが、ヨーロッパに渡り、そこで出会った3人のミュージシャンとマネージャーのガブで結成したカルテット「DaiMiyamoto NUMBAR FIVE」の成長の物語でした。 小柄なドイツ人女性ベーシスト、ハンナ・ペータース。神経質なポーランド人で、正確でストイックなピアニスト、ブルーノ・カミンスキー。いかにもフランス人らしく、「音楽の自由」を体現しているドラマー、ラファエル・ボヌー。そしてアジアからやって来たテナー・サキサフォン奏者宮本大が、ヨーロッパの北の果ての街、ノルウェーのモーシェーンまでやってきて、ヨーロッパ最後のライヴに挑みます。 133回目の、このライヴで、宮本大君は「サンキュー、ヨーロッパ!」の言葉をのこして、ジャズの聖地、アメリカに向けて旅立つわけです。 ここまでに、作者石塚真一の手によって描かれているのは、「DaiMiyamoto NUMBAR FIVE」カルテットが、ヨーロッパでたどり着いた、音楽のすばらしさが、国境や性別、個々の嗜好を越えて結実していくという、ビルドゥングスの物語の、ひとつの頂点だった思いました。 こういう、台詞なしの演奏シーンのすばらしさがぼくは好きですが、「オレは行くんだ。」という叫びが、ページいっぱいに響いてくるこのシーンを書いたからには、石塚真一もまた、宮本大君とともにアメリカで苦労するほかないのではないでしょうか。 すでに「BlueGiant EXPLORER 1」は発売されています。ニュー・ヨークではなく、東海岸の町シアトルに上陸した宮本大君ですが、彼に、どんな物語が待ち受けているのか、ホント、楽しみですね。追記2020・12・01「ブルージャイアント」(第1部)・(第2部)8巻・10巻の感想はここをクリックして、覗いてみてください。ボタン押してね!ボタン押してね!
2020.12.01
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週刊 読書案内 浦沢直樹「あさドラ!(4)」(小学館) おなじみのヤサイクン、9月のマンガ便で到着しました。9月2日発売、浦沢直樹「あさドラ!」第4巻です。 表紙の「アサちゃん」、もう高校生で、セスナのパイロットです。なんだか、凛々しくて、かっこいいんですよね。浦沢君はこういうところがうまいですね。ヤッパリ、買っちゃうでしょ。 で、4巻の最初のページがいきなりこの絵です。 第4巻は、いきなりこの「絵」でスタートです。再び「出現」した「アレ」です。まだ名前はありません。 最初に現れたのは第1巻です。1959年9月27日。伊勢湾台風が中京地方を蹂躙して通過したあの日、「おおー今日がその日」ですが、それが、まあ、「あさドラ!」始まりの日でしたね。 マンガは3巻を費やして「アサちゃん」の家庭の事情と成長を描きました。そして、第4巻の舞台は1964年、10月9日です。この日が「東京オリンピック」の会開会式の前日だということは、シマクマ君の世代にはすぐにピンとくるのですが、若い人たちはどうでしょう。 マンガの時間では、あれから、伊勢湾台風のあの日から、5年がたちました。で、その日に、今度は東京湾なのか、その南方海上なのか、とにかく再び「アレ」が「出現」したという始まりです 読者にとって、この「絵」の、一見「ネコか?」と疑わせるモンスターの全体像のヴィジュアルとか、名前とか、「浅田アサ、出動します!!」と腰巻で煽られた事件の実態とか、そして、何よりも「アレ」と「東京オリンピック」がどう結びつくのとか、みんな気になりますよね。 「ここまで、煽ったのですから、何らかの結末は用意されているだろう。」 そういう期待に満ちてページを繰るわけです。 で、結果は? はい、ネタバレ(あんまり気にしませんが)になるので、これ以上は言えません。しかし、浦沢直樹は、やっぱり、浦沢直樹であったことは確かです。次は第5巻ですね。イヤ、ホント渋い展開でした。ヤレヤレ‥‥。「あさドラ!」(1巻)・(2巻)・(3巻)の感想はこちらをクリックしてくださいね。にほんブログ村にほんブログ村
2020.09.28
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ハロルド作石「7人のシェイクスピア」(第12巻)」(ヤンマガKC) ヤサイクン、五月のマンガ便です。ハロルド作石「7人のシェイクスピア(12巻)」が届きました。表紙はエリザベス1世の肖像です。 ここのところ続いていた、ロンドン劇場戦争がついに決着しました。 その展開が12巻のメインですが、折角ですから内容は本冊をお読みいただくこととして、今回はキャラクター一覧図を載せておきましょう。 さて、21世紀の現実の世の中は新コロちゃん騒ぎをいいことに、機を得た大衆煽動家たちが跋扈し、陰謀政治の準備を着々と整えているかに見える様子です。 が、奇怪至極な政治といえば「エリザベス1世」統治の16世紀末期のイングランドの政治情勢は、素人世界史では有数のシーンと言えるでしょうね。 要するにわけがわからないことがあっちでもこっちでも起こっているわけです。たとえば、12巻の後半、バージン・クィーンと呼ばれて、生涯未婚だったエリザベス1世が、その生涯で最後に寵愛したといわれるエセックス公についての描写があります。 歴史を少し齧っている目から見れば、このシーンでの、7人のシェイクスピアの一人、詩人で預言者リーの役回りは面白いですね。寵愛したエセックス公をエリザベス女王は、結局、どうしたのか。歴史的には、ここから一波乱も、二波乱もあるわけです。 そういえば、マンガを配達してきたヤサイクンが珍しく質問していました。「エリザベス女王ってプロテスタントなん?」 この質問はむずかしいですね。皆さん、正解をご存知でしょうか。ぼくにはわからないですね。 イングランド国教会の歴史はカトリック教徒弾圧の歴史だったようですが、エリザベス女王は何をしたのか? この後、マンガはエリザベスの宗教政策に纏わるお話しへと展開するようですが、イギリス国教会という、独特のキリスト教信仰の形が出来上がるには、まだまだ時間がかかるようですが、この当時のエリザベス女王の宗教観の真実が、ここから解き明かされていくのでしょうか。 ハロルドさんも、ベンキョウしていますね。歴史は事実は上手に重ね合わせているようですが、ベンキョウしないと書ききれない「歴史マンガ」の一面を窺わせて、ホント、興味津々です。追記2020・05・17「7人のシェイクスピア」(第1部)・(9巻)・(10巻)・(11巻)の感想はそれぞれ、ここをクリックしてくださいね。追記2023・02・15記事を修繕しました。ボタン押してね!ボタン押してね!
