森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2015.05.21
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羽生善治さんのお話です。
将棋は急に弱くなることはありませんが、少しずつ力が後退していくことはあります。
その最大の要因は「リスクをとらない」ということです。
リスクテイクをためらったり、怖がったりしていると、ちょっとずつですが、確実に弱くなっていってしまいます。

将棋を長くやっていると、過去の成功体験、失敗体験が経験則として積み重ねられてきます。
それは危険と安全の境界を見きわめる頼りがいある測定器である半面、安全策の中に自分を閉じ込めてしまう檻にもなります。
経験を積むと、この戦法ではこのくらいのリスクがあるということがかなり正確に読めるようになってきて、リスクの程度や影響度が計算できるようになるのです。
するとどうしても危ない橋は渡りたくなくなります。
つまり勝ちたいがために、リスクをとるより、リスクから身をかわすことを優先するようになる。

結果、安全策は相対的に自分の力を漸減させてしまうのです。

それがイヤなら積極的なリスクテイクをしなくてはならない。
だから私は、経験値の範囲からはみ出すよう、あえて意図的に強めにアクセルを踏むことを心がけているつもりです。
リスクをとらないこと大きなリスクになります。
リスクをとることこそリスクから逃れる最高のすべです。
だから、今リスクテイクをすることは、未来のリスクを最小にすると、私は自分に言い聞かせています。

この話は対人恐怖症の人にも言えます。
今までの対人折衝で嫌な思いをしたこと、ミスや失敗をしたこと、恥をかいたこと等がしっかりと記憶として蓄積されています。
それらが次に行動実践をしようと思った時に強い予期不安となって働いてしまうのです。
逃げて何も行動しなければその時は一時的には楽になります。
でも逃避して何をしているのか。仕事をさぼって時間をつぶすことになります。

観念上の悪循環が引き起こされます。しだいに生活が後退してきます。
だから気分本位にならないで、思い切ってリスクをとることが大切です。
でも神経質の人は分かっているけれどもできない。どうすればよいのか。

羽生さんはリスクを少しずつとるようにされています。
例えば、トータルでこれくらいのリスクをとると決めたら、それをいっぺんに引き受けるのではなく、その時の自分が消化できるサイズにまで小分けにして、毎回少しずつとっていくのです。

少しずつリスクをとっていくと思いのほか力が増していくことがあるのです。

これは不安神経症の人に認知行動療法がとっているやり方ですね。曝露療法といいます。
不安の階層を何段階にも分けて、やりやすいところ、簡単なところから恐怖突入していくやり方です。

羽生氏はリスクをとったからといって必ずしも成功するとは限らない。
むしろ失敗することの方が多い。
だからリスクテイクの是非を、成功、失敗という結果論で測らないようにした方がよい。
そのリスクをとったことに自分自身が納得しているか、していないかを物差しにしています。
後悔をするなら、リスクをとらなかった後悔よりも、とったことの後悔の方がはるかにましだと思います。
そう考えることで、リスクテイクの恐怖感もかなり減らせるような気がします。
これは心配性で臆病な神経質者の参考になる話だと思います。
(勝負哲学 岡田武史&羽生善治 サンマーク出版84ページ91ページから一部引用)





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Last updated  2015.05.21 06:08:33
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kurokawa@ Re:感情と行動を分離して行動する(11/11) New! 申し訳ございません。生涯森田様でした。
kurokawa@ Re:感情と行動を分離して行動する(11/11) New! 障害森田様 この記事の中で「心とは裏腹…
楽天星no1 @ 早速のご返事感謝 森田生涯さんへ 早速のご返事ありがとう…

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