迦陵頻伽─ことだまのこゑ─

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2025.06.18
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カテゴリ: 浮世見聞記
坂東玉三郎(やまとや)が竹久夢二の「長崎十二景」を舞踊劇化云々、觀る前から想像はつくが、この際坂東玉三郎と云ふ役者を改めて觀ておくも一興かと、京都四條の南座へ出かける。



いまや独演會で客を呼べる唯一の歌舞伎役者にて、今日のほぼ満席な場内を觀て、やはり今日は来ておいてよかったかナ、と思ふ。



なかなか氣の入った「口上」、地唄「殘月」はもともと古劇味の無い優のため地唄の演奏を聴くための一場に過ぎず、過去の舞臺作品を短縮して映像化した「夢二慕情」で竹久夢二の生ひ立ちとオンナ遍歴を序章において、本題の「長崎十二景」へと流れて行く。

さすが洋モノ調度品を置いた演出作品になると本領を發揮、竹久夢二云々をいろいろな意味で超越した不朽の女形ショーは坂東玉三郎の藝と人生の集大成を觀るやうでもある。



が、「長崎十二景」は竹久夢二が大正七年八月末から九月上旬にかけて長崎を旅行した際の印象を二年後の大正九年に十二點の版画にしたもので、



昭和五十年代に現代箏曲の演奏家がこの作品から着想した同名の組曲を坂東玉三郎が氣に入って景事に仕立てたものゆゑ一貫した物語性はなく、しかし見物客にはそのあたりを理解できない人もゐたらしく、すでに上演中に「……なんか、ワケわからないわネ」といった囁きが漏れ聞こえた。

この公演は「坂東玉三郎特別公演」であり、ひとことも“歌舞伎”とは云ってゐない。



が、これがその歌舞伎の役者である坂東玉三郎の、天性の藝術家肌を見せるには相手に限界があることを示す、現實のこゑなのだ。





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最終更新日  2025.06.18 23:48:24
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