迦陵頻伽─ことだまのこゑ─

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2025.03.20
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カテゴリ: 浮世見聞記
三十年前のこの日、當時學生だった私は歌舞伎座三月興行の夜の部を觀るため、昼頃に新宿驛から地下鉄丸ノ内線を利用しやうとして、この時はまだ朧ろな情報で、事件を知った。

この凄惨なテロ事件について、築地驛付近の様子の冩真がよく使はれるが、この時間、私は霞ヶ關駅を臨時通過する丸ノ内線に乗って、ここからほど近い場所の劇場に出かけてゐたのである。

あれから三十年が經った今ごろになって、運命の紙一重の怖さを知るのだから、なんてオメデタイのだらうと我ながら呆れたりもする。


新聞紙に包まれたビニール袋を傘の先で穴をあけてサリンが撒かれたことから、いらい電車内に新聞紙を放棄することは厳禁となり、そしてそれは習慣化……、されることなく三十年後の現在に至る。



しかし私は、荷物棚にそれが捨てられてゐるのを目にするたび、今も必ず事件を思ひ出す。


私はあの日、運命の紙一重で無事に通過したからだ。





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最終更新日  2025.05.16 14:29:26
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