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東京圏で三十七日も續いたと云ふ迷惑雨天もやうやく去ったやうで、昨日に續いて今日も太陽が覗き、散歩に出た夕方の空氣はすっかり秋の香り、夏の暑さにクタッとした心身を引き締めるには相應しく、さあもう夏は過去、ここで仕切りを立てて今年は訪れるであらう秋、そして待ってましたの冬に備へんと、やっと空氣を心に美味しく吸ひ込む。
2026.10.03

橫濱市歴史博物館の企画展「横浜絵の深層」を觀る。文久二年(1862年)に来日したチャールズ・ワーグマンによって日本にもたらされたとされる西洋繪畫の技法を間接的に學んだとされる初代五姓田芳柳は、明治元年(1868年)に橫濱に工房を構へて弟子たちと共に展開したそれは“橫濱繪”と呼ばれてもてはやされ、つひには明治天皇の肖像画を手掛ける榮譽に浴するに至る。その後じつに昭和戰前期までの長きにわたって制作された橫濱繪だが、もとは外國人相手の土産物といふ性格ゆゑに日本國内ではあまり作品數が確認されず、近代美術史においても外側におかれてゐたきらいあり。(※展示室内フラッシュなしで撮影可)しかし、幕末明治の日本人が初めて西洋文明の繪畫を目にし(江戸中期の洋風画はさておき)、強い興味を惹かれ、それを自分のものにしやうと筆をとった原初の様子は、異國風に近づかうとするあまりかえって強調された奇怪味を醸し出し、作者も制作意圖も不明な點が多いのと相俟って、それがまた今日に觀る者の想像力を刺激してやまない。近年に作品の存在が知られるやうになり、それで私も知った笠木治郎吉は初代五姓田芳柳の孫弟子にあたるとされ、この企画展の白眉である彼の水彩の數々は水彩画の透明感と、顔料を緻密に重ねることで表現した油彩画風の重厚感とが美事に融合されて独自の畫風を確立させ、五姓田派の發展と云ふよりも最早そこから独立した作品世界は、若い女性を題材にした作品にその魅力が遺憾なく發揮されてゐると、私は觀る。
2026.10.02

映画「ファーストライド」(韓國)を觀る。幼馴染みの男子四人は成人後、學生時代に果たせなかった卒業旅行を果たすべくタイに旅立つが、顔ぶれは三人+ー体、そして“妹”が加はっての珍道中が息つく間もなく次々と展開されるも、なぜ男子四人組の一人が“一体”なのかはまったく触れられず、後半になって理由が薄々わかってきたところでやはりの答へ、物語を明るい青春で彩りながらも友情と真情の深層を殘酷なまでに抉るが、しかしそれはおそらく誰もが心のどこかで抱いてゐる本音であり、何人も咎めることは出来ないもの。男子四人組に紅一點の役どころとなる“妹”が、ムダな色氣を出さない演技で却ってそそられ、“先生”はどこかで見たことあるやうな、と思ってゐたら名作時代劇「トンイ」に全話出演してゐたあの名優と氣が付いて、やはりかういふ人が作品を面白くしてゐるのだと、隠し味の秘密を見つける。午後は新橋驛SL廣場恒例の古本まつりに寄る。今回の會期中でまともに晴天なのは今日くらゐなものだらうと思って出かけが、日向にゐるとさすがに夏並な暑さのため、欲しい物を手に入れたら早目に撤収するつもりでゐると、見世の若い人が「昨日みたいに寒かったり、今日みたいに晴れて暑かったり、極端ですよねぇ」とぼやくのを、年配の主人が「昨日みたいな雨よりかいいよ」と笑ふやりとりが、人生の年輪の差を見るやうで興味深かった。
2026.10.01
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