森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2016.07.28
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結婚相手に「やさしい人」を求めることが多い。

大平健氏によると、旧来の語法では、「やさしい人」とは、相手が自分の気持ちを察してくれて、それをわが事のように受け容れてくれるときに感じるものでした。
自分が「やさしい」気持ちになれるのも、自分が相手と同じ心持になった時のことでした。
いずれの場合も「やさしさ」が双方にとって心地よいのは、自分と他人の気持ちのずれがなくなり、一体感が得られるからでした。
そういう状態になるためには、お互いに相手の考え方や行動をよくわかった上で、相手に寄り添った言動が必要になります。
集談会でいえば、自分の悩みをよく聞いてくれて、共感して受容してくれる。
そして適切なアドバイスをしてくれるような人のことだろうか。

ところが、大平氏によると、最近の「やさしさ」はそういう人間関係の在り方とは違ってきたといわれる。
一歩踏み込んだ生々しい人間関係を避けるようになってきた。

そういう人を「うっとうしい人」、「わずらわしい人」として避けるようになってきた。
つかず離れず適度の距離を置いて、相手の心の痛みは見て見ぬふりをするのが相手を思いやることなのだと思っている。
相手の嫌がるようなことから目をそらして、静観してあげるのが「やさしい人」だというのである。手出し無用だというのだ。

土足でズカズカと自分の心の領域に踏み込んでおせっかいを焼かれるのもイヤだし、おせっかいを焼くのもイヤだというのである。
たとえば、欲しくもないものを売りつけたり、売りつけられたりすることは敬遠する。
売りつけて断られると自分が傷つくし、押し売りを断ると相手が傷つく。
人に頼みごとをするのも、他人から頼みごとをされるのもしり込みしてしまうのも同様の理由からである。

こうなると、人間関係は必然的にあたらずさわらず表面的なものになってしまう。
森田理論学習では、時と場合に応じて、つきず離れず適当なバランスを取りながら人間関係を築いていくのを「不即不離」という。
森田では人間関係ではベタベタと付きまとってはいけない。
かといって全く離れてしまうのもいけないという。時と場合に応じて、ひっついたりあるいは離れたり臨機応変な対応が大切であるという。


私が思うには、大平氏のいう「やさしい人」というのは、お互いに心がとても傷つきやすい人である。
ちょっとした傷つきで心がかき乱されて、日常生活に大きな影響が出てくる。
それなら、親密な人間関係を築くことを避けてしまおうという考え方である。

旧来の人間関係は同じ町内ではみんなが子どもの教育を担っていた。
年頃になれば結婚相手を紹介したりしていた。

普段から私生活のすべてにわたって助け合っていい面も多かった。
ところがそうした親密な人間関係の半面で、個人の自由に干渉してわずらわしい面もあった。

現代では他人に束縛されて、自由がないというのは息が詰まる。その気持ちが一番強い。
他人と情愛のこもった人間関係を築きたいというのは頭の中に理想としてはある。
しかし実際問題としては、深入りして、熱い人間関係を構築することは、自分の自由が束縛されて息が詰まってくるので、当たり障りのない表面的な人間関係を基本姿勢としているのである。
では、こういう人間関係の考え方、基本姿勢で臨むことは問題はないのだろうか。

私は問題が大ありだと思う。
こういう考え方をする人は、モラトリアム人間に近い。
自分の目の前に現れた問題や課題に対して蓋をして先送りしてしまうのである。
一時的には楽になるが問題が解決したわけではない。
むしろ問題を引きずり、どんどん増悪して自分を苦しめてしまう。
今現在を真剣に生きるということから見ると、夢の中で生活しているような状態である。

こういう人の特徴は、さまざまな問題に対して決断できない。
迷ってばかりで解決の糸口が見いだせない。いつまでもウジウジと葛藤を繰り返す。

「いちおう」「とりあえず」という言葉が口癖になっている人が多い。
これは自分の言動は急場しのぎのものであり、仮の見解である。
自分が本当に求めているものは別にあると思っている。
今現在生きているという自覚に欠けているために、ぼんやりとして離人感に苦しめられることもある。

次に今現在熱中できるものが何もないと思っている。
今していることがはたして自分が本当に望んでいることなのか。
自分は本当に人生を謳歌して楽しんでいるのか。全く自信が持てない。
人生は幸せの青い鳥探しだと思っている。
だから30歳になっても、40歳になっても自分探しの旅を続けている。
でもこれといったものが見つからない。

またそういう人は、他人に深入りをしないから憶測で相手の気持ちを判断するようになる。
事実を確かめないで、先入観で、ネガティブな決めつけをおこなっている。
勝手に自分ひとりで納得しているので、人間関係は希薄なうえに、疑心暗鬼でいっぱいになるのである。

こうしてみると現在の表面的な「やさしい人」というのは、精神的に葛藤を抱えて苦しみやすい人だと言えるような気がする。
これらを改善していくには、今現在のことに真剣に向き合う癖をつけていくことが大切である。
それは森田理論学習とその実践で得られることであると考える。
(やさしさの精神病理 大平健 岩波書店参照)





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Last updated  2016.07.28 23:51:00
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kurokawa@ Re:感情と行動を分離して行動する(11/11) 申し訳ございません。生涯森田様でした。
kurokawa@ Re:感情と行動を分離して行動する(11/11) 障害森田様 この記事の中で「心とは裏腹…
楽天星no1 @ 早速のご返事感謝 森田生涯さんへ 早速のご返事ありがとう…

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