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巾…キン 幅…フク、はば


東京帝国大学の長谷川教授は、近年の日本文明の精神面の堕落を深く憂いていました。これを救済するのは、武士道によるほかないというのが先生の考えでした。
ある日、先生は西山篤子という初対面の婦人の訪問を受けました。
婦人は、先生の教え子の母だと名乗り、息子への見舞いの礼を述べました。そして、息子の死を淡々と語ります。
団扇を落としてテーブルの下にかがんだ先生の目に、夫人の手が激しく震え、手巾(ハンカチ)を固く握りしめている姿が映りました。
婦人は、顔でこそ笑つてゐたが、実はさつきから、全身で泣いてゐたのである。
婦人が帰った後、先生は「日本の女の武士道」だと満足して、ストリントベルクの本の続きを読みますが、そこには、婦人と同じような仕草を「臭い芝居」とした文がありました。
先生は、自分の中の調和が乱されるのを感じます。
前半は胸を打ついい話ですが、それで終わりません。毒のある話に仕上がっています。
引用および参照元:芥川龍之介『手巾』青空文庫
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