ビストロフの橋

ビストロフの橋

October 29, 2005
XML
テーマ: 連載(82)
カテゴリ: カテゴリ未分類
 何事かと耳を澄ますと『ハリー・ポッターが乗っているらしい』と言っているのが聞こえた。
 「そっか、そういえば『あの』ハリー・ポッターもわたしたちと同い年なのよね。ホグワーツに入学するのは当然だし、この汽車に乗っていても不思議はないわ」
 「あの・・・ハリー・ポッターって、誰なの?」『漏れ鍋』のトムも口にしていた名前だ。
 「知らない、の? 『あの人』が唯一殺すのを失敗した子供、『あの人』の力を打ち砕いた子供、それが何故かは誰も知らないけどね。十一年前、魔法世界の人間はほぼ全員が『生き残った子供、ハリー・ポッターに乾杯』って言って杯を挙げたのよ」
 「額にその時の傷、稲妻型の傷があるって。はっきりと見た人間はごく小数だからはっきりしないけど、その小数は魔法族で一番信頼厚い人たちだから、多分間違いじゃない」
 正反対の性格をしているように思えるルビーとキャロルが、同じ顔と口調で言った。目の前で顔を見ながら聞いたのでなかったら二人のうちのどちらが何を言ったか区別できなかったかも知れない。
 マグル出身のウィルには理解できないほど、魔法族に対する『あの人』の影響は深いのだ。
 あのルビーまでが沈んだ顔をしているので、何か気を逸らさせるものはないかとウィルが窓から覗くと、外は暗くなっていた。深い紫色の空の下に山や森が見えた。汽車は徐々に速度を落としているようだ。
 車内に響き渡る声が聞こえた。

 ウィルは神経質にローブのほつれをいじり、ルビーは更に陽気になった。キャロルはいくぶん緊張しているふうだが、冷静さは失っていないようだ。三人は残った弁当を再び包み、通路にあふれる人の群れに加わった。
 汽車はますます速度を落とし、完全に停車した。押し合いへしあいしながら列車の戸を開けて外に出ると、小さな、暗いプラットホームだった。夜の冷たい空気にウィルも身震いした。やがて生徒たちの頭上にユラユラとランプが近づいてきて、ウィルの耳に雷みたいに大きな、でも暖か味のある声が聞こえた。
 「イッチ年生! イッチ年生はこっち! ハリー、元気か?」
 大きな髭面が、ずらりと揃った生徒の頭の向こうから誰か、間違いなくハリー・ポッターだと察しは着いたが、に笑いかけている。ウィル達のところからはそれがどんな奴なのかまでは見えなかった。
 「あれ、ハグリットよ。ホグワーツの森の番人だって聞いたことがある。一キロはなれたところから見てもそうとわかるって言う人がいたけど、あの巨体じゃ見間違いようはないわね」キャロルがそっと囁いた。ルビーは山でも見上げるようにポカンと口を開けて仰ぎ見ている。
 確かに、常人の二倍の背丈に五倍の幅の体は誰の目にも、それとわかるだろう。
 「さあ、ついてこいよーあとイッチ年生はいないかな? 足下に気をつけろ。いいか! イッチ年生、ついてこい!」
 滑ったり、つまずいたりしながら、険しくて狭い小路を、みんなは髭面の大男に続いて降りていった。右も左も真暗だったので、気がうっそうと生い茂っているのだろうとウィルも思った。みんな黙々と歩いた。ヒキガエル探しの少年が、二、三回鼻をすすった。
 「みんな、ホグワーツがまもなく見えるぞ」
 ハグリッドが振り返りながら言った。
 「この角を曲がったらだ」

 一斉に声が湧き起こった。
 狭い道が急に開け、大きな黒い湖の辺に出た。向こう岸に高い山がそびえ、そのてっぺんに壮大な城が見えた。大小さまざまな塔が立ち並び、キラキラと輝く窓が星空に浮かび上がっていた。
 「四人ずつボートに乗って!」
 ハグリッドは岸辺に繋がれた小船を指さした。ウィルとルビー、キャロルが乗り、もう一人茶色がかった髪の男の子が続いて乗った。
 「みんな乗ったか?」

 「よーし、では、進めぇ!」
 ボート船団は一斉に動きだし、鏡のような湖面を滑るように進んだ。みんな黙って、そびえ立つ巨大な城を見上げていた。向こう岸の崖に近づくにつれて、城が頭上にのしかかってきた。
 「頭、下げぇー!」
 先頭の何艘かが崖下に到着したとき、ハグリッドがかけ声をかけた。一斉に頭を下げると、ボート船団は蔦のカーテンをくぐり、その陰に隠れてポッカリと空いている崖の入り口へと進んだ。城の真下と思われる暗いトンネルをくぐると、地下の船着き場に到着した。全員が岩と小岩の上に降り立った。
 「ホイ、おまえさん! これ、おまえのヒキガエルかい?」
 みんなが下船した後、ボートを調べていたハグリッドが声を上げた。
 「トレバー!」
 ヒキガエル探しの少年が大喜びで手を差し出した。生徒たちはハグリッドのランプの後に従ってゴツゴツした岩の路を登り、湿った滑らかな草むらの城影の中にたどり着いた。
 みんなは石段を登り、巨大な樫の木の扉の前に集まった。
 「みんな、いるか? おまえさん、ちゃんとヒキガエル持っとるな?」
 ハグリッドは大きな握りこぶしを振り上げ、城の扉を三回叩いた。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  October 29, 2005 07:41:16 AM
コメント(0) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

Keyword Search

▼キーワード検索

Favorite Blog

クラッシュのHP クラッシュ2569さん
まいけるのお部屋 名前のないうさぎさん
凛。きまぐれホーム… RURIKAさん
し ん じ て る 。 沙羅 憐霞さん

Comments

通な俺@ 愛 液ごちそうたまでしたw <small> <a href="http://hiru.kamerock…
ヒゲメタボ@ クマたんと呼ばれてます(^^; 最近はこれが流行ってるって聞いたので …
ディック橋本@ ギリ3人です(笑) <small> <a href="http://iikoto.chorie…
大岩井@ 目覚めたら巨チンってぉぃ あの女ー・・昨日チソコが痛くなるくらい…
ビャルヒ@ あのコスwwwww コ ス プ レセ ク ロ スって思った以上に…

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: