森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2015.05.09
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森田では感じから出発して、理知で調整して行動するという。
ここで感じから出発するとは酒を飲みたい、ギャンブルをしたい、ネットゲームをしたいなどの欲望のことを指しています。
あるいは相手の言動にたいして腹が立つ。不安になる。恐怖心が湧いてくる。
所謂好き嫌い、愛憎、嫉妬などの自然に湧きあがってくる感情のことである。
森田では、まずはそういった欲望や感情が湧き起ってきたという事実を素直に認めていく。
それが感じから出発するということです。

しかし、だからといって、欲望や感情のおもむくままに行動していると大変なことになる。
アルコール依存症、ギャンブル依存症、ネットゲーム依存症になっている人の現状を見てみると容易に想像がつく。
あるいは最近すぐにキレてしまう子供がたくさんいるという。

自己中心的で身勝手で、相手を思いやる気持ちはなく、暴言や暴力をふるい迷惑ばかりかける人間である。
これらは欲望が暴走して、感情を抑えることができないのである。
後で後悔をすることになる。罪悪感で苦しむ。責任をとらされることになる。罪を償わされることになる。
等の事態に追い込まれることが分かっているにもかかわらず、我慢できないのである。
これは理知で調整して行動するという機能が働いていない。
自分の本当の気持ちとは逆につい本能的な行動をしてしまう。
自分でもどうしてよいのか分からないのだ。

では理知とは何か。理知の特徴はどうなっているのか見てゆきましょう。
最近の脳科学によると、理知による調整機能は「眼窩前頭皮質」が担っていることが分かっています。
眼球の後ろの方にあります。
「眼窩前頭皮質」は強い欲望や衝動的な感情に対して、欲望を抑制したり、怒りなどの感情爆発を抑制して、直接暴力的な言動をとらないように自分をコントロールする役割を果たしています。


暴走していつも問題を起こしている人は、「眼窩前頭皮質」の発達や成長が不十分であると言えます。
これは小さい時の育て方に問題があるのです。
さらに問題なのは、「眼窩前頭皮質」の発達や成長は3歳までに完了してしまい、その後いくら発達させようとしても難しいとされています。

このことから、まずは子供を育てる時の教訓として「眼窩前頭皮質」の発達や成長を考慮することが大切です。
為末大さんは自分の行動やコミュニケーションに自己抑制力が働くかどうかは、身体的体験の積み重ねと深く関係しているという。

無意識に蓄積してきた、さまざまな体感的データを統合して、制御しているのだ。
教科書的な学習では、決して身につかない能力がある。
僕はそうした能力の土台を、子供の頃に遊びの世界から獲得していった。
僕にとっては遊びの時間が、身体的体験を積み重ねていくための通過儀礼だった。」
(「遊ぶ」が勝ち 為末大 中公新書 186ページ)
この点現代の子どもたちは、元気に外で走り回ったり、友達と自由に遊び回るという機会はどんどん無くなりつつある。つまり自己抑制力を身につける機会がないのである。

それと子供を過保護に育ててしまうというのも、「眼窩前頭皮質」の発達や成長を阻害してしまいます。
例えば、飲み物やおもちゃが欲しいと言えばすぐに買い与える等というのは考えものです。
ショッピングセンターに出かける前から、今日は何も買わない、あるいは100円以内なら何を買ってもよい。それが守れるのなら買い物についてきてもよい。
守れないのならお家で留守番をしていてほしいなどとあらかじめ話しておくことが大切です。
つまり我慢をしたり、耐えるという教育も子育ての中に取り入れて工夫していくことが大切です。

次にすでに未発達のまま大人になってしまった人はどうしたらよいのでしょうか。
そういう人は制御不能の車を運転しているようなものです。
あるいは調整不足の車をなんとか注意しながら運転しているようなものです。
まずはそういう自分を客観的に眺めて自覚を持つということです。
そして自分の自己抑制力はどの程度なのかをよく把握することです。

全く制御できない人は場合は、制御不能な場所には立ち入らないということが必要です。
あるいは同じような境遇の人の自助グループがありますので、気持ちを共有したり、学習によって相互に支え合うということが必要です。

ある程度制御できる人の場合は、自己制御力を活用する方法を学習することです。
森田理論学習もその一つです。
幸い制御不能な欲望等は1つか2つに限られていることが多いようです。
ということはそれ以外の部分では制御機能が働いているのです。
その部分では社会に適応することは全く問題がない場合が多いのです。それを自覚することです。

制御不能な部分を大人になってから修正したり、コントロールしようとするのは無謀ではないかと思います。
子どもに立ち返って身につけることはできないのですから。
それよりもそういう傾向がある自分を自覚して行くことが大切です。
そしてできるだけ危険な場所には立ち入らないという態度を持つことが大切です。
共存していくということです。
それ以外の自分にそなわっている能力や性格を活かして、社会に適応していくという姿勢で生きていくということです。





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Last updated  2024.06.04 09:01:38
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kurokawa@ Re:感情と行動を分離して行動する(11/11) New! 申し訳ございません。生涯森田様でした。
kurokawa@ Re:感情と行動を分離して行動する(11/11) New! 障害森田様 この記事の中で「心とは裏腹…
楽天星no1 @ 早速のご返事感謝 森田生涯さんへ 早速のご返事ありがとう…

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