森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2016.06.29
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カテゴリ: 行動のポイント
河原宗次郎さんが森田先生の所へ入院されていた時の思い出話です。

初夏の夕方のことである。「河原君、その植木鉢をのけなさい」と指図された。
「ハイ」と、すぐ大きなしゅろ竹の植木鉢を抱えて、少し離れた処へ置きかえた。
ところがまた、「河原君そこはいけない」といわれたから、再び「ハイ」といって、重いその植木鉢を、反対の側に置きかえた。
私は力を入れつづけたので、汗ばんで来た。呼吸もはげしくなってきた。
それでよいかといわれるかと思ったら、叱るようにそこはダメだと指摘されてしまった。
また「ハイ」といって、植木鉢を抱きかかえたもののどこに置いてよいかわからず、そのまま立ち往生し、頭の中が混乱してしまった。
しばらくの間は、恐ろしい先生の前に、棒の如く立ったまま、のぼせてしまったのである。

今にして思えば、しゅろ竹は日陰につよく青々とした葉を観賞するものであるから、玄関先とか、事務所とか、喫茶室の片隅などに置くのにふさわしい。


先生は、そのまま奥へ行ってしまわれた。私にはこのときは、何にも分からなかった。
どうしたらよいのか、、私のやったことのどこが悪いのかもわからなかった。
はっきり言って下さらない先生を、うらめしくさえ思ったものである。
しかし今日になって、先生の尊いお教えに深く感謝している。
経験の乏しい私には、植木鉢の知識などはないわけであるから、先生から見て一番よいと思われる場所を考えて、そこへ持ってゆき、一応先生に「いかがでしょう」とお伺いすればよかったのである。
先生のお指図に忠実に従うだけのことが、私にはできなかったのである。
(形外先生言行録 52ページより引用)

森田先生がここに置きなさいと言えば簡単に済んだ話である。
でもそれでは河原さんには考えるチャンスは与えられない。
高い入院料を支払って入院している意味がなくなる。
入院森田では、自分で考えて気づいたり発見したりして、やる気や意欲を高める気合を養成しているのだと思う。


作曲家の故遠藤実氏がこんなことを言っています。
人を育てたいと思うなら、完成品を相手に与へたり、教えるべきことをすべて伝えるのは本人にとって、マイナスにしかならない。
100パーセントの回答を手にしたとき、人は一から考えようとは思わない。
そこには創意工夫の余地は残されていない。こういうのを過保護という。
無気力、無関心、無感動な人間を作り出す温床となる。


汗をかきながら、懸命に出口を探しているといつしか本物の力がついてくる。

集談会のアドバイスでも、基本的には相手が森田のポイントを自ら発見する喜びを取り上げてはならない。
森田にしがみついていればいずれ分かるようになるものなのだ。
相手に刺激を与え続けることに専念した方がよい。そして気が熟するのをじっと待つ。

一方的なアドバイスは参加者の成長を止める。
また初心者は講師のよい話を聞くためにだけ参加していては森田が身につかないと思う。
よい話のあとは必ず自分にあてはめてどうなのかを考えることが大切である。





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Last updated  2016.06.29 06:39:41
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kurokawa@ Re:感情と行動を分離して行動する(11/11) New! 申し訳ございません。生涯森田様でした。
kurokawa@ Re:感情と行動を分離して行動する(11/11) New! 障害森田様 この記事の中で「心とは裏腹…
楽天星no1 @ 早速のご返事感謝 森田生涯さんへ 早速のご返事ありがとう…

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