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2015.02.22
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『夜を賭けて』梁石日(幻冬舎文庫)

 まず、タイトル。
 なかなか想像力を掻き立てるロマンティックなタイトルですが、意味しているところを考えると、んー、なんか、少しよくわかりませんね。

 「夜」ってのは、何か人生上の暗い部分の象徴ですかね。
 それを賭博の資として、賭博のように人生を生き抜く、くらいの意味でしょうか、内容を当てはめて考えると。
 だとすると、なかなかよくできたいいタイトルであります。

 えーっと、つまり、そんな内容の小説なんですね。やはりピカレスクロマンだと考えられます。
 もう少し具体的に書きますと、昭和20年敗戦以降30年代初頭くらいまでの結構有名な話題だった、旧大阪砲兵工廠を舞台として活躍した「アパッチ族」をモデルとしたお話であります。

 今、結構有名と書いたのは、本作を含めるとこの「アパッチ族」をモデルの小説が3作もあるからですね。
 例えば歴史小説の中に何人の坂本竜馬が出てきたか、まー、そんな有名人に比べれば、3作のモデルというのは大したことがないかもしれませんが、それでも、この「アパッチ族」が小説家の想像力を掻き立てる存在であったことは事実でありましょう。
 そんなヴァイタリティーとパワーあふれるエネルギッシュな「現象」が、「アパッチ族」でありました。

 まず3作の小説とは、この3つですね。
『日本三文オペラ』開高健(1959・昭和34年)
  『日本アパッチ族』小松左京(1964・昭和39年)
  『夜を賭けて』梁石日(1994・平成6年)


 開高健の作品は、改めてこうして見てみると、ほぼ同時代的なモデル小説であることが分かります。
 開高の作品については、わたくし、恥ずかしながら思い出すところがあります。
 まず開高作品の中では、わたくしが最も好きな作品で(とはいえ、開高健の小説はさほどたくさん読んでいるわけではないんですが)、5回くらい読んでいると思います。

 その中の1回が、恥ずかしながら失恋の痛みを癒せないかと読んだ1回でした。
 夢中になって読める元気の出る小説はないものかと、かわいそうな失恋青年であったわたくしはあの頃チョイスしたんですねー。

 うーん、そう思ってみると、あの頃も今も、あれこれ小説は読んでいながら、わたくし元気の出る小説ってのにはあまり縁のない読書の日々を送っていますなー。
 ひょっとしたらこれって、かなり困ったこと、なのかな。

 次の小松左京作品も確か再読までしたような覚えがあります。
 ただ、この作品は開高作品から繋がっていって読んだ小説で、筆者に対する興味というところまでは到達しませんでした。(これは全く個人的な好き嫌いの話なんですが、また、別に嫌いなわけでもないのですが、私はあまりSF小説に過去も現在も馴染んでいません。)

 そして、今回、冒頭の本作を読んだのですが、本作の解説を小説家の小林恭二が書いていますが、その中にも触れてあった、前半部と後半部の断絶について。
 なるほど確かに、まるで別々の作品のような展開と描写であります。
 ただ、わたくしが読んだ限りでは、この断絶にもかかわらず、本作は後半部の「大村収容所」の部分を書かざるをえなかったろうと思います。

 まず「外因的」な部分で考えますと、本作以前に上記にもあげた同モデルの2小説がすでにあるということです。前半で作品を完結させてしまうことは、実際問題としてできるとは思えません。第1部だけではほぼまるまる開高作品とかぶってしまいます。

 次に「内因的」な部分で考えますと、筆者自身が実際に「アパッチ族」の一員であったということです。開高にとっての「アパッチ族」は外部から手に入れたモデルでしょうが、梁石日にとっては内部から湧き上がってくるテーマであったと思います。
 だからこそ、すでに開高作品から35年も経ってるにもかかわらず、筆者は自らのテーマとして書き始めたのでありましょう。

 しかし、今、開高作品から35年と書きましたが、自らの経験とはいえ、40年近く昔の話を、筆者がいかにヴィジュアルに綴っているか。
 そもそもこの作家は「タクシードライバー」を扱ったルポルタージュ作品から筆を染めた方ではありますが、驚くほどリアルタイムな筆致で、かつ子細な部分に至るまで見事に描ききっています。

 上記に私は、かつて失恋の傷をいやすために『日本三文オペラ』を読んだと書きましたが、そのころに本作があれば、私はひょっとすると、こちらのほうを選んだかもわかりません。

 あ、いや、本作の後半部は「純愛小説」的になっていますから、……うーん、失恋の傷を癒すにはなぁ、……うーん、……。
 ……ひょっとしたら私は、第一部だけを読んでいたかもしれません。


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Last updated  2015.02.22 11:31:56
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Comments

シマクマ君 @ Re:思っていたよりも「重く」ない(02/21) 純文さんへ  あたたかいお返事ありがとう…
analog純文 @ Re[1]:思っていたよりも「重く」ない(02/21)  シマクマ君さんへ。  おや、思わぬお方…
シマクマ君 @ Re:思っていたよりも「重く」ない(02/21)  いつも読ませていただいてます。あのせ…
analog純文 @ Re[3]:無理筋仮定を考えてみる(12/28)  七詩さんへ、重ねてのコメントありがと…
七詩 @ Re[2]:無理筋仮定を考えてみる(12/28) analog純文さんへ 私もときどき読書日記を…

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