2020.05.17
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石塚真一「BLUE GIANT SUPREME 10」(小学館) 10巻は「ダイ・ミヤモト ナンバーファイブ」がノーザンプトン・ロックフェスティバルに挑みます。野外に集まるロック・ファンの大観衆相手にジャズ・カルテットが通用するのか、というわけですが、そこは、まあ、マンガというか、当然、いかに通用し、いかなるドラマが起こるのかというのが第10巻の読みどころということです。 なかなか良かったですね。石塚真一は音楽のマンガ化に、だから「音」をどうやって「絵」に書くかということに挑んでいると思うのですが、この巻の第75話「SPECTRUM」はステージのシーンですが、吹き出しが一カ所しか使われません。 客席から投げ入れられたプラスチックのカップがダイの頭にあたるシーンから24ページにわたって、演奏シーンは「絵」だけで構成されています。「音」は読み手にお任せです。 ちなみに、このページには三人のメンバーの顔が出ているので、紹介すると、左からピアにストのブルーノ、ベースのハンナ、ドラマーのラファエルです。 これが演奏シーン。演奏者から「音」が噴出して、観客に降り注ぎます。でも、飽きない理由は客たちのエピソードの書き込みです。子供が「音」に気付いて指さしている先にハンナの演奏があります。 歓声に包まれる演奏シーンで、次の話にうつります。10巻の読みどころはもう一つありました。ロック・フェスティバルでの成功の結果、主人公の宮本大だけでなく、他のメンバーたちの、覚悟と成長が描かれるシーンです。 たとえばこのシーンです。 家族から、そして誰よりも母からクラッシックの演奏家になることを期待されていたハンナが、ジャズのベーシストになる決意を描いたシーンだと思いました。 ジャズというジャンルに対する石塚真一の、並々ならぬ思い入れがあふれるトーンで物語が描かれて行きます。11巻が楽しみですね。追記2020・03・19 第9巻の感想を書いたと思っていましたが、どうも書き忘れているようです。「ブルー・ジャイアント(全10巻)」と「ブルー・ジャイアント・シュープリーム」(8)の感想は書いているようです。こちらから行ってみてください。ボタン押してね!ボタン押してね!
2020.03.20
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浦沢直樹「あさドラ!(3)」(小学館) お待たせしました、浦沢直樹の長編マンガ「あさドラ!」(小学館)第3巻、3月4日発売の最新刊です。 「ゆかいな仲間」、ヤサイクンのいつものマンガ便に入っていました。中々素早いですね。ほかには「ブルージャイアント・シュープリーム(第10巻)」、「メタモルフォーゼの縁側(3)」、それに加えて「国境のエミーリャ」という新しいマンガも入っていましたよ。彼は、なかなか厳しい肉体労働者なのですが、お風呂が読書(?)タイムだそうです。それは、母親のチッチキ夫人譲りですね。ぼくには風呂で文字や絵を読む習慣はありません。 ところで「あさドラ!3」ですが、表紙の「アサちゃん」がとても可愛らしいですね。浦沢直樹のこういう絵がぼくは好きなんでしょうね。「アサちゃん」は17歳、高校三年生です。こんな女の子が同級生にいたら、男の子たちは毎日ドキドキして大変でしょうね。 時は1964年、東京オリンピックの年ですが、この年のNHKの朝ドラは「うず潮」でしたね。田舎の我が家にTVがやって来た年で、ぼくにとっては朝ドラ初体験の番組です。作家の林芙美子の自伝小説が原作ですが、主演の林美智子さんのことを本物の作家だと思い込んでいた記憶がありますから、見ていたのでしょうね。 朝八時過ぎと、お昼の一時前に放映されていたはずの番組を小学生だったぼくが毎日見ていたはずはありませんが、林美智子さんという女優さんの顔を、この番組で覚えたことは間違いありません。 ちなみに、朝の連続テレビドラマは、最近はちくま文庫とかが再刊して、ちょっとブームだった獅子文六の「娘と私」が第一回で、1960年のことですね。テレビのなかったぼくは知りませんでしたが、「ちくま文庫」はこの辺りの読者層を狙ったんでしょうか。もっとも獅子文六はたしかに今読んでも面白いのですがね。 マンガに戻りましょう。開巻そうそうこの絵です。海の向こうに怪しげなものが描かれていますね。ここからオリンピック開会の前日までがこの間の時間ですが、こんな懐かしい絵もあります。 白黒で描かれているこの空が青空に見える人は、ぼくと同世代ですね。白黒テレビでしか見てないはずなのに、「真っ青な空」にブルーインパルスが描いた五輪マークというキョーレツな捏造記憶の共有を浦沢直樹はよく知っていますね。 「どえりゃーでかんわ!!」 叫んでいるのはもちろん「アサちゃん」です。 空と言えば、このマンガでは少女パイロット「アサちゃん」の出番です。もちろん彼女は自衛隊員になったりしません。さて、どいう役割 で話は展開するのでしょうね。 こんなシーンもあります。 ぼくたちの世代にとって、もう一つの強烈な記憶として焼き付けられている人、円谷幸吉選手です。彗星のように登場して、オリンピック・マラソン銅メダルの栄光の数年後に「疲れ切って、もう走れません」という言葉を残して自ら命を絶った、悲劇のマラソンランナーです。二大会連続金メダルのアベベ選手や、君原健二、寺沢徹といった代表選手の名前を覚えているぼくの同世代には涙なしには読めない、彼の遺書は、今ではネットで読むことができます。 マンガの中で、その円谷選手の後ろ姿を街角で見かけて、後を追うのは「アサちゃん」の幼なじみ、マラソン選手になる夢を生きている「早田正太くん」です。 もっとも、マンガではブルーインパルスの大空の五輪はいびつな練習中のものですし、「早田君」があとを追う街角の円谷選手は石田さんちの若旦那ではあるのですがね。 で、最初のカラー画像の正体は?ってですか?それは、もちろん、次号でのお楽しみでした。次号、第4巻はいよいよ1964年10月10日です。いったい何が出てきて、何が起こるのでしょうね。ヤレヤレ、やっぱり次号待ちですね。「あー、4号は五月くらいかなあ?!」追記2020・03・16「あさドラ」(1)・(2)の感想はここからどうぞ。ボタン押してね!ボタン押してね!
