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2025.06.04
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カテゴリ: 浮世見聞記
前進座の“歌舞伎”公演を觀に、池袋のサンシャイン劇場へ行く。



昨年にはなかなか觀應へある「鳴神」を魅せてくれたので、その勢ひで今年は同じ歌舞伎十八番の「毛抜」かと期待してゐたが、山田洋次監督が“監修”のマゲ物人情喜劇「裏長屋騒動記」の再演云々、山田洋次と聞いただけで中身が想像できてしまふだけに、正直ガッカリ。

案の定、相變はらず“渥美寅さん”を引きずった演出が織り込まれ、ホラやっぱりネ、と白けはしたものの、落語二題を下敷きに笑ひあり、涙あり、戀ありと、氏がかつて渥美寅さんのおかげで培った日本庶民の情(こころ)を存分に盛り込んだ、長年愛してきたと云ふ前進座への敬意も感じられる娯樂作。

この劇團がこのごろよくやるゲスト出演として、今回は松竹新喜劇の曽我廼家寛太郎が上方から来た設定の“らくだの馬”で出演、いかにも巧者らしい上方喜劇のノリでひとり客席を沸かせて前進座の役者陣を圧してゐたが、それは前進座の芝居の雰囲氣に溶け込んでゐないことでもあることに、注意する必要がある。

このさほど興味もそそられない裏長屋劇を一應觀ておかうと思はせたのは、殿様役で河原崎國太郎が出演するからの一點のみにて、一場限りの點景人物ではあったが、立女形らしい風格を佛像オタクの珍妙な人物に應用させた造形ぶりは、初演時に山田洋次氏がどのあたりを氣に入ったのかは分からないが、たしかに笑ひを誘ふものではあった。

但し、感激のあまりわずかに失禁したと告白して引っ込むのはさすがに下品に過ぎ、少なくとも現在の歌舞伎は、さうした露骨にシモ掛かった芝居はしない。

ましてや、その後ろを小姓が懐紙で濡れた畳を拭きながら付いていくなど、どこから来た演出だと云ひたくなる!

もちろんこれは國太郎の失態ではなく、すべて山田洋次氏の責任である。


来年で前進座は創立九十五周年云々、その記念の“歌舞伎”公演を、再びサンシャイン劇場で上演云々、カーテンコールで出演者が「劇場までの道順をよく覺えておいて下さい」と、圧倒的大多數で高齢者が占める客席に訴へてウケを狙ってゐたが、




私が座った二階席は昔ながらに段が急で、悉く足許の覺束ない高齢者たちは席にたどり着くまでにかなりの苦戰を強いられてゐた。



この人たちのおかげで辛うじて成り立ってゐる集團である、今後はもっと會場選びを考へたはうが良い。





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最終更新日  2025.06.04 21:30:23
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