迦陵頻伽─ことだまのこゑ─

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2025.05.24
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カテゴリ: 浮世見聞記
「蝶々夫人」と云ふオペラがどんなものなのかを觀たくて、初めて新國立劇場“オペラパレス”の客席に座る。



明治初期のナガサキを舞薹に、藝者に身を落とした没落武家の娘“蝶々さん”が、「本當に結婚したいアメリカの妻」と放言するやうな不實な米夷海軍男のために一途な愛を一方通行のまま踏みにじられる、權妻悲話。



第一幕の開演早々、“蝶々さん”の登場直前における件の放言に、「なんだ、このオトコ……」とすっかり興醒めしたとたん、“蝶々さん”ほか和装のニッポン人役のオーケストラにのせて異國語を吠え續ける様が、西洋人の猿マネとしか映らない強い違和感を覺えてしまひ、コリャ見るに堪へぬと第一幕後の幕間で劇場から逃げ出す。



もともとかういふテの洋モノを私の耳目は受け付けないくせに、この歌劇を一度觀てみたいと思ひ立ったのが、一年前。

しかしその理由が、いまではどうしても思ひ出せない。

一時的にふと氣が向いただけだったのかもしれないが、しかしあれから一年も意識のなかに在ったのだから、やはりなにか“目的”はあったはずだ。

……まあいい。

日本の傳統藝能に拒絶反應を示す日本人の感覺が、「ちゃうどこんな感じか」とわかったのがお土産だ。





幕間で逃げ出す途中、一階ロビーで身なりだけは小綺麗な婆さんが、座席のことで何か氣に喰はなかったらしく、場内係にカラスのやうなコヱでいきり立ってゐた。






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最終更新日  2025.05.24 20:14:42
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