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【送料無料】《本屋大賞2012 ノミネート作品》ピエタ [ 大島真寿美 ]大島真寿美ポプラ社 四六上製☆☆☆☆☆◎ あっという間に読んでしまった。ヴィヴァルディのウィーンでの逝去を知った、彼が教えていたピエタ慈善院で事務をしていたエミーリアは、かつて同じ慈善院で音楽を教わっていた貴族の娘、ヴェロニカから一枚の楽譜を探してほしいと頼まれるところから話が始まる。もっとも娘と書いているが、彼女たちの年齢は少な目に見積もっても30代。それがその後10年以上にわたるストーリーだから最後は40代~50代くらいの年齢だ。 最初、エミーリアのピエタでの若いころの話の時は先日読んだ同じ著者の「ゼラニウムの庭」のような女のだらだらした独白なのかと思っていたが、コルティジャーナ、クラウディアが出てくるあたりから、ヴィヴァルディの生身の人となりと音楽を通じてヴィヴァルディと繋がっていたピエタの娘たちや彼と共演していた歌手の女性たち、クラウディアとヴィヴァルディを繋いでいた人々がストーリーに深みを出していく。おそらく、彼女たちの年齢が皆高かったのがよかったのだと思う。ここから、夢中で読み始めた。楽譜さがしの傍ら、エミーリアは多くの人と10年以上にわたってかかわっていくのだが、その関わりが、善意からのものが多く安心して読んでいられる。まあ、多少ご都合主義といえなくもないが。そして、最後、探していた楽譜が姿を現す時が本当に感動的だった。 この本を図書館に予約しようと思ったのは、ちょうど所属してる弦楽合奏のグループで二台のヴァイオリンのための協奏曲をやっていたからだ。残念ながら、そちらはもう別の曲になってしまったが、最初はエミーリアとヴァイオリンの名手だったアンナ・マリーアの二重奏などの回想もあり、その時にはその曲を思い出した。また、偶然だが、3年前、私はウィーンで偶然ヴィヴァルディが没した場所に行っている。ホテル・ザッハーの近くで、ザッハトルテを一緒だった所属アマオケの皆と食べた後だった。そんなことを思い出しながら読めたのもよかったと思う。正直「ゼラニウムの庭」があまり合わなかったので、読み始めたときはこの本も合わないかもしれないと少々不安だったのだが、こちらは予想以上に読み応えがあってよかった。 そういえば、この本の中でヴィヴァルディの曲が死後何年かして廃れてしまったと嘆かれる場所があるが、今、彼の曲は盛んに演奏されている。だが、現在のヴァイオリンと当時のヴァイオリンは結構違う。今のヴァイオリン、ヴィヴァルディはあまりお気に召さないんじゃないかと楽器のレッスンの師匠と話したこともあったっけな。 この写真がそのプレート。グーグルの翻訳によると「ここに偉大な作曲家ヴィヴァルディが住んでいた~」みたいな文章のようだ。そして、ネットで調べてみたところ住んでいた場所でなくなったような印象をうけた。お墓はウィーン工科大学にあるみたいだけど。
January 31, 2013
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【送料無料】カジュアル・ベイカンシー(1) [ J.K・ローリング ]【送料無料選択可!】カジュアル・ベイカンシー 突然の空席 2 / 原タイトル:The Casual Vacancy (単行本・ムック) / J.K.ローリング/著 亀井よし子/訳 芦原由紀/翻訳協力 梅田智世/翻訳協力 露久保由美子/翻訳協力 村井智之/翻訳協力J. K. ローリング講談社 四六上製☆☆☆☆☆ 「ハリーポッター」次作となる大人向きの小説。この人のインタビュー本か何かで若いころJ・オースティンを読んでいたと目にしていたせいか、成人女性の描写がどうもオースティンと重なった。ハリポタと違って、謎解き要素・起承転結も曖昧で、ドロドロ人間模様の昼ドラのような感じだ。オースティンとゾラの「居酒屋」「ナナ」を混ぜ合わせ、21世紀風に再構成したような感じだろうか。DV、人種差別、ドラッグ、虐待、自傷癖、神経症、ネットでの誹謗中傷などなど、盛り込まれた気の滅入るような舞台装置はまさに21世紀の現代だ。登場人物がどいつもこいつも一難ある人物ばかりで、ここまでしょーもない人物ぞろいだと、逆に爽快。特に噂好きの婆さんたちは本当にオースティンの小説にそのまま出てきそうだ。