「one of oldest human needs is having someone to wonder where you are when you don't come home at night.(人間が最古から必要としていることの一つは、あなたが夜家に帰らなければどこにいるのだろうと心配してくれる人がいることだ)」寮の前に立った途端、低い声が少し楽しげに囁いた。 寮の入り口を守る鷲が囁いたのだと言うことに気付くことができず、ウィルは数秒驚愕で立ちすくんでしまった。この鷲が合い言葉を求める以外のことを言うとは思いもしなかったのだ。 「合い言葉は?」突っ立ったままのウィルに一瞥をくれ、鷲は事務的な口調に戻った。 「Little brooks make great rivers.(小川は大河になる)」合い言葉を言い終えると、ほぼ同時に翼が閉じられ、寮への入り口が開いた。 常夜灯がほのかな明るさをもたらす廊下に比べ、明度が極端に落ちた談話室に入る。入り口が再び閉まってしまうとウィルは再び立ち尽くさなくてはならなかった。目が暗さに慣れるのを待たねばならなかったのだ。 その上、談話室の奥のほうで影のようなものがゴソゴソと動くのを見てしまっては足を止めないわけにはいかなかった。 お化けでないことや泥棒でないことがよくわかってはいても、暗がりで動くものには普遍的に恐怖がつきまとうものなのだ。 「やっと帰ってきた」その暗がりで動くもの、がびっくりするくらいの澄んだ優しい声を発したので、ウィルは声を上げそうになって慌てて自分の口を両手で塞いだ。 こんな夜中に騒ぐわけにはいかない。