森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2017.04.30
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最近若年層に広がる新型うつ病とは何か。

こうしたタイプの人々は、気分の落ち込みよりも、疲れやすい、だるい、集中力や気力が湧かないという訴えが主であり、従来のうつ病のような自責感が目立たず、職場の帰属意識や仕事の役割意識が希薄であることが特徴に挙げられています。
また一度休職に入るとなかなか職場に戻ろうとしない、休んでいても趣味の領域などには案外意欲的に取り組むといった点から、しばしばわがまま、自己中心的、他罰的な性格に起因するとみられがちです。

中村敬先生は、確かに自己中心的といいうる側面もあるのですが、その原因を本人の性格に求めるべきではない、と言われています。
こうした現代的なうつ病が増加した背景には、 1990年のバブル崩壊以降、若年層を取り巻く雇用・労働環境の悪化が存在するからです。
このように社会的、経済的な要因が絡んでいるだけに、現代的なうつ病に対しては、休息と薬物だけではなかなか効果が上がりません。
彼らは無力感から脱し、環境に対して能動的に働きかけていかれるような心理的援助が必要とされています。

具体的には、次のようなことです。
1 、これまでのような気ままな休養生活から脱して、徐々に行動を増やしていくこと。



3 、グループによる治療環境を利用していく事。

4 、薬物は補助手段として位置づけ、薬だけで問題の解決を計ろうとしないこと
(メンタルヘルス岡本記念財団 メンタルニュースno. 34より引用)

私も現代的なうつ病は確かに個人の性格だけに、その原因を求めることはできないと思う。
誰でも会社に入ると、ライバル会社との熾烈な競争を強いられて勝つことを求められる。
それが今や日本国内にとどまらず、グローバル世界での熾烈な生き残りをかけた競争となっている。
そこで求められるのは能率、効率、実績、成果、結果である。
能力主義、利益優先、株主優先、実績優先、目標管理である。
休む間もなく、夜遅くまで緊張を強いられる。土曜日、日曜日もあってもないようなものである。
仕事を通じて豊かな人間関係を築き、自分の能力を磨き、自己実現を目指すなどという目標は切り捨てられている。
そういう働き方が普通になってくると、いつの間にか健康を害して、うつ病、適応障害などの心の病に陥る。


そうかといって、生活の基盤を崩すわけにもいかない。
そこでやむなく、緊急避難的に有給休暇の取得、休職という道を選ぶことになっているのかもしれない。
それで持ちこたえられれば良いのだが、なかなかそのようにはならない。

新型うつ病に対して中村先生は入院森田療法の中で上記の4つの視点を提案されている。
これらはいずれも新型うつ病から解放されるためには、大事なことばかりである。

まず、今まで仕事一辺倒だった人は、生活のバランスを整えることである。
仕事、家族関係、地域社会、スポーツや趣味、子育てや生き方の学習などである。
これらは生きていく上において必要なものばかりであり、それらに意識や注意を向けていく必要がある。
そういう気持ちを持っていると、仕事中心に偏った考え方や行動は少なくなってくると思われる。
競争社会、能力主義の仕事にのめり込んでいくと、一旦躓いたとき、取り返しのつかないことになる。
仕事は自分や家族の生活を守るために、ある程度止むを得ずに行っているという認識があれば、のらりくらりしながら、あるいは転職をしながらでも、なんとか仕事を続けることができるように思う。
今の仕事ぶりは問題が大きいので、客観的な立場に立って批判的に見るほうがよいと思う。
なおこのバランス、調和という考え方は森田理論の核となる考え方の一つである。

次に、会社の株主利益第一主義という資本主義社会のあり方そのものは、人類の将来を考えたとき、破滅の方向に向かっているとしか思えない。人間を粗末に扱い自然を破壊している。
人を窮地に追い込んでも特定の人たちが儲かればそれでよいというような考えはいずれ淘汰されてくるだろう。森田理論で言えば、欲望の制御機能が効かなくなり、多くの人が馬車馬のように全速力で意味もなく走り続けているような状態だ。
その結果、多くの人が幸せとはほど遠く、生きることそのものがもはや苦痛になっている。
本来は人間に生まれたことを喜び、日々の生活をしみじみと味わいながら、周りの人たちとの共存共栄を目指して、人生を全うできるのが当たり前のことではないのか。
株主資本主義といわれるような一部の人が、どんどんと富を積み重ねていって、その他大多数の人を踏みにじっていくような社会は、おかしいしもし可能であれば修正していく必要がある。

このまま欲望の暴走を放置していけば、貧富の差が拡大し、地球環境が破壊され、いづれは現存する核爆弾が使用されて、人類が最後を迎えることになるかもしれない。
そういう悲惨な状況を子孫に押し付ける事は何としても避けたい。
そういう問題のある資本主義社会の学習は、今後人類が生き残っていくために人類に課せられた大きな課題であると思う。

ポスト資本主義の社会が到来するとすれば、どのような社会になるのであるのか。
森田理論はその点について明確な答えを差し示していると思う。
私は全人類が無制限で無限大の欲望の追求を、できるかぎり制御していく方向に舵を切りなおしていくことが必須であると考えている。
そのように考えて、あるものを最大限に活かしていくような生活に切り替えることができれば、馬車馬のような仕事だけに片寄った生活は見直すことができるかもしれない。





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Last updated  2017.04.30 09:55:59
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森田生涯 @ Re[1]:成功するためには感謝力が必要となる(04/09) 長谷川勤さんへ 読んでいただいてありが…
長谷川勤@ Re:成功するためには感謝力が必要となる(04/09) 森田理論学習のすすめ のブログ 本日初…
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