2020.03.18
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ハロルド作石「7人のシェイクスピア(第11巻)」ヤンマガKC お待たせしました。ヤサイクン三月の「マンガ便」です。ハロルド作石「7人のシェイクスピア」最新号、「第11巻」が届きました。 エリザベス一世統治下のロンドンで繰り広げられている「海軍大臣一座」と「ストレンジ卿一座」による劇場戦勝もいよいよ佳境です。「10巻」でシェイクスピアとの恋に落ちた、女王の侍女ジョウウン・ブラントとの禁断の関係も、いよいよ、本格的「大人のマンガ化」しています。画像は載せませんが、ナレーションはこんな感じ。 「宮廷では忠実、家では行儀良く、そしてベッドでは奔放!」 いやはや、こんなシーンが、果たして必要なのかどうか。ハロルドさんの読者サービスとしか思えないのですが、まあ、興味をお持ちの方は本冊へということですね。 さて、上記のページをご覧ください。話は劇場戦争に戻りますが、二つの劇団の対決のために、シェイクスピアが考えたアイデアは何か?秘密の恋人ジョウン・ブラントへの一通の手紙に計画を託します。エリザベス女王は、かねてから「リチャード三世」の再演を望んでいましたが、シェイクスピアは「リチャード三世」を演目として舞台に載せる交換条件として、女王が上演を禁じている「マクベス」の上演許可を求めたのです。「7人のシェークスピア」では、「マクベス」という演目をイングランドの女王エリザベス一世が、スコットランド王の話だという理由で嫌っているという設定なのです。そんな女王の好みを逆手にとって、女王が嫌う「マクベス」を世に出すための「シェイクスピアの挑戦」というのが、この手紙に託された、マンガの筋書きなのですが、シマクマ君は、ここで「はてな?」となってしまったのです。 ここで描かれているロンドン劇場戦争は、エリザベス統治下、シェイクスピアがロンドンでトップスターに躍り出る1590年代の出来事のはずなのですが、「マクベス」は彼にとっては、どちらかというと、後期、1606年ころにできた作品で、それはエリザベス一世が他界した後のことなのですね。 調べてみると、シェイクスピアの四大悲劇「ハムレット」「マクベス」「オセロ」「リア王」は、それぞれ1600年を越えて書かれているようです。で、芝居好きのエリザベス一世は、1603年に死んでしまいます。一番早く書かれた「ハムレット」が1600年だそうです。残りの三つは「オセロ」(1602)、「リア王」(1604)、「マクベス」(1606)というわけで、実際には、エリザベス女王は「ハムレット」以外、その演目の存在も知らなかったのではなかったかと思うのですが、というのがぼくの「はてな?」です。 もっとも、そもそもがシェイクスピアを7人の集合体として描いている虚構作品ですから、こだわるのは野暮ということでしょうね。史実を持ち出してこだわってしまえば、実際のシェイクスピアはこのとき、妻子持ちの「オッサン」なわけで、宮廷の侍女との恋の話も???てことになりかねません。 しかし、一方、11巻に登場する二人の俳優「海軍大臣一座」のネッド・アレンと「ストレンジ卿一座」のリチャード・バーベッジは実在しています。特にリチャードは演劇史に名の残る名優だそうです。 このマンガではこの男ですね。 虚々実々、いよいよ劇場戦争も佳境、最後の対決をむかえます。「12巻」が楽しみですね。追記2020・03・08「7人のシェークスピア」(1巻)・(9巻)・(10巻)の感想はここからどうぞ。追記2023・02・15 過去の記事の修繕をしました。ボタン押してね!ボタン押してね!
