ビストロフの橋

ビストロフの橋

October 22, 2005
XML
テーマ: 連載(82)
カテゴリ: カテゴリ未分類
 「今日はずいぶんゆっくりじゃったな」店先でオリバンダー翁が待っていた。
 いつもの淡い色の目にも、微かに微笑んだ口元にも怒っている様子がなくて、ウィルは胸をなで下ろした。
 「さて、さて、さて、今日はな少し面白いものを見せてやろうと思っておったんじゃよ」オリバンダー翁はウィルを杖造りの工場へと連れて歩きながら、含み笑いをした。
 ウィルは出来るだけ翁の顔を見ないように注意しながら、いったい何を見せてくれるのだろうと考えた。正直言って、翁の笑顔はあまり気持ちのいいものではないのだ。
 「お前さん、もう『釉薬』は作れるな?」
 「はい」いまさら何を言ってるんだろう、今日まで毎日作り続けてきたじゃないか。
 「ここに、わしの『釉薬』がある。そして、こちらにあるのが?」オリバンダー翁はまず大鍋を指さし、次に横に並べるように置いた机の上の束を指さした。
 「枝、ですか?」
 どう見てもそれは枯れ枝の束にしか見えなかった。もちろん、魔法世界では、実は豚だと言われても驚くに値しないのだが・・・。

 『釉薬』を塗っただけの枝を一振り、すると明るいオレンジ色の玉が枝の先から数個吐き出されてきた。
 次にまた新しい枝を抜き取り、釉薬を塗ると乾くまで待って振った。今度は玉ばかりでなく、赤と黄色の二色だけの虹が真っ直ぐな線となって、再び吐き出されたオレンジの玉の中心を通り抜けた。
 三本目は塗って乾かすのを二度続ける、重ね塗りをして振った。オレンジ色の玉が赤と黄色の玉になり。赤と黄色の虹が扇状に広がった。
 四本目、三度重ね塗りしたものを振る。玉の色は同じだったが艶が違った。扇状の帯は色のグラデーションがさらに増して、その上に所々で火花が散った。
 五本目、四度塗り重ねた枝。これは振った直後に爆発音を響かせ瞬く間に燃えつきた。
 「解かったかの? 釉薬が同じでも、塗り方や乾きの度合い、塗りムラで魔力の伝わり方や出方に大きな差を作るのじゃよ。むろん、最後に入れる物質によってもじゃ」
 「・・・釉薬だけでも魔法が使えるんですか?」これまで、杖が魔法を生み出すのは芯と木、そして釉薬が三位一体になってたときだと思っていたウィルは思わず質問していた。
 答えは期待していなかった、なのに翁は意外にもまともに質問に答えてくれた。
 「枝に釉薬をかけたところで魔法は使えんよ。釉薬の役目は芯と木を連結し、魔力を均等に整然と伝えること。つまり魔法に方向性を与えるためのものじゃでな。芯の役目は使うものの魔力の増幅、木は使用者の意志やイメージを芯に伝える役目を持つ。三つが揃って初めて杖は杖としての力を発揮することができる」
 オリバンダー翁の目が、銀色に輝くのをウィルは見た。これが翁の気持ちが高ぶったときの特徴だとウィルはすでに気がついていた。
 「さて、さて、ウィルや。学校に行く前からこんなものを渡されるのは嫌じゃろうが・・・宿題じゃ。クリスマス休暇までに釉薬の最後の材料を見つけてきなされ。今のように枝に塗って反応を見れば、何が効果的かは確認できるじゃろう」

 ウィルはオリバンダー翁に、クリスマス休暇には必ず答えを見つけて帰ると約束し、しばしの別れを告げた。翁が店を離れてウィルの見送りに来るはずはなかったから。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  October 22, 2005 09:33:40 AM
コメント(0) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

Keyword Search

▼キーワード検索

Favorite Blog

クラッシュのHP クラッシュ2569さん
まいけるのお部屋 名前のないうさぎさん
凛。きまぐれホーム… RURIKAさん
し ん じ て る 。 沙羅 憐霞さん

Comments

通な俺@ 愛 液ごちそうたまでしたw <small> <a href="http://hiru.kamerock…
ヒゲメタボ@ クマたんと呼ばれてます(^^; 最近はこれが流行ってるって聞いたので …
ディック橋本@ ギリ3人です(笑) <small> <a href="http://iikoto.chorie…
大岩井@ 目覚めたら巨チンってぉぃ あの女ー・・昨日チソコが痛くなるくらい…
ビャルヒ@ あのコスwwwww コ ス プ レセ ク ロ スって思った以上に…

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: