森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2015.01.21
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今シーズン広島カープに復帰する黒田博樹投手は大リーグの年俸20億円を断った。
そして今年の年俸は4億円である。金銭ではない。ファンに勇気を届けたい。
黒田投手の心意気に拍手である。資本主義の経済第一の考え方からすると異例である。
利潤追求第一主義の功利主義とは相いれない行動である。

でももうそろそろ経済第一主義、最大利潤の追求ばかりで突き進むと、地球上の環境汚染、森林破壊が進み、テロや核戦争などがおこり、人々の心の荒廃が蔓延して人類の生存はもはや絶滅に近づいている事を多くの人が感じ始めているのではなかろうか。
黒田投手の行動はそういう意味の警鐘として受けとれないだろうか。
昔もこうした考え方をして生きた人がいた。私がよく取り上げる良寛さんである。

良寛さんは、岡山玉島の円通寺で国仙和尚より印可を得ているので、どこかの寺の住職になれた身である。
それを放棄しての乞食僧としての生活を選択されたのである。

最初生まれ故郷の出雲崎から3里ばかりの海辺の空庵に住んだ。
それを伝え聞いた家人が良寛を連れ帰ろうとするが絶対に聞かない。
そこで、着物や食糧をおくろうとしたが、こんなものをもらっても仕方がないと全部返してしまった。
それどころか托鉢で余分にもらった食料は人にあげたり動物に与えていたという。
その日の食料、その日の薪があればよしとされていたのである。
それは日常の食べ物だけではない。生活用品はほとんど所有していない。無所有の生活であった。

良寛さんは豊富な知識さえもみんなにひけらかすことはなかった。
実は良寛さんは万葉集の研究、懐素の書の研究、寒山の漢詩、そして道元の「正法眼蔵」、老子や荘子の研究は当時としては一流の学者であったのだ。
残された作品がそのことを物語っている。当代一の知識人であったのである。

その人となりは子どもたちや村人からとても愛されていた。
子どもや無学な農民は、本当にやさしいととそうでない人はシビアに見分ける能力を持っている。


現代人が便利、快適、飽食三昧、快楽追及、所有欲、名誉欲、権力欲に翻弄されてうつつを抜かしているのとは異質である。
私たちがそうした欲望の充足のためにあくせく働いているのとは次元が違う。
良寛さんはどんなことを考えて生活されていたのであろうか。

このことに関して中野孝次氏は次のように言われている。
「便利・快適というものは、たしかに生活を非常に楽にした。

だが、そうやって苦しみ、つらさが減じた分だけ、春の到来というなんでもない自然現象が与える喜びも減ってしまった、と言わざるをえないだろう。

現代は苦しむことを絶対悪のように見なし、苦の原因はたちまち排除されるが、その代償として、自然の与える喜びを享受する感性は、便利・快適になった分だけ薄くなっていく。
このことは自然体験だけではない。
人生そのものの味わい深さについても言えるのではないか。」

現代の日本人の生活というのは、便利、快適、飽食、所有の生活にどっぷりつかっている。
欲望が欲望を産み、それが加速度を増してもう後戻りができない段階に突入しているのではないか。
それはギャンブル依存、アルコール依存、薬物依存と何ら変わりがない。
人々はみんな欲望依存の時代に突入しているのである。

そうした欲望の充足一辺倒の生活の中で、本来人間にそなわった鋭い感性、人を思いやる人情、生きる喜び、ゆとりといったものはどんどん鈍ってきて、しだいに失われているのではないか。
もはや生きる喜びは感じられなくなり、生きること自体が苦痛になっているのではないのか。
本来人間は遊ぶために生まれてきたのである。苦しむためではない。楽しむために生まれてきたのである。
そんな生き方であなたは満足できるのですか。それで果たして人生を謳歌できるのですか。
黒田投手や良寛さんの生き方はそんなことを問題提起されているのではないだろうか。
最後に良寛さんの短歌を紹介しましょう。

埋み火に足さしくべて臥せれどもこよひの寒さ腹にとほりぬ
(冬の五合庵で筵の上に布団を敷き、残り火に足を入れて寝ても、寒気はしんしんと身体に透り、寒さが腹の中まできたというのだ)

飯乞うとわが来しかども春の野に菫摘みつつ時を経にけり
(托鉢に出かけたところ、近くに咲き乱れるすみれの花の可愛さに我を忘れて見惚れて時を過ごしました)

つきてみよひふみよいむなやここのとを十とをさめてまた始まるを
(人の世の営みは、昨日から今日へ、今日から明日へ、過去から無限の未来へと棒のようにつながり延びているだけではない。来る日一日一日がすべてだ。昨日は去ってすでになく、未来はまだ来ずして存在しない。あるのは生きている「今ここに」の時だけであり、その時をひふみよいむなと力をこめ、全身心できていくことが、生きているということだ)

風の良寛 中野孝次 集英社一部引用





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Last updated  2015.01.21 06:39:52
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kurokawa@ Re:感情と行動を分離して行動する(11/11) 申し訳ございません。生涯森田様でした。
kurokawa@ Re:感情と行動を分離して行動する(11/11) 障害森田様 この記事の中で「心とは裏腹…
楽天星no1 @ 早速のご返事感謝 森田生涯さんへ 早速のご返事ありがとう…

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