2020.03.09
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浦沢直樹「短編集 くしゃみ」(小学館) 浦沢直樹の長編マンガ「あさドラ!」(小学館)を案内しながら思い出しました。2019年5月の新刊ですが、「ゆかいな仲間」、ヤサイクンのマンガ便にありました。19年ぶりなのだそうです。短編集「くしゃみ」(小学館)です。 短編集とはいえ、浦沢直樹節とでもいうべきものは何も変わりません。小説の短編の場合、星新一のショートショートがその典型でしょうが、「オチ」のスルドサというか、爽快さというかが読後感を決めるところがありますね。星新一の「ボッコちゃん」の膝を叩きたくなる「オチ」といい、たとえば、芥川龍之介の「蜜柑」のさわやかな「オチ」が永遠の名作の所以ということになるのでしょうね。(「蜜柑」はここをクリックしてみてください。お読みになれますよ。) 「くしゃみ」に載せられている数編の短編も、なかなかな「オチ」が用意されているのですが、どっちかというと「旅日記」、「思い出マンガコラム」風の「L.A.音楽紀行」」と「親分衆」の二つが面白かったですね。「アップル・レコード」社のもと社長との出会いのエピソードなんて、ビートルズの屋上ライヴ、「レット・イット・ビー」の映画になってるあれですが、ジョージ・ハリソンの奮闘ぶりとか、そうは聞けない逸話も書いています。 もうひとつ、面白いのはこれですネ。フランスのマンガ誌に寄稿した短編「単身赴任」。横文字だと「Solo Mission」になるそうですが、日本のマンガと違うのは左から読むんですね。まあ、当たり前といえば、当たり前なのでしょうが、そこが面白かったですね。 「オチ」は、そう来るとフランス人は笑うか、という感じで、ちょっと洒落てましたが、そのあたりはお読みになってということで。 まあ、とはいいながら、「浦沢さんは長編の人であるな。」というのが偽らざる感想でしょうね。でも、読んで損はないと思いますよ。「あさドラ!(1)」・「あさドラ(2)」の感想はこちらをクリックしてください。ボタン押してね!にほんブログ村
2019.11.24
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ハロルド作石「7人のシェイクスピア(第10巻)」ヤンマガKC ヤサイクン「マンガ便」最新版、「7人のシェイクスピア」最新号です。エリザベス朝のロンドンでは、ストレンジ卿一座対海軍大臣一座の間で、熾烈な劇場闘争が繰り広げられているのは、前号からの続きです。 マンガで繰り広げられている演目は「ヘンリー6世」。シェイクスピア初期の史劇で、大ヒットとした作品らしいのですが、前半の山場はイングランドの将軍トールボット親子の死に別れの場ですね。 All these and more we hazard by thy stay. All these are saved if thou wilt fly away. 「お前がとどまることで全てが危険にさらされ、お前が逃げることで全てが救われるのだ。」 敗色濃厚なイングランド軍にあって、父トールボット卿が、7年ぶりに再会し、共に戦う息子ジョンに向かって叫ぶ名セリフですね。 息子ジョン・トールボットはご覧の通り、父の目前で戦死。父もこの戦いで戦死します。対戦相手は、あのジャンヌ・ダルクです。シェイクスピアの名セリフ山盛りのシーンが続きますが、マンガは役者の演技の蘊蓄で引っ張ります。 このあと、攻守逆転したイングランド軍は魔女ジャン・ヌダルクを捕らえ火炙りの刑が舞台上で繰り広げられますが、本当に火を焚いたのでしょうね、当時の舞台は。 もっとも、このジャンヌの描き方あたりから、ちょっと、「大人のマンガ」化の雰囲気が広がり始めます。だって、胸の描き方、ちょっと、「おいおい」という気がしません? さて、第10巻の後半は喜劇「恋の骨折り損」なのですが、腰巻でうたっている通り「禁断で真実の恋」が始まります。「大人のマンガ」全開ですね。文豪シェイクスピアの恋というわけですが、相手は女王の侍女ジョウン・ブラント。エリザベス女王の宮廷で「恋」はご法度なのですが、「Love is a Devil」の始まりがこのシーンです。 やっぱり、巨大な胸の描き方に笑いそうですが、その後どうなるかって?はい、フル・ヌードの濡れ場に突入しますが、まあ、そのあたりの展開はお読みいただくしかありませんね。 しかし、あの手、この手、ハロルド君も頑張ってますよ。ホント、よくベンキョウしてはりますね。「7人のシェイクスピア」(第九巻)へはこちらをクリックしてください。「7人のシェイクスピア」の最初はこちら。追記2023・02・15 久しぶりに過去の掲載記事の修繕をしています。ボタン押してね!にほんブログ村
2019.11.23
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浦沢直樹「あさドラ(2)」BIGS PIRITS COMICS SPECIAL お待たせしました、浦沢直樹の長編マンガ「あさドラ!」(小学館)第2巻、最新刊です。 「ゆかいな仲間」、ヤサイクンのマンガ便です。 さて、「あさドラ!2」ですが、第1巻で「おにぎり爆弾」投下のために、コソ泥で誘拐犯のシミッタレのおっさん。実は、「空の勇者」春日飛曹長の操縦するセスナ機で、伊勢湾台風の被災地の上空を飛行中だった「アサちゃん」12歳。たぶん小学校6年生でしたね。 その「アサちゃん」ですが、「どえりゃーでかん」災害救助飛行で大活躍の最中に、「どえりゃーでかん」事態が新たに勃発します。 なんと、春日操縦士が血まみれで、瀕死の重傷です。その結果、「どえりゃーでかん」ことに、少女操縦士として、その天才に目覚めるんですね。 凛々しいですね、操縦しているのは小学校六年生の「アサちゃん」です。そのうえ、無事着陸すると、「どえりゃーでかん」アクションまであって・・・、まあ、このあたりは読んでいただくほかないのですが、時がたち1964年東京という次第になります。東京オリンピックの年ですね。「あさチャン」17歳です。 いっきに話が飛んだようですが、少女パイロットとして正式デビューしたのがこの場面ですね。 全く、「どえりゃーでかんわ」の展開ですね。少女が娘になりましたが、何だか懐かしい浦沢キャラクターですね。「柔ちゃん」以来、この手の顔が好きなシマクマ君はやめられませんね。 ところで、まだ一言も触れていませんが、このマンガには「浅田アサ」ちゃんとは違う、もう一人(?)の「どえりゃーでかん」「アサ」が潜んでいるようですね。 まあ、第3巻あたりで正体をあらわしそうですが、今のところ、こういうシーンがあった事だけバラしておきましょう。そうはいっても、このシーン、第2巻の冒頭なんですがね。 とまあ、好調な展開、ここから、いったいどんな「どえりゃーでかんわ」が待っているのか。第3巻が楽しみですね。 ちなみに「あさドラ(1)」・「3」・「4」こちらをクリックしてください。ボタン押してね!にほんブログ村
