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湖畔荘 上 / 原タイトル:THE LAKE HOUSE[本/雑誌] / ケイト・モートン/著 青木純子/訳湖畔荘<下> [ ケイト・モートン ]ケイト・モートン東京創元社 四六並製☆☆☆☆☆ 第一作目の「リヴァトン館」からずっと読んでいるが、今回はちょっとした技術的なことが、実は物語の上で重大な意味を持っていた、という設定はなかった。その代わり、これでもか、と重ねられる "coincidence" - 偶然、「読み物」にある王道の設定だ。上巻では、色々な時代の色々な場面が交差してどうなるんだろう、と思いながら読んでいき、下巻の後半から、収斂していくのが面白い。ずっと誘拐された子供はもう作中に関わっている、と思っていたが、こうきたか、という感じ。そして、一番読んでいて怖かったのが、エリナが母コンスタンスのために用意した老人ホームの意味。他から見れば完璧な母のための完璧なホームだったが、このホームは母の大嫌いな潮騒が四六時中聞こえているのだ。これが、最後までそりの合わなかった母娘の結末。だが母親も娘が敬愛している人を逆恨みに近い恨みで殺害したのだから、コワイ。この人の小説は20世紀初頭の英国上流階級の衰頽が底流にあるが、それの時代背景が何よりもドラマになるのだと思う。先に読んだ塩野七生さんが、「衰えていく時代こそフィクションドラマになる」という趣旨のことを書いておられたが、そうだと思う。
February 16, 2018
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模倣の殺意 (創元推理文庫) [ 中町信 ]中町信創元推理文庫 ☆☆☆☆◎ 昭和の推理小説。一つ一つの場面が昔の二時間ドラマを彷彿させ、最近、こういう設定の小説が好きだ。そして初めて読んだ著者。駆け出しのライターとやり手の女性編集者が坂井という小説家の自殺を調査する様子が並行して語られる。いつ一つになるのか、と思いながら読んでいたら、こうきた。が、読者への挑戦の直前でなんとなく、もしや、とは思っていたらアタリ。叙述トリックはあまり好きではないと言いつつ、これにはいい感じでだまされた。そして、これがほぼ本邦初の叙述物らしい。
February 9, 2018
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【中古】【古本】緋色のヴェネツィア 聖マルコ殺人事件/塩野七生/著【文庫 朝日新聞社】【中古】 銀色のフィレンツェ メディチ家殺人事件 朝日文芸文庫/塩野七生【著】 【中古】afb黄金のローマ 法王庁殺人事件 朝日文芸文庫 / 塩野七生 シオノナナミ 【文庫】塩野七生朝日文芸文庫☆☆☆☆☆☆◎ 「殺人事件」と副題がついているので、てっきり、この方の書いたミステリ読んでみたい、と思って図書館で第一作目の「緋色のヴェネツィア 聖マルコ殺人事件」を借りたのだが、まったくミステリ色はなかった。だが、さすが塩野さん、内容は歴史小説でとても面白い。 まず、第一作を借りたのは、昨年演奏した「オテロ」とほぼ同時代の小説だったから、オテロがキプロスで懊悩しているとき、本国ってどんな感じだったんだろうという好奇心からもあった。貴族階層の男性だけとはいえ、民主制・平等な機会が与えられるヴェネツィアの社会の様子が興味深く、この社会だから、オテロも出世できたのだと納得。また、そういう都市国家だから異教徒でもある、当時名君スレイマン1世を戴いたオスマントルコとの通商もヨーロッパの窓口のような形でできるのだ。今ウィキで確認したが、読書中から、時代設定が篠原千絵さんの「夢の雫、黄金の鳥籠」と同じだ。作中書いてあったが、アルヴィーゼ・グリッティはやっぱり実在の人物。こんどこの漫画も読もう。昨夏に少し立ち読みができたので読んだことがあるのだ。この本の主人公は、そのアルヴィーゼ・グリッティの親友でヴェネツィアの名門貴族で二十歳の時から国政に携わるようになり、その手腕を評価されていたマルコ・ダントロ(架空の人物)。彼とアルヴィーゼを通じて、オスマントルコの侵略とヴェネツィアの様子が描かれる。が、このアルヴィーゼは結局オスマントルコの遠征先で殺され、マルコもアルヴィーゼとの関係がヴェネツィアへの背信行為とされて三年間の公職追放処分を受ける。作中描かれるヴェネツィアの本当に現在の民主国家と変わらない民主制、オスマントルコの多国籍ぶりや後宮の女性たちの扱い、そしてオスマントルコ・ヴェネツィア・ハプスブルク家との関係も、今まで読んだ本から間接的に読んではいたが、ここにも出ていた。ややこしいが、この時代あたりから、私が演奏するクラシック音楽にも結び付いてくる。 そして、公職追放中のマルコが次にフィレンツェに住むことにして、「銀色のフィレンツェ」が始まる。この時代、フィレンツェはメディチ家の支配下にあるが、当主は暴君アレッサンドロ・メディチ。メディチ家もすでに傾きかけている時代だった。 ここでは、サヴォナローラの狂信(今から見れば)の記憶も残り、共和制から君主制を選択して、ヴェネツィアとは全く違う都市国家になってしまったフィレンツェが舞台となる。司法制度もかなり偏向したものとなっており、マルコは、再会したオリンピアを通じて、宿の主人を司直の手から救い出すことに成功する。また、メディチ以外のフィレンツェの名門貴族も登場し、これを読んでいて、私は同じ著者の「わが友マキアヴェッリ」が読みたくなった。いつか読もう。マルコはフィレンツェで、オリンピアに気持ちのこもった高価な首飾りを贈り、二人の仲は進展する。とはいえ、往年(いやまだ現役か?)の伊達男の、マルコがオリンピアに「外出の支度をしておくように」という伝言に対する読みが、ちょっとオトナだ。しかし、そんな中、暴君、アレッサンドロは従弟ロレンツィーノによって暗殺され、マルコとオリンピアはローマへと移り、「黄金のローマ 法王庁殺人事件」が開始される。 この土地で、マルコは「髪結いの亭主で暮らすのもいいか」とオリンピアとの暮らし、そして、ローマの遺跡発掘の専門家でもあるエンツォ老人をガイドに遺跡めぐりを楽しむ。そして、オリンピアの紹介でまだ20歳前の若いアレッサンドロ・ファルネーゼ枢機卿やミケランジェロの知遇を得る。私はこの三部作の中でこの本が一番好きだ。特に、15世紀のアッピア街道の描写がとても好き。レスピーギの「ローマの松」から「アッピア街道の松」と「カタコンベの松」が脳内再生された。私は西欧の古代史には暗いが、それでも古代史好きにとって、古代から現代へと連綿と続く都市というのは、東西を問わず魅力的なのだと思う。さらにローマにはヴァチカンがあるというのもあって、やっぱり行ってみたくなってしまった。しかし、この巻でオリンピアの謎だった部分が明かされ、そして、彼女の職業を考えれば仕方ないのかもしれないが、彼女とマルコは悲しい結末を迎える。また、これは女性作家の特徴かもしれないが、若い男性の描写の甘いこと。ロレンツィーノ・メディチもそうだったが、このアレッサンドロ・ファルネーゼもそうだ。かくいう私もそれを楽しませていただいた。また、この巻は有名な絵だと思うが、女性のハダカがカバー絵。ずいぶん色っぽい表紙だと言われたが、内容はあまりそうではない。
February 2, 2018
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