ただ、ジャンキー、(日本でいう)生活保護受給者、職業婦人はオースティンの時代にはいなかった女性像だろう。 ストーリーはバリー・フェアブラザーというパグフォードという名の小さな地方自治体の代議員が40代で急死することから始まる。彼の死により空席(カジュアル・ベイカンシー)となった議員席の埋めるための選挙を背景にいくつもの家族のドロドロの人間模様が描かれる。そこには中流以上の住民の住むパグフォード、そのパグフォードにぶらさがっている低所得者住宅地フィールズ、パグフォードに近接した少し大きな町ヤーヴィル、そして首都ロンドンの「都会」というイメージ……。パグフォードの名士だと思っているデリの主人モリソンがかつての領主館を買い取った金持ち夫婦にへりくだりつつ、スラム化したフィールズをパグフォードから切り離そうとしたりして露骨にフィールズを嫌悪する、地域格差、ロンドンから来た転校生への同級生への憧れ、夫婦共に医者のパキスタン人夫婦とリベラルな考え方でフィールズをパグフォードから切り離すことにバリーは反対していた。そしてフィールズの不良娘に肩入れする彼を苦々しく思っていた妻メアリ。大人と子供との人間模様が入り混じるのだが、親同士の反目は置いておいて、モリソンのカフェでバイトする同級生三人組の描写にちょっとハリポタを思い出してニヤリとしてしまった。 確かに色々盛り込みすぎとは思うが、舞台のパグフォードに現実感を持ちやすいイギリス人と同じような社会問題を抱えた国の人々には「あるある」で確かにページターナーになりうると思う。フィールズのような第二次大戦後に建てられた低所得者用の住宅団地はイギリスだけでなく他のヨーロッパ諸国にもあって住環境の悪化が問題になっている国があるのはアイスランドのミステリでも読んだことがあるし、そういう住宅は日本にもある。だが、日本人の場合、状況は理解できるが、(そういう住宅も老朽化・高齢化が問題にはなっているものの)スラム化してないため、読んでいても実感はない。ただ、身もふたもない事件の連続につい、ドロドロドラマを読んでいる気分になる。どうというストーリーのある小説でもないのに、読んでいると結構面白いというのは、オースティンにも共通しているかも。 また、フェアブラザーの双子の娘、ニーアヴとシュヴォーンだが、スペルが分からず(作中の不良娘クリスタルも読めなかったという記述があるが)調べてみたら、ゲール語系の名前で"Niamh"、"Siobhan"という綴りだった。私も読めないよ……。この二人だけでなく、他の登場人物の名づけ方も、(ハリポタがそうだったのだが)案外、向こうの人には何か他に喚起されるイメージがあるのではないかと思っている。フェアブラザー家の子供たちは親は違うのにこの二人以外の兄と弟もゲール語源の名前だ。これ、何かのイメージシンボルなんのではないだろうか。この小説、背景に隠されたイメージシンボルがもっと読み取れればもっと面白かったのではないかと思う。
January 31, 2013
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【1000円以上送料無料】のぞきめ/三津田信三三津田信三角川書店 四六上製☆☆☆☆☆ 前半がバブル少し前に寂れた別荘地近くの廃村で怖い目にあった学生バイトの怪異譚。後半がその50年ほど前に同じ地で民俗学を学ぶ学生が出会った怪異譚。どちらも隙間から覗く視線の怪異というか化け物の話だ。 私が怖く感じたのは現代編。といっても怪談聞き書きの体裁をとっているため、聞き書きの時点が2013年現在より一昔前。その語られる怪異が起こったのはさらにその一昔まえだ。隙間の恐怖がいやというほど感じられる。そして、最後の方で奈良県に住む霊能者というのが出てくるのだが、この霊能者、死相学探偵のおばあちゃんだと思う。 そして後半はその50年ほど前、昭和10年代の頃に学生バイトたちが怪異に出会った同じ廃村が山間の閉鎖的な村として登場。その村の憑物筋の家の息子と仲良くなった同じ大学の民俗学を学ぶ学生四十澤の覚書ノートという体裁をとっている。こちらも夜の深い森の描写や不気味な野辺送り、不気味な村とかなり怖いのだが、この最後に書き手である著者による解決がある。同じ作者の刀城言耶シリーズと同じパターンなのだが、ネタがネタだけに、解決された気がしないのだ。現代編が最初になっているが、解決したのに、なぜ半世紀以上たってまだ怪異があるのだ?それに解決が与えられないままになっていることもある。このなんともいえない中途半端な解決が生み出す不気味な余韻がこの作者の醍醐味ではあるが。 日本民俗を織り込んだホラーがやっぱり一番不気味に怖く感じる。この怖さ、本当にクセになる。