2019.11.19
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石塚真一「BLUE GIANT SUPREME 8」(小学館)「ヤサイクン」のマンガ便、石塚真一の「BLUE GIANT SUPREME 8」(小学館)をが届きました。 ヨーロッパの若いミュージシャンと競うように腕を磨く、宮本大。8巻の前半は、同じ21歳。おなじ、テナー・サックスプレイヤー、アーネスト・ハーグリーブスとの出会い。格段に優れたテクニックとセンスの持ち主「アーニー」と対決した「大」。 彼はこんなふうに、さらなる戦いを挑む。 読みはじめた頃、彼は中学生だった。21歳になった彼は「少年の心」を捨てず、世界に挑んでいる。 ちょっと、グッときた。 「音楽を絵にする。」石塚真一が、このマンガで挑んでいるのはきっとそこだと思う。さて、それは可能なのだろうか? 8巻の最後の20数頁には、「フキダシ」がない。そのまま、8巻は終わる。それが、石塚の挑戦だと思った。果たして、うまくいっているかどうか。 マンガが、映像化してくる。一コマ一コマが、イメージの中で立体を作り上げていく。「無音の絵」が表情と音を持ち始める。見ていて話が分かる。 「なんだ、これは?!」 驚きの8巻だった。 でもこれって、次はどうするの?って思うわけで、際限のない挑戦かもしれない。追記2020・03・03「BLUE GIANT(全10巻)」(小学館)・それから「BLUE GIANT SUPREME (10)」の感想はこちらからどうぞ。ボタン押してね!にほんブログ村東京チェックイン 石塚真一短編集 (ビッグコミックススペシャル) [ 石塚真一 ふるいけど、らしい!人柄出てるね。
2019.07.12
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ハロルド作石「7人のシェイクスピア」(第9巻) 表紙はエリザベス一世から「黒い婦人」(ブラックレディ)と呼ばれることになる、「7人のシェイクスピア」の一人「詩の女神」リーこと、于俐(ユウ・リー)がエリザベス女王に出会う場面です。 今回は、いよいよ、ロンドンは「ストレンジ卿一座」の座付き作者として活動を始めたシェークスピアの一行が、女王エリザベス一世の心をどうやってつかむのかという山場ですね。 枢密院が出した「劇場禁止令」のために苦しむ「ストレンジ卿一座」。危機を打開することができるのは女王エリザベスただ一人。そこで・・・。 活躍するのが「リー」でした。 これが、そのクライマックスのシーン。 今回の展開では「恋に狂うセリザベス」が重要なプロットなのですが、実際、エリザベスにはロバート・ダドリー、クリストファー・ハットン、ウォルター・ローリー、そして今回のエセックス伯ロバート・デヴァルーと、何人もの愛人がいたそうなのですが、生涯未婚でした。 そういえば、高校の世界史の時間に、担当のM先生が語呂合わせギャグで、見事にスベラレタことを思い出しました。 エリザベス女王が街を歩いていると、目の前にぬかるみがあります。やおら、前に進み出た宰相ウォルター・ローリ卿が、身につけていたマントを脱ぐや、ぬかるみにさっと広げて一言。『サー、ワタラレイ(サー・ウォルターロリー)』 全部、先生の作り話だと思っていたのですが、実話だったらしいですね。ローリー卿もまた愛人の一人だったそうで、ハロルド君が、その場面を書くかどうかも気にかかるところなのですが、マンガの、この時点ではすんだことなのか、どうか? ついでに言えば、アメリカに「バージニア」という州がありますが、あれは多分、ローリー卿がエリザベスに対するベンチャラでつけた名前だったと記憶しています。ちなみにエリザベスは「ザ・ヴァージン・クイーン」と呼ばれていたのですね。 さて、危機のなかのシェイクスピアなのですが、彼が作った作品としては「ヘンリー6世」の時代。要するに、まだまだ初期のシェイクスピアですね。このあと、名作の山が待っているのですが、ハロルド君、ここからどうするのでしょうね。まだまだ。先は長いですね。楽しみです。「7人のシェークスピア」第一部一巻からの感想はこちらをクリックしてくださいね。(S)追記2019・11・22最新刊「7人のシェイクスピア(10)」の感想はこちらをクリックしてください。ボタン押してね!にほんブログ村7人のシェイクスピア NON SANZ DROICT6巻【電子書籍】[ ハロルド作石 ]7人のシェイクスピア NON SANZ DROICT5巻【電子書籍】[ ハロルド作石 ]シェイクスピア全集(19) ヘンリー六世 (ちくま文庫) [ ウィリアム・シェイクスピア ]これは、原作の訳ね。
2019.07.08
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石塚真一「岳 (全18巻)」(BIGCOMICS) 2018年の夏の終わりころの日曜日の夜。 もう、おなじみ、我が家のゆかいな仲間の一人「ヤサイクン」が段ボール箱を抱えてやってきた。「はい、これ。」「なに?あっ、『岳』やん、どうしたん?持ってないっていうとったやん。」「買ってん。読んだことないゆうてたやろ。」「ヤサイクンも読み直してんの?」「うん。風呂でな。」「ご飯は?チビラちゃんたちはどうしてんの?コユちゃんは帰ってきた?キャンプ行ってたんやろ。面白かったゆうてた?一緒に来んかったん?」「ああ、たべた。『お祭りや、お祭りや』ゆうて三人そろって出ていった、岩屋公園。コユが帰ってきたから、元気復活や、ふたりとも。留守の間、ちょっと静かやってんけどな。」「須磨スイ、行っとったんやろ、昨日。写真来てたやん。」「今日は夏祭り?盆踊りか?」「岩屋公園てどこらへんやの?」「西灘駅、阪神の海側、ちょっと西側やんな。通りかかったことあるで。」「アーちゃんがついていってんの?」「うん、そう。家からもすぐやし。これ、やっぱ、エエで。