迦陵頻伽─ことだまのこゑ─

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2025.09.30
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カテゴリ: 浮世見聞記
千代田區九段北のしょうけい館の特別企画展「武良茂(水木しげる)の戦争体験」を觀る。



昭和十八年にパプアニューギニアのニューブリテン島に出征した武良茂青年が直面した、威嚇と暴力が橫行する軍隊生活、マラリア感染、空襲による所属部隊の全滅、奇跡的に生き延びて上官のもとへ辿り着いた際に浴びせられた、「なんで生きて帰ってきたんだ、みんな死んだんだから、お前も死ね」との耳を疑ふ非情な言葉、そして敵の急襲により左腕を失ふ──



水木しげるさんが描き遺した体験画の數々は、その現實の真っ只中に身をおいた者でなくては描ききれない人間の行為の残酷さ、非情さ、愚かしさ、そして何より深い“怒り”を、鬼迫をもって私たちに訴へかけ、私はその思ひに深く共感する。



左腕を失なふ重傷を負って現地で療養する武良茂青年は、やがて島の原住民であるトライ族の人々と親しくなり、原始的な生活を穏やかに營むその姿に真の平和を見出すうち、そのまま島に永住したいと願ふまでになる。


(※トライ族のスケッチ 案内チラシより)

非人間的な軍隊生活に心身を蝕まれつつあったなかで出逢った原住民たちの穏やかな生活が、いかに平和の尊さを象徴するものとして心に沁みたか、後年に水木しげるとして著した「娘に語るお父さんの戦記」の一節、

“僕にとって土人の生活は、人間が考え出した生活の中で一番樂しい生活ではないかと思えてならないのです”

に、すべてが込められてゐる。


しかし、何事も無いことは、人にとってそんなに難しいことなのだらうか──?





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最終更新日  2025.09.30 23:19:29
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