January 23, 2013
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【送料無料】江神二郎の洞察 [ 有栖川有栖 ]有栖川有栖東京創元社 四六上製☆☆☆☆☆◎ やっぱり、安定した読み応えだ。学生アリスの短編集。このアリスの大学入学年が私と同じものだから、自分の大学時代を思い出しながら読んでいた。私は東京の大学だが、学生会館や学食の雰囲気もまるで、自分の大学のようだ。(学食のノンオイルドレッシングの酸っぱさが懐かしい……)大教室の隣にもしかしたら、アリスがいたかも、なんて考えてしまう。作中かなり細かく昭和最後の年の様子が描写されていて、とても懐かしい。昭和天皇の報道とか自粛ムードとか……。元号の薀蓄なんかはこの人の小説らしい。 作中のトリックはもちろん、随所に織り込まれるミステリ談義や推理ごっこもとても学生の悪ふざけのようで面白い。そして、かなりゆるい連作短編集の形を取っていて、前作の後日譚がほんの一文織り込まれているのもいい。頻繁にミステリ研の面々で誰かの下宿に寄り集まって無為に時を過ごすのも、私にはあまり経験がない(学生オケだったので練習だらけの日々だったのだ)にも関わらず、一年だけいた学生時代の下宿を懐かしく思い出したりした。 ストーリーもさることながら、何よりも昭和最後の年と自分の大学時代の思い出がこの本にリンクして懐かしく読めた。でも江神先輩の名探偵ぶりはこの本でも余すところなく発揮されている。それに、この表紙、エラリークイーンの文庫本の表紙に似ているのではないだろうか。私の記憶はウロ覚えなのだが。
January 20, 2013
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【送料無料】ゼラニウムの庭 [ 大島真寿美 ]大島真寿美ポプラ社 四六上製(?)☆☆☆ 最近、注目されている著者だと思うのだが、この本に関しては、私には合わなかった。双子として生まれ、双子の姉はごく普通に成長していったのに、妹の嘉栄はその何分の一の遅いスピードで成長していく。この嘉栄と一緒に生まれた双子の姉、豊世からの聞き書きを中心に豊世の孫娘、るみ子(通称るるちゃん)の手記と嘉栄本人の附記が一冊になっている。このタイトルは上手いと思うが、るるちゃんの感覚に全く私は感情移入できず、この本はあまり面白いと思えなかった。ただし、このるるちゃんの感性と文体をこの著者がすべて計算の上でやっているのだとしたら、大変な文章力とストーリーテリング能力だと思う。 この本はかなりイマイチだったのだが、同じ著者の「ピエタ」を図書館に予約しており、こちらはヴィヴァルディに関係したストーリーのようなので、ちょっと楽しみにしている。 この本の底流は嘉栄の周囲の四代にわたる女達の話だ。嘉栄の母(るみ子の曾祖母)和佳、嘉栄の姉(るみ子の祖母)豊世、嘉栄の姪にあたる、るみ子の母、静子、るるちゃんことるみ子、るみ子の娘の葵だ。そして、嘉栄のシンパともいえる主治医の桂、その息子の冬馬、るみ子の家の家政婦達も重要な役割を果たす。ちなみに途中で明かされるのだが、るみ子がこの手記をつづっているのは大体推測すると今から10年くらい前かもっと前で、嘉栄の手記はるみ子の娘葵の成長した姿も描いている。 正直、私は嘉栄と和佳、豊世の強さとしたたかさには関心したが、るみ子の母静子とるみ子本人にはあまり共感できない。静子は仕方ないところもあるが、るみ子は本人に問題がありそうな気がする。レビューにあるような命の大切さというより、昔の女は強かった、と思ってしまうのだ。 というか、一族に八百比丘尼のような人物がいたら、という設定に興味を覚えたのだが、るみ子視点の手記はかなり表層だけを捉えたような内容に感じ、(そう嘉栄も暗に批判している)つまらない。嘉栄の附記がなければ物足りなさが残っただろう。そして、このるみ子の手記の内容の浅さもあって、私には、正直、この話の読後感はまりよくない。もっともこのての内容で読後感にカタルシスを感じたら、却って陳腐なストーリーに堕してしまうような気がするからそれはいいのだが。そして、以前に女系家族の映画を観に行ってつまらなかったので、多分私はこういう女視点の女っぽいストーリーが合わないのだろう。 そういえば、この本のカバー絵は内容に合っていない。そして、この本の口直しにハインラインの「メトセラの子ら」でも読んでみようかな。