全巻泣ける。」 (註:コユちゃん=チビラ1号・アーちゃん=チビラ軍団のママ) 2008年小学館漫画賞「岳」全18巻。 10年前の作品だ。読みはじめたら、やめられなくなった。ただ、10巻にたどり着くころから、どうやって終わらせるのか気になり始めた。 最近のぼくの目は、続けて文字を読み続けるのが、なかなか難しい。カスミ目というのか、乱視というのか、ピントが合わなくなって、強烈に眠くなる。作品の内容とは関係ない。液晶の画面の見過ぎという説もある。そうだろうなとも思う。しかし、不便なことだ。Astigmatic bearと名乗ってきた結果、文字通り、その通りになってきたのだから、しようがない。 しっかり泣けた。落語に人情噺というのがあるが、あれと似ている。ただ、物語を支えているのが「山」だ。 いっとき流行った「構造分析」的批評をやりたい人には、こういうマンガはうってつけの対象なのだろうと思った。「山」なんて神話作用を描くにはもってこいの素材だろう。 16巻まで続く日々の描写は読者を飽きさせない。「山」の高さとすそ野の広さがマンガを支えている。北アルプス連山に対して、読者が持っている「神話」的イメージの多様性、美しさ、恐ろしさ、苦しさ、楽しさに対して、一話完結的にマンガ家が絵付き物語を与えていく。読者は一話ごとの小さな違いに納得し、泣き、笑い、ほっとすることができる。しかし、やがてマンネリに陥るに違いない。 マンネリを打ち破るために作者が用意したのは「新たな高い山」。より高い山を求めた主人公は、残念ながら元の山に戻ってくることはできない。神話化の次元をあげれば、もとの神話の場所は、ただの生活の場所になるほかない。 「山」の物語は時を経て、山の人、岳がいなくなった、北アルプスの現場で同じように繰り返しているように描かれるが、新しい神話は生まれない。すべてが後日談となるほかないからだ。作者はそれをよく知っていて、マンガはそこで終わりを迎える。傑作マンガだと思った。(S)2018/08/23追記 2019・05・03「山」を印象的に描いているマンガには、名作「海街ダイアリー」もある。最終巻の山をめぐる恋人や、友人たちの思い、恋人の山からの帰還は、行き先が「山」でないと成り立たない感動だった。 最近見た「モンテ」という映画も「山」だった。パオロ・コニュッティ「帰れない山」という小説も、「山」でこそのリアリティ。「岳」の石塚真一さんは、きっと、山を知っている人なんだと思わせる描写が、知らないボクには感動的だったし、記憶にも残っているが、途中からの予感通り、やはり主人公の「死」で終るしかないのか、というのが後まで残った。ボタン押してね!にほんブログ村にほんブログ村
2019.05.03
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石塚真一「BLUE GIANT全10巻」(小学館) 2018年の夏です。「ヤサイクン」の運んできた断捨離「段ボール」のなかにあった、全十巻の単行本マンガ「BLUE GIANT」(小学館)の第1巻の表紙です。「この人知らんな。」 「『岳』描いた人や。」 「それも知らん。椎名誠とはちゃうんやろ。」 「ちやう。それは『岳物語』やろ。石塚真一いうマンガ家のマンガであんねん。山の話や。これはジャズのはなしや。」 「はあー?あんた、ジャズとか知ってるの?」 読んで驚きました。不思議なことに、とにかく涙が出て止まらないのです。音楽の話だから?少年の成長物語だから?そうかもしれない。 もっとも、「ヤサイクン」が持ってくるマンガの大半はいわゆるビルドゥングス・ロマンだから、はまると涙の素のようなところがありますが、どれを読んでも泣きっぱなしかというと、必ずしもそうともいえません。 老化のせいか。ここのところ、すぐに感極まる傾向があることは、たしかだから、そのせいかもしれません。念のために、ネットで検索してみると、若い読者も泣いてるようなのですね(笑)。うーん、若者でも、老人でも泣けるマンガか。 15歳の少年がジャズという音楽の中に「ほんとうのこと」があることに、偶然、気づきます。彼はそれを手に入れるために、来る日も来る日も楽器を吹きつづけるのです。 彼が信じた「ほんとうのこと」は、社会が少年たちに求めていることと、微妙に違うことであるようです。家族も、先生も、友達も、彼が求めている「ほんとうのこと」を理解できているわけではありません。少年は、一人で旅立っていくのですが、「ほんとうのこと」がどこにあるのかは知らないままです。でも、彼は旅立つのです。 マンガを読みながら、唐突に、こんな言葉を思い出しました。 ぼくが真実を口にするとほとんど全世界を凍らせるだろうという妄想によって ぼくは廃人であるそうだ おうこの夕ぐれ時の街の風景は 無数の休暇でたてこんでいる 街は喧噪と無関心によってぼくの友である 苦悩の広場はぼくがひとりで地ならしをして ちょうどぼくがはいるにふさわしいビルディングを建てよう 詩人の吉本隆明の「転移のための10篇」という詩集の中にある「廃人の歌」の一節です。まあ、このマンガの主人公宮本大君が故郷を出発した年齢とちょうど同じだったころ、繰り返し繰り返し口にした詩の一節です。 吉本隆明の真実は「全世界を凍らせる」のですが、宮本少年の演奏は「全世界の心揺さぶる」はずなのです。 しかし、この国というような狭い世界ではなく、全世界という、口に出して言ってしまうと、ほとんど妄想と受け取られかねない世界を夢見たり信じたりする人間は、いずれにしても社会からは「廃人」と呼ばれ、「不毛の国の花々」や「ぼくの愛した女たち」とは別れていくほかないのかもしませんね。 若い読者が、このマンガを読んで涙を流すのは、全世界という途轍もなさの向こうにしか「ほんとうのこと」は見つけられないということに、無意識のうちに恐怖している自分を感じさせてくれるからではないでしょうか。まあ、出発がついにやってこなかったまま年を取ってしまったことを、出発する宮本大君に思い知らされて、思わず涙する老人の繰り言ですね(笑)。 で、第二部「BLUE GIANT SUPREME」(小学館)で少年は世界に飛び出していくようです。彼は、はたして、「ほんとうのこと」を手に入れることが出来るのでしょうか。ガンバレ宮本大! 2018年7月 追記2019年5月 先日「BLUE GIANT SUPREME 第7巻」(小学館)がヤサイクンのマンガ便で届きました。最新刊です。 