森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2015.06.04
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カテゴリ: 行動のポイント
草柳大蔵氏の話である。
茶会等で使う茶器に「三島手」というのがある。
こまかい縄状の文様のある高麗象嵌焼で、別名を「こよみで」ともいう。
濃灰色の地肌にベージュ色の文様の入ったものが多いいが、製作過程では二度手間になる。
最初、挽き上げた茶碗に條を入れ、釉薬をかけてから、窯に入れて焼く。
焼きあがったら、はじめに條を入れたところに白っぽい陶土を入れ(これが象嵌になる)、もう一度、窯に入れて焼く。
こうすると、茶碗の方はすでに焼成されているから、二度目の窯入れでも縮みの度合いが小さいが、あとから入れた白い陶土はわずかな分量だから、一度の焼成できっちりと條の中にはまり込む。
したがって、できあがったものの表面を撫でてみると、茶碗の肌を象眼した白陶土の面はほとんど水平になる。茶碗屋の間では、これを「ヅラ(面)が合う」と称している。

ところが、いまの芸術大学や工科大学の窯業科ではどのように教えているか。

こうすれば、二度焼きするよりも光熱費も時間も半分で済むというわけである。
確かにその通りには違いないが、その結果焼きあがった「三島手」の表面は、白陶土の収縮度と茶碗の収縮度には土の性質によって違いがあるから、その違いのぶんだけデコボコになる。
つまり、茶碗屋のいう「ヅラ」が合わないのである。
大卒の人が作る「三島手」は、ほとんど、このデコボコ三島である。

大学の窯業科の先生が、いかに効率よく、コストも安く、焼き物を作るかを教えるのは自由ではある。
でも本物の「三島手」を作る人の心を伝えないで、何のための教育なんだろうな。
作った人の使い勝手のよさというメッセージを、ちゃんと使う側に伝えないとダメなんではないか。
そのためには、作る側にはそれなりの覚悟、心の用意というものが必要になる。
(人は生きてきたようにしか死なない 草柳大蔵 保健同人社 22ページより引用)

陶芸品というものは、長い期間かけて培われた伝統がある。
基本を学んで踏襲してしくことが出発点である。

基本を無視して手抜きをしてしまえば、効率よく安いものができるかもしれない。
でも本物からどんどん横道に外れてしまう。
するとよいものを作って使い手に喜んでもらいたいという気持ちは急速に無くなってしまう。
製品作りのやる気や意欲は減退してしまう。
偽物を早く大量生産して、大量販売で儲かればよいという気持ちが強くなってくる。

そうなると、消費者はすぐに見向きもしなくなる。
安易な商売の道に走ることなく、愚直に本物の商品作りに邁進していくことが、自分の生きがいにもなるし、消費者の支持を受けるのではなかろうか。
大学では、ものづくりの効率ではなく、その心意気を伝えてほしいものである。






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Last updated  2015.06.04 06:13:28
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kurokawa@ Re:感情と行動を分離して行動する(11/11) 申し訳ございません。生涯森田様でした。
kurokawa@ Re:感情と行動を分離して行動する(11/11) 障害森田様 この記事の中で「心とは裏腹…
楽天星no1 @ 早速のご返事感謝 森田生涯さんへ 早速のご返事ありがとう…

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