January 11, 2013
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【送料無料】テロリストのパラソル [ 藤原伊織 ]藤原伊織講談社文庫☆☆☆☆☆ かなり長い間、なんとなく気になっていた本だった。手に取るまで、乱歩賞・直木賞ダブル受賞作ということも知らなかった、というか忘れていたし、先ほど著者名で検索するまで、著者が既に故人であることも知らなかった。初めて読む著者だが、かなり面白かったので、もう新刊が出ないのはちょっとさびしい。 読んでみると登場人物の関係に多少不自然さがあるが、最初の新宿の爆破シーンから場面の展開が上手く、ぐいぐい引き込まれた。また、登場人物の造形も魅力的だ。私はヘンなヤクザ浅井が気に入っている。ただちょっとビジュアルが思い浮かばない。ヤクザ社会では大逆罪みたいなことをするのだが、その後が分かる前に物語が終わってしまう。でも正直、浅井の行動を読んでいて、いつ殺されるかとハラハラしていたのだ。 結末は勘のいい人やひたすらドラマやストーリー性を楽しむことなく、作中提示されるファクターから類推することなく、ただ犯人当てをするようなタイプなら目算がつくのではないかと思う。 ハードボイルドとミステリが一緒になったような感じの作品。この著者のほかの本も読もうと思っている。
January 7, 2013
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【送料無料】されど君は微笑む [ 北方謙三 ]ただ風が冷たい日【送料無料】されど時は過ぎ行く [ 北方謙三 ]価格:1,575円(税込、送料別)北方謙三角川書店 文庫&四六上製☆☆☆☆◎ 約束の街シリーズとその前のブラディドールシリーズが合体してからの3巻。ブラディドールの最終巻から数年後という設定だろう。川中やキドニーは相変わらずだが、坂井と高岸は老けた。そして、このシリーズの姫島の爺ちゃんの腹心、水村は藤木の弟だったことが明かされる。 「されど君は微笑む」約束の街にN市のホテル、キーラーゴの社長の娘、秋山安見がやってくる。彼女は久納家のお家騒動を引き起こす立場になっていて、久納満と均の兄弟を刺激し、殺し屋に狙われていた。そして、それを阻止するために川中や坂井がこの街に乗り込んでくるのだ。しかし、若い娘とはいえ、川中だの坂井だのを見て育ってきた安見はダメ男を知らない。しかし、彼女が付き合っていた村井雄一は典型的なダメ男。結局周囲に振り回されるだけだった。安見もいい迷惑、アホな失恋(?)になってしまった。ここで久しぶりに坂井が出てくるが、川中の台詞通り藤木そっくりになっている。ブラディドールの最後の方では付き合いのある女がいたみたいだが、川中以上に女っけもない。この騒動も結局久納のバカ兄弟の兄弟げんかのとばっちりだった。 「ただ風が冷たい日」今度は約束の街に高岸がやってくる。この街のバレンシアホテルの買収に絡んで弁護士の宇野が来ており、それを追ってきたのだ。かつて自分をかばって死んだ西尾の異母妹が経営しているホテルであるため。そして、バレンシアホテルの買収を皮切りに街を支配しようとするのは、経済ヤクザの崎田。このいざこざは車椅子の久納均と波崎の命を奪う。でも結局一番格好いいのはいつものように姫島の爺ちゃん。最後の崎田VS川中の最終決戦、水村と坂井の活躍もいいのだが、爺ちゃんの貫禄には適わない。自分でトラックにブルトーザー積んで持ってきて、そのブルトーザーで公園の中に突っ込むんだから。そして、崎田はこの爺ちゃんに恩があり、おとなしく引き上げていく。でも崎田も格好よかったので、また出てこないかな。また、いきがっている高岸もさすがに坂井には頭が上がらないのが可愛い。高岸を助けて死んだ西尾の父と知り合いだった沢村もN市から駆けつけてきており、この爺さんも格好いい。 「されど時は過ぎ行く」語り手は久納のおじいちゃん。