主人公宮本大はいやおうなく「大人」になり、ヨーロッパのステージで「ほんとうの音楽」を追いつづけています。しかし、第二部を構成するプロットの特徴は、夢を追うヒーローとしての主人公を群像化しているところです。それが第一部との大きな違いではないでしょうか。彼自身が率いている「NUMBER FIVE」というカルテットのメンバー一人、一人が入念に描かれているのです。当然、読者は「マンガ」を複雑で読みにくい印象でとらえることになるのでしょうが、世界に出て行った主人公のリアリティーは、これでないと維持できないことがよくわかります。「世界で通用する音」を求めることは、「世界」においては当たり前なのでしょうね。 むしろ、作家、石塚真一こそが、正念場に差し掛かっているというのがぼくの、率直な印象です。「この国」ではない「全世界」をどう描くのか。たとえ、それがマンガであったとしてもです。ぼくは、そこに強くひきつけられて読み続けています。もちろん、石塚君の健闘を祈りながらです。追記2020・03・03「BLUE GIANT SUPREME 第8巻」・「第10巻」感想は、それぞれ書名をクリックしてください。どうぞよろしく。追記2023・02・27アニメ映画化された「BLUE GIANT」を観てきました。傑作だと思いました。にほんブログ村にほんブログ村
2019.05.02
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浦沢直樹 「あさドラ!(第1巻)」(小学館) 長らくお待たせしました、浦沢直樹の長編マンガ「あさドラ!」(小学館)が始まりました。「週刊ビッグコミックスピリッツ」の連載なのだと思います。週刊漫画を読む習慣を捨てて久しい徘徊生活者シマクマ君は最新のマンガ情報にとても疎い。新刊マンガに出会うことはほぼありません。 そんな中で、おなじみの「ゆかいな仲間」、ヤサイクンのマンガ便だけが、新しいマンガの窓口です。もっとも、彼のマンガ便は、週刊誌に連載された作品が単行本になって、その単行本が古本になって、という経緯を経ての入手の場合が多いので、「新しいマンガ」とはいいながら、案外、古い。 原泰久の「キングダム」なんて、人気があって高いからと、値が下がるのを待っていると映画化されてのしまって、もはや高根の花になってしまったりして、ますます手に入らないということも起こるわけです。(書名をクリックしてみてください) ところが今回は「連続漫画小説」と銘打った、出たばかりの第1巻が、ヤサイクンから届きました。そういえば「夢印」も新刊でした。 「好きなんですね。浦沢君が。」 さて、「あさドラ!」です。主人公は「浅田あさ」。「アサちゃん」ですね。 この少女ですね。表紙にもアップの写真があります。いい雰囲気ですねえ。 舞台は1959年の秋、伊勢湾台風に直撃され、1000人を超える死者、甚大な被害を受けた名古屋。シマクマ君の親の世代にとって台風といえばこれ。という、シマクマ君自身は当時4歳ですが、その3年後の第二室戸台風ともども、「台風の恐ろしさ」の象徴だった台風というわけです。 その台風の最中「アサちゃん」の活躍でドラマの幕が上がります。ここから2020年までの60年が、このマンガの「時間」であるようです。天才操縦士でコソ泥で誘拐犯のシミッタレおやじ、「春日」。「おばさん」という呼称を拒否する、怪しい飯屋の女将「きぬよ」。 早くも、いつもの浦沢キャラクターが、わきを固めて好調なスタート。ここから、いったいどんな「どえりゃーでかんわ」が待っているのか。 ただいま、「アサちゃん」は「おにぎり爆弾」投下のために、水没した被災地、濃尾平野の上空を飛行中です。 どうやって飛行機を手に入れ、小学生の少女が金の亡者で鬼ババ風の女将「きぬよ」をどんな条件で口説いて山もりの握り飯を手に入れたのか。そこは、まあ、読んでいただくほかありませんが、 もちろん、次回へ、いや最終回へ向けてか、最終回は2020年、オリンピックに浮かれる東京が焼け野原と化す模様ですが、仕込みもバッチリ。上空から「アサちゃん」が見つめる、被災地に残された、あの巨大な・・・・。 浦沢ファンは、読まんとしようがないですかね。やっぱり。「ああ、第2巻はいつ出るんやろ!?」(第2巻はこちらをクリック)(3巻)はこちら。 ちなみに浦沢直樹は東京の出身ですが、このマンガの出だしは名古屋弁がおもしろい。どうも、名古屋方言の仕込みをきちんとやったようですね。(S)ボタン押してね!にほんブログ村にほんブログ村
2019.05.01
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ハロルド作石「RiN」(全14巻)講談社コミックス 我が家の「愉快な仲間たち」の一人、ヤサイクンがとどけてくれた「RiN」(講談社コミックス全14巻)。地震で大変な世間を尻目に、一気に読み終えた。ぼくは、結局、ストーリーにもまして、この絵が好きなのかもしれない。 読み終えて、ぼくはフラワー・カンパニーが20年にわたって、オジサンになっても、歌い続けている「深夜高速」を思い浮かべていた。 「今さら、フラカンかよ!?」 まあ、そういう声も聞こえてくる。でも一人で聞くと泣けるでしょ。 「創造か、破壊か」とか、「絶望か、希望か」とか、真綿で首を絞められるような二者択一の脅し文句や、「自由からの逃走」が横行する現代という時代がある。 この時代を乗り越える方法として「とどまることなく前に進んで行こう」とする青年を、肯定的に描き続けているハロルド作石に拍手したいと思う。 「青春ごっこ」といいたい奴は言えばいい。「それが時代遅れだとは誰にも言わせない」とでもいうような、漫画家の気概を感じる漫画だった。(S) ハロルド君の「7人のシェークスピア」の感想はこちらをクリックしてください。2018/06/19ブログ村ボタンにほんブログ村にほんブログ村
2019.04.26