彼は戦友の息子に助けてくれと頼まれる。しかし、その息子、野本を追うのは川中。しかも、容赦しないという。作中半ばまで野本が何をやって川中に追われるのかが分からないのだが、分かると、川中や秋山安見が野本を付けねらうわけも分かる。ピアニストである沢村の左手をスパナで粉砕したのだ。この話が出てくるとき、桜内の名前がちょっと出てきて個人的に私はうれしかった。そして、前作でコマンドの動きだ、と崎山に形容されていた水村と坂井の連携だが、水村はフランス傭兵部隊出身だと分かる。もしかすると坂井もそのあたりに修行に行った経験があるのかもしれない。この本では、燻製の作り方なんかも詳しく出ていて、面白かった。そして、水村は野本の分かれた妻といい感じになりそうになるのだが、結局野本のふがいなさゆえにつらい結末になってしまう。 このラスト二冊くらいで水村が随分丸くなるのだが、この水村、兄(やこの時点での坂井)に比べると優しいのかもしれない。そういえば、「ただ風が冷たい日」で高岸が坂井や川中に嫁が来るなんて論外、と評していたのは笑ってしまった。 「されど時は過ぎ行く」以降、約束の街シリーズは出ていない。でも、先が出るといいな。けれど、ブラディドールシリーズ続編のようになりがちだから、その区別がどうなるか、だろうな。
January 4, 2013
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【送料無料】くるみ割り人形とねずみの王様 [ エルンスト・テ-オド-ル・アマデ-ウス・ ]E. T. A. ホフマン作 種村季弘訳河出文庫☆☆☆☆ 表題作のほか、「見知らぬ子供」「大晦日の夜の冒険」の三作収録。「くるみ割り人形~」と「見知らぬ子供」は子供向きの童話で、「大晦日の夜の冒険」はもう少し対象になる読者年齢は上で童話という内容ではなく、幻想文学というべきだろう。 「くるみ割り人形とねずみの王様」はバレエの原作となったアレキサンドル・デュマが下敷きにしたもの。ストーリーはデュマのフランス語版とあまり違わないが、トルートヒェン嬢がお人形の一つの名前だ。デュマの作品では「トルーシェン」嬢はマリーの家庭教師の名前になっている。でも、デュマの設定の方でも特にストーリーに違いはないと思う。バレエのストーリーとは結構違うのはいうまでもない。バレエの方には出てこないが、諸悪の根源のようなネズミの女王様はフランス語版では「スーリソンヌ夫人」だったがドイツ語版では「マウゼンリンクス夫人」になっている。 「見知らぬ子供」は森で見知らぬ子供と遊び始めたフェーリクスとクリストリープの兄妹のストーリー。森の中でおもちゃで遊んだり、怪しくて気に食わない家庭教師の正体を暴露して懲らしめたりする。くるみ割り人形もそうなのだが、この作品も結構ストーリーが込み入っていて、読み応えがある。そして、空想の世界と子供の現実の家庭環境が入り混じっている。 「くるみ割り人形」でも「見知らぬ子供」でも少々気になったのは、兄フリッツ、あるいはフェーリクスの粗暴な遊び。今の時代の日本で、軍隊の隊長になって馬や兵隊のおもちゃを支配し、懲罰を与えたり軍事教練をしてしごいたりして遊ぶのって、どうも粗暴に思えてしまう。この兄も将来立派なユンカー(悪い意味)かよと思ってしまう。ただこの二つの話はホフマンの友人の子供たちに実際に話して聞かせたストーリーが元になっているようで、くるみ割り人形の兄フリッツのモデルでもある子供らしい。この子は頭の固い軍人になどならず高名な建築家になったそうだから、まあ子供の遊びなんだろうけど。でも、こんな遊びばかりしてる子供って怪獣でウルトラマンごっこして遊ぶ今の日本の男の子より先が思いやられるように感じてしまう。 「大晦日の夜の冒険」は女房ほったらかして、他の女にうつつを抜かし、自分の鏡像(鏡に映った像)を取られた男の話。正統的な大人向きの幻想小説だろう。この小説もストーリーが複数作中に織り込まれていて、ちょっと人物関係が分かりにくかった。 三作ともそれなりに面白かったが、特に子供向きの二作は面白かった。子供向きということでストーリーが簡略化されず、ちょっと不気味な因縁話もあって子供だけでなく、大人も楽しめる。
January 3, 2013
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