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ハロルド作石「7人のシェイクスピア」(第1部小学館・第2部講談社) 2019年の6月のことです。我が家の「愉快な仲間たち」の一人、ヤサイクンが日曜の朝早くやってきて、紙袋いっぱいの漫画を二袋も置いて帰りました。 これで、有意義な日曜日を、ということなのでしょうか、はたまた「父の日」プレゼントなのか、断捨離とやらの結果なのか、ともかく、覗いてみると、その中にハロルド作石の「7人のシェークスピア」(第一部全6巻小学館・第二部1巻~5巻講談社)が入っていました。 ハロルド作石が、おバカ高校生マンガ「ゴリラーマン」で講談社漫画賞をとってからもう20年以上が過ぎました。 いかれた天才サウスポー「ストッパー毒島」、感動の「ロックバンド・マンガ」(そんなジャンルがあればだけど)「BECK」、ぼくは、どれこれも、みんな、愉快な仲間たちの読みのこしを読んできましたが、新たなラインナップに「7人のシェークスピア」が加わったわけです。 第1部全6巻が数年前に完結していて、その後「RiN」(講談社コミックス)の連載をどこかにしていることは知っていましたが、それも一緒に入っていました。ワオ!!ですね。 (「RIN」の感想は表題をクリックしてくださいね。) さて「7人のシェークスピア」ですね。不思議な題名なのですが、第一部は少年時代から商人として暮らしていた青年シェークスピアのお話です。シェークスピア研究史では「The Lost Years」と呼ばれているそうですが、その時代を描いていています。しかし、ここでは、まだ題名の秘密はわかりません。ただ、第二部のおもしろさを堪能したいなら、ここを読んでおかないと話にならない仕組みになっています。 第二部では、エリザベス朝のロンドンで劇作家として名を成していくシェークスピアですが、「リチャード3世」に始まる戯曲群が世に出てゆく姿を描いています。 題名の下には、新たに「NON SANZ DROICT」と、たぶんフランス語で書かれています。のちに彼が手に入れることになるシェイクスピア家の紋章に刻まれている文字らしいのですが、英語に直せば「not without right」です。直訳は「権利がないわけではない」くらいでしょうか、でもよくわかりませんね。「7人のシェークスピア」という最初の謎が、第二部を読み進めていて、ようやくわかったぼくの頭では、これが何故ここに加えられたのか理解できません。このマンガの題名の二つ目の謎です。 わかっている人がいらっしゃれば、ご教示願いたいと思います。 歴史的に実在の人物を伝記のように描いている作品だし、実際の劇中のセリフが、どんどん出てくる展開だからでしょうか、作中に「シェークスピアとその時代」という、マンガの進行に熱中している人が読むかどうかはわからないのですが、当時の世相や、お金、食べ物や、暮らしに関して、実に学究的なコラムが入っています。 書き手はれっきとしたイギリス史の専門家、指昭博という神戸外国語大学の学長さん。こう書くと、ちょっと引く人もいるかもしれないが、ご心配なく。学習漫画ではありません。 ハロルド作石を知っている人でも知らない人でも、きっと納得する「読ませるマンガ」です。マンガは、演劇や映画と同じで、こうやって書いていくと、くそおもしろくないことになってしまうのですが、それは案内人の実力がないからであって、作品の罪ではありません。お読みになれば、きっと納得いくと思いますよ。乞う、ご一読。(S)2018/06/18追記2019・11・23「7人のシェイクスピア(9)」・「7人のシェイクスピア(10)」は、それぞれ表題をクリックしてくださいね。ボタン押してねにほんブログ村にほんブログ村
2019.04.26
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浦沢直樹 「夢印」 (小学館) 久しぶりに届いたヤサイクンのマンガ便のなかに浦沢直樹「夢印」(小学館)が一冊入っていた。「浦沢の最新作やで。」「ふーん?ゆめじるしか?何巻まであるの?ビリーバットやったっけか、あれは終わったん?」「もうムジルシ。ムジルシ、結構評判よ。一巻読み切り。ビリーバットは終わったよ。あんな、これは、ル-ヴル美術館との共同企画やの。」「なんで、ルーヴル美術館が出てくんねん?」「フランスでは芸術やねんて、マンガは。そやから、ルーヴル美術館が浦沢に描かしたわけ。」「フランスは日本よりマンガが流行ってんねん。スラムダンクとか、みんなフランス語版になってんねんて。週刊漫画あるやろ、『ジャンプ』とかに連載してて、流行ってんのな、『ワンピース』とか。ユーチューブで読めんねんけどな。普通の発売日の前の週には出てんねん。フランス語とか英語とかで。」「なんや、ほんまかいな、それ。翻訳して、絵はまんまか?ヤサイクンは横文字のを読むの?」「読めるかいな。おれは日本語版。」 ヤサイクンも、偶然その場にいたピーチ姫も、現代マンガ事情に詳しい。シマクマ君はポカンとしながら聞いていて、なにやらキツネにつままれたような気分。 一週間ほどして、再びヤサイクンがやってきた。「『ムジルシ』読んだで。長い話を軽くまとめた感じやな。なんか、もの足らんかったわ。なんや、一冊のわりにはこみいってるな。浦沢直樹も、エラなってんやな。美術館に頼まれて描いた感じは、ようわからんかったけど。フェルメールの模写か?そんなん出てたな。」「話がめんどくさいのは、ずっとやろ。いろいろ仕込んでるネタ、伏線いうんか、忘れてしまうやろ、途中で。読み返さんとわからんようになるやん。これ、一冊で、わかりやすいやん。」「まあ、そういういい方もあるかな。この人、めんどくさいから面白いともいえるけどな。そや、カラスといえば、マリアやろっていうギャグわかった?『二十世紀少年』うちにあるんかな?あるはずやんな。ちょっと見たいんやけど。」 「そっちの棚のどっかにあるやろ。ああ、マリア・カラスやろ?」 何はともあれ、浦沢の作品としては、チョー短編。読み終わってみると、ホントはここから始まるような感じが残るけれど、お話としては完結している。大きすぎる話を、短くまとめたからかもしれない。ちょっとネタ晴らしになるが、「夢印」はちゃんと表紙の真ん中に書いてあった。 浦沢ファンは、一応、読んだら、っていう感じ。マンガのなかで世界は騒然とするけど、で世界が騒然とするかどうか、保証の限りではない。(S) 追記 ところで、このブログをご覧いただいた皆様で楽天IDをお持ちの方は、まあ、なくても大丈夫かもですが、ページの一番下の、多分、楽天のイイネボタンを押してみてくださいね。ポイントがたまるんだそうです(笑) ボタン押してね!ボタン押してね!【中古】 【コミックセット】MONSTER(モンスター)(全18巻)セット/浦沢直樹 【中古】afbまあ、面白いですよね。【漫画全巻セット】【中古】プルートゥ <1〜8巻完結> 浦沢直樹まあ、これもね。
2019.04.13
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